小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

(公社)日本動物病院協会(JAHA)年次大会2023 開催

 人と動物の共生社会の実現に向けて「人と動物の絆(HAB:ヒューマン・アニマル・ボンド)」の理念の下、動物病院を核として地域への社会活動を推進するJAHAにより、2023年7月22日(土)~23日(日)、AP東京八重洲(東京都)にて「JAHA年次大会2023」が開催された。
 今年度から新会長を務める宗像俊太郎先生(あさか台どうぶつ医療センター)は「今大会も無事に対面で開催することができました。この大会は様々なかたちでJAHAの活動に携わる人たちが、一堂に集える場を提供しております。日頃の人と動物の絆に基づくJAHAの様々な社会貢献活動、スタッフが生き生きと活動できる環境づくりや取り組みを体感していただきたい」と述べた。

 本大会は「獣医師プログラム」「愛玩動物看護師プログラム」「CAPP/市民プログラム」「動物病院スタッフ向けプログラム」「ホスピタルプログラム」の5つのプログラムにわけて実施。
「獣医師プログラム」では、アドバイザーの石田卓夫先生(赤坂動物病院)、賀川由美子先生(ノースラボ)、秋吉秀保先生(大阪公立大学)を前に、登壇者が症例発表を行い、症例に対する質疑応答のみならず発表の構成の評価等まで行われた。続いて、前出の石田先生による「症例発表スキルアップセミナー」では、プレゼン資料の作成、作成までの有効な時間の使い方、また発表時の視線の位置など内容は詳細に及び、参加者たちはこれからの論文投稿や症例発表への具体的な取り組みを学んだ。また「愛玩動物看護師プログラム」では、今春、国家資格を取得した愛玩動物看護師が誕生するなか、さらなる活躍を視野に入れた講義が展開された。
 「CAPP/市民プログラム」は、本活動を勤めあげた犬たちをしのぶスライドショー、貢献されてきたボランティアの方々への表彰式も実施された。また今年も、コロナ禍で活動を各施設への訪問を自粛せざるをえなかったなかで誕生した「ドッグダンス~花が咲く~」が柴内裕子先生(赤阪動物病院)を講師に披露された。ようやく対面での活動がはじまるなか、CAPP活動には、喫緊の課題があるという。「新型コロナウイルスの影響でこれまで活動を自粛していたため、ボランティアに参加できる犬や猫が減ってしまった。まずは、協力いただける犬や猫の仲間を増やすこと」と宗像会長は述べ、さらに自身も実際にドイツの動物保護施設・ティアハイムに足を運んだことをふまえ、そうした活動や施設の普及も大切と参加者に訴えた。
対面での活動が復活していくなか、宗像新会長による新体制のもと、本協会のますますの発展が期待される。
 本協会の活動詳細は下記より。
https://www.jaha.or.jp/


