小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

(一社)日本獣医再生医療学会主催 第1回細胞培養技術セミナー 開催

 2024年1月19日(金)、(一社)日本獣医再生医療学会(The Japanese Society for Veterinary Regenerative Medicine::JSVRM)主催による「第1回 細胞培養技術セミナー」がアズワン(株)殿町ソリューションリサーチラボ(神奈川県)にて開催された。

 セミナーは、犬脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いて、細胞培養指導士を講師として迎え実施。午前中は細胞解凍、細胞数計測、細胞数調製や細胞継代・播種のデモンストレーションを、午後は前出の内容の実習が行われた。朝9:30~夕方17:00まで受講生達は講師の下で細胞を正しく観察し、正しく培養し、正しく細胞数を計測できているか、また必要な試薬・培地の準備、器具の扱い方などを実践的に学んだ。また、講師に直接質問し、細胞培養技術を見直し、日頃の疑問点を解消していった。受講終了後は、本学会主催の細胞培養技術セミナーの受講を終え、細胞培養に関する確かな技術と理論を習得した証として「修了証書」が授与された。
将来的には年に2回実施を目指していきたいと本学会常務理事の上田忠佳先生はいう。

 2025年には区切りとなる日本獣医再生医療学会第20回記念大会が開催される本学会。再生医療に欠かすことのできない細胞培養技術の向上を牽引する存在として、ますますの期待が寄せられる。
 本学会の詳細は下記より。
 https://www.jsvrm.org/


セミナーの様子。受講者は講師の先生方から日頃のくせを指摘されたり、日々の疑問を質問したりと、熱意溢れるやりとりが続いた


第1回細胞培養技術講習会を修了された4名の先生方と、本講習会の講師を務められた細胞培養指導士の先生方

CAICM 内閣感染症危機管理統括庁 主催シンポジウム

 2024年1月12日(金)CAICM(内閣官房内閣感染症危機管理統括庁)主催によるシンポジウムが、東京、千代田区の東京国際フォーラムで開催された。テーマは「新たな感染症危機にいかに備えるか~国民の生命・健康と生活・経済の両立を目指して」。
 冒頭の、岸田文雄内閣総理大臣のビデオメッセージにはじまり、主催者である新藤義孝氏(感染症危機管理担当大臣)による挨拶、続いて齋藤智也先生(国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター長)による基調講演が行われた。基調講演で登壇した齋藤先生は「パンデミックと行動計画」をテーマに、パンデミックの歴史や感染症における危機管理のサイクル、発災前の予防・早期探知の重要性、発災後のフェーズごとの対応、ガイドラインや特別措置法などの法的整備などを紹介。次のパンデミック、発災に備え「平時も有事も読んでもらえる行動計画をたて、その計画を常に読んでもらえる」ようにすることの重要性を訴えた。

 後半のパネルディスカッションは、モデレーターに稲継裕昭先生(早稲田大学 政治経済学術院)を迎え、10名の有識者をパネリストとして招き実施。昨年2023年9月1日に発足した「内閣感染症危機管理統括庁(Cabinet Agency for Infectious Disease Crisis Management :CAICM)」についての紹介が行われた。本庁は感染症危機管理のいわゆる「扇の要」にあたる組織であり、パンデミックをおこす感染症や薬剤耐性(AMR)感染症の対応においても中心となって指揮をとるとのこと。また想定される有事と平時の行動計画や感染症危機管理対応訓練の全体像なども解説された。厚生労働省からは、本省の改組、感染症法の改正や“国立健康危機管理研究機構”いわゆる日本版CDCの新設などについて紹介された。また、2019年からのコロナ禍での大学教育、医療、企業活動の様子や、情報の慎重な取り扱い、都市部と地方との双方向のフラットなネットワークづくりの必要性などについて多角的な意見が述べられた。

 令和6年能登半島地震の発災から間もない開催となった本シンポジウム。会場参加者は78名、オンライン視聴者は427名にのぼり、今後CAICMが担う役割の重要性を改めて認識させられるシンポジウムとなった。

