小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

(公財)日本ヘルスケア協会「ペットパスポートプロジェクト」、中野区から始動

 2024年11月21日(木)東京・中野区役所にて、中野区地域支え合い推進部 地域包括ケア推進課と(公財)日本ヘルスケア協会(JAHI)の共催で実施された“第2回中野どまんなか市”にてJAHIの“人とペットとの共生によるワンヘルス部会”副部会長の熱田 靖氏による、「ペットと暮らす明るい未来~ペットと暮らすことによる効果とペットパスポートプロジェクトについて~」のセミナーが実施された。

 本セミナーでは、ペットと暮らすことによる効果の事例を、高齢者介護施設でのアニマルセラピー活動を例に、幸せホルモンの「オキシトシン」やストレスホルモン「コルチゾール」について動物と接しているときと接していないときの変化の数値を紹介。また顔感情認識機能ソフトを活用し、アニマルセラピーの介入前・介入中・介入後に分けて「高齢者笑顔測定」も実施するなど、客観的な数値を示すことで、ペットと暮らすことにより、健康寿命によい効果が得られることが解説された。これらの効果をふまえ「ペットパスポートプロジェクト」の重要性が訴えられた。
 本プロジェクトでは、家族であるペットを飼い主が責任をもって育み、動物が苦手な人も含め共に社会参加することを推進し、ペットと人がどこにでも一緒に行ける社会を構築することで、人・ペット・環境のヘルスケア(健康)を向上させ、長期的には人とペットの真の共生社会を実現することを目的とする。
 具体的な課題としては、「一緒に飲食店に入れない」、「ペット連れでは公共交通機関の利用に制限がある」という状況を、欧米諸国のように飼い主がペットとともに様々な場所へ出かけられるようにすることにある。欧米では飛行機内・空港内の犬用トイレが当たり前のように設置されており、ドラックストアやスーパーへも愛犬と入店でき、飼い主家族にとっては理想的な状況である。日本でもこうした環境を実現するには、まず社会に受け入れられるように、犬も飼い主ご家族も準備をしておくことが重要であり、そのために本プロジェクトではペットが各種施設に入るためのペットパスポート制度の構築を目指している。
 制度確立のため、しつけの基準を満たし医療確認を受けた犬の飼い主にペットパスポートを発行し、パスポートをもって加盟飲食店・加盟施設への入場ができるようにするしくみを構想している。
 その第一歩を中野区で取り組むこととなった。この取り組みは、欧米のような愛犬との生活を確立するだけでなく、災害発災時のスムーズな同行避難、そして同伴避難への地域の理解も育むと見込まれる。
 中野区と本協会の今後の取り組みに期待が寄せられる。

本協会の詳細は下記から閲覧可
https://jahi.jp/


開会式の様子。中野区の地域支え合い推進部長であり地域包括ケア推進担当部長の石井大輔氏は、今年2024年の第2回より(公財)日本ヘルスケア協会との共催になった中野どまんなか市を紹介。本イベントを通して「ペットパスポートプロジェクト」へのサポートへも尽力される。(公財)日本ヘルスケア協会(JAHI)会長 今西信幸氏。JAHIは超高齢化社会における健康寿命延伸とヘルスケア産業育成の実現を目指す。健康寿命の概念、ヘルスケアとは具体的に何をするか、わかり易く解説


「ペットと暮らす明るい未来~ペットと暮らすことによる効果とペットパスポートプロジェクトについて~」セミナー講演中の熱田氏。ペットが人にもたらす効果、飼い主家族と社会での安心した行動が期待される「ペットパスポートプロジェクト」の推進について、実現までのフローを交え、中野区民が集う会場へ理解と協力を呼びかけた

(一社)日本動物看護職協会 主催 第14回動物看護大会 開催

 2024年11月24日(日)日本獣医生命科学大学E棟(東京都・武蔵野市)で、(一社)日本動物看護職協会(JVNA、会長 横田淳子氏)主催による、第14回動物看護大会が開催された。

 2019年6月に愛玩動物看護師法が施行され、2023年には国家資格を有した愛玩動物看護師が誕生し、現在の愛玩動物看護師の登録者数は2万1,734名(2024年10月1日現在)を数える。今後は国家資格取得後に、資格を活かして動物の医療や動物との共生社会に貢献していくとの考えのもと、今大会は「目指せ! 動物看護エキスパート!」をテーマに展開。シンポジウムは「訪問動物看護を考える」、実習は「静脈留置編」を実施。専門性の高い愛玩動物看護師に着目し腫瘍科での経験者の講演も実施された。また、動物との共生社会への貢献の観点から、災害時の地域福祉に関するセミナーも実施された。口頭発表では9演題が発表され、「重積発作を呈した犬に対する動物看護介入の一例」(谷口有果氏、ALL 動物病院行徳)がヒルズアワードを、「犬の年齢と歯周病の進行に関する調査報告」(中島佳代子氏、とがさき動物病院)がJVNA優秀賞を受賞した。

 本協会は、来年度より愛玩動物看護師の職能団体となり名称も新たに「日本愛玩動物看護師会」となる。
 日本における愛玩動物看護師の活躍を牽引する団体として、益々の発展が期待される。

本大会のアーカイブWEB配信は2024年12月1日(日)~2025年1月21日(火)まで視聴可能。詳細は下記URLを参照。
https://www.jvna.or.jp/


開会式の様子


本協会会長 横田淳子氏。「国家資格を有することは、すなわち社会責任が発生するということ」と語った。今後見込まれる重責の支えともなる「日本愛玩動物看護師会」への所属を参加者に呼びかけた



会場には、長きにわたり愛玩動物看護師を支え続けている片山さつき参議院議員、愛玩動物看護師制度の主務省の1つである環境省の中田 宏環境副大臣がお祝いにかけつけた


愛玩動物看護師実習セミナー「静脈留置編」の様子


口頭発表の様子


口頭発表を審査した近江俊徳先生(日本獣医生命科学大学)。いずれの発表も明日の愛玩動物看護を担う素晴らしい発表であったと総評した


口頭発表者全員との記念撮影