2024年8月28日(水)、29日(木)、東京都立産業貿易センター浜松町館にて(株)グラッド・ユー主催の「第3回Turn on the Radiation」と(有)スピリッツ主催の「HJS年次大会2024」が同時開催された。両講演は会場およびウェブサイトのハイブリッドで開催された。
第3回Turn on the Radiationでは、新坊弦也先生(北海道大学)の「X線が読めるようになるための読影の流儀」、HJS代表の中島尚志先生の「うんこは嘘をつかない~画像診断からはじめる猫の便秘診療~」、吉田宗則先生(クウ動物病院)の「臨床医がシングルユースの内視鏡を渡されたので使い方を考えてみた」、林 慶先生(コーネル大学)の「臨床家のための関節レントゲン画像診断学:基礎編その2」の講演が行われた。今日の臨床で画像診断の重要性はますます高まっており、その適切な運用は日々の臨床の質を大きく変える可能性を秘めている。日常的に行う画像検査だからこそ、自身の意思決定プロセスを再考して進歩につなげることが大切であり、よりよい診断(Diagnostic Excellence)の根底である「必要最小限のリソースで正確かつ適時に判断を行うこと」の重要性を、そして臨床での様々な実践法を紹介する講演となった。
第13回HJS年次大会2024では、中島尚志先生の「医療の手術の系統性と合理性を基に動物の標準手術を創出する」、佐々木一益先生(袋原どうぶつクリニック/秋田県立循環器・脳脊髄センター)の「他流試合から垣間見る伴侶動物臨床の現在地 ~ハイブリッド獣医師の視点~」、伊東 完先生(東京医科大学)の「医療のスチュワードシップ ― 持続可能な医療現場をつくるために」、石沢武彰先生(大阪公立大学)の「最新のヒトの手術:がんを治すために!」の講演が行われた。獣医療の向かうべきところやその道はすでに医療で示されており、医療から学べること、学ぶべきことはたくさんある。本年の講演は医療の世界の先生方が導いてくれる「進化」という新たな世界が、獣医療の向かうべき方向を再考する「道標」になるように企画された。
HJS年次大会ではシークレットセミナーと題し、参加者にしかきけない獣医療の問題点に深く切り込む内容もあり、台風の影響もあったなか、多くの参加者が熱心に耳を傾けた。
学会・セミナーレポート
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(一社)日本動物看護学会 第33回大会 開催
2024/9/9
2024年8月31日(土)および9月1日(日)、ヤマザキ動物看護大学 南大沢キャンパス(東京都八王子市)で、(一社)日本動物看護学会 第33回大会が開催された。
今大会のテーマは「過去から繋ぐ動物看護学の未来探究」。
初日はアメリカから招聘されたSandy Gregory先生(アメリカ動物看護師リハビリテーション協会会長)による基調講演「アメリカの動物看護に見る日本の動物看護学の未来探究」からスタート。豊富な臨床経験を通して、アメリカでの動物看護師の認定資格の取得や各州のちがい。救急・歯科・内科・循環器・麻酔/鎮痛・病理・眼科・行動診療・栄養学など専門性の高いスキルの保持などが紹介され、日本における愛玩動物看護師の今後の方向性が提案された。
続く教育講演①では「在宅訪問における愛玩動物看護師の役割-過去30年から繋がる大切にしたいもの そしてアップデート-」と題し吉田尚子氏(家庭動物診療施設 獣徳会 獣医師)、村上明美氏(同上 愛玩動物看護師)が、獣医師と愛玩動物看護師のそれぞれの立場から、チーム獣医療のなかで、在宅看護における愛玩動物看護師の活躍が今後ますます期待されると講演。
2日目のシンポジウムでは「被災動物の支援における動物看護師の役割」と題し基調講演として会田保彦氏(ヤマザキ動物看護大学 名誉教授)による「東日本大震災の検証と次に備える」が行われた。そして「能登半島地震における被災動物の救援について」のテーマで、大聖寺谷 敏氏((学)国際ビジネス学院 理事長)をパネリストに迎え実施された。
