小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

獣医臨床感染症研究会(VICA)第22回セミナー 開催

 2025年3月20日(木・祝)、八重洲No14(東京・千代田区)にて、2025年度獣医臨床感染症研究会セミナーが実施された。
 第22回は「レプトスピラの知識を最新にアップデート」をテーマに展開された。昨今、関東圏内でも発生が認められ、警戒意識の高まっているレプトスピラ症に着目し、「レプトスピラ症:総論」と題し小泉信夫先生(国立感染症研究所)が発表され、「ACVIMコンセンサス2023と犬レプトスピラ症」として村田佳輝先生(むらた動物病院、本研究会会長)、「ACVIMコンセンサス2023と猫レプトスピラ症」として藤井祐至先生(長崎大学 高度感染症研究センター)による解説が加えられた。
 また今回は、関連企業との情報共有の場も設けられ、協賛の共立製薬(株)からは「動物用医薬品メーカーの社員が考える 人と犬のレプトスピラ症予防について」が発表され、現在、山口大学で犬レプトスピラ症の全国規模の血清疫学調査を計画中であることを報告、またその調査への協力を会場の先生方へよびかけた。また(株)ゴーフォトンの提供で、院内で実施可能なリアルタイムPCR検査として「核酸精製が不要な迅速PCR装置PicoGene体験会」が行われた。
 「今後も臨床に即した感染症を研究していける集まりにしたい。人医療では感染症の学会では内科や外科、救急といった分野の研究会や学会も名を連ねている。そのような学会の設立が本研究会の目指すかたちである。これからも日本における感染症の拡大が少しでも抑制されるよう尽力していきたい」と村田会長の挨拶で閉会した。今後も本研究会の躍進が期待される。


総会の様子


体験会の様子

第33回日本小動物歯科研究会症例検討会・総会 開催

 2025年3月16日(日)に東京・品川フロントビル会議室にて第33回日本小動物歯科研究会症例検討会・総会が開催された。会場には100名を超える参加者が集まり、ランチョンセミナー協賛を含め13社が賛助企業として参加した。企業エリアにも積極的に足を運ぶ様子がみられた。
 また、今回症例の発表だけでなくランチョンセミナーとして座談会が企画された(ファームプレス協賛)。会長の藤田桂一先生(フジタ動物病院)を座長として理事の4名の先生、網本昭輝先生(アミカペットクリニック)、幅田 功先生(センターヴィル動物病院)、本田 洋先生(本田動物病院)、江口徳洋先生(Vets Dental & Oral Surgery Office)が登壇し、メディアでも話題になった「無麻酔および無免許スケーリングの書類送検問題」「口腔内管理を一生続けるために必要なポイント」についてのディスカッションを行った(MVMに記事掲載予定)。
 全国の小動物歯科に興味がある先生が気になっているであろう内容が多く、聞き入っている様子やメモをとっている先生が多くみられた。
このような本会の取り組みから、正しい知識と技術をもつ動物病院がさらに増え、これからよりよい形で飼い主や世間に情報が届くことに期待したい。


講演の様子

企業エリアの様子

JaVECCS 国際シンポジウム 2025 開催される

 2025年3月15日(土)、16日(日)に東京・有明セントラルタワーホール&カンファレンスにて、JaVECCS 国際シンポジウム 2025が開催された。
 国際大会第2回目となる今回も国内外から多くの参加者が押し寄せ、ほとんどのセミナーが日・英同時通訳での講演となり大変盛況となった。
 また獣医師、愛玩動物看護師/アニマルケアスタッフのための実習、企業展示ブースにおいては2日間にわたり全国4病院によるCPRバトルが行われ、講義だけでなく臨場感のあるプログラムが用意されており、大勢がその機会を得るために各会場へ足を運んだ。CPRバトルは2日目の決勝戦にて東京・世田谷のくすの木動物病院が優勝し、表彰が行われた。どの病院も非常にレベルが高いとの総評であった。決勝戦は20分にもおよび、観戦者はカメラを構えて撮影し、実際の手技やコミュニケーションについて熱心に情報を得ている姿が印象的であった。
 企業展示ブースでは救急動物病院も出展しており、動物病院の紹介やリクルートだけではなく、企業と動物病院との対話も盛んに行われていた。1日目の夜には同ブースにてレセプションが行われ、国内外からの参加者が談笑し交流する様子がみられた。
 2日間で1,000名を超える参加者が集まった。次回JaVECCS国際シンポジウム 2026は同じく有明セントラルタワーホール&カンファレンスにて2026年3月14日(土)、15日(日)に開催予定。

