小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

第27回日本獣医皮膚科学会学術大会・総会開催される

 2024年3月10日(日)、東京・国際ファッショセンタービル KFCホールにて、第27回日本獣医皮膚科学会学術大会・総会が開催された。当日会場参加者は266名、WEB参加を含めると410名を超える参加者が集まった。
 本年はCOVID-19によるオンライン開催期間を経て、2022年より3度目の対面開催となり、会場には大勢の国内外の獣医師、愛玩動物看護師、グルーマーなどの姿がみられ、臨床現場で小動物の皮膚に携わっている方々の熱意の高さがうかがえた。
 本大会のメインテーマは「皮膚における抗微生物治療を見直す」であり、日本国外の治療ガイドラインや抗菌薬の推奨度の紹介、近年問題視される薬剤耐性真菌感染症への課題と取り組みなど、皮膚の臨床にかかわるうえで避けては通れない多くの問題が臨床講演やシンポジウムで取り上げられ、会場は大勢の聴講者であふれた。
 その他にも一般演題発表には多くの聴講者が参加し、熱心に意見を交わす姿がみられた。ポスターセッション、ランチョンセミナー、企業展示等にも多くの参加者が集い、今後の本大会の盛り上がりがさらに高まる未来が感じられた。
 次回第28回日本獣医皮膚科学会学術大会・総会は本年と同じく2025年3月に開催予定。

加納 塁学会長の開会の挨拶

シンポジウムの様子

(一社)日本獣医再生医療学会主催 第1回細胞培養技術セミナー 開催

 2024年1月19日(金)、(一社)日本獣医再生医療学会(The Japanese Society for Veterinary Regenerative Medicine::JSVRM)主催による「第1回 細胞培養技術セミナー」がアズワン(株)殿町ソリューションリサーチラボ(神奈川県)にて開催された。

 セミナーは、犬脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いて、細胞培養指導士を講師として迎え実施。午前中は細胞解凍、細胞数計測、細胞数調製や細胞継代・播種のデモンストレーションを、午後は前出の内容の実習が行われた。朝9:30~夕方17:00まで受講生達は講師の下で細胞を正しく観察し、正しく培養し、正しく細胞数を計測できているか、また必要な試薬・培地の準備、器具の扱い方などを実践的に学んだ。また、講師に直接質問し、細胞培養技術を見直し、日頃の疑問点を解消していった。受講終了後は、本学会主催の細胞培養技術セミナーの受講を終え、細胞培養に関する確かな技術と理論を習得した証として「修了証書」が授与された。
将来的には年に2回実施を目指していきたいと本学会常務理事の上田忠佳先生はいう。

 2025年には区切りとなる日本獣医再生医療学会第20回記念大会が開催される本学会。再生医療に欠かすことのできない細胞培養技術の向上を牽引する存在として、ますますの期待が寄せられる。
 本学会の詳細は下記より。
 https://www.jsvrm.org/


セミナーの様子。受講者は講師の先生方から日頃のくせを指摘されたり、日々の疑問を質問したりと、熱意溢れるやりとりが続いた


第1回細胞培養技術講習会を修了された4名の先生方と、本講習会の講師を務められた細胞培養指導士の先生方

CAICM 内閣感染症危機管理統括庁 主催シンポジウム

 2024年1月12日(金)CAICM(内閣官房内閣感染症危機管理統括庁)主催によるシンポジウムが、東京、千代田区の東京国際フォーラムで開催された。テーマは「新たな感染症危機にいかに備えるか~国民の生命・健康と生活・経済の両立を目指して」。
 冒頭の、岸田文雄内閣総理大臣のビデオメッセージにはじまり、主催者である新藤義孝氏(感染症危機管理担当大臣)による挨拶、続いて齋藤智也先生(国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター長)による基調講演が行われた。基調講演で登壇した齋藤先生は「パンデミックと行動計画」をテーマに、パンデミックの歴史や感染症における危機管理のサイクル、発災前の予防・早期探知の重要性、発災後のフェーズごとの対応、ガイドラインや特別措置法などの法的整備などを紹介。次のパンデミック、発災に備え「平時も有事も読んでもらえる行動計画をたて、その計画を常に読んでもらえる」ようにすることの重要性を訴えた。

