小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

(公財)日本ヘルスケア協会「ペットパスポートプロジェクト」、中野区から始動

 2024年11月21日(木)東京・中野区役所にて、中野区地域支え合い推進部 地域包括ケア推進課と(公財)日本ヘルスケア協会(JAHI)の共催で実施された“第2回中野どまんなか市”にてJAHIの“人とペットとの共生によるワンヘルス部会”副部会長の熱田 靖氏による、「ペットと暮らす明るい未来~ペットと暮らすことによる効果とペットパスポートプロジェクトについて~」のセミナーが実施された。

 本セミナーでは、ペットと暮らすことによる効果の事例を、高齢者介護施設でのアニマルセラピー活動を例に、幸せホルモンの「オキシトシン」やストレスホルモン「コルチゾール」について動物と接しているときと接していないときの変化の数値を紹介。また顔感情認識機能ソフトを活用し、アニマルセラピーの介入前・介入中・介入後に分けて「高齢者笑顔測定」も実施するなど、客観的な数値を示すことで、ペットと暮らすことにより、健康寿命によい効果が得られることが解説された。これらの効果をふまえ「ペットパスポートプロジェクト」の重要性が訴えられた。
 本プロジェクトでは、家族であるペットを飼い主が責任をもって育み、動物が苦手な人も含め共に社会参加することを推進し、ペットと人がどこにでも一緒に行ける社会を構築することで、人・ペット・環境のヘルスケア(健康)を向上させ、長期的には人とペットの真の共生社会を実現することを目的とする。
 具体的な課題としては、「一緒に飲食店に入れない」、「ペット連れでは公共交通機関の利用に制限がある」という状況を、欧米諸国のように飼い主がペットとともに様々な場所へ出かけられるようにすることにある。欧米では飛行機内・空港内の犬用トイレが当たり前のように設置されており、ドラックストアやスーパーへも愛犬と入店でき、飼い主家族にとっては理想的な状況である。日本でもこうした環境を実現するには、まず社会に受け入れられるように、犬も飼い主ご家族も準備をしておくことが重要であり、そのために本プロジェクトではペットが各種施設に入るためのペットパスポート制度の構築を目指している。
 制度確立のため、しつけの基準を満たし医療確認を受けた犬の飼い主にペットパスポートを発行し、パスポートをもって加盟飲食店・加盟施設への入場ができるようにするしくみを構想している。
 その第一歩を中野区で取り組むこととなった。この取り組みは、欧米のような愛犬との生活を確立するだけでなく、災害発災時のスムーズな同行避難、そして同伴避難への地域の理解も育むと見込まれる。
 中野区と本協会の今後の取り組みに期待が寄せられる。

本協会の詳細は下記から閲覧可
https://jahi.jp/


開会式の様子。中野区の地域支え合い推進部長であり地域包括ケア推進担当部長の石井大輔氏は、今年2024年の第2回より(公財)日本ヘルスケア協会との共催になった中野どまんなか市を紹介。本イベントを通して「ペットパスポートプロジェクト」へのサポートへも尽力される。(公財)日本ヘルスケア協会(JAHI)会長 今西信幸氏。JAHIは超高齢化社会における健康寿命延伸とヘルスケア産業育成の実現を目指す。健康寿命の概念、ヘルスケアとは具体的に何をするか、わかり易く解説


「ペットと暮らす明るい未来~ペットと暮らすことによる効果とペットパスポートプロジェクトについて~」セミナー講演中の熱田氏。ペットが人にもたらす効果、飼い主家族と社会での安心した行動が期待される「ペットパスポートプロジェクト」の推進について、実現までのフローを交え、中野区民が集う会場へ理解と協力を呼びかけた

(一社)日本動物看護職協会 主催 第14回動物看護大会 開催

 2024年11月24日(日)日本獣医生命科学大学E棟(東京都・武蔵野市)で、(一社)日本動物看護職協会(JVNA、会長 横田淳子氏)主催による、第14回動物看護大会が開催された。

