小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

日本動物看護学会第31回大会 開催される

 2022年7月31日(日)、日本獣医生命科学大学にて日本動物看護学会第31回大会が開催された。換気・消毒など適切な感染防止策をとりながら、2年ぶりの対面での開催となり、100名ほどが参加した。
 午前中はシンポジウム「愛玩動物看護師誕生に向けて」と題し、3名の日本獣医生命科学大学の先生方が講演を行った。まず、石岡克己先生(本大会長)が「愛玩動物看護師カリキュラム完成までの軌跡」として、これまでの動物看護師の歴史を概説した。続いて、水越美奈先生が「愛玩動物看護師と動物愛護・適正飼養」として、愛玩動物看護師が動物の家族に適正飼養や動物愛護について啓発し、指導することの重要性を説いた。最後に青木博史先生が「愛玩動物看護師に期待される衛生管理」として、愛玩動物看護師が将来的に衛生管理システムを構築するキーパーソンになり、さらに感染管理を実践する専門技術者にもなり得ることを提言した。
 午後は計13題の一般演題発表が行われ、発表者はフロアから意見を伺えた貴重な時間となったと思われる。
 なお、4題の卒後教育セミナーが本大会開催時から2週間限定でWeb公開された。

第41回比較眼科学会年次大会Web開催される

 2022年7月末に比較眼科学会年次大会実行委員(JSCVO)主催による「第41回比較眼科学会年次大会」が、大会メインテーマを「眼検査」、サブテーマを「基礎と臨床 ONE TEAM」としてオンライン配信にて開催された。当初は静岡県において会場開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を鑑み、大会運営の臨機応変な対応によってオンライン開催に変更された。
 日程は、オンデマンド配信による一般演題が7月22日(金)~28日(木)に配信され、この期間中に寄せられた質問の回答日が7月29日(金)に設けられた。さらに7月30日(土)には2022年度 第41回比較眼科学会年次大会として、基礎部会セッション「眼毒性評価の新展開」、Brian Short Consulting, LLC., USA.のDr. Brian Shortによる「Nonclinical Safety Assessment for Intravitreal Drug Development」の日本語字幕付きの特別講演、臨床部会セッション「緑内障に対する眼科検査」がライブ配信された。
 上記日程後の8月29日(月)からは、オンデマンド見逃し配信が2週間にわたり、年次大会申し込み会員に対して実施された。

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第11回 HJS年次大会および第8回 スキンケアベストプラクティス 開催される

 7月20日(水)、21日(木)の2日間にわたり、それぞれ第11回 HJS年次大会および第8回 スキンケアベストプラクティスが東京都立産業貿易センター浜松町館(東京都港区)で開催された。
 第11回 HJS年次大会は「ねこのひみつ」というテーマのもと、猫が隠しもっている様々なひみつについて情報を共有した。講演は、HJS代表の中島尚志先生の「猫の慢性便秘症」からはじまり、続いて原田 慶先生(日本小動物がんセンター)の「猫の口腔にひそむ扁平上皮癌」、小野 啓先生(パル動物病院)の「猫の目のひみつ」、鷹栖雅峰先生(那須野ケ原アニマルクリニック)の「遺伝子からひもとく猫の骨軟骨異形成症」、佐々木一益先生(袋原どうぶつクリニック、秋田県立循環器・脳脊髄センター 研究所脳血管研究センター)の「猫の痛み」、平田雅彦先生(IDEXX)の「猫の膵炎のひみつ」が行われた。そして最後に中島尚志先生の「閉会のあいさつ」で締めくくられた。
 講演前には各先生が猫への想いを語り、和やかな空気のなか講演はすすんだ。質疑応答も活発に行われ、機器の使用方法や診察時の工夫など様々な情報が共有された。
 翌日の第8回 スキンケアベストプラクティスは「皮膚科領域の激痒!激痛!」というテーマのもと、ヒト医療の知見を交えながら獣医療における皮膚疾患やかゆみについて多くの知識を共有した。講演は、高森建二先生(順天堂大学名誉教授・皮膚科特任教授)の「皮膚掻痒の最前線」、宮地良樹先生(静岡社会健康医学大学院大学学長・京都大学名誉教授)の「ヒトのかゆみと皮膚バリアの最前線(録画)」、佐々木一益先生の「犬の皮膚の疼痛と激痒へのアプローチ」、そして中島尚志先生の「犬の痒みとスキンケアの最前線」が行われた。
 前日に引き続き質疑応答が活発に行われ、また、今大会を通じ、今後の研究次第では現在ヒト医療でのみ使用されている製品や薬剤が獣医療においても使用可能となり、治療の選択肢が広がる、そのような可能性を感じる一日となった。
 また両日とも企業展示が10社ほど入り、少しずつオフラインでのセミナー開催がすすんでいる印象をうけた。
 両大会のアーカイブ配信公開期間は、2022年8月10日(水)22:00~8月24日(水)23:00まで。
 なお、両大会の指揮をとった中島尚志先生が代表を務めるHJSのセミナーが9月18日(日)に北海道での開催を予定している。

講演中の中島尚志先生(HJS代表)

日本獣医輸血研究会 第6回学術講習会 開催される

 6回を迎える日本獣医輸血研究会学術講習会がオンラインにて開催された。
 本学術講習会のメインテーマは「外科と輸血」。青木卓磨先生「循環器外科編」(麻布大学)、浅野和之先生「軟部外科編」(日本大学)、「自己輸血編」、藤田 淳先生(日本小動物医療センター/東京大学動物医療センター)、関 瀬利先生「麻酔編」(日本獣医生命科学大学)といった各界で活躍される先生方が、それぞれのご専門分野と輸血のかかわりについて、輸血の適応、手術におけるピットフォールなどを解説された。
 4人の先生方はまた、事前にセミナーを視聴した受講者の方々から寄せられた質問に対して討論するシンポジウム(座長:杉山大樹先生/ファミリー動物病院、久末正晴先生/麻布大学)にも参加され、幅広い質問に一つひとつ丁寧に回答されていた。
 また、今年2022年12月に実施が予定されるJSVTM認定輸血コーディネーターの認定試験の認定プログラムとして、「ドナーからの採血と管理」(小林輔先生、志村坂下動物総合医療センター)、「輸血関連検査」(瀬川和仁先生、せがわ動物病院)が企画された。輸血療法の基礎であり、獣医師はもちろん、動物看護師も知っておくべき内容を、研究会の先生方のご経験も踏まえ詳細に説明された。
 トピックス講演として丸山治彦先生(日本大学)がご担当された「凝固異常をおさらいする」では、凝固カスケードや線溶系、血液凝固因子といった基礎から凝固異常を学び直すことのできる内容であった。
 当初、今年5月に予定されていた「JSVTM認定輸血コーディネーター制度」認定試験は、新型コロナウイルスの感染状況などを鑑み、今年の12月に変更された。同認定試験を機に、近年ますます重要視される輸血療法が、より安全に、より身近な選択肢として多くの動物病院で実施されるようになることを期待したい。
 日本獣医輸血研究会ホームページ https://www.jsvtm.org/

JSVTM認定輸血コーディネーターの認定プログラムとして行われたセミナー「輸血関連検査」(瀬川和仁先生)の様子

 

総合討論の様子。上段左から久末正晴先生(麻布大学)、杉山大樹先生(ファミリー動物病院)、藤田 淳先生(日本小動物医療センター/東京大学動物医療センター)、下段左から青木卓磨先生(麻布大学)、関 瀬利先生(日本獣医生命科学大学)、浅野和之先生(日本大学)