 後半のパネルディスカッションは、モデレーターに稲継裕昭先生(早稲田大学 政治経済学術院)を迎え、10名の有識者をパネリストとして招き実施。昨年2023年9月1日に発足した「内閣感染症危機管理統括庁(Cabinet Agency for Infectious Disease Crisis Management :CAICM)」についての紹介が行われた。本庁は感染症危機管理のいわゆる「扇の要」にあたる組織であり、パンデミックをおこす感染症や薬剤耐性(AMR)感染症の対応においても中心となって指揮をとるとのこと。また想定される有事と平時の行動計画や感染症危機管理対応訓練の全体像なども解説された。厚生労働省からは、本省の改組、感染症法の改正や“国立健康危機管理研究機構”いわゆる日本版CDCの新設などについて紹介された。また、2019年からのコロナ禍での大学教育、医療、企業活動の様子や、情報の慎重な取り扱い、都市部と地方との双方向のフラットなネットワークづくりの必要性などについて多角的な意見が述べられた。

 令和6年能登半島地震の発災から間もない開催となった本シンポジウム。会場参加者は78名、オンライン視聴者は427名にのぼり、今後CAICMが担う役割の重要性を改めて認識させられるシンポジウムとなった。

CAICM(内閣感染症危機管理統括庁)に関する詳細は以下より。
https://www.cas.go.jp/jp/caicm/index.html


パネルディスカッションの様子。モデレーターに稲継裕昭先生(早稲田大学 政治経済学術院)を迎え、大曲貴夫先生(国立国際医療研究センター国際感染症センター)、工藤成生氏((一社)日本経済団体連合会、危機管理・社会基盤強化委員会)、佐々木昌弘氏(厚生労働省 健康・生活衛生局感染症対策部)、佐藤好美氏(産経新聞社論説委員)、鷲見 学氏(内閣官房内閣感染症危機管理統括庁)、瀬戸泰之(東京大学医学系研究科)、奈良由美子先生(放送大学教育学部)、平井伸治氏(鳥取県知事、全国知事会新型コロナウイルス緊急対策本部長)、福島靖正氏(国立保健医療科学院※前厚生労働省医務技監)、村上陽子氏(日本労働組合総連合会)の10名の有識者をパネリストとして招き実施


内閣総理大臣 岸田文雄氏。「令和6年能登半島地震において本庁の果たす役割は大きい。コロナ禍での経験をふまえ新たな行動計画に生かし感染症への備えを万全にし、皆が安心して豊かな暮らしを送れるように」と会場へメッセージを送った


感染症危機管理担当大臣 新藤義孝氏。1月1日に発生した令和6年能登半島地震にふれ哀悼の意を示すとともに本庁が大いに貢献し、復旧・復興・被災者支援に向け力を尽くすことを改めて明言


斎藤智也先生。発災に備え「平時も有事も読んでもらえる行動計画をたて、その計画を常に読んでもらえる」ようにすることの重要性を訴えた

(一社)ペットエンバーミングラボ 認定試験 開催

 2023年12月9日(土)10日(日)、東京・日本獣医生命科学大学で(一社)ペットエンバーミングラボ主催による認定試験が実施された。
 本ラボは、ペットのエンバーミング(遺体保全)事業の実施とエンバーミングを行う組織で形成される。
 愛犬・愛猫に対しても、人同様に丁寧な葬儀を行う飼い主が増加傾向にあるなか、安全な環境で安心してお別れできるよう、本ラボでは、獣医療の視点も併せもち、適切な対応ができるようにするための「獣医解剖学」「法医学」「獣医疫学」の視点からの教育も重視する。40年以上獣医大学で教育研究活動、解剖学の教鞭をとってきた尼﨑 肇先生(日本獣医生命科学大学名誉教授、本協会代表理事)の指導のもと、本組織はスタートした。

 試験に先立って実施された2日間の講義は「遺体の死後変化」「遺体の腐敗」「遺体保全の施術における細菌、真菌、ウイルス、寄生虫」や「筋肉や骨格、消化器系・呼吸器系、泌尿器系、循環器・神経系の特徴」も網羅し実施。実習では実際のエンバーマーによる施術を見学しながら体の構造、留意すべき感染症、使用する薬剤の安全性、消毒・殺菌・滅菌や、情緒的な精神状態に陥っている飼い主からの的確な情報聴取の方法なども学んでいった。