 2019年6月に愛玩動物看護師法が施行され、2023年には国家資格を有した愛玩動物看護師が誕生し、現在の愛玩動物看護師の登録者数は2万1,734名(2024年10月1日現在)を数える。今後は国家資格取得後に、資格を活かして動物の医療や動物との共生社会に貢献していくとの考えのもと、今大会は「目指せ! 動物看護エキスパート!」をテーマに展開。シンポジウムは「訪問動物看護を考える」、実習は「静脈留置編」を実施。専門性の高い愛玩動物看護師に着目し腫瘍科での経験者の講演も実施された。また、動物との共生社会への貢献の観点から、災害時の地域福祉に関するセミナーも実施された。口頭発表では9演題が発表され、「重積発作を呈した犬に対する動物看護介入の一例」(谷口有果氏、ALL 動物病院行徳)がヒルズアワードを、「犬の年齢と歯周病の進行に関する調査報告」(中島佳代子氏、とがさき動物病院)がJVNA優秀賞を受賞した。

 本協会は、来年度より愛玩動物看護師の職能団体となり名称も新たに「日本愛玩動物看護師会」となる。
 日本における愛玩動物看護師の活躍を牽引する団体として、益々の発展が期待される。

本大会のアーカイブWEB配信は2024年12月1日(日)~2025年1月21日(火)まで視聴可能。詳細は下記URLを参照。
https://www.jvna.or.jp/


開会式の様子


本協会会長 横田淳子氏。「国家資格を有することは、すなわち社会責任が発生するということ」と語った。今後見込まれる重責の支えともなる「日本愛玩動物看護師会」への所属を参加者に呼びかけた



会場には、長きにわたり愛玩動物看護師を支え続けている片山さつき参議院議員、愛玩動物看護師制度の主務省の1つである環境省の中田 宏環境副大臣がお祝いにかけつけた


愛玩動物看護師実習セミナー「静脈留置編」の様子


口頭発表の様子


口頭発表を審査した近江俊徳先生(日本獣医生命科学大学)。いずれの発表も明日の愛玩動物看護を担う素晴らしい発表であったと総評した


口頭発表者全員との記念撮影

落谷孝広先生:エクソソーム 研究者世界1位・伊藤 博先生メディカル・アーク代表:東京ベンチャー技術大賞特別賞 受賞祝賀会 開催される

 2024年、(株)メディカル・アーク(以下、MA社)のサイエンスアドバイザーを務める落谷孝広先生(東京医科大学医学総合研究所 未来医療研究センター分子細胞治療研究部門 特任教授)および代表の伊藤 博先生(東京農工大学 名誉教授)が広く功績を認められた。これを受けて、犬がん検査Ark-Test 推進戦略プロジェクトチーム主催の祝賀会が、2024年11月22日(金)、inumo 柴公園レストランWande Shiba(東京都・港区)にて開催された。

 落谷先生は、「ExpertScape」および「Scholar GPS」という独立した2 機関の調査において、
Extracellular vesicle(エクソソーム)の研究者別ランキングでともに世界1 位に選出された。
研究者の研究成果を客観的に定量化する指標の一つとして用いられるクラリベイト・アナリティクス社が毎年公開する高被引用論文著者(HCR)に2019年から5年連続で世界のトップ0.1%の研究者に選ばれている。細胞外小胞に関する研究業績が世界的に広く評価されたと考えられる。
伊藤先生は、わずかな血液でイヌのがん・がん種判定をする技術の研究開発を評価され令和6年度の「東京都ベンチャー技術大賞・特別賞」を受賞した。
「東京都ベンチャー技術大賞・特別賞」は革新的で将来性のある製品・技術、サービスを表彰するものである。12種類の「がん種判定」「がんであるかどうか」も含めて高感度、高精度の検査記述の研究開発に尽力してきた。

 MA社は、落谷先生、伊藤先生のダブル受賞を機に、今後は「犬がん検査Ark-Test」のプロモーション、啓蒙普及に努めるという。
 本検査が一日も早く広く周知され、一次診療の現場、ホームドクターのもとで愛犬のがんの早期発見と愛犬の質の高い一生につながることが望まれる。
 今後もMA社による犬のがん検査技術の向上、啓蒙の牽引が期待される。

詳細は下記より。
https://medical-ark.com/


会場の様子


伊藤 博先生(右)と落谷孝広先生(左)