シンポジウムでは東日本大震災の被災状況が写真を使って会田氏より解説され、この震災の際に、動物救護の中心メンバーとなった故馬場国敏氏(馬場総合動物病院 獣医師)の献身的な数々の活動が紹介された。会田氏は被災地での動物救援の重要性を訴える上で、「現状では有事に被災地で愛玩動物看護師が組織的に活躍する体制が整っていない。学会を中心としてでも将来的には組織作りが必要である」と提言した。
大聖寺谷氏は、今年元旦に起きた令和6年能登半島地震を挙げ、発災時からの8ヵ月経過したこれまでの取り組みを紹介。地震発災後に石川県、石川県獣医師会がそれぞれ“人”と“動物”の救助活動を分担したこと、自身の学校で被災動物の一次受け入れから譲渡会までを実施していることを紹介。また、石川県がペット同室避難用のトレーラーを用意したものの、周知が足りず、利用者は1件であったことを例に、 “周知の大切さ”も実感したという。また、発災から8ヵ月が経ったものの、復興への道はまだ遠く、さらなるボランティアの必要性があると会場へ訴えた。
教育講演➁ではフリッツ 吉川 綾氏(ヤマザキ動物看護大学 准教授)による「臨床行動学-臨床現場で働く愛玩動物看護師への期待-」が行われた。臨床現場で働くすべての愛玩動物看護師に期待することとして「情報提供を通じた問題行動の予防」「問題行動の早期発見と適切な対応の第一歩」「動物の心理的ストレスに配慮した看護」の3つの項目を挙げ解説していった。愛玩動物看護師には、犬猫の心理的健康の維持・向上のために、ますます中心的な役割を担ってもらいたいとの期待を述べた。
今大会は一般演題は口頭発表23題、ポスター発表が21題が発表され、口頭発表では優秀賞を「動物福祉を考えたヘマトクリット管実習における擬似血液の応用」(喜多虹帆氏(日本獣医生命科学大学)ほか)、奨励賞を「産業動物分野における動物看護師の職務と可能性-自身の現場経験を通して-」(秋吉珠早氏(北海道農業共済組合研究所)ほか)、ポスター発表では優秀賞を「猫用トイレ砂の量の違いにおける排泄行動の比較」(小野寺 温氏(帝京科学大学)ほか)、奨励賞を「小動物用呼吸数測定デバイスの開発と測定精度の検討」(大久保明梨氏(岡山理科大学)ほか)が受賞した。
また「ネコAB式血液型を分類するカード凝集法とイムノクロマト法の比較試験と不一致例の新規同定」(中村知尋氏(〈公社〉日本小動物医療センター)ほか)と「真菌性鼻炎を呈した犬に対する生理用ナプキンを用いた動物看護介入の一例」(安藤真葵氏(岡山理科大学)ほか)が惜しくも受賞は逃したものの注目すべき発表であったことが選評に加えられた。
またランチョンセミナーは「愛玩動物看護師の愛玩動物看護師による愛玩動物看護師のための教育」(主催:VCA Japan 合同会社)、「服薬コンプライアンスの改善~薬局の服薬指導の視点から~」(主催:株式会社12(わんにゃん)薬局)が実施された。
今大会の参加者はオンライン参加含め611人。台風の影響下、大会中は雨もやみ天候に恵まれ、2日間の大会は学びの意欲にあふれる参加者たちの熱気に包まれた。
次回第34回大会は2025年8月中に酪農学園大学(北海道)で開催予定。
本学会の詳細は下記より。
https://www.jsvn.gr.jp/
セントヨハネホールにて行われた開会式の様子。台風が接近するなか、
両日とも天候に恵まれた
第33回大会長 山﨑 薫 氏((学)ヤマザキ学園理事長、
ヤマザキ動物看護大学学長)による開会式の挨拶
本学会理事長の石岡克己氏(日本獣医生命科学大学 教授)、
開会式の挨拶にて
Sandy Gregory先生(アメリカ動物看護師リハビリテーション協会会長)による基調講演の様子
吉田尚子氏(前出)、村上明美氏(前出)による教育講演①「在宅訪問における愛玩動物看護師の役割-過去30年から繋がる大切にしたいもの