 ペットエンバーミングの長所について尼﨑先生は「ご遺体の安全な保全を可能にすること。たとえば突然の交通事故でご遺体に損傷があった場合も限りなく生前に近づけることで、飼い主遺族の悲しみを幾ばくかでも和らげることができる」「感染症の予防にも大変有効である。エンバーミングの施術により遺体の腐敗に伴って発生する感染症や人獣共通感染症を防ぐ効果も期待される」という。さらに「胸腔・腹腔内へ注入する保全液によっては、10日を超える保存にも安全に対応でき、これまでは時間的にやむを得ない事情で直接お別れができなかった飼い主遺族がしっかりとお別れの時間をもつことが可能となった」と葬儀までの安全・安心な時間を技術的に提供できるようになったという。

 エンゼルケアの延長線上にあるともいえる本技術は、コフィン(お棺)に納めるまでの飼い主への配慮まで考えると、動物病院で看護に携わるスタッフの役割をこれまで以上に広げると考えられる。本協会、そして本協会の認定を受けるペットエンバーマーは、今後ますますの活躍が期待される。


代表理事の尼﨑 肇先生。日本獣医生命科学大学名誉教授であり、動物の生態学、解剖学、感染症学に精通し、警察機関の依頼により多くの動物の検死にも携わる


本ラボの発起人の一人である丸木純子氏((株)Le-Ciel)。人でのエンゼルケアやエンバーミングとかかわるなか、ペットにも同様のお別れの必要を実感。すぐに火葬してしまうだけでは気持ちがついていけない飼い主遺族のため本協会で尽力する


認定試験に合格した4名。今後はペットエンバーマーとして
安全・安心なお別れまでの時間を飼い主ご遺族へ提供していく

2023年度第107回日本獣医麻酔外科学会学術集会 開催される

 2023年12月8日(金)~10日(日)、愛知県・名古屋コンベンションホールにて2023年度第107回日本獣医麻酔外科学会学術集会が開催された。
 本会は第11回アジア獣医外科総会が共同開催、第1回日本獣医内視鏡外科学会学術総会が同時開催となり、会場ではアジアの国々から参加した獣医師たちとの交流も目立った。
 参加者総数は1,027名で、一般演題、教育講演、ランチョンセミナー、シンポジウム、症例検討会、パネルディスカッション、セミナー等の各会場は聴講者で埋まり、立ち見があふれる講演会場も少なくなかった。
 若手獣医師向けのセミナーなども充実しており、実際に若手獣医師が交流しながら熱心に講演や企業展示をまわる姿は、本会が持続的な発展をつづけてゆく未来をうかがわせるものであった。
 実践的な講演や検討会のほかにも、ハートウォーミングパネルディスカッションといったプログラムも用意されており、ライフ・ワーク・バランス、働き方や業界のあり方を見据えて、多角的な立場からの意見の交換がなされた。また、多くのプログラムがアーカイブ配信で2週間視聴可能となっており、足を運ぶことが叶わなかったプログラムを振り返ることも可能である。
 本会は学術的な内容も充実しながら、業界のあり方や参会に関する部分でも配慮に富んでおり、これからの獣医療界の一端を牽引していく活力に満ちたものであった。
 次回第108回日本獣医麻酔外科学会学術集会は、2024年6月21日(金)~23日(日)、大宮ソニックシティ(埼玉)にて開催予定。
 

講演の様子
 

若手ハッピーアワーの様子

日本獣医輸血研究会(JSVTM)第9会学術講習会 開催される

 2023年11月26日(日)、東京・日本獣医生命科学大学にて日本獣医輸血研究会(JSVTM)第9会学術講習会が開催された。今回も対面とWeb配信によるハイブリッド形式にて実施された。
 はじめに認定プログラムとして、「血液製剤の種類と作製」を石田沙恵先生(苅谷動物病院グループ)が、「血液製剤の取り扱いと保存」を吉田佳倫先生(日本獣医生命科学大学付属動物医療センター)がそれぞれ解説された。
 また、「少しでも輸血を減らすために~エビデンスからみるhIVIG(ガンマガード)治療の実際~」と題し、小林 輔先生(動物総合医療センター千葉)が最新の論文を紹介しながら講演された。
 最後に、「輸血の未来を切り開く愛玩動物看護師の役割」と題したシンポジウムが行われ、内田惠子先生、中村知尋先生を座長に、春日 洸先生(日本小動物医療センター)、杉原思穂先生(日本獣医生命科学大学付属動物医療センター)、土田明歩先生(日本動物医療センター)の3名の愛玩動物看護師がパネリストとして参加し、現場での愛玩動物看護師の立場からの輸血の現状と課題について話し合った。
 また同日午前には、第2回JSVTM認定輸血コーディネーター認定試験が行われ、獣医師、愛玩動物看護師を含む27名が受験した。
 当日は気温も急激に下がり、外は冬並みの寒さであったが、質疑応答も活発に行われ、会場内は全国から集まった参加者の熱気に包まれた。
 近日、MVMにて、JSVTM輸血コーディネーターの座談会の模様を紹介予定。
 
