小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

日本大学動物病院(ANMEC) 行動診療科によるパピークラスがスタート

 2025年4月より、日本大学動物病院(ANMEC)行動診療科によるパピークラスがスタートした。ANMECを会場とし、1シーズンを約1~2ヵ月かけて4回に分けて実施する。
 本パピークラスは飼い主を対象とし、獣医学科の学生、2023年より新たに新設された獣医保健看護学科の学生の教育も兼ねる。

 テーマは、第1回「飼育環境と接し方、扱い方」、第2回「犬の感じ方、学び方」、第3回「犬への教え方」、第4回「子犬の成長と発達」である。ANMECは2次診療施設ではあるが、本パピークラスに関しては、紹介がなくても飼い主が直接申し込むことができる。
 毎回飼い主へ宿題を出すため、学んだことが次回へつながり、飼い主もモチベーションを維持して4回のプログラムに取り組むことができる。また、毎回「パーティータイム」と銘打ち、子犬同士がリラックスして遊べる時間を設定し、参加する子犬たちの集中力が切れないように工夫している。4回継続して参加してもらうために、現在はANMECのある藤沢市近隣の飼い主を対象としている。また、かかりつけ動物病院でのパピークラスと並行して参加することも歓迎されている。
 2025年は全4シーズン、第2シーズンは8月中旬~9月中旬を予定。第3、第4シーズンも逐次案内されるとのこと。

 日本大学は2023年より獣医保健看護学科を開設。獣医師だけでなく愛玩動物看護師を目指す学生が在籍している。本パピークラスは大学教育の一環としても位置づけられており、学生たちは実習として参加する。また本学の実習生がANMECの各館を見学して回るローテーション実習にも組み込まれている。
 本パピークラスは学生、研修医、実習生の参加を前提に展開される。「学生は毎回参加し、直接サポートに加わります。獣医学科の学生、研修医など本学に所属する方であれば、原則として誰でも見学できるスタイルで実施しています」と、このパピークラスを担当する小澤真希子先生は説明する。「研究室の学生は臨床行動学に関心があり、とくにこちらから指導しなくても拍手等の大きな音を立てないなど、子犬のトラウマになってしまうようなことは自然に控えてくれています。ここで学んだことを生かし、卒業後、他病院での勤務の際にこのノウハウを生かしていただければと願っています」とのこと。

 本プログラムについては「病院側の理解があってこそ実施できているパピークラスだと認識しています。行動診療科は紹介症例のみ受け付けていますが、本パピークラスは紹介がなくても参加できます。学生には受講する飼い主と子犬の姿を通して、将来自身が開くパピークラスをイメージしてもらうことも大切ですし、何よりも幼若期からのトレーニングにより、動物病院へ来ることにストレスを感じない症例が増えることで、確実な検査・診断・治療へと結び付けていくこととなります。できれば、PVP(来院前投薬)を実施することなく、来院できる犬が増えれば、犬の一生を通じたQOLは確実に向上します。ぜひ本パピークラスを通じ、犬からのサインの受け止め方、上手な犬とのかかわり方を学んでいただきたいです」と小澤先生は述べる。

日本大学動物病院行動診療科 詳細は下記より閲覧可。

行動診療科


パーティタイムの様子


パピークラス中は教室全体をモニターに映している


学生、実習生、研修生の参加の様子


行動診療科の診察室。
行動診療科は紹介症例のみ診療


院内に掲示されるパピークラスの案内


小澤真希子先生

第51回動物用抗菌剤研究会シンポジウム 開催

 2025年4月26日(土)、日本獣医生命科学大学(東京都)にて第51回動物用抗菌剤研究会シンポジウムが開催された。
 動物用抗菌剤(抗菌性物質)の基礎面と応用面および薬剤耐性菌に関する研究調査、知識・技術の普及、動物の衛生や公衆衛生上の問題点を検討して薬剤使用の適正化を図ることで、畜・水産振興に寄与することを目的に設立された本研究会は、第51回目のシンポジウム開催を迎えた。今回のシンポジウムのテーマには「伴侶動物における薬剤耐性菌の現状と課題」が選ばれ、シンポジウムに先駆けて実施された午前中の特別講演では「β-Lactamase研究の歴史と未来展望:進化する薬剤耐性の中で」と題し、石井良和先生(広島大学・IDEC国際連携機構)によりβ-ラクタム剤と耐性機序に関して、1940年にはじめてβ-lactamaseが発見され薬剤耐性機構の研究がはじまったことや、現在、国際宇宙ステーション(ISS)で実施されているESBLに関する研究まで、抗菌薬に関する歴史や現在、未来への期待が紹介された。
 続くシンポジウムⅠでは、松田真理先生(動物医薬品検査所 動物分野AMRセンター)による「JVARMによる伴侶動物を対象とした薬剤耐性菌モニタリング」、原田和記先生(鳥取大学 農学部附属動物医療センター)による「伴侶動物医療における抗菌薬の慎重使用~AMR時代を迎えた我々にできること~」、佐藤豊孝先生(北海道大学One Healthリサーチセンター)による「伴侶動物由来薬剤耐性菌の公衆衛生上のリスク」、村田佳輝先生(むらた動物病院、獣医臨床感染症研究会会長)による「伴侶動物臨床分野における薬剤耐性菌対策の実際」が講演された。なおシンポジウムⅡでは「新規に開発、効能追加された動物用抗菌性物質製剤」と題しゾエティス・ジャパン(株)佐々木家治氏により「ツラスロマイシン(効能追加)」や明治アニマルヘルス(株)の森 俊介氏・池澤里奈氏による「フォーシル/フォーシルS」について紹介され、牛・豚への抗菌薬について、今回新たに参加した小動物臨床獣医師も含め情報共有を行った。
 当研究会の活動が「様々な立場から参加され活発な議論の場となればよい」と本研究会理事長の浅井鉄夫先生(岐阜大学 附属家畜衛生地域連携教育研究センター)は述べる。小動物臨床にかかわる獣医師・動物病院への教育等、本研究会の益々の活躍が期待される。