そしてアップデート-」台風の影響で当日はオンラインでの開催となった
シンポジウムで講演をされる会田氏(前出)。気仙沼市大震災遺構・伝承館(宮城県立水産高校の跡地)、石巻市立大川小学校の慰霊碑、仙台市若葉区の荒浜海岸の巨大防災堤のスライドを公開され会場は息をのんだ。
また「津波てんでんこ」という言葉を通して、ときには皆が助かるうえで
一人ひとりの自助が大切になることを伝えた
シンポジウムでパネリストをつとめた大聖寺谷氏(前出)。
台風の影響で急遽、オンラインでの登壇となった。
能登半島地震から8ヵ月が経った被災地の復興に向けての現状を会場に伝えた
教育講演➁でのフリッツ 吉川 先生(前出)。
犬猫の心理的健康の維持・向上のために、臨床行動学においても、愛玩動物看護師に中心的な役割を担ってもらいたいという
閉会式。林 英明氏(酪農学園大学 教授)。来年の第34回大会は、
酪農学園大学にて実施される
第43回 比較眼科学会年次大会 開催される
2024/9/4
2024年8月31日(土)、9月1日(日)の2日間にわたって第43回比較眼科学会年次大会がオンラインにて開催された。本大会は、開催前から強い勢力の台風10号によって各地の交通機関が影響を受けたこともあり、開催会場であった千里ライフサイエンスセンターをサテライト会場とし、急遽オンライン開催することを28日午前中に決定された。急な開催形式変更にもかかわらず、サテライト会場とライブ配信視聴者を合わせて2日間で約230名が参加した。
開会式および閉会式では、大会長の河内眞美先生(住友ファーマ㈱)から、学会実行委員会をはじめ開催形式変更に伴う体制をととのえ実行した関係者、講演者、参加者への協力に改めて感謝が繰り返し述べられた。
特別講演は、「基礎と臨床を繋ぐ」をテーマに以下2講演が行われた。原 英彰先生(岐阜薬科大学)は「基礎から臨床へ-眼科基礎研究の面白さ/創薬プロセスにおけるトランスレーショナルリサーチ―の現状-」を動物種による眼組織の違いを解説されながら非ヒト霊長類を用いて、滲出型加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞症および緑内障モデルの確立、さらに自然発症の病態モデルを確立にいたる解説をされた。続いて、原 浩昭先生(新潟県立がんセンター)が「抗がん剤の眼毒性」として、近年の分子標的薬、遺伝子組み換え薬、免疫チェックポイント阻害薬といった抗がん治療が確立された状況で眼に重篤な副反応に、以前の検査では診断が困難であった病変を検出可能となっている現状を講演された。
臨床部会セッションは「眼底検査」をテーマに以下3講演が行われた。「眼底検査の基礎」として、小山博美先生(ネオベッツVRセンター)が、検眼鏡での眼底の見え方および具体的な観察例を解説した。続いて「OCT検査」について小松紘之先生(アニマル・アイケア東京動物眼科醫院)が検眼鏡では把握しきれない眼組織を観察・評価でき、近年急速に進化しているOCTの特性や獣医学領域での可能性を講演した。「ERG検査」では、前原誠也先生(ひかり町動物眼科)が網膜機能の検査に関して大切なことをメインに詳細な解説をされた。
基礎部会セッションは「眼科治療薬開発の最前線」をテーマに以下3講演が行われた。「多様な光受容の進化に基づく眼疾患治療開発」栗原俊英先生(慶応義塾大学医学部)は、光受容機構の発見から、多様性と眼の発生・形態・機能を対比させながら新たな治療技術開発への取り組みをご紹介された。「再生医療等製品の眼科治療とその非臨床評価について」三ヶ島史人先生(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)は、眼科における再生医療製品等の特性、非臨床評価・非臨床安全性評価で求められるポイントを解説された。「他家iPS細胞を用いた網膜再生医療の研究開発」亀井達也先生(住友ファーマ㈱)は、確率済みの網膜色素上皮細胞(RPE 細胞: H LCR011) および網膜シート(視細胞の層を含有する立体網膜: DSP-3077)をiPS 細胞から製造し、品質評価技術に加え、非臨床評価についても紹介された。
