小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

第31回 日本獣医がん学会 開催

 2025年1月25日(土)、26日(日)、ホテルニューオータニ大阪(大阪府)で(一社)日本獣医がん学会主催による第31回学会が開催された。今大会のメインテーマは「猫の肥満細胞腫」で、メインシンポジウムは池田雄太先生(動物がんクリニック東京)による「猫肥満細胞腫のオーバービュー」、下ノ原 望先生(アイデックス ラボラトリーズ(株))による「猫の肥満細胞腫の病理」、谷 浩由輝先生(日本大学)による「猫肥満細胞腫における内科療法とKITの遺伝子異常」、伊東輝夫先生(青葉動物病院)による「猫の肥満細胞腫の外科療法」が、座長に廉澤 剛先生(日本小動物医療センター)を迎え実施された。教育講演、病理や外科のシンポジウム、症例検討会や顕微鏡実習、外科ドライラボ等、今大会も多くのプログラムが実施され、参加者たちはそれぞれの会場へ足を運んだ。
 当学会では現在、臨床研究委員会が中心となり「獣医がん症例登録システム」を構築中。当委員会委員長を務める中川貴之先生(東京大学)から参加者に向け、犬・猫の腫瘍症例の情報登録への協力がよびかけられた。小動物腫瘍症例のビックデータの登場に期待が寄せられる。
 また今大会では、前回第30回日本獣医がん学会で「がんの発生と悪性化における遺伝子変異と微小環境」を講演された大島正伸先生が大会長を務める第84回日本癌学会学術総会(9月25日~27日/於石川県)で、当学会と日本癌学会によるジョイントシンポジウムの開催が決定したことも報告された。獣医療とヒト医療の協力による癌研究において、どのように連携が図れるかを追究する。また日本癌学会への入会には推薦者が必要であるが、当学会会員であれば、今回は大島先生により計らっていただけることも報告された。

 今大会の内容は一部のプログラムをのぞき、学会終了後1週間程度~約1ヵ月予定で、VETSCOPE(https://vetscope.vet/)でもオンライン配信される。
 当学会詳細は下記より。
https://www.jvcs.jp/


メインシンポジウム「猫の肥満細胞腫」質疑応答の様子




アワード表彰式にて、石田卓夫会長(赤坂動物病院)と受賞者。上からポスター発表「犬におけるトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)投与の安全性評価」安藤未来先生(東京大学)、一般口演「外科手術により長期予後が得られた膀胱横紋筋肉腫の犬の1例」井上侑花先生(東京大学付属動物医療センター)と「膀胱前立腺尿道全切除によって治療された犬の前立腺癌における転帰と予後因子:26例(2012-2023)」一萬田 正直先生(日本小動物がんセンター)



第84回日本癌学会学術総会(9月25日~27日/於石川県)のアナウンスの様子。当学会と日本癌学会によるジョイントシンポジウムの開催決定されたことが報告された。本学術総会詳細は下記より。
https://www.c-linkage.co.jp/jca2025/outline.html



ランチョンセミナー(上)、展示ブース(下)の様子

(一社)日本獣医インターベンショナルラジオロジー学会 第1回学術集会 開催

 2025年1月11日(土)、12日(日)2日間にわたり、(一社)日本獣医インターベンショナルラジオロジー学会 第1回学術集会が、日本大学生物資源科学部湘南キャンパス(神奈川県)で実施された。
 インターベンショナルラジオロジー(Interventional Radiology:IVR〈欧米ではIRと略〉)は、X線透視やCTなどの画像診断機器を用いて、カテーテルや針を用いて行う治療法で、診断・治療の低侵襲化を目指し画像診断のガイド下で開胸・開腹をせずに診断や治療を行う非侵襲的手法である。IVRは人医療だけでなく、小動物医療においても普及しつつあり、技術向上のみならず、安全な実施や適応判断を含めて検討すべき課題は多く、本学会はその教育機関としての役割も目指している。

 第1回学術集会のテーマは「軟部組織外科学およびそのIVRの適応を考える」。初日は10時からのドライラボからスタート。これからIVRはじめる人のために基礎から学べる内容を展開。主催者の予想以上に参加者が集い、前半の講義と後半の実践という構成で、コイル塞栓術に必要な血管へのアクセス法であるセルジンガー法などを実習した。
 午後からのシンポジウムでは本学会会長の浅野和之先生による「獣医学におけるインターベンショナルラジオロジー」の講演が行われ、小動物医療でのIVRの適応疾患や治療成績、現在の小動物医療分野での実践例を交え、導入を考える先生方へ、メリットや留意点を説明。続いて国立がん研究センター中央病院の放射線診断科医長であり、IVRセンター長も務める曽根美雪先生による「医学におけるインターベンショナルラジオロジー」の講演があり、ヒトのがんに対するIVRで行われる“抗腫瘍治療”“緩和・支持療法”について紹介した。「動物とヒトには解剖学的・生理学的なちがいはあるものの“画像を用いて精確かつ低侵襲に病変へアクセスし治療する”というIVRの基本概念は獣医学に通じる部分も多い」という曽根先生からアドバイスもあり、医学および獣医学の観点からのクロストークに会場は熱心に耳を傾けた。
 2日目は「門脈体循環シャント(PSS)完全攻略~解剖から治療まで理解できる~肝外シャント/肝内シャント」を本学会会長の浅野先生が講演、Chick Weisse先生(Animal Medical Center)との共同研究の成果や動画も交え、PSSにおける解剖の重要性、解剖学に基づいたシャント血管へのアプローチ、オープンでの外科手術法のみならず、コイル塞栓術のようなIVRの実施方法や内視鏡外科手術についても解説があり、豊富な症例を元に具体的に紹介した。またランチョンセミナー(朝日インテック(株))も開催され、医学領域で用いられている技術を小動物領域へ応用できる可能性と将来展望について解説があった。
 浅野先生は「今回、予想以上に参加者が集い、自分たちが思っている以上に興味をもっていただいていると改めて実感した。今回の第1回学術集会は講義形式がメインとなったが、次回第2回は色々な形式で展開したいと考えている」とのこと。また今年2025年8月、Veterinary Endoscopy Society(VES)/Veterinary Interventional Radiology& Interventional Endoscopy Society(VIRIES)の国際大会が、日本・京都で実施される。
小動物のIVRにおける本学会の牽引力がますます期待される。
詳細は以下より。
【(一社)日本獣医インターベンショナルラジオロジー学会】
https://www.jsvir.net/index.html