日本獣医輸血研究会 第11回学術講習会・第3回JSVTM認定輸血コーディネーター試験 開催される

 2024年11月17日(日)、東京・日本獣医生命科学大学で日本獣医輸血研究会 第11回学術講習会・第3回JSVTM認定輸血コーディネーター試験が開催された。
 午前には認定試験と並行して認定講習「輸血の適応疾患と限界」(瀬川和仁先生)「血液製剤の投与法」(加藤真理子氏)が行われ、午後からは教育講演「なぜ輸血が必要となったかその原因を知ろう」(下田哲也先生)、トピック講演「オープンAIからみた獣医輸血の最新情報」(久末正晴先生)、瀬川和仁先生を座長にシンポジウム「血液型の謎」が行われた。シンポジウムでは近江俊徳先生より「人と動物の血液型について」の講演があり、「ネコAB式⾎液型判定⽤キットの⽐較試験について〜カード凝集法とイムノクロマト法〜」の研究が中村知尋氏より発表され、その後には総合討論が行われた。
 臨床現場でますます重要になっている輸血療法の最新知見や情報を学ぶことができる機会を、参加者が熱心に活用している姿がうかがえた。
動物病院における輸血の中心的な役割となる人材を育成するための本研究会の認定制度「JSVTM認定輸血コーディネーター」が、これからの臨床現場で増えてゆき、活躍することに期待する次第である。
 なお本講習会のすべてのプログラムは、VETSCOPEにて購入視聴が可能である〈視聴期間:2024年12月2日(月)~2025年1月1日(水)〉。

内田恵子会長の挨拶

講演の様子

北海道小動物獣医師会 第30回記念年次大会 開催される

 2024年11月3日(日)、4日(月・祝)の2日間にわたり、北海道・グランドメルキュール札幌大通公園(旧・ロイトン札幌)にて北海道小動物獣医師会 第30回記念年次大会が開催された。本大会は今回節目の30回を迎え、2日間の対面形式にて実施された。今回から会場の2階から3階のホール全体を使用する形となり、計5つの会場で獣医師プログラム、アニマルケアスタッフプログラム、企業セミナーなどが行われた。
 獣医師ランチョンセミナーでは、初日の日曜には村山信雄先生(犬と猫の皮膚科)による「なぜ外耳炎は耳を洗うのか なぜ外耳炎はステロイドを点耳するのか」((株)ビルバックジャパン協賛)が、2日目の月曜には佐野忠士先生(帯広畜産大学)による「ガイドラインから考える!周術期の麻酔・疼痛管理」((株)V and P協賛)が行われ、両日ともに多くの聴講者で賑わった。その他に獣医師プログラムでは腹腔腫瘍、猫の嘔吐と犬の膵炎、潰瘍性角膜炎、膝関節の外科などのセミナーが、アニマルケアスタッフプログラムではリハビリテーション、猫の保定、グリーフケア、予防医療、沖縄美ら海水族館での健康管理などのセミナーが行われた。その他行動学、糖尿病、腎臓の健診、ワクチンなどを取り上げた講演、そして獣医師症例検討会やアニマルケアスタッフ発表会など多岐にわたる内容であった。
 当日はあいにくの雨模様ではあったが、2日間で獣医師が約140名、動物看護職者約180名が参加。企業も約60社以上が集まり、スタンプラリーなどの実施により、展示会場も多くの参加者で賑わいをみせた。


開会の挨拶をする掛端健士会長

講演の様子

第11回 猫の集会 開催される

JSFM(Japanese Society of Feline Medicine、ねこ医学会)主催「猫の集会」が、2024年11月10日(日)、浜松町コンベンションホール(東京都港区)にて開催された。
獣医師向けプログラム・愛玩動物看護師向けプログラム・市民向けプログラムが、3つのホールでそれぞれ行われた。
獣医師向けプログラムでは「つまる猫」というテーマで、「血管編」(新居康行先生・JASMINE どうぶつ総合医療センター)、「鼻、肺/粘液栓編①②」(末松正弘先生・AMC末松どうぶつ病院、藤原亜紀先生・日本獣医生命科学大学)、「消化管編:食道から大腸まで」(藤原玲奈先生・岩手大学)、「皮膚編」(江角真梨子先生・VET CRAFT)、「胆管編」(瀬戸口明日香・JASMINE どうぶつ総合医療センター)、「尿管編」(岩井聡美先生・北里大学)、全7題の講演のほか、ランチョンセミナー(提供:ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルスジャパン株式会社)で福島建次郎先生(どうぶつの総合病院 専門医療&救急センター)が「SGLT2阻害薬はゲームチェンジャーとなりうるのか」と題し、猫の糖尿病の治療薬について解説された。本セミナーではゲストとしてカナダの猫専門医Susan Little先生(Bytown Cat Hospital、Merivale Cat Hospital)が紹介され、最後まで聴講されていた。
愛玩動物看護師向けプログラムでは、「猫のがん」をテーマとし、猫のがんについての基礎知識、院内での管理方法、治療中の猫や飼い主に対する心身のケアについて4題の講演とパネルディスカッションが、またCATvocateアドバンス・マスター限定プログラムも行われた。
市民向けプログラムでは、服部幸先生(JSFM副会長・東京猫医療センター)、入交眞巳(東京農工大学)、井上舞先生(ロイヤルカナン ジャポン)浅見優樹先生(AniCure動物病院)、入交眞巳先生(東京農工大学)、石田卓夫先生(JSFM会長・赤坂動物病院)、岩井聡美先生(北里大学)、小林哲也先生(日本小動物がんセンター)、佐藤愛実先生(岡山理科大学獣医学教育病院)らが、「こんなときどうする?」というテーマで、猫との日常における問題対策について講演された。また同じ会場内には猫グッズを扱うショップが出店し、市民参加者たちを楽しませていた。
ポスターセッションコーナーではディスカッションタイムが設けられ、アワード表彰が行われた。
獣医療関係者・一般参加者合わせて合計645名の来場となった。