いずれの講演でもサテライト会場、オンラインのチャットやQ&Aを通して多くの質問が寄せられ、活発な意見・情報交換が行われた。
一般口演は、2日間を通してアワード審査対象演題を含めた24題、基礎研究から症例報告まで多岐にわたる演題が発表された。アワード受賞タイトルと演者は以下の通り。
「網膜病変を伴う視神経炎の4 症例」相澤あずさ先生
「犬の眼底画像識別ツールにおけるDifferential Image Diagnostic Analysisの有用性の検討および品種特異性の探索」小松紘之先生
「アーメド緑内障バルブを用いたチューブシャント手術後の早期房水産生抑制の有効性について」日下部浩之先生
「Optical Coherence Tomography を用いた暗環境下におけるラット瞳孔径測定の試み」山口晃輝先生
さらに、比較眼科学会の活動の一環である従来の専門医制度に並行し、新たにレジデントプログラム開始することもアナウンスされていた。
次回は2025年7月26日(土)、27日(日)にパシフィコ横浜にて開催される予定である。
(学会ホームページ https://www.jscvo.jp/#top)
(一社)全国動物専門学校協会 教職員研修会 開催
2024/8/30
2024年8月8日(木)「トリマー教員研修会」が(学)中央工学校 中央動物専門学校(東京・北区)、9日(金)「動物看護教員研修会」が(学)シモゾノ学園 国際動物専門学校(東京・世田谷区)で(一社)全国動物専門学校協会により実施された。
トリマー教員研修会は「加盟校のトリマー教員の皆さんによるお悩み解決座談会」をテーマに、前半はグループに分かれ、教員の指導力向上、本協会の検定対策や大会入賞のための指導等について座談会形式で情報共有をし改善・解決についてディスカッションした。後半に各グループでディスカッションの内容を発表。学生指導において技術的な到達度に開きが生じた際の工夫、地域ごとの特色、生徒の就職先を視野にいれた指導などが紹介された。他校の状況を共有することで、明日からの授業の質の向上へとつなげていくべく、会場は熱心に耳を傾け、また加盟校教員間の横のつながりを深めた。
翌日の動物看護教員研修会では、前半の小田民美先生(日本獣医生命科学大学)による「動物内科看護学実習の指導について」として、内科実習の項目のなかで、現場で多くの動物看護師が担当する採血、皮下注射を、シミュレーション教材を用いて実施。参加者たち自身でシミュレーション教材を作成し、2人組で互いに保定者と採血者を担い実習をすすめた。後半は佐伯 潤先生(帝京科学大学)による講演「適正飼養指導論・動物生活環境学・ペット関連産業概論」。愛玩動物看護師の国家資格は、獣医師と異なり、農林水産省および環境省の両省庁から免許をうける国家資格であること、今後の愛玩動物看護師には小動物臨床だけでなくより幅広い活動領域があることを指摘。講演を通して愛玩動物看護師の将来的な活動について大きな気づきを得られる講演となった。
来年の協会設立20周年に向けて、トリマー・愛玩動物看護師の技術基準の構築・向上を目指す本協会の活動に、ますます期待が高まる。
本協会の詳細は下記URLより。
http://www.zendousen.jp/
トリマー教育研修会の前に実施された、本協会のトリミング検定員資格認定研修会の様子。認定研修会では技術力を図るうえで評価基準が明確な「ラムクリップ」で実施
トリマー教員研修会の様子。グループごとにファシリテーターを決め話し合いをすすめる。左利きの生徒への対応、生徒の精神面のサポート、モデル犬の確保や引退時期など話題は多岐にわたった
動物看護教員研修会の様子。午前中は小田先生(前出)の指導のもと、お手製のシミュレーション教材を用いて採血、皮下注射を実習
