小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

(一社)全国動物専門学校協会 教職員研修会 開催

 2024年8月8日(木)「トリマー教員研修会」が(学)中央工学校 中央動物専門学校(東京・北区)、9日(金)「動物看護教員研修会」が(学)シモゾノ学園 国際動物専門学校(東京・世田谷区)で(一社)全国動物専門学校協会により実施された。
 トリマー教員研修会は「加盟校のトリマー教員の皆さんによるお悩み解決座談会」をテーマに、前半はグループに分かれ、教員の指導力向上、本協会の検定対策や大会入賞のための指導等について座談会形式で情報共有をし改善・解決についてディスカッションした。後半に各グループでディスカッションの内容を発表。学生指導において技術的な到達度に開きが生じた際の工夫、地域ごとの特色、生徒の就職先を視野にいれた指導などが紹介された。他校の状況を共有することで、明日からの授業の質の向上へとつなげていくべく、会場は熱心に耳を傾け、また加盟校教員間の横のつながりを深めた。

 翌日の動物看護教員研修会では、前半の小田民美先生(日本獣医生命科学大学)による「動物内科看護学実習の指導について」として、内科実習の項目のなかで、現場で多くの動物看護師が担当する採血、皮下注射を、シミュレーション教材を用いて実施。参加者たち自身でシミュレーション教材を作成し、2人組で互いに保定者と採血者を担い実習をすすめた。後半は佐伯 潤先生(帝京科学大学)による講演「適正飼養指導論・動物生活環境学・ペット関連産業概論」。愛玩動物看護師の国家資格は、獣医師と異なり、農林水産省および環境省の両省庁から免許をうける国家資格であること、今後の愛玩動物看護師には小動物臨床だけでなくより幅広い活動領域があることを指摘。講演を通して愛玩動物看護師の将来的な活動について大きな気づきを得られる講演となった。

 来年の協会設立20周年に向けて、トリマー・愛玩動物看護師の技術基準の構築・向上を目指す本協会の活動に、ますます期待が高まる。
本協会の詳細は下記URLより。
http://www.zendousen.jp/


トリマー教育研修会の前に実施された、本協会のトリミング検定員資格認定研修会の様子。認定研修会では技術力を図るうえで評価基準が明確な「ラムクリップ」で実施


トリマー教員研修会の様子。グループごとにファシリテーターを決め話し合いをすすめる。左利きの生徒への対応、生徒の精神面のサポート、モデル犬の確保や引退時期など話題は多岐にわたった


動物看護教員研修会の様子。午前中は小田先生(前出)の指導のもと、お手製のシミュレーション教材を用いて採血、皮下注射を実習


動物看護教員研修会で行われた、佐伯先生(前出)の「適正飼養指導論・
動物生活環境学・ペット関連産業概論」の講演の様子


協会副会長の山田敏雄先生の挨拶


愛玩動物看護委員長の下薗惠子先生の挨拶

第21回 日本動物リハビリテーション学会学術大会 開催

 2024年8月4日(日)、日本獣医生命科学大学(東京・武蔵野市)で、第21回日本動物リハビリテーション学会学術大会が開催され、獣医師、愛玩動物看護師、理学療法士等が集った。また本大会で同時開催された総会にて、会長の交代や新たな理事の加入など新体制となり、新会長に柄本浩一先生(えのもと動物病院)が着任された。
教育講演では、「愛玩動物看護師法から考えるリハビリチーム獣医療」の演題で宮田拓馬先生(日本獣医生命科学大学 獣医保健看護学臨床部門)が登壇し、国家資格化され、今後は毎年3,000人ちかく誕生するといわれる愛玩動物看護師の職域・役割について事例を取り上げ紹介された。続く「獣医師が医療行為として行うチーム医療の動物のリハビリテーション」では、小林孝之先生(前会長、アニマルクリニックこばやし 院長)とともに、獣医師・愛玩動物看護師・理学療法士の立場から、獣医師の大山隆司先生(同左)、愛玩動物看護師の久保田莉奈氏(同左)、理学療法士の堀切朱加氏(同左)が、それぞれの役割や課題について、入院および外来でのリハビリテーションについて症例を交え具体的に紹介。情報の共有、リハビリの評価や、リハビリの終了目標設定について紹介した。