セミナーの様子

第12回 アジア獣医眼科学会年次大会(AiSVO)開催される The 12th AiSVO-ASIAN SOCIETY OF VETERINARY OPHTHALMOLOGY- annual conference in Tokyo

 東京・両国のKFC Hall & Roomsにおいて第12回アジア獣医眼科学会年次大会(The 12th AiSVO annual conference)が、開催国である日本をはじめ、海外からもあわせて200名以上が参加し、14社の協賛で2024年11月16日(土)、17日(日)の2日間にわたって盛大に開催された。
 Keynote lectureでは、Dr. Ron Ofriが「The amazing retina」「It’s not just Flash ERG! VEPs, MFERG, PERG and specialized protocols」「Acute blindness in our patients」の3タイトル、Dr. Kazuya Oikawaが「Pathophysiology and advanced imaging in feline glaucoma」「Feline Glaucoma: Etiology and medical therapy」の2タイトルを講演された。そのほか、一般講演16題、症例報告(研究報告)、ランチョンセミナー、ポスター発表39題などの充実したプログラムに加え、シンポジウムではAiCVOおよびAiSVOの歴史と今後の展望も紹介され、会場は常に講演者やパネリスト、参加者の熱気に包まれていた。
 また1日目の夜のGALA DINNERでは、conference参加者も加わってのけん玉のパフォーマンスを楽しみ、参加者投票型ゲームにおいては実行委員の先生方による相撲パフォーマンスが披露され、大いに盛り上がった。
 なお、本大会のベストポスタープレゼンテーションアワードはDr. Kazuki Tajimaらによる「Development Of Artificial Canine Corneal Endothelial Grafts For Endothelial Karatoplasty」、ベストオーラルプレゼンテーションアワードはDr. Hiroyuki Komatsuによる「Evaluation of Optic Nerve Head Morphology In Normal And Glaucomatous Eyes Of Cats Using Optical Coherence Tomography」が受賞した。
 次回のconferenceはタイ・バンコクにて2025年6月に開催されることが案内され、盛会のうちに本大会は幕を閉じた。

講演の様子

齋藤陽彦先生(中央)とアワードを受賞した田島一樹先生(左)・小松紘之先生(右)