動物看護教員研修会で行われた、佐伯先生(前出)の「適正飼養指導論・
動物生活環境学・ペット関連産業概論」の講演の様子
協会副会長の山田敏雄先生の挨拶
愛玩動物看護委員長の下薗惠子先生の挨拶
第21回 日本動物リハビリテーション学会学術大会 開催
2024/8/22
2024年8月4日(日)、日本獣医生命科学大学(東京・武蔵野市)で、第21回日本動物リハビリテーション学会学術大会が開催され、獣医師、愛玩動物看護師、理学療法士等が集った。また本大会で同時開催された総会にて、会長の交代や新たな理事の加入など新体制となり、新会長に柄本浩一先生(えのもと動物病院)が着任された。
教育講演では、「愛玩動物看護師法から考えるリハビリチーム獣医療」の演題で宮田拓馬先生(日本獣医生命科学大学 獣医保健看護学臨床部門)が登壇し、国家資格化され、今後は毎年3,000人ちかく誕生するといわれる愛玩動物看護師の職域・役割について事例を取り上げ紹介された。続く「獣医師が医療行為として行うチーム医療の動物のリハビリテーション」では、小林孝之先生(前会長、アニマルクリニックこばやし 院長)とともに、獣医師・愛玩動物看護師・理学療法士の立場から、獣医師の大山隆司先生(同左)、愛玩動物看護師の久保田莉奈氏(同左)、理学療法士の堀切朱加氏(同左)が、それぞれの役割や課題について、入院および外来でのリハビリテーションについて症例を交え具体的に紹介。情報の共有、リハビリの評価や、リハビリの終了目標設定について紹介した。
午後は昨年に続き今大会でも「症例相談会」が実施され、「両側膝蓋骨内方脱臼」森 由季子氏(アニマルクリニックこばやし、理学療法士)、「足関節過伸展症候群疑い」川村和美氏(帝京科学大学 愛玩動物看護師)、「脊髄障害 疑い」神沢優希氏(久米川みどり動物病院、愛玩動物看護師)、そして「重症の頚部脊髄症の犬の3例」植村隆司先生(KyotoAR動物高度医療センター 獣医師)が、日々の診療で発生した疑問への解決を求め、それに対し本学会の理事の他、会場の参加者からも様々なアドバイスやディスカッションが行われた。新会長の柄本先生がスライドを用いた詳細な解説も行い、必要なのは機能改善を目的としたリハビリテーションか、介護を目的としたリハビリテーションかの見極めも大切と説明された場面もあった。相談者も、会場の参加者も理解を深めることができたのではないだろうか。
また、北海道大学大学院保健学科学研究院リハビリテーション科学分野 教授である遠山晴一先生を迎え特別講演が開催された。同大学のスポーツトレーニングセンターのセンター長の経験をまじえ、“人におけるリハビリテーション医療の考え方と実際”、“変形性膝関節症に対するリハビリテーション”、“膝前十字靱帯損傷に対するリハビリテーション医療と私たちが行った動物を用いた研究知見”をテーマに、ヒトでのリハビリテーション医療の流れ、目標設定や医師・リハビリテーションスタッフ・看護師・患者本人・家族とのリハビリテーションカンファレンスの内容を紹介し、総合的な実施計画書の作成や、“変形性膝関節症”のリハビリテーション医療、膝前十字靱帯損傷に対して行われる「前十字靱帯再建術」の自家腱移植に関する研究知見を実際の世界的に活躍するスポーツ選手での実例も交え紹介。会場は熱心に耳を傾けた。
「リハビリテーションが関わる疾患は、専門性を持った獣医師が局所療法として治療を適切に行なわなければならないが、リハビリテーションは、局所だけでなく全身と飼主や環境を同時に診ていかなければならない」「少しずつ学会としてエビデンスをつくっていったり、色々な学術的なことが説明できるようにしていくよう、前会長で現顧問となられた小林先生のお力添えもいただきながら、務めていきたい」と柄本新会長。
獣医療におけるリハビリテーションを牽引する学会として、ますます期待が寄せられる。
なお今学術大会は8月30日~9月30日の間、学会会員限定で申込者対象にオンライン配信される。
詳細は下記ホームページを参照。