 

会場の様子

第44回動物臨床医学会年次大会 開催される

 2023年11月18日(土)、19日(日)の2日間にわたり、大阪・大阪国際会議場(グランキューブ大阪)にて、第44回動物臨床医学会年次大会が開催された。本会は昨年2022年に引き続いての対面開催となったが、前回より規模を拡大しての開催となり、前年比の1.5倍となる参加者総数2,381名の活気に溢れた大会となった。
 大会内容も小動物臨床栄養学研究会、動物のいたみ研究会といった分科会ごとのセミナーや症例検討、一般口演、ポスターセッション、パネルディスカッションなどと幅広く、多くの講演で席が埋まり、立ち見も出るなど大いに盛況だった。学生や愛玩動物看護師の姿も多くみられ、講師と参加者のこれからのつながりが深まってゆく期待も感じられた。
 協力企業数も計162社で、全国から幅広いジャンルの企業出展が目立った。
 また、本年7月より山根義久先生から下田哲也先生へ理事長が交代となった。リーガロイヤルホテルでの歓迎交流会で、下田先生が述べた「本年次大会は、犬ぞりを引くように皆で運営していこう」という言葉は大変印象深いものであった。山根先生の理念がこれからも受け継がれてゆくことが伝わる交流会となった。
 対面での大会開催は、獣医師、愛玩動物看護師、講師、学生、企業関係者が活発に交流をおこなう貴重な場である。本大会はこれからも日本の動物臨床へ大きく寄与し、新たな気づきを得られる場となるはずである。
 次回の第45回年次大会は、例年の11月開催から変更となり、2024年10月5日(土)~10月6日(日)に同会場にて開催予定。
 
 

畜ガールズセッション 産業動物分科会
 

歓迎交流会で挨拶する下田哲也理事長

北海道小動物獣医師会年次大会2023 開催される

 2023年11月4日(土)、5日(日)の2日間にわたり、北海道・ロイトン札幌にて北海道小動物獣医師会2023が開催された。本大会は4年振りに2日間の対面形式にて実施され、獣医師対象、動物看護職者対象の2つのセミナーを軸に展開した。なお、オンラインでのアーカイブ配信が後日設定され、とくに北海道にある専門学校の学生はオンラインでの参加となる。
 初日の土曜は、獣医師ランチョンセミナーとして金井一亨先生(北里大学)が眼疾患と感染症について、獣医師学術セミナーとして川瀬広大先生(札幌夜間動物病院)が救急および集中治療について講演され、動物看護職セミナーとしては泉澤 有先生(北海道顎口腔外科センター)の獣医歯科および口腔外科の基礎についての講演などが行われた。また、企業セミナーとして、メディアでも著名な渡辺光博先生(慶應大学)が人医療における5-ALAの可能性について講演され、ミトコンドリアの活動に効果の期待できる5-ALAは、病気を治すのではなく、病気のもととなる老化に対して大きな武器になると述べた。
 2日目の日曜は、獣医師学術セミナーとして高野友美先生(北里大学)がFIPの診断および治療について講演され、動物看護職セミナーとしては坂東 元先生(旭山動物園)の野生動物種との向き合い方についての講演などが行われた。また、獣医師ランチョンセミナーとして堀 泰智先生(大塚駅前どうぶつ病院心臓メディカルクリニック)がACVIMガイドラインのMMVDのアップデートについて解説された。そして、企業セミナーとして枝村一弥先生(日本大学)が犬猫のOAに関する最新治療について講演された。獣医師・動物看護職者合同プログラムとしては氏政雄揮先生(アームズ(株))が動物病院の運営について、郡山尚紀先生(酪農学園大学)が問題行動について、村田佳輝先生(むらた動物病院)が人獣共通感染症について講演された。
 このほか、2日間にわたり、獣医師症例検討会や動物看護師発表会などが行われた。
 紅葉するも日差しの眩しい陽気のなか、2日間で獣医約120名、動物看護職者約170名が参加、企業も約60社が集まり、展示会場も多くの方で賑わった。託児所も用意され、すべての参加者への心遣いが垣間見えた学会運営であった。
 

