小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

WJVF第16回大会 開催される

 2025年7月26日(土)、27日(日)、大阪府・ホテルニューオータニ大阪にて、WJVF第16回大会が開催された。今回のテーマは「To Be Strong、“失敗しない” そう言える日まで」。獣医療従事者はAIでも機械でもない失敗から逃れられない「人間」であり、「失敗しない」と断言できるまで、強い気持ちをもって学び続けようという想いが込められている。今回の大会の特徴はBASICとADVANCEをセットにした講義構成となっている。
 (一社)日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)会長の竹村直行先生は、開会式で「私たち獣医師は動物とその家族が楽しく生きていくための手助けをするのが大切なことだと思います。動物とその家族のつながりも治療対象に考えていかなければなりません。そのためには獣医師だけではなく、愛玩動物看護師、ACS、スタッフの方、また関連する企業の方々の力を借りて一丸となって動物医療を少しでもよい方向にいくようにする必要があります。今回のWJVFで発信する情報を活かしてください」と述べた。その後、(公社)日本動物病院協会(JAHA)会長の宗像俊太郎先生、アジア小動物獣医師会(FASAVA)会長でJBVP名誉会長である石田卓夫先生、2025年10~11月に韓国のテグで開催されるFASAVA2025年次大会の大会長であるYi Don Choi先生が挨拶をした。
 講演は、獣医師向け、愛玩動物看護師・ACS・トリマー向け、獣医師・愛玩動物看護師・ACS・トリマー向けに分けられ、外科、内科、腫瘍学、皮膚病学、循環器病学、神経病学など幅広い分野で展開され、参加者は熱心に聴講していた。
 また、獣医師対象、愛玩動物看護師・ACS対象の少人数での実習も2日にわたり12講座が行われ、募集してすぐ定員になる講座もあった。
 27日(日)にはJAHAとの共催で市民プログラム「One well-being 人と犬と社会の関係」「うちの子も参加できる?人と動物のふれあい活動の実際-我が子と一緒に社会貢献!-」も開催された。
 参加者数は1,637名で、獣医師723名、愛玩動物看護師・ACS・トリマー628名、学生243名、市民43名であった。また、協賛企業415名、プレス5名で総数は2,057名となった。
 WJVF第17回大会は、2026年7月25日(土)、26日(日)、ホテルニューオータニ大阪にて開催予定。
 

開会式で挨拶をするJBVP会長の竹村直行先生
 

講義会場の様子

第44回比較眼科学会年次大会 開催される

 2025年7月26日(土)、27日(日)の2日間にわたり第44回比較眼科学会年次大会がパシフィコ横浜アネックスホールにて開催された。前回がオンライン開催であったため、今回は2023年以来の対面形式での開催となり、会場には総勢250名を超える参加者が集まった。
 今大会のメインテーマは「輪 ~基礎と臨床、そして世界と繋がろう~」。大会長を小林由佳子先生(ありす動物眼科クリニック)が務め、「輪」「世界と繋がろう」というテーマのもと、人医療の臨床や大学の先生、アメリカから宮寺恵子先生(ミシガン州立大学)、韓国から劉 鍚鍾先生(Yoolim Animal Eye Clinic)の講演が催された。
展示エリアでは企業ブースとポスター発表、講演会場では一般口演と教育講演、基礎と臨床双方の部会セッションのほか、特別講演とランチョンセミナーの講演が行われた。
 特別講演では2日間とも宮寺恵子先生が登壇し、1日目は「犬の遺伝性疾患を研究して ~遺伝子探索から遺伝子治療まで~」、2日目には「これは遺伝?アイチェックと遺伝子検査」をテーマとした講演が行われた。人医療や獣医療の臨床医と研究者の連携についても解説し、今回の大会テーマに通じる素晴らしい講演であった。
ランチョンセミナーでは、1日目には(株)メニワン主催で、講師である劉 鍚鍾先生の翻訳本の紹介のあと、「小動物獣医眼科領域でのOCTの活用」をテーマとして、OCTの基礎部分の概説と各症例の経過をOCTを使用した際でのみえ方の比較を交えて解説された。近年注目されているOCTがテーマということで聴講者も多くみられた。2日目には千寿製薬(株)主催、人の眼科専門医である前田亜希子先生(神戸アイセンター病院)による「ヒトと動物に共通するRPE65関連網膜症の治療開発と展望」をテーマに、人における医療の経験と知見が獣医療への応用につながる可能性について解説された。
 教育講演では福島潮先生(湘南鎌倉動物病院 動物眼科センター)座長のもと、下山由美子先生(アイデックスラボラトリーズ(株))が「猫のび漫性虹彩メラノーマの病理」のテーマでご講演を行い。2日目最初のプログラムである部会セッションでは、臨床「角膜内皮ジストロフィーの理解と未来への治療戦略」、基礎「動物モデルによる眼疾患研究の最前線」のテーマで講義が行われ、受付開始直後から多くの参加者が講演会場に足を運ぶ様子がうかがえた。
 両日ともプログラムの最後には、締めの講演であるショートセミナーおよび(株)オフテクス主催のイブニングセミナーが用意されていた。今回の学会で得られるものを多くもち帰ろうと、最後まで熱心に聴講する参加者が数多くみられた。
初日の講演後には情報交換会が開催され、理事の先生方や参加者および参加企業の方々も多数みられた。また、夏らしくチェロの演奏やズンバダンスなどの特別企画もあり、にぎやかに盛り上がった。
 今大会の一般口演18題とポスター発表8題のアワード受賞者が2日目に発表された。受賞タイトルと演者は以下の通り。
「犬の前房内チューブシャント設置術後における被膜切除の実施率と視覚予後の検討」齋藤智彦先生(トライアングル動物眼科診療室)、「0.002%オミデネパグイソプロピル点眼液が正常犬の眼圧および瞳孔径に及ぼす影響」辻村ひかる先生(麻布大学付属動物病院 眼科)、「Diagnostic evaluation of unilateral papilledema in a dog with a suprasellar mass and suspected intracranial hypertension using funduscopy, optical coherence tomography and magnetic resonance imaging」Sungbeum Shin先生(Chonnam Naional University)、ポスター賞「カニクイザルの限局性網膜萎縮における全視野及び他局所網膜電図の比較検討」川崎秀吉先生(アステラス製薬(株))
次回第45回比較眼科学会年次大会は、荒木智陽先生((株)新日本科学)が大会長のもと、2026年8月29日、30日に鹿児島で開催予定である。