 午後は昨年に続き今大会でも「症例相談会」が実施され、「両側膝蓋骨内方脱臼」森 由季子氏(アニマルクリニックこばやし、理学療法士)、「足関節過伸展症候群疑い」川村和美氏(帝京科学大学 愛玩動物看護師)、「脊髄障害 疑い」神沢優希氏(久米川みどり動物病院、愛玩動物看護師)、そして「重症の頚部脊髄症の犬の3例」植村隆司先生(KyotoAR動物高度医療センター 獣医師)が、日々の診療で発生した疑問への解決を求め、それに対し本学会の理事の他、会場の参加者からも様々なアドバイスやディスカッションが行われた。新会長の柄本先生がスライドを用いた詳細な解説も行い、必要なのは機能改善を目的としたリハビリテーションか、介護を目的としたリハビリテーションかの見極めも大切と説明された場面もあった。相談者も、会場の参加者も理解を深めることができたのではないだろうか。

 また、北海道大学大学院保健学科学研究院リハビリテーション科学分野 教授である遠山晴一先生を迎え特別講演が開催された。同大学のスポーツトレーニングセンターのセンター長の経験をまじえ、“人におけるリハビリテーション医療の考え方と実際”、“変形性膝関節症に対するリハビリテーション”、“膝前十字靱帯損傷に対するリハビリテーション医療と私たちが行った動物を用いた研究知見”をテーマに、ヒトでのリハビリテーション医療の流れ、目標設定や医師・リハビリテーションスタッフ・看護師・患者本人・家族とのリハビリテーションカンファレンスの内容を紹介し、総合的な実施計画書の作成や、“変形性膝関節症”のリハビリテーション医療、膝前十字靱帯損傷に対して行われる「前十字靱帯再建術」の自家腱移植に関する研究知見を実際の世界的に活躍するスポーツ選手での実例も交え紹介。会場は熱心に耳を傾けた。

 「リハビリテーションが関わる疾患は、専門性を持った獣医師が局所療法として治療を適切に行なわなければならないが、リハビリテーションは、局所だけでなく全身と飼主や環境を同時に診ていかなければならない」「少しずつ学会としてエビデンスをつくっていったり、色々な学術的なことが説明できるようにしていくよう、前会長で現顧問となられた小林先生のお力添えもいただきながら、務めていきたい」と柄本新会長。
 獣医療におけるリハビリテーションを牽引する学会として、ますます期待が寄せられる。

 なお今学術大会は8月30日~9月30日の間、学会会員限定で申込者対象にオンライン配信される。
詳細は下記ホームページを参照。
https://www.jaapr.jp/