4年振りの対面形式での開催におしよせる参加者
 

村田先生による人獣共通感染症講演

第20回 獣医臨床感染症研究会セミナー(VICA) 開催

 2023年10月26日(木)、獣医臨床感染症研究会主催による第20回同研究会セミナーが、幕張本郷相葉ビル内 (株)サンリツセルコバ検査センター本部(千葉県)で開催された。
 「施設ごとの耐性傾向に基づいた抗菌薬使用ルールを考える」をテーマに、「アンチバイオグラムについて」木村祐哉先生(ヤマザキ動物看護大学)、「二次診療施設(小動物)における抗菌薬選択~アンチバイオグラムの臨床的有用性~」福岡 玲先生(東京大学)、「ヒトでの運用例 Empiric therapyの際の判断基準として」高橋 孝先生(北里大学)の講演が行われた。

 講演ではアンチバイオグラムの概要から「より有効活用するために、正確な集計のための正確な検査結果の大切さ」「ローカルアンチバイオグラム(地域としてのデータ集計)」や、「東京大学動物医療センターにおけるアンチバイオグラムの活用から診断までのゴールドスタンダード」、「感染症の治療の三角形」などが症例を交えて紹介された。また人医療からのアプローチとして北里大学メディカルセンターでの状況としてアンチバイオグラム作成のフェーズの考え方や、抗菌薬使用量に関する指標の他、最近開発されたAIを活用したマルチプレックスアッセイにおいてのサンプルの量と時間を節約できる有効性やウィークポイントなどが紹介された。

 抗菌薬の適正使用と微生物検査あっての抗菌薬使用という流れになる。つまり微生物検査をするとなると結果としてアンチバイオグラムをつくれる。「人の領域のように、獣医療でもアンチバイオグラムを作成していくこと」の重要性を、あらためて当会は強く推奨した。
 今後の獣医療における本研究会の役割にますます期待が寄せられる。

本研究会の詳細は以下より。
https://veterinary-nurse.jimdofree.com/


本研究会会長の村田佳輝先生(むらた動物病院)による開会の挨拶。本会会員の栗田吾郎先生(北里大学)の薬剤耐性率に関する論文が世界で評価されたことを紹介するとともに、アンチバイオグラムは本会の基礎、骨組みを構成するものであると話す


参加者たちへ、薬剤感受性試験の内容について解説する露木勇三先生((株)サンリツセルコバ検査センター)、高橋 孝先生、福岡 玲先生、
木村祐哉先生


閉会式にて、鈴木達夫先生((一社)北里柴三郎記念会、(一社)松岡科学研究所)のスピーチ。昨年(2022年)に松岡科学研究所が研究開発した成果を松研薬品工業(株)ともにさらに展開する計画を発表。
「感染症の基本は予防医学だと思う」「予防医学の新しいワクチン、遺伝子ワクチンを含めた研究開発に努めたい」という

JAMLAS(日本獣医療倫理研究会) 第26回研究会 開催される

 2023年10月15日(日)、東京・新宿京王プラザホテルにてJAMLAS(日本獣医療倫理研究会)第26回研究会が開催された。本年度より、新会長として白永伸行先生(シラナガ動物病院)が就任し、前会長の山村穂積先生(アニホスフォレスト(株))とあわせ、本研究会の開催の挨拶が行われた。
 当日は全部で4演題が行われ、はじめに「使われてしまう名称-商標権とドメイン」と題し、座長に上野弘道先生(本会副会長、日本動物医療センター)を据え、山村穂積先生が講演された。内容は実際に「アニホス」の名称が使用された経験を交え、その経緯と対策を解説するというもので、非常に興味深い内容であった。講演後の質疑応答でも多くの具体的な質問がされ、動物病院名の商標権を取得しておくとトラブル回避につながるという話を中心にすすめられた。また、複数名の顧問弁護士による、エコー検査およびカルテの訴訟に関する位置づけにおける裁判例の紹介や、夜間診療やエキゾチックアニマルの医療水準について、説明義務についての法律上の考え方などが紹介された。その後、ディスカッションが行われ、具体的な例を交え、活発な意見が交わされた。
 来場者は動物病院の先生の他、弁護士の先生および企業関係者なども多く集まった。臨床現場でトラブルになりやすい状況にどう対応するか、訴訟や裁判例を活用し、より安心できる小動物臨床を提供しようとする参加者の熱意を感じる内容であった。新会長の白永先生の「本会は最先端の獣医療を先頭で牽引するのではなく、後方のカバーリングを受け持つ団体である」というコメントが印象的であった。
 

会場の様子

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