大会長小林由佳子先生(ありす動物眼科クリニック)による開会の挨拶

会場の様子

アワードを受賞した4名の先生
左から、川崎秀吉先生、Sungbeum Shin先生、辻村ひかる先生、齋藤智彦先生

第32回 日本獣医がん学会 開催

 2025年7月5日(土)、6日(日)、ホテルニューオータニ(東京都)で、第32回日本獣医がん学会が開催された。今学会のメインテーマは「犬の心臓の腫瘍」で、メインシンポジウムの前半は座長の藤井洋子先生(麻布大学)を迎え、野村耕二先生(エム・ティ・スリー)による「病理」、鈴木亮平先生(日本獣医生命科学大学)による「犬の心臓腫瘍における超音波画像診断」、佐藤恵一先生(自由ヶ丘動物病院 動物がんクリニック名古屋)による「心タンポナーデ・貯留液への対応」、楢木佑将先生(動物心臓血管ケアチーム〈JACCT〉)による「犬の心臓腫瘍における心臓CT」、瀬戸口明日香先生(JASMINEどうぶつ総合医療センター)による「内科療法」が実施された。後半は座長に浅野和之先生(日本大学)を迎え、上地正実先生(JASMINEどうぶつ総合医療センター)による「外科療法」、塩満啓二郎先生(どうぶつの総合病院)による「放射線治療について」と続いた。
 教育講演や、病理や内科シンポジウム、症例検討会や顕微鏡実習、ポスター発表、ランチョンセミナー等、今大会も多くのプログラムが実施され、いずれの会場も立ち見がでる盛況ぶりであった。新設された“愛玩動物看護師会員・準会員”も加わり、愛玩動物看護師プログラムも実施され、参加者は2日間で1,000名をこえた。
 また今大会では、学会組織が刷新され、新しい組織が発表された。新会長には小林哲也先生(日本小動物がんセンター)、副会長には新しく呰上大吾先生(東京農工大学)、また継続して杉山大樹先生(ファミリー動物病院)が就任した。その他の委員会のメンバーも刷新された。新会長の小林哲也先生は「日本の小動物のがん研究において国際化を目指し、世界と肩を並べられるよう日本の基礎研究・臨床研究を底上げのため、臨床獣医師の先生方への研究支援に努めていきたい」と決意を表明した。これからも本学会のますますの発展が期待される。
 その他、前回第30回日本獣医がん学会で「がんの発生と悪性化における遺伝子変異と微小環境」を講演された大島正伸先生が大会長を務める第84回日本癌学会学術総会(9月25日~27日/石川県)での当学会と日本癌学会によるジョイントシンポジウムがアナウンスされた。日本癌学会への入会には推薦者が必要であるが、当学会会員であれば、今回は大島先生により配慮いただけることも報告された。
 なお今大会の内容は一部のプログラムをのぞき、7月14日(月)~8月15日(金)までVETSCOPE(https://vetscope.vet/)でもオンライン配信される。
 当学会詳細は下記より。
https://www.jvcs.jp/


メインシンポジウム「犬の心臓の腫瘍」総合討論の様子


石田卓夫前学会会長(中央右)と藤田道郎前当学会雑誌編集委員長(中央左)


新しい学会組織の先生方


新会長の小林哲也先生