新会長の宗像先生の挨拶


CAPP/市民プログラム「ドッグダンス~花が咲く~」の終了後に、
CAPPボランティア、ボランティア犬たちとともに


吉田尚子先生(家庭動物診療施設 獣徳会)による「人と動物の関係に関する国際組織(IAHAIO)とJAHAの関わり」の講演の様子


獣医師プログラム。演者は発表後にアドバイザー3名から発表スキルアップにむけ、丁寧な助言を受けた


愛玩動物看護師プログラムの様子

WJVF第14回大会 開催される

 2023年7月8日(土)、9日(日)、ホテルニューオータニ大阪にて、WJVF第14回大会が開催された。新型コロナウイルス蔓延防止の規制の影響で3年ぶりの対面の開催となった。今回のテーマは「Re WJVF 今こそ Back to BASIC」で、臨床現場で必ず押さえておきたい基礎からの学び直しに重きが置かれた。本大会は参加者に会場に来て生で講演を聴いてほしいという主催者の思いがあり、開催後のオンライン配信の実施はなかった。また、抄録・要旨集は今の時代を反映して、ウェブでの閲覧に変わった。
 WJVF会長の竹村直行先生は、開会の挨拶のなかで、新型コロナウイルス蔓延の前後でも変わらず、我々獣医師がやるべきことは動物、飼い主のために最善を尽くすことであり、本大会でたくさんのことを学んでほしいと述べた。
 講演は主要テーマの「初心に帰るシリーズ」のほか、「倒れる高齢犬を診る」、「ステロイドなど免疫抑制剤を使う疾患シリーズ」、「身体診察を見直す」、「軟部外科シリーズ」、「猫の呼吸器疾患シリーズ」なども多岐にわたった。また、少人数で行う顕微鏡実習、外科実習、心肺蘇生実習なども実施された。
 土曜日の夕方に行われた懇親会は無料で、多くの参加者が楽しめたようだ。日曜日にはスタンプラリーのWチャンス抽選会も行われた。
 参加登録者数は1,400名を超え、獣医師のほかにアニマルケアスタッフ、愛玩動物看護師の取得を目指す学生の参加も多かった。
 WJVF第15回大会は、2024年7月26日(金)~28日(日)、ホテルニューオータニ大阪にて開催予定。

開会式の竹村会長

キヤノンユーザーのための画像診断セミナー VET’S SUMMER CAMP 2023 東京 開催される

 2023年7月16日(日)13時から、東京・品川フロントビル会議室にて「キヤノンユーザーのための画像診断セミナー VET’S SUMMER CAMP 2023 東京」が開催された。本セミナーは関東および関東近県のキヤノン装置ユーザーの先生方を対象とした限定セミナーであり、今回は超音波診断をテーマに「newプロトコル!腹部・心臓・救急・運動器のエコー検査」と題し、開催された。
「腹部」では、小野 晋先生((株)スカイベッツ)、「心臓」では竹村直行先生(日本獣医生命科学大学)、「救急」では塗木貴臣先生(TRVA夜間救急動物医療センター)、「運動器」では枝村一弥先生(日本大学)と、日本でも著名な専門家が一堂に会し、各分野における超音波診断の基礎を中心に解説が展開した。
 まず、「腹部」では、小野 晋先生による「肝臓エコーの基本断面と診断のポイント:プロトコルアシスタントの活用」が行われ、とくに肝臓に焦点を当て、超音波検査における基本断面、血管解剖および異常所見について、キヤノン機器に搭載されているプロトコルアシスタントに触れながら解説された。
 つぎに「心臓」では、竹村直行先生による「最低でも知っておきたい心エコー図像と考え方」が行われ、とくに心臓の左房サイズに特化した内容を解説された。左房拡大についてはLA/Aoではなく左房内径のほうを重視すべきであるとし、心エコー図像での左房内径の測定法および評価方法、それに加えて犬におけるX線画像を活用した評価方法について解説された。
休憩をはさみ、「救急」では、塗木貴臣先生による「緊急患者を見逃さない!救急エコーのきほんのき」が行われ、「命を救う」ことを第一とした救急時のエコー検査について、とくに肺エコーの意義と評価方法、そしてFASTの目的と方法についてわかりやすく解説された。
 最後に「運動器」では、枝村一弥先生による「運動器超音波検査の基礎」が行われ、整形外科疾患に対するエコー検査のメリット、各部位における正常所見および異常所見をプロトコルアシスタントの画像を紹介しながらそれぞれ解説された。
 気温が40℃にせまる猛暑のなか、多くの先生方が集まり、各分野における専門家による超音波の解説に熱心に耳を傾けていた。各講演後には質疑応答も行われ、オフラインならではの活発な意見交換が行われた。会場後方には、プロトコルアシスタントを搭載した機器などが並び、その機器についても熱心に質問をする参加者の姿が印象的であった。