本研究会理事長の浅井鉄夫先生


原田和記先生


村田佳輝先生


会場の様子

ダクタリ会代表 加藤 元先生 紺綬褒章伝達式 実施される

 2025年4月25日(金)、大阪公立大学 獣医学部への支援を行った功績により、加藤 元先生(ダクタリ会代表)への紺綬褒章伝達式が実施された。

 当日は大阪府・市 副首都推進局から松下祥子氏(理事兼公立大学法人担当部長)、八塚喜久子氏(公立大学法人担当課長代理)、小林正幸氏(公立大学法人担当)、また大阪公立大学からは櫻木弘之先生(同大学学長)、山岸則夫先生(同大学獣医学研究科長・獣医学部長)、嶋田照雅先生(同大学獣医学研究科教授)、浅井数也氏(同大学りんくうキャンパス事務所長)、北橋和也氏(同大学企画部渉外企画課長)、伊戸 睦氏(同大学企画部渉外企画課課長代理)が出席した。
なお大阪公立大学は、2025年9月に新たに「森之宮キャンパス」が開設される。本キャンパスにて全学部・学域の1年次教育を集約する。また産学官民共創で社会課題を解決し、新たな価値新しい社会を創造する「イノベーションアカデミー事業」の本部司令塔としての役割も果たす。
 また、加藤元先生の尽力のもと、新キャンパス開設のイベントの一環として、2025年10月18日(土)、新キャンパスである森之宮キャンパスにて、Zoobiquity(ズービキティ)の提唱者であるBarbara Natterson-Horowitz先生(Harvard Medical School、Harvard Department of Human Evolutionary Biology Professor of Medicine, UCLA Division of Cardiology)、およびゲストスピーカーとして、Sue VandeWoude先生(コロラド州立大学 獣医学部長)やJu Hyung Hur先生(韓国獣医師会会長、FAVA President)等を招聘し、「Zoobiquity Symposium: ワンヘルスが導く医療と獣医療の新時代」の開催を予定している。


紺綬褒章伝達式にて

(一財)獣医療法食評価センターによる療法食の適正使用を推進する広報活動と展開

 (一財)獣医療法食評価センターは、(公社)日本獣医師会の「療法食の在り方検討委員会(2011~2013年)」の報告書の提言に基づき、非営利の第三者組織として、2014年1月に一般社団法人として設立した。療法食の「適正品質」および「適正使用」を推進し、家庭動物診療における犬猫の健康管理に寄与することを目的に、①療法食基準の整備、②療法食の評価と普及、③食事療法指導の推進、④飼育者に対する教育啓発、等の活動を行っている。
 本団体は新たな評議員を迎え第7期の主な活動について下記の通り報告した。
・市販療法食の「評価登録制度」では、8製品が追加、登録製品は制度開始時の135から160製品に拡大した。なお新規1社が加わり本制度を利用する事業者は5社となった。
・療法食の適正使用を犬猫の飼育者に啓発する広報事業(院内掲示用ポスター12,990枚を全国の動物病院に配布)を2023年9月より実施し、後援の環境省に一年間の活動が無事終了したことを報告した。
・日本臨床獣医学フォーラム第26回年次大会(2024年9月21日〜22日)に展示ブースを出展し、食事療法指導の支援ツールである動物病院専用アプリ「犬猫の食事療法サポート」を紹介し、そのダウンロード数が2,791件まで増加した。
 今後も、基準に適合した登録療法食の普及により、家庭動物診療における犬猫の健康管理を向上させていくという当団体の活動に注目が集まる。