https://www.jaapr.jp/
本学会の新会長となった柄本浩一先生
遠山晴一先生による特別講演「人におけるリハビリテーション医療と予防
スポーツ障害・運動器疾患を中心に」の会場の様子。座長は柄本会長が務めた
特別講演中の遠山晴一先生
教育講演では、“リハビリチーム獣医療”、“チーム医療”というそれぞれの
専門性を生かした実例が紹介された
昨年に続き「症例相談会」が実施され、会場は熱気に溢れた
全国専修学校動物系教育協会 グルーマー(トリマー)教師向け研修会 開催
2024/8/19
2024年8月5日(月)大宮国際動物専門学校(埼玉県)で、全国専修学校動物系教育協会主催による「グルーマー(トリマー)教師向け研修会」が開催された。
講師には川口涼太先生(トリミングサロンワンきゅう オーナー)を迎え、「ドッグサロンで人気の『テディーベアカット』の顔の作り方」の講義を行った。前半は顔ウィッグを使用し、後半は生体(トイプードル)を用いて実演を行った。
本研修会は対面とオンラインのハイブリットで行われた。本研修には会場とオンラインの参加者からの質疑応答の他、事前に多くの質問が協会に寄せられた。内容は、立体的なマズルのつくり方や目の周囲のカット、トップスやリップラインのつくり方や耳の角のとり方など技術的な質問から、サロンでは1時間で何頭くらいの犬のグルーミングを行っているか、料金体系など多岐にわたり、それらに川口先生が一つひとつ丁寧に、ときに実演を交えて質問者が納得するまでしっかりと回答されていった。午後1時~4時まで実施された本研修会で参加者たちが会得した技術や知識が、今後の学生への指導へと活かされていく。
本協会では「トリマー」「トリミング」ではなくあえてグローバルな社会で通用するように「グルーマー」「グルーミング」の名称を用いていくと、本協会会長の山﨑 薫先生。今後は訪問看護や在宅ケアへと活躍の場が広がっていくと考え、本協会はグルーマーの公的資格化を目指していく。
次回本研修会は、2025年3月にヤマザキ動物専門学校(東京・渋谷区)での開催となる。
本協会の詳細は下記より。
https://www.javsae.jp/
テディーベアカットの実演中の様子。会場とオンラインの参加者および事前に寄せられた質問に、川口先生が実演を交え、質問者が納得するまでしっかり説明
本協会業務執行理事の下薗惠子先生。今回の研修で学び得た技術や知識を、明日からの授業に役立ててもらいたいと開会挨拶
本協会会長を務める 山﨑 薫先生。本協会では世界で多く用いられている「グルーマー」「グルーミング」の名称を用いると紹介
どうぶつトランスレーショナルリサーチセンター 開設される
2024/8/5
2024年8月、日本の獣医療の腫瘍分野をリードする日本小動物医療センター附属日本小動物がんセンター(埼玉県・所沢市)に、新たにどうぶつトランスレーショナルリサーチセンター(Integrative Center for Animal Translational Research、iCAT)が開設した。本センター長に水野拓也先生が就任、最先端の免疫治療研究施設が2次診療施設と密接に連携することで、臨床データの収集およびその研究成果がスピード感をもって治療現場に届く橋渡しの役目を担う。設備も獣医大学の施設とほぼ同等の研究が可能であり、研究者の養成や大学院生の受け入れなども支援するとのこと。先に行われた内覧会には、大学教員を含む多くの獣医療関係者が足を運んだ。2024年8月7日(水)から業務開始。
施設の外観
施設内の様子
施設内の様子
WJVF第15回大会 開催される
2024/8/2
2024年7月27日(土)~28日(日)、ホテルニューオータニ大阪にて、WJVF第15回大会が対面で開催された。今回のテーマは「新たなる挑戦~さらなる飛躍~」。獣医療従事者自らが学び・挑戦し、そして成長し続ければ、それだけ救える命・幸せになる家族が増えることにつながるというメッセージを込めているとのことである。