会場の様子

第10回 猫の集会 開催される

 JSFM(Japanese Society of Feline Medicine、ねこ医学会)主催「猫の集会」が、2023年7月15日(土)、16日(日)、東京コンベンションホール(東京都中央区)にて開催された。第10回の節目を迎え、今回はじめての2日間開催となる。両日で獣医師向けプログラム・市民向けプログラムが行われ、16日にはCATvocate認定プログラムも行われた。
 獣医師向けプログラムでは、「診断が難しかった症例」「専門医の模擬診察室」「専門医から学ぶ」といった3つのテーマ別に9つの学術講演が、また、呼吸器・腎泌尿器・画像診断・内視鏡5分野の実習が組まれた。参加者限定で大会WEBサイトより企業プログラムの講習も視聴することができる。
 市民向けプログラムでは、石田卓夫先生、浅見優樹先生、入交眞巳先生、瀬戸口明日香先生、服部 幸先生、江角真梨子先生、小林哲也先生、井上 舞先生、藤井亜希奈先生、藤原亜紀先生、桑原 岳先生らが、それぞれ専門分野について、一般参加者にわかりやすく家庭で役立つよう講演された。また猫グッズを扱う人気ショップが会場内に出店し、行列ができるほどのにぎわいとなっていた。
 CATvocate認定プログラムは、猫の診療に必要な基礎知識を学び、猫の扱いに熟達したスタッフを育成することを目的としており、プログラム後の試験に合格すると、CATvocate:猫の専任従事者として、JSFMに認定される。会場とオンラインで受講ができ、会場では多くの愛玩動物看護師が参加。午後に設けられたティーパーティーの時間には、参加者同士の交流や意見交換が行われていた。
 また会場内ではポスターセッション〈キャットフレンドリー部門〉〈学術部門〉の展示もあり、16日にディスカッションタイムが設けられた。
 2日間(会場・オンライン)の登録者数は、獣医療関係者・一般参加者合わせて合計1,490名。動物病院での診療と、家庭での管理の両面から、猫の健康を考える大会となった。

学術講演の様子

第28回 日本獣医がん学会 開催される

 2023年7月1日(土)と2日(日)、ホテルニューオータニ東京において第28回日本獣医がん学会が開催された。さらに両日の様子は、7月11日(火)~7月31日(月)にわたり、VETSCOPE(http://vetscope.vet/)においてオンライン録画配信された。会場展示17社、ランチョンセミナー協賛2社、講演要旨集広告協力3社、オンライン協力・動画CM協力1社による協賛があり、会場参加者は730名、オンラインのみ登録者は320名、総参加者数は1,050名という盛会となった。
 メインシンポジウム「膵臓の腫瘍」に加え、外科と病理の教育講演、総合教育講演、会場参加型企画「続・仮説演繹法を用いた診断ステップなどの充実したプログラムが今大会でも組まれていた。また、今回から一般口演がアワード表彰対象となり、24演題が基礎研究・臨床研究・症例報告に分けられ、5名による採点評価審査(5項目5点満点の25点を5名合計125点で採点)上位得点の2題が初回のアワード奨励賞となった。多くの学会参加者が見守るなか、認定医授与式の後にアワード表彰式も実施され、今後の学会のさらなる発展を予感させる大会となった。

一般口演アワード授与式(左から石田卓夫会長、臨床研究部門受賞者の井上貴瑛先生、基礎研究部門受賞者の小野山 青於様、中川貴之臨床研究委員会委員長)