本学会の新会長となった柄本浩一先生


遠山晴一先生による特別講演「人におけるリハビリテーション医療と予防
スポーツ障害・運動器疾患を中心に」の会場の様子。座長は柄本会長が務めた


特別講演中の遠山晴一先生


教育講演では、“リハビリチーム獣医療”、“チーム医療”というそれぞれの
専門性を生かした実例が紹介された


昨年に続き「症例相談会」が実施され、会場は熱気に溢れた

全国専修学校動物系教育協会 グルーマー(トリマー)教師向け研修会 開催

 2024年8月5日(月)大宮国際動物専門学校(埼玉県)で、全国専修学校動物系教育協会主催による「グルーマー(トリマー)教師向け研修会」が開催された。
 講師には川口涼太先生(トリミングサロンワンきゅう オーナー)を迎え、「ドッグサロンで人気の『テディーベアカット』の顔の作り方」の講義を行った。前半は顔ウィッグを使用し、後半は生体(トイプードル)を用いて実演を行った。
 本研修会は対面とオンラインのハイブリットで行われた。本研修には会場とオンラインの参加者からの質疑応答の他、事前に多くの質問が協会に寄せられた。内容は、立体的なマズルのつくり方や目の周囲のカット、トップスやリップラインのつくり方や耳の角のとり方など技術的な質問から、サロンでは1時間で何頭くらいの犬のグルーミングを行っているか、料金体系など多岐にわたり、それらに川口先生が一つひとつ丁寧に、ときに実演を交えて質問者が納得するまでしっかりと回答されていった。午後1時~4時まで実施された本研修会で参加者たちが会得した技術や知識が、今後の学生への指導へと活かされていく。
本協会では「トリマー」「トリミング」ではなくあえてグローバルな社会で通用するように「グルーマー」「グルーミング」の名称を用いていくと、本協会会長の山﨑 薫先生。今後は訪問看護や在宅ケアへと活躍の場が広がっていくと考え、本協会はグルーマーの公的資格化を目指していく。
 次回本研修会は、2025年3月にヤマザキ動物専門学校(東京・渋谷区)での開催となる。
 本協会の詳細は下記より。
 https://www.javsae.jp/


テディーベアカットの実演中の様子。会場とオンラインの参加者および事前に寄せられた質問に、川口先生が実演を交え、質問者が納得するまでしっかり説明


本協会業務執行理事の下薗惠子先生。今回の研修で学び得た技術や知識を、明日からの授業に役立ててもらいたいと開会挨拶


本協会会長を務める 山﨑 薫先生。本協会では世界で多く用いられている「グルーマー」「グルーミング」の名称を用いると紹介

どうぶつトランスレーショナルリサーチセンター 開設される

 2024年8月、日本の獣医療の腫瘍分野をリードする日本小動物医療センター附属日本小動物がんセンター(埼玉県・所沢市)に、新たにどうぶつトランスレーショナルリサーチセンター(Integrative Center for Animal Translational Research、iCAT)が開設した。本センター長に水野拓也先生が就任、最先端の免疫治療研究施設が2次診療施設と密接に連携することで、臨床データの収集およびその研究成果がスピード感をもって治療現場に届く橋渡しの役目を担う。設備も獣医大学の施設とほぼ同等の研究が可能であり、研究者の養成や大学院生の受け入れなども支援するとのこと。先に行われた内覧会には、大学教員を含む多くの獣医療関係者が足を運んだ。2024年8月7日(水)から業務開始。
 

施設の外観


施設内の様子


施設内の様子

 

WJVF第15回大会 開催される

 2024年7月27日(土)~28日(日)、ホテルニューオータニ大阪にて、WJVF第15回大会が対面で開催された。今回のテーマは「新たなる挑戦~さらなる飛躍~」。獣医療従事者自らが学び・挑戦し、そして成長し続ければ、それだけ救える命・幸せになる家族が増えることにつながるというメッセージを込めているとのことである。
 WJVF会長の竹村直行先生は、開会の挨拶のなかで、「動物と暮らす人々の気持ちがわかるような獣医療従事者を増やす必要があります。また、動物に対する治療および診察は血の通っている温かみのあるものでなければなりません。これらの目的を達成するのに講演・実習を活用してください」と述べた。
 獣医師対象の講演は、「なんだか高い肝酵素シンポジウム」「救急ストリーム-その命を救うために-」「目指せ!スーパージェネラリスト」の他、呼吸器病学、眼科学、歯科学、腫瘍学、外科学など様々であり、講演によっては立ち見が出るほどであった。
愛玩動物看護師・アニマルケアスタッフ(ACS)・トリマー対象の講演は「疾患を学ぶシリーズ」「ご家族に話せるように」などであった。
本年は少人数の実習も充実し、いずれも募集と同時に枠が埋まるほど人気であった。
また28日(日)には(公社)日本動物病院協会(JAHA)との共催で市民公開講座「人とどうぶつの絆」も開催された。
 そして両日とも展示会場にて「スイーツタイム」が設けられ、展示会場は大いに賑わいをみせた。
 参加者数は1,470名で、昨年の大会より着実に参加者が増えている状況である。
 WJVF第16回大会は、2025年7月26日(土)~27日(日)、ホテルニューオータニ大阪にて開催予定。

開会式であいさつする竹村会長