WJVF会長の竹村直行先生は、開会の挨拶のなかで、「動物と暮らす人々の気持ちがわかるような獣医療従事者を増やす必要があります。また、動物に対する治療および診察は血の通っている温かみのあるものでなければなりません。これらの目的を達成するのに講演・実習を活用してください」と述べた。
獣医師対象の講演は、「なんだか高い肝酵素シンポジウム」「救急ストリーム-その命を救うために-」「目指せ!スーパージェネラリスト」の他、呼吸器病学、眼科学、歯科学、腫瘍学、外科学など様々であり、講演によっては立ち見が出るほどであった。
愛玩動物看護師・アニマルケアスタッフ(ACS)・トリマー対象の講演は「疾患を学ぶシリーズ」「ご家族に話せるように」などであった。
本年は少人数の実習も充実し、いずれも募集と同時に枠が埋まるほど人気であった。
また28日(日)には(公社)日本動物病院協会(JAHA)との共催で市民公開講座「人とどうぶつの絆」も開催された。
そして両日とも展示会場にて「スイーツタイム」が設けられ、展示会場は大いに賑わいをみせた。
参加者数は1,470名で、昨年の大会より着実に参加者が増えている状況である。
WJVF第16回大会は、2025年7月26日(土)~27日(日)、ホテルニューオータニ大阪にて開催予定。
2024年7月19日(金)から21日(日)の3日間にわたり、マレーシア・クアラルンプールにて第12回アジア小動物獣医師会大会(FASAVA〈Federation of Asian Small Animal Veterinary Associations〉2024)が開催された。2019年の東京大会から5年、今回も日本をはじめアジア各国、オセアニアから最新知見を得るため多くの参加者が集まった。日本からは50名以上が参加した。会場は大きく5会場に分かれ、画像診断、猫、外科、内科、循環器、エキゾチック、眼科、皮膚科、救急など計80以上のプログラムが用意された。日本からは石田卓夫先生(赤坂動物病院)、浅野和之先生(日本大学)、辻田裕規先生(どうぶつ眼科専門クリニック)の3名の講演が行われた。
●初日:朝に激しいスコールが降るなか、創立時の会長である故Roger Clarke先生の名を冠したレクチャーのあと、FASAVA現会長でオーストラリア小動物獣医師協会のMatthew Retchford先生によるオープニングセレモニーが行われた。そのなかでRetchford先生は、FASAVAの紹介や獣医療関係者が取り組むべき課題を取り上げ、政治的側面や経営的側面、AIなどを克服すべき脅威およびハードルと解説した。また日本の先生の講演としては石田卓夫先生の「Aspiration biopsy and cytologic evaluation of lymph node diseases(リンパ節疾患の吸引生検および細胞学的評価)」の講演が行われ、多くの聴講者が集まり、質疑応答も活発に行われた。
●2日目:クアラルンプール市内ではこの日5年に一度の新国王の戴冠式が行われるため、近隣のホテルでは厳重な警備が敷かれ、一部交通規制が実施された。そのようななか、2日目も多くのプログラムが実施され、日本の先生の講演としては石田卓夫先生の「New therapies for feline diabetes(猫の糖尿病の新治療法)」、そして浅野和之先生の「Surgical repair of canine perineal hernia(犬の会陰ヘルニアの外科的修復)」「Surgical treatment of idiopathic chylothorax in dogs and cats(犬猫における特発性乳び胸の外科処置)」の講演が行われた。猫の糖尿病の講演は大会場で行われ、また犬の会陰ヘルニアの講演は立ち見が出るほどの盛況ぶりであった。