次回大会案内を背景に今大会での謝意を伝える実行委員の先生方
左から、滝山直昭先生、加藤久美子先生、齋藤陽彦先生、前原誠也先生、伊藤良樹先生、岩下紘子先生

ひふゼミ 2024 開催される

 2024年11月3日(日)、福岡・TKPガーデンシティ博多にてひふゼミ2024が開催された。
 今大会のテーマは「皮膚のできもの・しこり」で、皮膚科の専門家と腫瘍の専門家が講演した。はじめに「皮膚科がみる皮膚の腫瘍」と題し、永田雅彦先生(ASC)が①皮膚腫瘍とは、②診断で大切なこと、③しこりの診かた、④代表的な皮膚腫瘍についてわかりやすく解説した。
 その後、小林哲也先生(日本小動物がんセンター)が皮膚科の臨床獣医師向けに「腫瘍科がみる皮膚の腫瘍」と題して2部構成で講演した。Part1「肥満細胞腫アップデート」では①プレドニゾロンは術前に使用しても肥満細胞腫の本質は変わらないこと、②領域リンパ節は原則切除すること、③外科マージンは腫瘍の大きさに応じて調整できること、④c-kit遺伝子検査は常に実施すること、⑤分子標的薬はイマチニブで十分であることを説明した。Part2「猫の皮膚扁平上皮癌の新しい治療法」では電気化学療法(ECT)について症例をまじえて適応となる病態、効果について紹介した。
 そして賀川由美子先生(ノースラボ)が「診療に活かす病理検査」と題して講演を行い、病理医が求める写真の撮り方、腫瘍を避け、境界部ではなく病変の中心をとること、クオリティーの高い細胞診標本の作製などについて説明した。
 最後に全員参加型ディスカッション「実はみんなも悩んでる 〜皮膚の腫瘍〜」が行われた。質問はすべてウェブを通して集められ、40の質問に担当する先生方が回答をした。とくに猫の皮膚扁平上皮癌へのECTの使用についての質疑応答が行われ、関心の高さが伺われた。
 ランチョンセミナーでは横井愼一先生(VCA Japan泉南動物病院)の「皮膚科の診断エラー学 しくじり先生 俺みたいになるな!」が日本全薬工業(株)協賛のもと行われた。
 来場者は51名、企業展示は6社であった。後日のウェブ配信での視聴希望者は211名であった。
 なお、来年2025年のひふゼミは新潟での開催を予定している。
 

 

会場の様子

(公社)日本動物病院協会(JAHA)年次大会2024 開催

 2024年11月2日(土)3日(日)にAP東京八重洲(東京都・中央区)にて、「(公社)日本動物病院協会(JAHA)年次大会2024」が開催された。
 今年の年次大会のテーマは「One Well-being~人と動物と自然にやさしい未来を目指して~」。獣医師プログラム、愛玩動物看護師プログラム、動物病院スタッフプログラム、ホスピタルプログラム、そしてCAPP/市民プログラムに分かれ展開された。また企業コラボ企画やオープンプログラムも実施され、参加者は思い思いの会場に足を運び、2日間かけて今年も大きな学びを得た。

 2日目には、今大会のテーマである「One Well-being」を主題とする大会基調講演としてJAHA理事を務める菊水健史先生(麻布大学)による「ご家族・地域・イヌのWell-Beingを支える獣医師、愛玩動物看護師の役割」、続いてJAHA会長を務める宗像俊太郎先生(あさか台どうぶつ医療センター)による「これからのJAHAが考えるOne Well-being:人と動物が一緒にどこにでも行ける社会へ」が実施され、多くの参加者が集った。宗像会長は、JAHAが考えるOne Well-beingの概念について紹介した。。これまで37年間、約2万3,000回の訪問活動を無事故で成し遂げているCAPP活動および本活動を牽引されている柴内裕子先生、千葉陽子先生(赤坂動物病院)、ボランティアとして貢献されている飼い主家族やボランティア犬や猫の活躍をたたえた。またシニア世代が動物とともに幸せにくらす人生のため、麻布大学と相模原市獣医師会と相模原市とJAHAが共同で、高齢になっても安心して動物と過ごせるようにするための卒後教育を行う動物シェルターを立ち上げる構想も紹介された。

 天候不良により交通機関へ大きな影響が出るなか、参加者は初日から400名にのぼった。
今後もJAHAの活動が期待される。
本協会の詳細は下記からも閲覧可。
https://www.jaha.or.jp/


CAPP/市民プログラムで紹介された「ドッグダンス~花は咲く~」にて、柴内裕子先生・千葉陽子先生(赤坂動物病院)、参加者の皆さん。
本プログラムでは「精神医療センターでの活動」(長谷部美知子氏、埼玉県立精神医療センター)、「高齢者施設での活動報告」(大林杏子先生、KOKOどうぶつ病院)、「リハビリテーションカレッジ島根での授業報告」(新山則子先生、ごんた動物病院)、「付添犬ハンドラーからの活動報告」(畔柳郁子氏、CAPP認定パートナーズ)のCAPP活動報告やCAPPボランティア表彰、そして虹の橋をわたったボランティア犬をしのぶ「CAPP活動動物メモリアルスライドショー」が行われた。また「『愛されキャラ』に育てよう! 愛犬と最高の関係づくりができるようにドッグスポーツのススメ」(森山知加子先生、JAHA認定家庭犬しつけインストラクター)、「子犬と子猫に幸せな未来を! こいぬこねこ教育アドバイザーからの提案」(寺町光成先生、寺町動物病院)の講演が実施された


