2024年7月19日(金)から21日(日)の3日間にわたり、マレーシア・クアラルンプールにて第12回アジア小動物獣医師会大会(FASAVA〈Federation of Asian Small Animal Veterinary Associations〉2024)が開催された。2019年の東京大会から5年、今回も日本をはじめアジア各国、オセアニアから最新知見を得るため多くの参加者が集まった。日本からは50名以上が参加した。会場は大きく5会場に分かれ、画像診断、猫、外科、内科、循環器、エキゾチック、眼科、皮膚科、救急など計80以上のプログラムが用意された。日本からは石田卓夫先生(赤坂動物病院)、浅野和之先生(日本大学)、辻田裕規先生(どうぶつ眼科専門クリニック)の3名の講演が行われた。
●初日:朝に激しいスコールが降るなか、創立時の会長である故Roger Clarke先生の名を冠したレクチャーのあと、FASAVA現会長でオーストラリア小動物獣医師協会のMatthew Retchford先生によるオープニングセレモニーが行われた。そのなかでRetchford先生は、FASAVAの紹介や獣医療関係者が取り組むべき課題を取り上げ、政治的側面や経営的側面、AIなどを克服すべき脅威およびハードルと解説した。また日本の先生の講演としては石田卓夫先生の「Aspiration biopsy and cytologic evaluation of lymph node diseases(リンパ節疾患の吸引生検および細胞学的評価)」の講演が行われ、多くの聴講者が集まり、質疑応答も活発に行われた。
●2日目:クアラルンプール市内ではこの日5年に一度の新国王の戴冠式が行われるため、近隣のホテルでは厳重な警備が敷かれ、一部交通規制が実施された。そのようななか、2日目も多くのプログラムが実施され、日本の先生の講演としては石田卓夫先生の「New therapies for feline diabetes(猫の糖尿病の新治療法)」、そして浅野和之先生の「Surgical repair of canine perineal hernia(犬の会陰ヘルニアの外科的修復)」「Surgical treatment of idiopathic chylothorax in dogs and cats(犬猫における特発性乳び胸の外科処置)」の講演が行われた。猫の糖尿病の講演は大会場で行われ、また犬の会陰ヘルニアの講演は立ち見が出るほどの盛況ぶりであった。
この日の夜には「マレーシアンナイトディナー」が行われ、参加者はマレーシアの食事、伝統工芸、音楽、踊りなどを楽しんだ。途中、各国別に参加者がステージに上がり歌や踊りを披露する時間があり、日本の先生方が壇上で歌を披露する場面もみられた。
●最終日:日本の先生の講演としては午後に辻田裕規先生の「How to approach canine cataract in dogs(犬白内障へのアプローチ法)」が行われた。また、土日の2日間でMSAVA(マレーシア小動物獣医師会)が主となり20以上のパラプロフェッショナル専用のプログラムが同時開催されており、この日には村尾信義先生(倉敷芸術科学大学)の「Practical tips for kinder and gentler animal handling(より優しく穏やかに動物を扱うためのコツ)」、「New restraint techniques for cephalic vein catheterization in dogs and cats(犬猫の橈側皮静脈カテーテル挿入時の新しい保定法)」の2講演が行われた。
クロージングセレモニーでは、次回FASAVA2025の開催が韓国・大邱にて2025年10月31日(金)〜11月2日(日)に開催されること、そして、FASAVAの次期会長に石田卓夫先生が就任することが決まり、その就任式が行われた。
展示会場には、プライムスポンサーであるヒルズ社をはじめ、46の企業および関連団体が集まった。多くの企業がブース内セミナーを設けたり、また会場の飲食スペースが両端および中央の3ヵ所に設置されたりするなど、多くの参加者が展示会場に足を運べる工夫がされていた。
犬の飼育頭数の減少により日本国内の獣医療の在り方に変化が求められるなか、とくに日本にとって隣人であるアジアの獣医療への注視および連携はより重要になると思われる。本大会は多くの先生方、愛玩動物看護師を含むすべての獣医療関係者にとってアジアの臨床現場の今を知ることができる貴重な機会であると感じられた。
学会・セミナーレポート
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第30回 日本獣医がん学会 開催される
2024/7/16
2024年7月5日(土)と6日(日)、ホテルニューオータニ東京において第30回日本獣医がん学会が開催された。この様子は、学会終了から約1週間後~7月31日(水)までVETSCOPE(https://vetsope.vet/)でも配信された。
参加者は事前登録の段階で890名を超え、会場展示協力13社、広告協力8社、オンライン配信協力1社、ランチョンセミナー協力3社および学会が日曜日のランチョンを提供、外科ドライラボ協力2社による協賛協力があった。