【VES/VIRIES in Kyoto 2025】
VES

Annual Conference

VIRIES

Annual Meeting (2025)



ドライラボ「~基本的なIVRの手技を習得」の講義と実習の様子


本学会会長の浅野和之先生


国立がん研究センター中央病院、放射線診断科医長、IVRセンター長の曽根美雪先生


今大会参加者全員にて



展示ブースの様子およびランチョンセミナーの様子

犬と猫のサプリメント研究会 第2回セミナー 開催

 2025年1月12日(日)、山口県周南市立徳山駅図書館にて犬と猫のサプリメント研究会第2 回セミナーが開催された。
 今回は2部制で、第1部は「犬バベシア症の今と昔」と題し、鳥取大学の井口愛子先生が犬バベシア症の分布や診断、そしてサプリメントを併用した治療検討について解説された。第2部は「私のバベシア研究を振り返る」と題し、シラナガ動物病院の白永伸行先生が大学時代から現在までの研究をふまえ、犬バベシア症のこれまでの治療方法、使用する薬剤の変化、バベシア症や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を含むマダニ媒介性疾患の現状およびその対策について、山口県周南市の地域環境をふまえて解説された。
 会場は徳山駅直結の図書館内にある交流会議室で、蔦屋書店が併設されており、洗練された空間で、参加者は熱心に耳を傾けた。
 本研究会会長である菊水小さなどうぶつ病院の後藤正光先生は「獣医学に関する優れた研究はその製品の開発・販売によってはじめて動物と飼い主に大きな恩恵をもたらすと考えている。また、動物だけでなく人のサプリメント企業ともかかわりながら、正しい情報が飼い主に届くように本研究会の活動をすすめていきたい。」と述べた。


会場の様子

東海国立大学機構および日本全薬工業(株)
Sharing Medicineのための包括連携協定を締結

 2025年1月9日(木)、岐阜大学と名古屋大学を運営する東海国立大学機構(THERS)と日本全薬工業(株)がOne Medicineによる創薬・先端医療研究の革新およびSharing Medicine(人獣共通医療学)の実現を加速させることを目的に包括連携協定を締結するとして、その締結式が岐阜大学にて実施された。
 THERSは、岐阜大学と名古屋大学という2つの国立大学同士が県をまたいで統合した全国初の一法人複数大学制度による国立大学法人であり、現在、連携拠点支援事業としてOne Medicine創薬シーズ開発・育成研究教育拠点(COMIT)を展開している。COMITは、One Medicineの考えのもと、分野横断的に連携可能な国立大学法人の強みを活かし、医学と獣医学を包括する「Sharing Medicine」の分野を開拓することを目的に活動する拠点であり、動物用医薬品市場のリーディングカンパニーであり、全国に幅広い販売網を有する日本全薬工業(株)と連携することで、高度な研究成果や最先端情報を国内外のネットワークを通じて広く発信する体制を目指したものだといえる。
 協定内容は、①双方の研究成果の社会的活用、②個別の共同研究や受託研究その他具体的な取り組みおよび連携事業の実施、③最新の研究成果や社会的課題に関する情報交換、④上記の事項のうち、とくにSharing Medicine分野に関する社会実装に向けた取り組み、の4つが主なものとなる。
 そのなかで、日本全薬工業(株)代表取締役社長の福井寿一氏は「動物業界はダイナミックに変化しており、今回の提携によって高度な研究成果、そのシーズを獲得し、事業性の高い製品を開発供給することで小動物臨床の現場にも貢献できる活動ができると考えている。国内製薬メーカーとして中長期的な視点をもって優れた製品を日本および世界に供給できるよう努めていきたい」と述べた。
 全国の小動物の臨床現場にとってもその変化が実感できる取り組みとなるか、今後の動きが注目される。


締結式での日本全薬工業(株)の福井寿一社長(左)とTHERSの松尾清一機構長(右)

農林水産省および環境省実施 
令和6年度 愛玩動物看護師現況調査<アンケート>

調査期間 2025年1月6日(月)~2025年2月14日(金)

愛玩動物看護師制度の検討に資することを目的として、
農林水産省及び環境省において愛玩動物看護師の登録者全員を対象とした現況調査を実施します。
下記ウェブページのURL、二次元バーコードよりご回答お願いいたします。

本調査において多くのご回答をいただき、愛玩動物看護師の活動状況等に関するデータを得ることが、愛玩動物看護師制度の発展に寄与するものとなります。
質問は最大22問(5分程度)です。
愛玩動物看護師の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

※本調査への回答は任意であり、回答しないことにより不利益はありません。また、本調査では個人情報を取得するものではなく、調査結果については農林水産省又は環境省ウェブページ等で公開されますが、回答者の個人情報が特定されることは一切ありません。

https://forms.office.com/r/hmbFHkBWWM