大会基調講演。JAHA会長の宗像先生、JAHA理事の菊水先生が登壇。会場には多くの参加者集った。「JAHAは今後も人と動物の共生社会に向けて活動して参ります。子どもからシニアまで動物と暮らすことによるよい効果を社会共有し、自分たちの次の世代へ素晴らしい未来を残すためよい循環を育む一助となれればと願っています。」と宗像会長はいう


獣医師プログラムは、「JAHA流ラウンド 没入体験型症例検討会:この症状を呈する症例の診断、治療はどうやって進めていけば良いのか?」と題し初日の午前は内科疾患、午後は整形外科疾患の症例を取り上げた。ファシリテーター・講師(症例提供者)・回答者・会場による熱いデスカッションが行われ、まさに没入型の症例検討が展開された。また「認定医を目指すための症例発表会」、そして今大会でも石田卓夫先生(赤坂動物病院)による「症例発表スキルアップセミナー」が実施され、スライドづくりから発表時の目線にいたるまで言及され、参加者たちは熱心に耳を傾けた


愛玩動物看護師プログラムでは、初日は「ヒト医療現場の看護師さん・臨床検査技師さんから学ぶ」(金井 望氏、大学病院勤務看護師/小野澤裕也先生、麻布大学)の講義が実施され、2日目は「緊急疾患・救急対応」(塗木貴臣先生、TRVA動物医療センター)の講義が実施された。写真は「緊急疾患・救急対応」の講義の様子

特定NPO法人 日本医療政策機構(HGPI)・AMRアライアンス・ジャパン主催 国際対話 開催

 2024年10月25日(金)、Global Business Hub Tokyo(東京都・千代田区)にて、特定NPO法人 日本医療政策機構(HGPI)およびAMRアライアンス・ジャパン主催による、国際対話「地域に根付いた市民主体のAMR対策の展開に向けて~Antibiotic Smart Swedenの取り組みに学ぶ~」が開催された。

 人と動物、食品、環境にまたがる課題となる薬剤耐性(AMR)は、国際的な場でも年々注目を集めている。2019年には495万人が世界で亡くなっており、さらに、このまま手を打たずにいると2050年までに3,900万人が亡くなると想定される。いわゆるサイレント・パンデミックへの対策として、抗菌薬・抗生物質の適正使用の重要性が謳われる。関連省庁や研究機関や大学からの情報発信だけでなくそれを地域におとしこみ、ボトムアップの情報共有も重要だ。AMR対策を有効に機能させる方法として、スウェーデンでの「Antibiotic Smart Sweden」という複数の自治体や地域が参画するAMR対策での分野横断的な連携の推進等のワンヘルスアプローチに基づくEU全体のAMR対策を紹介した「EUにおける横断的なAMR対策の推進に向けて」をPatriq Fagerstedt先生(スウェーデン研究会議、薬剤耐性に関するプログラム連携イニシアチブ(JPIAMR))が、「Antibiotic Smart Swedenー 省庁間と自治体の連携」をCamilla Björn先生(スウェーデン国立研究所)、Gunilla Skoog Ståhlgren先生(スウェーデン公衆衛生庁)が講演した。続くディスカッション「地域に根付いた市民主体のAMR対策の展開に向けて」では、Lillan Fahlstedt先生(スウェーデンのタヌム市 公衆衛生戦略官)、さらに大崎正悟氏(姫路市 健康福祉局)、平山裕章氏(福岡県 保健医療介護部 ワンヘルス総合推進課)が加わり、AMR対策を牽引してきたスウェーデンと日本両国のそれぞれの取り組みが紹介された。

 医療機関、高齢者施設、教育機関、上下水道施設、農畜水産業施設等の分野横断的案連携を推し進めること、いっぽうでこうした機関は、市民の日々の生活と不可分であることから、地域に根付いたAMR対策の展開が急務であることが示された。今後も日本医療政策機構およびAMRアライアンス・ジャパンの牽引が期待される。
 詳細は下記URLからも閲覧可能。
【日本医療政策機構】
https://hgpi.org/
【AMRアライアンス・ジャパン】
https://www.amralliancejapan.org/


ディスカッションの様子

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