学会場の様子


ご挨拶される日本獣医がん学会会長の石田卓夫先生

(一社)日本動物看護職協会「6月28日 動物看護の日」記念イベント 開催される

 2023年6月25日(日)、(一社)日本動物看護職協会は東京・明治記念館にて「ずっと一緒に ずっと元気に 動物看護の日2023 ~人と動物とヘルスケア~」を開催した。本記念イベントは本協会が国家資格「愛玩動物看護師」の誕生を機に愛玩動物看護師法の公布日6月28日を「動物看護の日」と制定したことにちなんで開催されたものである。
 最初に、本協会の会長である横田淳子先生が開会のことばを述べた。続いて、愛玩動物看護師の誕生に大きくかかわった参議院議員の片山さつき氏が国家資格誕生の道のりと今後について熱く語った。
 基調講演では、山﨑恵子先生((一社)アニマル・リテラシー総研)が「人も動物も幸せになる ワン・ウェルフェア(福祉は一つ)」と題して講演を行った。山﨑先生は「古代から動物は人の環境のバロメーターであり、動物が安心していられる場所は、人も安心していられる。動物が逃げようとしている場所は、人にとってもストレスのかかる場所であり、安心できない場所であるといえる。したがって、犬や猫の多頭飼育崩壊や動物虐待がおこっている場所は、人にとっても問題がおこっている場所ともいえる。獣医師と愛玩動物看護師のいる動物病院、人の病院、行政などが一つとなって、人も動物も幸せになれるような体制が必要である。人の医療ではソーシャルワーカーが問題の解決に重要な役割を果たすが、動物の医療では愛玩動物看護師はその役割を担うことができる」とし、愛玩動物看護師が果たす役割が大きいことを説明した。
 その後、「動物看護の日」に合わせて募集された「My Family フォトコンテスト」および「私の動物看護エピソード」の最優秀作品が発表され、表彰式が行われた。
 なお、基調講演と最優秀作品については2023年7月1日(土)~8月31日(木)までJVNA YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@jvna.vnca2022)でオンデマンド配信される予定である。また、同チャンネルでは、本イベントの協賛企業である物産アニマルヘルス(株)、ライオンペット(株)による「デンタルケア&猫の健康ケア」、(株)V and Pによる「シニア健康体操・犬の関節炎」も配信される。

山﨑恵子先生


私の動物看護エピソード最優秀賞 授賞式の様子

第48回獣医神経病学会2023 30周年記念大会 開催される

 2023年6月24日(土)、25日(日)、獣医神経病学会2023が日本大学湘南キャンパス2号館において開催された。今大会は第48回であるとともに30周年記念大会でもあり、新型コロナウイルス感染拡大後、開催中止からオンライン開催を経て、約3年ぶりに会場開催された大会でもある。参加者は会員を中心に約160名、16社の企業協賛があり、当日も11社の企業展示であった。
 2日間とも午前中にTexas A&M UniversityのProfessor Nicholas D. Jefferyが「胸腰部椎間板ヘルニア」をテーマに、1日目は「減圧術のタイミング」、2日目には「ヘルニア後の硬膜切開の効果」について解説された。
 さらに両日とも教育講演、内科系と外科系の一般演題も講演された。COVID-19が5類感染症扱いとなってからの会場開催ということもあり、参加者同士が熱心に意見交換を行って知見を広め深める大会となった。

教育講演と一般演題のプログラムは以下のとおり。
教育講演2題:
「神経超音波Neurosonologyの獣医学領域における可能性」笹岡一慶先生
「犬と猫の認知機能不全症候群」小澤真希子先生
一般演題10題:
「急性進行性の対麻痺/対不全麻痺を発症し、起源不明の髄膜脳脊髄炎と臨床診断した犬6例」左 享祐先生、「食欲不振および疼痛を認めた犬の特発性肥厚性硬膜炎の1例」金城綾二先生、「脊髄歩行を達成できた第11-13胸椎領域に重度脊髄損傷を負った犬1例ーヒト理学療法戦略の獣医療への活用ー」吉川和幸先生、「脳梁離断術を実施した薬剤抵抗性てんかんの犬猫の追跡調査」浅田李佳子先生、「小脳ヘルニアで呼吸停止してから手術した猫の3症例」安部欣博先生、「MRIで手術困難な頭蓋底髄膜腫と診断された犬において放射線治療も実施しなかった場合の予後に関する回顧的調査」田村慎司先生、「グルテン除去食の給餌によって改善を認めた犬の発作性ジスキネジアの1例」松尾芽衣先生、「長期生存しているネコX連鎖筋ジストロフィーの1例ー新規DMD遺伝子バリアントの同定ー」武藤陽信先生、「MRI検査にて脊髄くも膜憩室内の脳脊髄液の流れを評価した犬の1例」野池 聡先生、「小脳虫部背側の髄膜腫に対して脳外科手術前のMR-3D-phase contrast法が有用であった犬の1例」大島綾華先生

