小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

第13回 COSDーworkshop 開催される

 2023年2月22日(水)、23日(木・祝)の2日間にわたり、静岡県・下田東急ホテルにて、第13回 COSD(Comparative Ocular Surface Diseases)–workshopが開催された。本セミナーは2014年からはじまった眼表面疾患に特化した学術交流会であり、これまで日本国内では主に北海道・ニセコなどで開催されてきたが、今回約3年振りの開催地として、太平洋が見渡せる伊豆・下田にて行われた。2日間のうち、初日のセミナーを取材したので、その概要を報告する。
 第13回のテーマは「COSDWへの回顧と展望」と題し、これまで計12回にわたって行われた過去のテーマとそのディスカッションの内容をとり上げ、とくに犬猫の量的および質的な涙液の低下について、これまで発表および議論してきたものを振り返るというものであった。
 両日にわたるメインスピーカーは、堀 裕一先生(東邦大学)、David J. Maggs先生(UCデイビス)、齋藤陽彦先生(トライアングル動物眼科診療室)、Brian C. Leonard先生(UCデイビス、リモートによる講演)、Lionel Sebbag先生(ヘブライ大学、リモートによる講演)、岩下紘子先生(トライアングル動物眼科診療室)が務められた。そのほか一般口演、ディスカッションが行われた。
 今回にて本会の幹事がBrian C. Leonard先生、Lionel Sebbag先生、岩下紘子先生にバトンタッチとなったが、主催者である齋藤陽彦先生は、「約3年振りの開催で、今回は急きょ準備したこともあって関東から近く、それでいて少し非日常が味わえる伊豆という場所を選んだ。また、海外のゲストがリモートでの参加だったため今回はハイブリットでの開催となった。今後国内での開催と海外での開催になると思われるが、国内開催の際には対面でDeepなDiscussionができる機会となることを希望している。」とのこと。今回、日本全国からも先生方が参加され、すべて英語の講演による最新知見に久しぶりの刺激を得られたと思われる。余談であるが、会場近くにある了仙寺は黒船襲来時の開国に深く関係する場所であり、それから150年以上経過した今、海外の先生方と日本の先生方が議論を重ねる風景は感慨深いものであると感じた。

会場の様子

(公社)東京都獣医師会 ワンヘルス講演会を開催

 2023年1月22日(日)、都市センターホテル(東京都)にて、(公社)東京都獣医師会主催によるワンヘルス講演会「福岡県におけるワンヘルスの取組みと期待」が草場治雄先生(〈公社〉福岡県獣医師会 会長)を迎え開催された。

 日本で「ワンヘルス〈One Health〉」という概念を大きく牽引してきた福岡県獣医師会。本講演では「アジアの玄関口」としての歴史、福岡出身の免疫学者で狂犬病ワクチンの開発に大きく貢献された獣医師の梅野信吉先生の話題にもふれる他、2016年の「第2回 世界獣医師会・世界医師会 ワンヘルスに関する国際会議」(福岡県)での「福岡宣言」の発布や昨年(2022年)7月に「FAVA One Health Fukuoka Office」が設立されたこと、同年11月の「第21回アジア獣医師会連合(FAVA)福岡大会」では大会最終日に「アジアワンヘルス福岡宣言2022」が採択されたことなど、活動内容を紹介された。
さらに「〈アジアワンヘルス福岡宣言2022〉では、1.人と動物の共通感染症の予防とまん延防止、2.薬剤耐性菌への対策のさらなる推進、3.生物多様性の維持や地球規模の保護、4.獣医学教育の更なる整備と国際連携、5.医療機関や行政、市民団体、大学、国際機構等との連携によるワンヘルスの推進、6.ワンヘルス研究や教育のためFAVA活動の拠点と整備の強化が謳われた」と宣言の内容も紹介され、会場は「ワンヘルス」という概念への理解を深めた。

 福岡県ではワンヘルス条例の施行により、「保険環境研究所」と「動物保健衛生所(仮称)」が相互に連携した「ワンヘルスセンター」がみやま市に整備され、愛玩動物、野生動物、産業動物などを一元的に対応している。

