小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

(公社)日本動物病院協会(JAHA)年次大会2023 開催

 人と動物の共生社会の実現に向けて「人と動物の絆(HAB:ヒューマン・アニマル・ボンド)」の理念の下、動物病院を核として地域への社会活動を推進するJAHAにより、2023年7月22日(土)~23日(日)、AP東京八重洲(東京都)にて「JAHA年次大会2023」が開催された。
 今年度から新会長を務める宗像俊太郎先生(あさか台どうぶつ医療センター)は「今大会も無事に対面で開催することができました。この大会は様々なかたちでJAHAの活動に携わる人たちが、一堂に集える場を提供しております。日頃の人と動物の絆に基づくJAHAの様々な社会貢献活動、スタッフが生き生きと活動できる環境づくりや取り組みを体感していただきたい」と述べた。

 本大会は「獣医師プログラム」「愛玩動物看護師プログラム」「CAPP/市民プログラム」「動物病院スタッフ向けプログラム」「ホスピタルプログラム」の5つのプログラムにわけて実施。
「獣医師プログラム」では、アドバイザーの石田卓夫先生(赤坂動物病院)、賀川由美子先生(ノースラボ)、秋吉秀保先生(大阪公立大学)を前に、登壇者が症例発表を行い、症例に対する質疑応答のみならず発表の構成の評価等まで行われた。続いて、前出の石田先生による「症例発表スキルアップセミナー」では、プレゼン資料の作成、作成までの有効な時間の使い方、また発表時の視線の位置など内容は詳細に及び、参加者たちはこれからの論文投稿や症例発表への具体的な取り組みを学んだ。また「愛玩動物看護師プログラム」では、今春、国家資格を取得した愛玩動物看護師が誕生するなか、さらなる活躍を視野に入れた講義が展開された。
 「CAPP/市民プログラム」は、本活動を勤めあげた犬たちをしのぶスライドショー、貢献されてきたボランティアの方々への表彰式も実施された。また今年も、コロナ禍で活動を各施設への訪問を自粛せざるをえなかったなかで誕生した「ドッグダンス~花が咲く~」が柴内裕子先生(赤阪動物病院)を講師に披露された。ようやく対面での活動がはじまるなか、CAPP活動には、喫緊の課題があるという。「新型コロナウイルスの影響でこれまで活動を自粛していたため、ボランティアに参加できる犬や猫が減ってしまった。まずは、協力いただける犬や猫の仲間を増やすこと」と宗像会長は述べ、さらに自身も実際にドイツの動物保護施設・ティアハイムに足を運んだことをふまえ、そうした活動や施設の普及も大切と参加者に訴えた。
対面での活動が復活していくなか、宗像新会長による新体制のもと、本協会のますますの発展が期待される。
 本協会の活動詳細は下記より。
https://www.jaha.or.jp/


新会長の宗像先生の挨拶


CAPP/市民プログラム「ドッグダンス~花が咲く~」の終了後に、
CAPPボランティア、ボランティア犬たちとともに


吉田尚子先生(家庭動物診療施設 獣徳会)による「人と動物の関係に関する国際組織(IAHAIO)とJAHAの関わり」の講演の様子


獣医師プログラム。演者は発表後にアドバイザー3名から発表スキルアップにむけ、丁寧な助言を受けた


愛玩動物看護師プログラムの様子

WJVF第14回大会 開催される

 2023年7月8日(土)、9日(日)、ホテルニューオータニ大阪にて、WJVF第14回大会が開催された。新型コロナウイルス蔓延防止の規制の影響で3年ぶりの対面の開催となった。今回のテーマは「Re WJVF 今こそ Back to BASIC」で、臨床現場で必ず押さえておきたい基礎からの学び直しに重きが置かれた。本大会は参加者に会場に来て生で講演を聴いてほしいという主催者の思いがあり、開催後のオンライン配信の実施はなかった。また、抄録・要旨集は今の時代を反映して、ウェブでの閲覧に変わった。
 WJVF会長の竹村直行先生は、開会の挨拶のなかで、新型コロナウイルス蔓延の前後でも変わらず、我々獣医師がやるべきことは動物、飼い主のために最善を尽くすことであり、本大会でたくさんのことを学んでほしいと述べた。
 講演は主要テーマの「初心に帰るシリーズ」のほか、「倒れる高齢犬を診る」、「ステロイドなど免疫抑制剤を使う疾患シリーズ」、「身体診察を見直す」、「軟部外科シリーズ」、「猫の呼吸器疾患シリーズ」なども多岐にわたった。また、少人数で行う顕微鏡実習、外科実習、心肺蘇生実習なども実施された。
 土曜日の夕方に行われた懇親会は無料で、多くの参加者が楽しめたようだ。日曜日にはスタンプラリーのWチャンス抽選会も行われた。
 参加登録者数は1,400名を超え、獣医師のほかにアニマルケアスタッフ、愛玩動物看護師の取得を目指す学生の参加も多かった。
 WJVF第15回大会は、2024年7月26日(金)~28日(日)、ホテルニューオータニ大阪にて開催予定。