この日の夜には「マレーシアンナイトディナー」が行われ、参加者はマレーシアの食事、伝統工芸、音楽、踊りなどを楽しんだ。途中、各国別に参加者がステージに上がり歌や踊りを披露する時間があり、日本の先生方が壇上で歌を披露する場面もみられた。
●最終日:日本の先生の講演としては午後に辻田裕規先生の「How to approach canine cataract in dogs(犬白内障へのアプローチ法)」が行われた。また、土日の2日間でMSAVA(マレーシア小動物獣医師会)が主となり20以上のパラプロフェッショナル専用のプログラムが同時開催されており、この日には村尾信義先生(倉敷芸術科学大学)の「Practical tips for kinder and gentler animal handling(より優しく穏やかに動物を扱うためのコツ)」、「New restraint techniques for cephalic vein catheterization in dogs and cats(犬猫の橈側皮静脈カテーテル挿入時の新しい保定法)」の2講演が行われた。
クロージングセレモニーでは、次回FASAVA2025の開催が韓国・大邱にて2025年10月31日(金)〜11月2日(日)に開催されること、そして、FASAVAの次期会長に石田卓夫先生が就任することが決まり、その就任式が行われた。
展示会場には、プライムスポンサーであるヒルズ社をはじめ、46の企業および関連団体が集まった。多くの企業がブース内セミナーを設けたり、また会場の飲食スペースが両端および中央の3ヵ所に設置されたりするなど、多くの参加者が展示会場に足を運べる工夫がされていた。
犬の飼育頭数の減少により日本国内の獣医療の在り方に変化が求められるなか、とくに日本にとって隣人であるアジアの獣医療への注視および連携はより重要になると思われる。本大会は多くの先生方、愛玩動物看護師を含むすべての獣医療関係者にとってアジアの臨床現場の今を知ることができる貴重な機会であると感じられた。
第30回 日本獣医がん学会 開催される
2024/7/16
2024年7月5日(土)と6日(日)、ホテルニューオータニ東京において第30回日本獣医がん学会が開催された。この様子は、学会終了から約1週間後~7月31日(水)までVETSCOPE(https://vetsope.vet/)でも配信された。
参加者は事前登録の段階で890名を超え、会場展示協力13社、広告協力8社、オンライン配信協力1社、ランチョンセミナー協力3社および学会が日曜日のランチョンを提供、外科ドライラボ協力2社による協賛協力があった。
開会にあたっては、「今回は初となる企画“外科ドライラボ”が実施されます。他にも各委員会が様々な新しい企画を準備しているので、これからも本学会に期待していただけると考えています」と石田卓夫会長がご挨拶された。今回の学会では、充実したプログラムのほか、5名の審査員による一般口演のアワードに加え、学会参加者によるオンライン投票によりポスター発表からもアワードが決定され、認定医Ⅰ種合格者4名、Ⅱ種合格者20名は授与式に出席した19名への認定証授与式と同時にアワード表彰、さらに研究助成の贈呈式が行われた。石田会長が述べた通り、今後の学会の活動にますます期待が高まる2日間となった。
<一般口演アワード 受賞演題>
【基礎研究部門奨励賞】
基礎研究「イヌ骨肉腫細胞株に対する抗HER2抗体療法の効果の検討」酒居幸生先生ら
【臨床部門奨励賞】
症例報告「積極的な外科切除により長期生存を認めた膵臓外分泌腺癌の犬の一例」 大脇 稜先生ら
<ポスター発表アワード 受賞演題>
「膵臓外分泌癌に随伴して被嚢性腹膜硬化症を認めた猫の1例」小林宏祐先生ら
<研究助成>
【臨床分野】
「Liquid Biopsyを基礎としたBRAF変異陽生尿路上皮癌の治療層別化戦略の創出」/申請者:田川道人先生
【基礎分野】
「NSAIDs高感受性であるイヌ尿路移行上皮癌の解析から着想を得た新規がん免疫療法の開発」/申請者:衛藤翔太郎先生