小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

こねこ来い来いこねこ塾 開催

 2025年5月25日(日)、東京・虎ノ門グローバルスクエアコンファレンスで、(公社)日本動物病院協会(JAHA)とねこ医学会(JSFM)主催による、「こねこ来い来いこねこ塾」が開催された。
 JSFMが展開しているこねこフレンドリープログラムの活動とあわせて実施される本イベントは、子猫の来院を促進するもので、子猫の成長期に動物病院へ来院するプログラムを提供することで、動物病院への通院に慣れ、受診に対してストレスを抱かない猫を育てることを目的とする。
 プログラム前半は、JSFMからは入交眞巳先生(東京農工大学、JSFM理事)が「こねこの発達行動学~こねこからねこへ~」を、JAHAからは村田香織先生(もみの木動物病院、JAHAこいぬこねこの教育アドバイザー養成講座講師)が「こねこ塾をはじめよう!」をそれぞれ講演し、分娩直後からの子猫の感覚器の発達過程や、自身の愛猫とのエピソードや飼い主家族への提案も交えて、動物病院での受診に対してストレスを抱かない猫をどのように育むかが紹介された。
 後半は実際のこねこ塾の動物病院での実施例について、鈴木香代子氏(久米川みどり動物病院)、堀 奈保子氏(そらいろ動物病院)、鈴木理絵氏(アサヒペットクリニック)から、それぞれの病院での取り込みが紹介された。飼い主家族とのかかわり方、こねこ塾参加への飼い主家族のモチベーションの維持、動物病院の院長・スタッフの理解と連携など、具体的な問題点と打開案が示され、会場は熱心に耳を傾けた。
 会場には約70名、オンライン含め200名を超える参加者が集った。参加者にはレクチャー後に参加後にすぐにこねこ塾が開始できるようにご家族向け説明ツール(紙芝居方式の下敷き+電子データ)が配布された。本プログラムは1年間オンライン配信を継続予定。受講申込者はこねこ塾説明ツールも入手可能。
 詳細はJSFMねこ医学会(https://www.jsfm-catfriendly.com/)まで。


村田香織先生


入交眞巳先生


実際のこねこフレンドリーの動物病院への導入例についての紹介の様子



参加者に配布されるご家族向け説明ツール、紙芝居方式の下敷き。
本プログラムは1年間オンライン配信を継続予定で受講申込者には本ツールも提供される

日本獣医輸血研究会 第12回学術講習会、小動物臨床血液研究会 第61回学術講習会 開催される

 2025年5月18日(日)、日本獣医生命科学大学(東京都・武蔵野市)にて日本獣医輸血研究会 第12回学術講習会、小動物臨床血液研究会 第61回学術講習会が共同開催された。
 日本獣医輸血研究会のプログラムは“JSVTM輸血コーディネーター認定プログラム”として井手香織先生(東京農工大学)の「輸血副反応」および同プログラムとして小野沢栄里先生(麻布大学)の「輸血に関連する院内システム」の講義が行われた。講義終了後は合格者への本認定証の授与式が開かれ、新たなコーディネーターたちが拍手で迎えられた。午後からは三浦篤史先生(ライフメイトグループ 動物救急センター文京)から「小動物の血液透析 体外循環療法における輸血の必要性」、白永伸行先生(シラナガ動物病院)から「「バベシアですね」と一言で片付けられない60分」の講演が行われ、最後に「献血ドナーの集め方&総合討論」が荻野直孝先生(ALL動物病院グループ)座長のもと行われた。
 小動物臨床血液研究会の講演は森下啓太郎先生(北海道大学)の「動画で学ぶ! 骨髄検査の勘どころ 骨髄吸引&コア生検」、井手香織先生(東京農工大学)の「骨髄検査をする? しない? 適応判断の考え方」、高橋 雅先生(鹿児島大学)の「造血器腫瘍のリアル! 診断のカギと治療の最適解」、久末正晴先生(麻布大学)の「非腫瘍性骨髄疾患の診断と治療」が行われた。また下田哲也先生(山陽動物医療センター)を座長に顕微鏡ディスカッションとして「骨髄検査でこんなことが分かった」が行われアドバイザーの呰上大吾先生(東京農工大学)、高橋義明先生(ペットクリニックハレルヤ)、諏訪晃久先生(すわ動物病院)、亘 敏広先生(日本大学)と会場を交え、積極的な意見交換が行われた。
 会場へ集まった獣医師、愛玩動物看護師は熱心にこれらの講義に聞き入り、院内の輸血システムの構築、輸血の際の注意点など、得られたものを日々の臨床へ取り入れようとする姿勢を強く感じられたことが印象的であった。新たなJSVTM認定輸血コーディネーターの臨床現場での活躍が期待される。
 本講習会の対面参加者は約80名であり、次回講習会の詳細は日本獣医輸血研究会のホームページにて発表予定である。
 また6月27日(金)までに視聴権を購入することで、本講習会の内容を2025年5月26日(月)~6月30日(月)までくり返し視聴することができる。

JSVTM認定輸血コーディネーター認定証授与式。内田会長、森下認定委員長と授与式に参加された認定輸血コーディネーターの方々

日本獣医再生医療学会 第20回記念年次大会 開催

 2025年5月10日(土)・11日(日)に、(一社)日本獣医再生医療学会(JSVRM)主催による第20回年次大会がパシフィコ横浜(神奈川県)で開催された。今大会は「原点回帰 再生医療をとおして幸せをとどける」をスローガンに掲げ、2日間にわたり実施された。

 初日は本会理事長で大会長である横山篤司先生(さくら動物病院)による講演「幹細胞治療の反復投与と院内での持続可能な運用について考える~当院の13年の実績から~」からはじまり、「イヌとネコのiPS細胞に関する知見最前線」(鳩谷晋吾先生、大阪公立大学)など多くの講演が行われ、またシンポジウム「臨床現場における間葉系幹細胞(MSC)療法の適切なインフォームド・コンセントを考える」では、鳩谷先生(前出)、宮崎 務先生(ダクタリ動物病院 品川ウエルネスセンター)、福田 威先生(動物再生医療技術研究組合)、平野由夫先生(プリモ動物病院グループ)により、MSC療法を飼い主に提案するタイミングや実施に必要な説明、同意書、飼い主の抱く“再生医療”のイメージと実態の乖離をどうすり合わせていくかなどについて、会場も交え活発な意見交換が展開された。
 2日目は「犬の胸腰部椎間板ヘルニアG1・G2症例におけるステムキュアの有効性と安全性の検討」(平野先生、前出)の講演ではじまり、学術発表会、症例検討会の獣医再生医療分野だけにとどまらず、リハビリテーションでは長坂先生をはじめ幅広い分野の報告が行われた。また、2024年にイグノーベル賞を受賞された武部貴則先生(大阪大学、東京化学大学)による「器官機能再建への展望-オルガノイドと腸呼吸-」、JBVP前会長の石田卓夫先生(赤坂動物病院)による「近未来の動物医療」の講演が実施された。本学会が様々な分野や学会と広く連携を図り、今大会のスローガンである「獣医再生医療をとおして幸せをとどける」の実現への姿勢がうかがえた。
 この他、JSVRM学会誌等編集員会の福田 威先生(前出)から機関誌創刊、JSVRM指針担当・動物再生医療推進協議会届出運営委員会の枝村一弥先生から獣医再生医療に関する指針・届出・認定医制度についての説明があった。本学会による獣医再生医療のますますの牽引が期待される。
 次回年次大会は2026年5月に横浜エリアで開催予定。


開会式にて挨拶する横山篤司先生(本学会理事長)


シンポジウムの様子