獣医神経病学会ホームページ https://shinkei.com/

会場となった日本大学湘南キャンパス2号館

講演の様子

犬と猫の5-ALA研究会 第7回セミナー 開催される

 2023年6月25日(日)、東京・明治安田生命昭和通りビルにて犬と猫の5-ALA研究会第7回セミナーが開催された。今回は講師に金井一享先生(北里大学)を迎え、「犬のぶどう膜炎と5-アミノレブリン酸(ALA)~基礎研究から考える5-ALAの可能性~」と題し、オンラインとオフラインのハイブリット形式にて行われた。本研究会会長の後藤正光先生(菊水小さな動物病院)の開会の挨拶のあと、動画配信の形でセミナーがスタートした。
 講演の構成は、抗炎症作用や抗酸化作用、抗ウイルス作用、抗発がん作用など多くの報告がある5-ALAに対して、ぶどう膜炎における抗炎症効果を検討するため、実際に講演者である金井先生が研究した「5-ALAを用いた抗炎症効果の再現性確認(In vitro試験)」「ラットのぶどう膜炎モデル(EIU)を用いた5-ALA経口投与の抗炎症効果」「EIUモデルを用いた5-ALA/クエン酸第一鉄Na(SFC)経口投与の抗炎症効果とその機序について」「犬前房穿刺モデルを用いた5-ALA経口投与の血液房水関門破綻予防的効果」の各研究方法およびその結果が紹介された。とくに「EIUモデルを用いた5-ALA/SFC経口投与の治療的抗炎症効果」「EIUモデルを用いたドラッグデリバリーシステム(DDS)を応用した5-ALA点眼剤の抗炎症効果」は現在進行中の研究であり、その発表が待たれるところである。
 これまでの研究結果より、5-ALAの経口投与が抗炎症に対し、予防的および治療的に使用できる可能性が考えられるとして、その1つとして免疫介在性疾患と考えられている水晶体起因性ぶどう膜炎(LIU)をその候補に挙げた。水晶体蛋白質の曝露により発症する本疾患は犬の白内障手術のスクリーニング検査では71%に確認されており、白内障のステージがすすむと潜在的な血液房水関門の破綻の発生率が高くなるという点から、血液房水関門破綻予防的効果を期待できる5-ALAが使用できるのではないかとのことであった。
 また、先述の犬前房穿刺モデルの研究結果より、眼内手術の術前および術後に5-ALAを投与することは治療的もしくは補助的療法として有効であるかもしれないと解説された。
 そのあと、会場の参加者およびオンラインセミナー受講者に質疑応答の時間が設けられ、抗酸化作用にかかわる網膜関連への5-ALAの使用に関する質問があがった。本会会長である後藤先生は「サプリメントの成分でこれほどエビデンスのあるものは多くないと考えている。今回のぶどう膜炎も含め、本会の活動により、5-ALAの使用が広がることを期待したい」と述べた。今後、5-ALA含有のサプリメントの台湾での発売も決定しており、日本を越えて海外への活動も視野にある本会の活動が、多くの動物や飼い主にとっての幸せにつながることを期待したい。
なお、本セミナーはVETS TECHにて2023年7月17日(月)~同年8月20日(日)の期間、無料WEBINARとして配信される。また、2023年12月には第8回セミナーが開催予定である。

会場の様子

金井一享先生

後藤正光先生

第106回日本獣医麻酔外科学会学術集会 開催される

 2023年6月16日(金)~18日(日)、大宮ソニックシティ(埼玉県)にて(一社)日本獣医麻酔外科学会主催による2023年度第106回日本獣医麻酔外科学会学術集会が開催された。
 獣医麻酔外科学の最新の知見や技術を学べる本学術集会は、新型コロナウルス感染症への配慮から第100回は中止、第101~104回はオンラインでの開催であったが、前回2022年度第105回の福岡での学術大会からオンライン・対面のハイブリット方式で実施。今大会は、同様の方式での学会開催ながら、一部のプログラムを除き、大幅に対面方式へシフトし展開することとなり、整形外科委員会、軟部組織外科委員会、麻酔疼痛管理委員会の各専門委員会がパネルディスカッション、シンポジウム、教育講演など充実したプログラムを提供した。