講演の様子

CPRバトル決勝戦の様子

第28回日本獣医皮膚科学会 学術大会・総会 開催

 2025年3月8日(土)・9日(日)、国際ファッションセンタービル KFCホール(東京・両国)にて、(一社)日本獣医皮膚科学会による第28回日本獣医皮膚科学会・総会が実施された。
 今大会は「耳の疾患―外耳炎、中耳炎、耳介皮膚疾患―をアップデート」をテーマに展開された。
 8日(土)の初日には、プレコングレス・スイーツセミナーが開催され、「抗菌薬の適正使用」「耳の洗浄」「外耳炎治療における栄養療法」に関する3題の講演が行われた。参加者はケーキやコーヒーを楽しみながら、熱心に聴講していた。
 9日(日)の学術大会では、外耳炎に関する海外講師の招聘講演をはじめ、アトピー性皮膚炎の新規治療に関する科学講演、中耳炎シンポジウム、ミニレクチャー、初学者セミナー、ランチョンセミナーなどが実施された。一般講演では18題、ポスターセッションでは17題の演題が発表された。展示ブースではオトスコープのデモンストレーションも行われ、多くの参加者で賑わった。
 「2日間の開催期間、大勢の参加者に集まっていただいた。当日の参加希望者をお断りするほどであった」と本学会会長の加納 塁先生はいう。本学術集会、そして本学会への関心の高さを実感できる2日間であった。なお3月17日~4月17日までオンライン配信される。


開会式での加納会長

会場の様子

2024年度 One Medicine
創薬シーズ開発・育成研究教育拠点シンポジウム 開催

 2025年3月7日(金)、名古屋大学・東山キャンパス内のオークマホールにてOne Medicine創薬シーズ開発・育成研究教育拠点(COMIT)主催の2024年度シンポジウムが開催された。
 COMITは、岐阜大学と名古屋大学の連携拠点支援事業の一つであり、医学、獣医学、薬学、工学等の研究を分野横断的に包括し、それぞれの境界を越えた「Sharing Medicine(人獣共通医療学)」の開拓および人と動物の創薬研究の変革を目的に活動する。
 本シンポジウムではCOMITの研究紹介として、「局所免疫記憶の理解から導くアトピー性皮膚炎の再燃予防戦略」(朝比奈良太先生)、「大規模言語モデルを用いた医獣診療録言語の共通化」(龍岡久登先生)、「スマートインスリンデバイスの研究開発;『貼るだけで血糖コントロール』の実現を目指して」(菅波孝祥先生)の3講演が行われた。タイトルからもわかる通り非常に興味深い内容であり、聴講者は熱心に耳を傾け、質疑応答も活発に行われた。
 また、特別講演として水野拓也先生(山口大学)の「動物のがんに対する新規治療法の開発とその苦悩〜弱小ラボが世界とどう戦っていくのか〜」が行われた。副所長を務める山口大学細胞デザイン医科学研究所(RICeD)や昨年正式稼働したどうぶつトランスレーショナルリサーチセンター(iCAT)での研究の一端を紹介しつつ、「どういった臨床獣医学研究をやるか?」「抗体薬とは」「動物用抗体薬開発の例」について解説された。人と犬の生物学的な類似性から自然発症モデルを多くデータベース化できる可能性がある獣医療が創薬および人医療への還元を可能にするとし、現在日本国内で3製品のみである動物用抗体薬について、日本発の犬のがん治療薬の開発を目指すと述べた。
 本シンポジウムはオンライン配信され、ほか計10点のポスターセッションおよびライトニングトーク(ポスターセッションの内容を各自1 分間説明)、ネットワーキング(交流会)もあり、人獣共通の最新研究に触れることができる貴重な場であった。


COMITシンポジウム


会場の様子

東京都獣医師会主催
ワンヘルスアプローチで考える会 開催

 2025年3月6日(木)、東京都・ホテルルポール麹町にて東京都獣医師会主催、ワンヘルスアプローチで考える会が開催された。
 本会会長の上野弘道先生は開会の挨拶において本シンポジウムのコンセプトである動物がもたらす恩恵とその活用法について触れ、続いてメイン講演として「One Healthアプローチとヒューマン・アニマル・ボンド」と題し、石田卓夫先生(FASAVA会長、赤坂動物病院)による講演が行われた。ワンヘルス、もしくはワンメディシンの考え方のはじまりから人獣共通感染症、人と動物の絆、つまりヒューマン・アニマル・ボンドが社会にとってどれほどの有益性をもたらすか(死亡率、疾病率、がん発生率、フレイル発症リスクの低下および子どもへの教育効果等)など、エビデンスに基づくワンヘルスに関する現状と今の課題および具体的対策について解説された。
 講演後の意見交換会では、来年4月21~24日に東京・有楽町の東京国際フォーラムにおいて第41回世界獣医師会大会が開催されることが日本獣医師会専務理事の伏見啓二先生から紹介された。世界獣医師会大会のテーマがまさにワンヘルスであり、人間社会により広くワンヘルスの考え方が広まる契機となるか、獣医療界全体でこの2026年の機会を生かす必要があると思われる。
 上野会長は閉会の挨拶にて「ワンヘルスの価値をまずは一般臨床の先生が深く理解し一丸となることでこれからの獣医療界の難局に立ち向かう必要がある。そのことをこれからも多角的に発信していきたい」と述べた。


会場の様子