 講演後の質疑応答では、「今後〈ワンヘルス〉を学問として確立していくうえで、大学教育へ如何に取り込んでいけばよいか」などネクストアクションにむけての具体的な質問が寄せられ、草場先生が一つひとつ丁寧に誠実に答えられていく姿が、印象的であった。


草場治雄先生(〈公社〉福岡県獣医師会 会長)。
ワンヘルスの概念を広めるため、今後は教育活動が重要という


上野弘道先生(〈公社〉東京都獣医師会 会長)。
馬医からはじまり産業動物・小動物の獣医師というように
時代のニーズとともに獣医師の役割も変化してきました。
「ワンヘルス」という概念も念頭に務めることも、
新しい獣医師のあり方と考えられるという

(公社)東京都獣医師会 災害時獣医療支援チーム「東京VMAT」を立ち上げる

 1月22日(日)、都市センターホテル(東京都)にて、「東京VMAT」立ち上げに伴い任命式が開催された。
VMAT(Veterinary Medical Assistance Team;災害時獣医療支援チーム)は、災害時に被災地における獣医療支援などを行うために、専門的な教育をうけた獣医師を主体とした獣医療チームである。主な活動内容は、被災地の調査、被災地における連絡体制の確立、現地動物病院の業務再開に向けた支援、情報の収集と共有、災害救助犬の治療などを行う。

 日本では2011年の東日本大震災の経験をふまえ、2012年に日本ではじめて、福岡県獣医師会が「福岡VMAT」を組織。その後、複数の地方獣医師会がVMATを結成している。
 この度、(公社)東京都獣医師会(以下、本会)は2023年1月22日にVMATを組織し、「東京VMAT」の第一期隊員として18人を任命した。今後は都内で災害が発生した場合、被災地域支部からの要請および本会危機管理室長(災害対策本部設置時には災害対策本部長)の判断により、活動可能な東京VMAT隊員のなかから派遣隊を組織し必要な活動を行うこととなる。また、東京都以外の道府県の災害発生時は、当該地方会および(公社)日本獣医師会からの要請により、本会の危機管理室長の判断にて同様の活動を行うことができる。

 「東京VMAT」は本会の危機管理室が定めるVMAT研修プログラムの修了者により構成される。このプログラムは、本会会員または会員が開設する動物診療施設勤務者などが受講できるが、当面の間は会員獣医師に限られる。研修プログラム修了者には「東京VMAT隊員証」が授与され隊員名簿に登録される。所定の研修を修了した者に「東京VMAT隊員証」を授与され隊員名簿に登録される。

 「災害時は自助、共助、公助、そして互助の精神が大切です。お互いに助け合わなければ。」と上野会長。万が一の災害発生に備え、獣医師会全体として日頃からの協力体制づくりが重要であることを再認識する任命式であった。


上野弘道先生(危機管理室長/(公社)東京都獣医師会 会長)。
「互助」の精神が大切であると語る


藤本順介先生(危機管理室情報統括/東京都獣医師会 武蔵野三鷹支部)。
本会の災害対応の特徴や東京都の被災想定など、東京VMATをとりまく
最新の状況を解説された


任命式の様子。所定の研修を修了した有資格者には
「東京VMAT任命書」が授与され、東京VMAT隊員名簿に登録される


任命式にて。「東京VMAT」第一期隊員の方々とブロック長の羽太真由美(町田支部)、伊東秀行(葛飾支部)。
第一期隊員は、安部浩之(城北支部)、石森斉子(江東支部)、磯 洋一(足立支部)、入交眞巳(動物薬事支部)、植松一良(多摩西支部)、河合博明(八王子支部)、木村章子(多摩西支部)、木村譲(多摩東支部)、斎藤朋子(八王子支部)、斉藤勝之(新宿支部)、清野光司(多摩西支部)、髙橋恒彦(新宿支部)、谷川久仁(中野支部)、中川清志(北多摩支部)、中島 豪(多摩東支部)、名川一史(練馬支部)、藤本順介(武蔵野三鷹支部)、安田辰巳(江戸川支部)※敬称略