 とくに今大会では「男女共同参画に関する」企画として「獣医麻酔外科領域における男女共同参画チームの実現に向けて」と題したパネルディスカッションが、パネリストに福原美千加先生(みかん動物病院)、武内 亮先生(ネオベッツVRセンター)、野村幸世先生(東京大学消化器外科)、柴崎 努先生(日本マイクロソフト)、座長に岩井聡美先生(北里大学)、秋吉秀保先生(大阪公立大学)を迎え、麻酔・手術への意欲が高い獣医師にとって性別に関係なく参加しやすい環境づくりについて意見交換が行われた。女性の就労割合が増加の一途をたどる獣医業界において非常に大切なテーマと本学会はとらえている。
 また今年8月からスタートする「動物麻酔技能認定医制度」についての説明会も実施され、「動物麻酔技能認定医」の認定により日本での動物麻酔疼痛管理分野の発展と安全性向上を目指すとともに、動物の麻酔疼痛管理学に関する広範な知識と技能、実践能力を備えた臨床獣医師の育成を目指す。説明会の様子はWEBでも視聴可能。
 各講演に熱心に耳を傾ける参加者、登壇者と会場の活発な質疑応答などの姿がみられ、対面方式ならではの熱気あふれる3日間となった。

 また、6月17日(土)に実施された本学会の定時総会では、前期に続き秋吉秀保先生が会長として選任された。情報交換会では、秋吉会長自ら「理事会の仲間です」と、副会長、理事、監事、相談役を一人ずつ紹介され「このメンバーとは今日から2年間一緒に日本獣医麻酔外科学会を先頭に立って運営することとなりました」、「これからの2年間、男女が共同で参画できる手術チーム、そして麻酔チームを目指すとともに、若い人もベテランも楽しみながら学術の発展に貢献できる学術団体として運営していきたいと思っております」と意気込みを語った。

 今大会では会場へは715人、オンラインでは378人が集った。また日本獣医内視鏡外科研究会、獣医顎顔面口腔外科研究会も同時開催された。一部の講演は大会Webサイトからオンデマンド配信され視聴可能。見逃し配信は開催後、2週間を予定。
詳細は下記より。
https://www.jsvas.net/ezm/2023-106/index.html

 次回の第107回本学術集会は12月8日(金)~12月10日(日)名古屋コンベンションホールにて開催。これからも本学会が日本の獣医療界に果たす役割がますます期待される。


シンポジウムの様子。各専門委員会からパネルディスカッション、
シンポジウム、教育講演など魅力的なプログラムが提供された


大会長 田中 綾先生(東京農工大学)。今大会ではほとんどのプログラムを対面方式で実施することとした


情報交換会にて。秋吉会長自ら、副会長、理事、監事、相談役の先生方を
壇上へよび、これからの2年間、本学会を牽引する「仲間」を一人ひとり
紹介した

岡山理科大学獣医学部 疫学講座公開セミナー 獣医師の多様な職域を考えるー先輩獣医師に聞くキャリア形成- 開催される

 2023年5月12日(金)、岡山理科大学今治キャンパス(愛媛県今治市)にて「疫学講座公開セミナー 獣医師の多様な職域を考える-先輩獣医師に聞くキャリア形成-」が開催された。本講座は岡山理科大学獣医学部疫学講座のセミナーとして、ロイヤルカナン社の協力のもと、獣医学科の3年生136名(その他希望者を含む)を対象に実施されたものであり、講師として、企業の社員、公務員、臨床獣医師、そして大学教員とそれぞれの職域で現在活躍されている獣医師が参加し、各々の立場から当人だから知り得る情報をもとに講義が行われた。
 司会進行は同大学の深瀬 徹先生、そしてパネルディスカッションのファシリテーターとして太田亟慈先生(犬山動物総合医療センター)を迎え、当日15時から開始となった。
 