CAICM(内閣感染症危機管理統括庁)に関する詳細は以下より。
https://www.cas.go.jp/jp/caicm/index.html


パネルディスカッションの様子。モデレーターに稲継裕昭先生(早稲田大学 政治経済学術院)を迎え、大曲貴夫先生(国立国際医療研究センター国際感染症センター)、工藤成生氏((一社)日本経済団体連合会、危機管理・社会基盤強化委員会)、佐々木昌弘氏(厚生労働省 健康・生活衛生局感染症対策部)、佐藤好美氏(産経新聞社論説委員)、鷲見 学氏(内閣官房内閣感染症危機管理統括庁)、瀬戸泰之(東京大学医学系研究科)、奈良由美子先生(放送大学教育学部)、平井伸治氏(鳥取県知事、全国知事会新型コロナウイルス緊急対策本部長)、福島靖正氏(国立保健医療科学院※前厚生労働省医務技監)、村上陽子氏(日本労働組合総連合会)の10名の有識者をパネリストとして招き実施


内閣総理大臣 岸田文雄氏。「令和6年能登半島地震において本庁の果たす役割は大きい。コロナ禍での経験をふまえ新たな行動計画に生かし感染症への備えを万全にし、皆が安心して豊かな暮らしを送れるように」と会場へメッセージを送った


感染症危機管理担当大臣 新藤義孝氏。1月1日に発生した令和6年能登半島地震にふれ哀悼の意を示すとともに本庁が大いに貢献し、復旧・復興・被災者支援に向け力を尽くすことを改めて明言


斎藤智也先生。発災に備え「平時も有事も読んでもらえる行動計画をたて、その計画を常に読んでもらえる」ようにすることの重要性を訴えた

(一社)ペットエンバーミングラボ 認定試験 開催

 2023年12月9日(土)10日(日)、東京・日本獣医生命科学大学で(一社)ペットエンバーミングラボ主催による認定試験が実施された。
 本ラボは、ペットのエンバーミング(遺体保全)事業の実施とエンバーミングを行う組織で形成される。
 愛犬・愛猫に対しても、人同様に丁寧な葬儀を行う飼い主が増加傾向にあるなか、安全な環境で安心してお別れできるよう、本ラボでは、獣医療の視点も併せもち、適切な対応ができるようにするための「獣医解剖学」「法医学」「獣医疫学」の視点からの教育も重視する。40年以上獣医大学で教育研究活動、解剖学の教鞭をとってきた尼﨑 肇先生(日本獣医生命科学大学名誉教授、本協会代表理事)の指導のもと、本組織はスタートした。

 試験に先立って実施された2日間の講義は「遺体の死後変化」「遺体の腐敗」「遺体保全の施術における細菌、真菌、ウイルス、寄生虫」や「筋肉や骨格、消化器系・呼吸器系、泌尿器系、循環器・神経系の特徴」も網羅し実施。実習では実際のエンバーマーによる施術を見学しながら体の構造、留意すべき感染症、使用する薬剤の安全性、消毒・殺菌・滅菌や、情緒的な精神状態に陥っている飼い主からの的確な情報聴取の方法なども学んでいった。

 ペットエンバーミングの長所について尼﨑先生は「ご遺体の安全な保全を可能にすること。たとえば突然の交通事故でご遺体に損傷があった場合も限りなく生前に近づけることで、飼い主遺族の悲しみを幾ばくかでも和らげることができる」「感染症の予防にも大変有効である。エンバーミングの施術により遺体の腐敗に伴って発生する感染症や人獣共通感染症を防ぐ効果も期待される」という。さらに「胸腔・腹腔内へ注入する保全液によっては、10日を超える保存にも安全に対応でき、これまでは時間的にやむを得ない事情で直接お別れができなかった飼い主遺族がしっかりとお別れの時間をもつことが可能となった」と葬儀までの安全・安心な時間を技術的に提供できるようになったという。

 エンゼルケアの延長線上にあるともいえる本技術は、コフィン(お棺)に納めるまでの飼い主への配慮まで考えると、動物病院で看護に携わるスタッフの役割をこれまで以上に広げると考えられる。本協会、そして本協会の認定を受けるペットエンバーマーは、今後ますますの活躍が期待される。


代表理事の尼﨑 肇先生。日本獣医生命科学大学名誉教授であり、動物の生態学、解剖学、感染症学に精通し、警察機関の依頼により多くの動物の検死にも携わる


本ラボの発起人の一人である丸木純子氏((株)Le-Ciel)。人でのエンゼルケアやエンバーミングとかかわるなか、ペットにも同様のお別れの必要を実感。すぐに火葬してしまうだけでは気持ちがついていけない飼い主遺族のため本協会で尽力する


認定試験に合格した4名。今後はペットエンバーマーとして
安全・安心なお別れまでの時間を飼い主ご遺族へ提供していく