開会式の竹村会長

キヤノンユーザーのための画像診断セミナー VET’S SUMMER CAMP 2023 東京 開催される

 2023年7月16日(日)13時から、東京・品川フロントビル会議室にて「キヤノンユーザーのための画像診断セミナー VET’S SUMMER CAMP 2023 東京」が開催された。本セミナーは関東および関東近県のキヤノン装置ユーザーの先生方を対象とした限定セミナーであり、今回は超音波診断をテーマに「newプロトコル!腹部・心臓・救急・運動器のエコー検査」と題し、開催された。
「腹部」では、小野 晋先生((株)スカイベッツ)、「心臓」では竹村直行先生(日本獣医生命科学大学)、「救急」では塗木貴臣先生(TRVA夜間救急動物医療センター)、「運動器」では枝村一弥先生(日本大学)と、日本でも著名な専門家が一堂に会し、各分野における超音波診断の基礎を中心に解説が展開した。
 まず、「腹部」では、小野 晋先生による「肝臓エコーの基本断面と診断のポイント:プロトコルアシスタントの活用」が行われ、とくに肝臓に焦点を当て、超音波検査における基本断面、血管解剖および異常所見について、キヤノン機器に搭載されているプロトコルアシスタントに触れながら解説された。
 つぎに「心臓」では、竹村直行先生による「最低でも知っておきたい心エコー図像と考え方」が行われ、とくに心臓の左房サイズに特化した内容を解説された。左房拡大についてはLA/Aoではなく左房内径のほうを重視すべきであるとし、心エコー図像での左房内径の測定法および評価方法、それに加えて犬におけるX線画像を活用した評価方法について解説された。
休憩をはさみ、「救急」では、塗木貴臣先生による「緊急患者を見逃さない!救急エコーのきほんのき」が行われ、「命を救う」ことを第一とした救急時のエコー検査について、とくに肺エコーの意義と評価方法、そしてFASTの目的と方法についてわかりやすく解説された。
 最後に「運動器」では、枝村一弥先生による「運動器超音波検査の基礎」が行われ、整形外科疾患に対するエコー検査のメリット、各部位における正常所見および異常所見をプロトコルアシスタントの画像を紹介しながらそれぞれ解説された。
 気温が40℃にせまる猛暑のなか、多くの先生方が集まり、各分野における専門家による超音波の解説に熱心に耳を傾けていた。各講演後には質疑応答も行われ、オフラインならではの活発な意見交換が行われた。会場後方には、プロトコルアシスタントを搭載した機器などが並び、その機器についても熱心に質問をする参加者の姿が印象的であった。

会場の様子

第10回 猫の集会 開催される

 JSFM(Japanese Society of Feline Medicine、ねこ医学会)主催「猫の集会」が、2023年7月15日(土)、16日(日)、東京コンベンションホール(東京都中央区)にて開催された。第10回の節目を迎え、今回はじめての2日間開催となる。両日で獣医師向けプログラム・市民向けプログラムが行われ、16日にはCATvocate認定プログラムも行われた。
 獣医師向けプログラムでは、「診断が難しかった症例」「専門医の模擬診察室」「専門医から学ぶ」といった3つのテーマ別に9つの学術講演が、また、呼吸器・腎泌尿器・画像診断・内視鏡5分野の実習が組まれた。参加者限定で大会WEBサイトより企業プログラムの講習も視聴することができる。
 市民向けプログラムでは、石田卓夫先生、浅見優樹先生、入交眞巳先生、瀬戸口明日香先生、服部 幸先生、江角真梨子先生、小林哲也先生、井上 舞先生、藤井亜希奈先生、藤原亜紀先生、桑原 岳先生らが、それぞれ専門分野について、一般参加者にわかりやすく家庭で役立つよう講演された。また猫グッズを扱う人気ショップが会場内に出店し、行列ができるほどのにぎわいとなっていた。
 CATvocate認定プログラムは、猫の診療に必要な基礎知識を学び、猫の扱いに熟達したスタッフを育成することを目的としており、プログラム後の試験に合格すると、CATvocate:猫の専任従事者として、JSFMに認定される。会場とオンラインで受講ができ、会場では多くの愛玩動物看護師が参加。午後に設けられたティーパーティーの時間には、参加者同士の交流や意見交換が行われていた。
 また会場内ではポスターセッション〈キャットフレンドリー部門〉〈学術部門〉の展示もあり、16日にディスカッションタイムが設けられた。
 2日間(会場・オンライン)の登録者数は、獣医療関係者・一般参加者合わせて合計1,490名。動物病院での診療と、家庭での管理の両面から、猫の健康を考える大会となった。

学術講演の様子

第28回 日本獣医がん学会 開催される

 2023年7月1日(土)と2日(日)、ホテルニューオータニ東京において第28回日本獣医がん学会が開催された。さらに両日の様子は、7月11日(火)~7月31日(月)にわたり、VETSCOPE(http://vetscope.vet/)においてオンライン録画配信された。会場展示17社、ランチョンセミナー協賛2社、講演要旨集広告協力3社、オンライン協力・動画CM協力1社による協賛があり、会場参加者は730名、オンラインのみ登録者は320名、総参加者数は1,050名という盛会となった。
 メインシンポジウム「膵臓の腫瘍」に加え、外科と病理の教育講演、総合教育講演、会場参加型企画「続・仮説演繹法を用いた診断ステップなどの充実したプログラムが今大会でも組まれていた。また、今回から一般口演がアワード表彰対象となり、24演題が基礎研究・臨床研究・症例報告に分けられ、5名による採点評価審査(5項目5点満点の25点を5名合計125点で採点)上位得点の2題が初回のアワード奨励賞となった。多くの学会参加者が見守るなか、認定医授与式の後にアワード表彰式も実施され、今後の学会のさらなる発展を予感させる大会となった。

一般口演アワード授与式(左から石田卓夫会長、臨床研究部門受賞者の井上貴瑛先生、基礎研究部門受賞者の小野山 青於様、中川貴之臨床研究委員会委員長)


学会場の様子


ご挨拶される日本獣医がん学会会長の石田卓夫先生