開会にあたっては、「今回は初となる企画“外科ドライラボ”が実施されます。他にも各委員会が様々な新しい企画を準備しているので、これからも本学会に期待していただけると考えています」と石田卓夫会長がご挨拶された。今回の学会では、充実したプログラムのほか、5名の審査員による一般口演のアワードに加え、学会参加者によるオンライン投票によりポスター発表からもアワードが決定され、認定医Ⅰ種合格者4名、Ⅱ種合格者20名は授与式に出席した19名への認定証授与式と同時にアワード表彰、さらに研究助成の贈呈式が行われた。石田会長が述べた通り、今後の学会の活動にますます期待が高まる2日間となった。
<一般口演アワード 受賞演題>
【基礎研究部門奨励賞】
基礎研究「イヌ骨肉腫細胞株に対する抗HER2抗体療法の効果の検討」酒居幸生先生ら
【臨床部門奨励賞】
症例報告「積極的な外科切除により長期生存を認めた膵臓外分泌腺癌の犬の一例」 大脇 稜先生ら
<ポスター発表アワード 受賞演題>
「膵臓外分泌癌に随伴して被嚢性腹膜硬化症を認めた猫の1例」小林宏祐先生ら
<研究助成>
【臨床分野】
「Liquid Biopsyを基礎としたBRAF変異陽生尿路上皮癌の治療層別化戦略の創出」/申請者:田川道人先生
【基礎分野】
「NSAIDs高感受性であるイヌ尿路移行上皮癌の解析から着想を得た新規がん免疫療法の開発」/申請者:衛藤翔太郎先生
(一社)日本動物看護職協会「動物看護の日2024」イベント 開催される
2024/7/3
2024年6月30日(日)、(一社)日本動物看護職協会は日本歯科大学にて「動物看護の日 2024 動物福祉と動物看護」を開催した。本イベントは同協会が国家資格「愛玩動物看護師」の誕生を機に愛玩動物看護師法の公布日6月28日を「動物看護の日」と制定したことにちなんで開催されたものである。なお、同協会は2025年4月から「愛玩動物看護師の職能団体」となることが予定されていることが発表された。
本イベントの内容は以下の通りである。
・シンポジウム「動物看護の視点で考える動物福祉」
パネリスト/田中亜紀先生(日本獣医生命科学大学)、渋谷寛先生(渋谷総合法律事務所)
ファシリテーター/遊座晶子先生(日本動物看護職協会)
「この子は本当に幸せ?」「動物と人が安心して暮らすには?」を切り口に、動物虐待と医療、動物関連法規の観点から、動物福祉に活きる動物看護について紹介された。動物虐待と思われる症例が来院したときは関係機関への通報が義務になっているが、飼い主への対応の難しさが浮き彫りになった。
その後、「動物看護の日」に合わせて募集された「動物フォトコンテスト」および「動物看護 1 min. 動画アワード」の作品が公表された。
・「動物フォトコンテスト」(一般市民対象)/審査員:山崎哲氏(写真家)
最優秀賞:気持ちいい?/竹林めぐみさん(広島県)
・「動物看護 1 min. 動画アワード」(動物看護職対象)/審査員:稲野辺悠先生(港区動物救急医療センター 芝アニマルクリニック)
最優秀作品:横浜動物救急診療センターVECCS横浜2周年記念動画/石橋由梨佳さん
なお、「動物フォトコンテスト」および「動物看護 1 min. 動画アワード」の作品については、2024年7月1日(月)~8月31日(土)までJVNA YouTubeチャンネル(http://www.youtube.com/@jvna.vnca2022)でオンデマンド配信される予定である。また、同チャンネルでは、本イベントの協賛企業であるロイヤルカナン ジャポン合同会社の「1歳までの子猫の栄養学~知っておきたい、成長期の食事管理~」「3Hシンドローム~健やかな成長のためにできること~」も配信される。
シンポジウムの様子
2024年6月20日(木)〜23日(日)、埼玉・大宮ソニックシティで第108回日本獣医麻酔外科学会学術集会が開催された(第24回 日本獣医内視鏡外科学会が同時開催)。本大会は東京大学の望月 学先生が大会長を務め、学会初となるキャッチフレーズ「まなぶはまねぶ」がつけられた大会であった。
キャッチフレーズにもあるように、多くの学びの機会が得られる一般演題、パネルディスカッション、シンポジウムや教育講演、症例検討会、リフレッシャーコースのほか、外科のスペシャリストの手の動きを観察し、直接指導を受け「まねぶ」ためのハンズオンセミナーが開催され、整形外科、軟部組織外科、麻酔疼痛管理の隅々までポイントがおさえられたセミナーには、多くの先生方が足を運んでいた。
2日目の21日(金)には新たにスタートした認定医制度である第1回動物麻酔基礎技能認定医筆記試験が開催され、260名の獣医師が受験した。
3日目の22日(土)からはさらに多くのセミナーが開催され、全国から多くの獣医師が集まり、会話に花を咲かせる様子も目立ち大変盛況であった。夜には情報交換会が開かれ、新たな日本小動物外科専門医への資格授与も行われ、4名の先生が温かい拍手で迎えられた。
見聞きして学ぶだけではなく、実践することも重視して企画されたセミナーに人が集まり、獣医師同士の横のつながりも深められる本学会の獣医療の牽引が期待される。
次回第109回日本獣医麻酔外科学会学術集会は、2024年12月20日(金)~12月22日(日)、北海道・札幌コンベンションセンターにて「経験は現場で、知識は北海道で!」のキャッチフレーズのもと、酪農学園大学の鳥巣至道先生を大会長に迎え開催される(第25回 日本獣医内視鏡外科学会は同時開催、第12回アジア獣医外科学会が共同開催)。