 第1部「様々な獣医師の職場の紹介(講演)」では、はじめに「データからみる獣医学部学科学生の就職」と題し、氏家貴秀氏、尾身衛祐氏(ともにロイヤルカナン ジャポン)からは、獣医学生の希望進路や意識調査など就職に関する具体的なデータが、グラフを活用して紹介された。
 次に「製薬企業で働くということ 共立製薬の場合」では、現役の社員である豊田一秀氏(共立製薬(株)営業企画部CA学術課)から、実際の業務内容や職場の環境、自身が転職をした動機やその流れなどが紹介された。
 そして、「国家公務員の仕事 -農林水産省獣医系技術職員を例にして-」では、森口優佳氏(農林水産省動物検疫 神戸支所)から国家公務員を目指したきっかけや農林水産省の採用区分、採用試験の内容および採用実績、実際の公務員獣医師の業務やその魅力について紹介された。
 さらに「私はどうして小動物臨床を希望したか」では、村山果穂先生(JASMINEどうぶつ総合医療センター)が、新卒1年目の立場から、小動物臨床への就職を決めるまでの流れとその決めた理由を具体的に紹介された。
 最後に「小動物臨床の仕事 -個人病院から二次診療施設、大手企業病院まで、私の勤務経験をもとに-」では、中村有加里先生(岡山理科大学獣医学部)から、動物病院の経営スタイルについて、実際に勤められた計5つの動物病院のそれぞれの診療数や1日のスケジュールなど、多様なスタイルの病院の具体的な勤務実態が説明された。
 
 第2部「獣医師のキャリア形成のために(パネルディスカッション)」では、太田亟慈先生をファシリテーターに、第1部の講師の方々が壇上に上がり、キャリア形成に必要だと思われるテーマに沿ってディスカッションが行われた。太田先生のこれまでの経験や考え方などを中心に議論は展開し、その途中では会場から質問を受け付ける機会が設けられた。学生からの「どのような人材が望まれるか」という質問では、挨拶、コミュニケーションスキル、リスクアセスメント、また周りとの調整能力などの回答が返された。
 
 第3部では、将来の仕事に関する個別相談会が開かれ、第1部の講師陣1名ずつに個別の部屋が設けられ、話をききたい講師の部屋を学生が巡るスタイルで行われた。加えて、第1部の講師のほか、地方公務員獣医師としての仕事を稲谷憲一氏(愛媛県農林水産部農業振興局畜産課)、田坂紀博氏(愛媛県保健福祉部健康衛生局薬務衛生課)の話がうかがえる部屋が設けられ、計5部屋が準備された。
 
 取材した印象としては、学生の意識も様々であり、進路は未定だがとりあえず話をきいてみようという学生、野生動物に関する仕事に就くための就職先を知りたい学生、転職によるキャリア形成への影響についてききたい学生など、それぞれの悩みが多様で、非常に興味深いものであった。また、参加者は3年生だけでなく4年生や6年生もおり、学年ごとに悩みの内容も異なると思われた。
 会場の学生に現在の希望進路を挙手にて尋ねる機会があり、印象的には小動物臨床を考えている学生が比較的多いようであった。ただ、セミナー内のデータでは小動物臨床を選ぶ学生は、現在、全体の約40%との説明もあるなど、臨床現場への就職者が減少している事実は否めない。ただ、ポジティブに考えれば獣医師の職域の広さを表すものであるともいえ、単なる取材で参加した弊社にも積極的に声をかけてくれた学生もいた。獣医学生の未来は幅広く、そして明るいものであると感じた次第である。
 そして、岡山理科大学の獣医学科は来春、初の卒業生を輩出することとなる。学生および先生方は注目を浴びていることを感じながら、より高い意識で卒業、そして国家資格取得に向けて準備をすすめているといえる。獣医療の未来をつくるのは、今の学生たちであり、岡山理科大学の学生だけでなく、全国のすべての獣医学生が希望する未来に向かってつきすすんでくれることを願うばかりである。
 

会場の様子

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