小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

(公社)東京都医師会・(公社)東京都獣医師会合同開催講習会 「人と動物のワンヘルス~動物と共に健康寿命を延ばすには~」

 2025年2月28日(金)、東京都医師会館(東京都・千代田区)にて、(公社)東京都医師会・(公社)東京都獣医師会 合同開催講習会「人と動物のワンヘルス~動物と共に健康寿命を延ばすには~」が開催された。
 ワンヘルスは「環境の保全」「人の健康」「動物の健康」を一つの健康ととらえ一体となって守っていく考え方で、様々な研究が報告されている。本講習会ではそれぞれの立場の参加者たちがワンヘルスについて考えるきっかけとなればという考えのもと、3つの講演が実施された。
 1題目は「生物多様性保全とワンヘルスアプロ―チ」をテーマに五箇公一先生(〈国研〉国立環境研究所、生物多様性領域室長)により、環境科学の観点から外来生物や感染症の具体例を交え生物多様性保全および持続的社会構築の意義について講演された。2題目は谷口 優先生(〈国研〉国立環境研究所、環境リスク・健康領域主任研究員)による「伴侶動物との生活が人にもたらす健康効果」で、犬や猫といった伴侶動物が高齢者の健康にどのように寄与するか介護や認知症にフォーカスし紹介された。続く3題目の「人と動物が共有できるウェルビーイングを目指して」では西田伸一先生(東京都医師会 理事)から、とくに高齢者の幸福維持のために伴侶動物の果たす役割が大きく期待されること、またフレイルの基準の説明や、今後の介護においてケアマネージャーとともに動物愛護推進員の存在が重要となることなど、その際に人間だけでなく動物の幸せも大切であることを動物の5つの自由(The Five Freedoms for Animal)の解説も交え紹介された。
 「人間の自然破壊により野生動物が町中に出没するニュースを目にする機会がふえ、ワンヘルスの重要性を認識する機会が増えました。今回の講義が、医療と獣医療がともにワンヘルスについて考える会になればと期待する」と東京都医師会会長の尾﨑治夫先生はいう。また東京都獣医師会会長の上野弘道先生は「医師と獣医師が連携して伴侶動物を交えたワンヘルスのシステムを構築できれば、獣医師として大変嬉しく思います。ワンヘルスへのアプローチをとおして、すべての人が笑顔で安心して暮らせる社会をつくっていきたい。」という言葉でこの度の講習会を締めくくった。東京都医師会と東京都獣医師会の連携による貢献がますます期待される。


講習会の様子


東京都医師会会長 尾﨑治夫先生、開会の挨拶にて


東京都獣医師会会長 上野弘道先生、閉会の挨拶にて

(一社)日本獣医動物行動学会 第1回学術集会 開催

 2025年2月22日(土)、(一社)日本獣医動物行動学会 第1回学術集会が東京大学 中島ホール(東京都・文京区)で開催された。前身は日本獣医動物行動研究会であり、2025年2月21日(金)に法人化し、名称を変更した。
 第1回の学術集会は対面とオンラインのハイブリット形式で実施された。
 講演1では菊水健史先生(麻布大学)が「ヒトとイヌの互恵的関係」と題して講演を行った。つづく講演2では白井春佳先生(にいがたペット行動クリニック)および大石麻里子先生(井本動物病院)を識者として迎え「どうしてる?行動診療 ~認定医・研修医に聞いてみた~」として、磯見 優先生(ALLONE動物病院)を進行役に、行動診療の実際について紹介した。
 次いで行われた、症例・研究発表では、「行動学的治療により、動物愛護センターに収容された犬の攻撃行動を改善し譲渡を実現した一例」(岸野友祐先生、Kawabata横須賀三浦どうぶつ医療センター)、「不安関連行動にミルタザピンを使用した犬の2例」(中野あや先生、動物行動クリニックなかの)、「伴侶動物への愛着スタイル尺度(Pet Attachiment Questionnaire)日本語版作成の試み」(石川瑛実先生、陽だまり動物病院)、「恐怖症(音、雷)の犬におけるジアゼパムの機能的役割についての検討」(室井尚子、Jiu動物行動クリニック)の4症例が報告された。
 犬と猫の互恵的関係や生理学的な絆や地域との連携、行動診療科の各病院での位置づけや行動診療や認知度の向上、動物愛護センターとの連携の課題、薬剤の用い方、また伴侶動物と人間との愛着への研究と、動物行動学の今後を牽引する発表が続き、演者と会場での熱心な質疑応答が交わされた。
 開会式の冒頭に水越美奈会長は「研究会から学会へ名称変更し一般社団法人になった。獣医療のなかで動物行動学がより広く認知されるようにしていきたい。」と意気込みを述べた。来年2026年2月または3月には25周年記念シンポジウムを開催予定で、本学会のますますの活躍が期待される。


学術大会の様子。左より本学会副会長の藤井仁美先生(Ve.C.動物病院グループ 自由が丘動物医療センター)、本学会会長の水越美奈先生(日本獣医生命科学大学)、同じく副会長の武内ゆかり先生(東京大学)

2024年新たに獣医行動科認定医となった大石麻里子先生へ水越会長から認定証を授与

第21回 日本獣医内科学アカデミー学術大会 開催

 2025年2月14日(金)~16日(日)、日本獣医内科学アカデミー学術大会JCVIM2025(大会⻑:亘 敏広先生〈日本大学〉)が東京国際フォーラム(東京都)で開催された。今回は「学びの継続、知識のアップデート」をテーマに実施され、獣医師向けだけでなく愛玩動物看護師向けのセッションも多く設定され、皮膚科、腎臓泌尿器、画像診断、行動学、救急医療など150を超えるプログラムが提供され、参加者たちは3日間多くの学びを得た。
 昨年に続き今回の学術大会も対面方式にて実施された。企業展示会場はフロアが2つ設定され会場内でシミュレータ等を用いた「わずか45分で胸部圧迫に自信がもてるレクチャー」(森田 肇先生、日本小動物医療センター/塗木貴臣先生、TRVA/杉浦洋明先生、横浜動物救急診療センター)や「上部消化管内視鏡操作の基本と異物摘出実習」(阪本恵美先生、東京大学)などの講義も実施され、セミナー開示と展示会場の行き来を向上させる新しい工夫も試みられた。
 また一般演題発表から「症例検討」「研究」「臨床研究」の3つの部門にわけ獣医系大学教員が審査を行うJCVIMアワードも実施された。JCVIM症例検討アワード、動物看護アワード、臨床研究アワード、研究アワードで各2名ずつが選ばれ、大会期間中に授賞式が行われた。本アワードでは、JCVIM症例検討アワードを「抗ミューラー管ホルモンを測定した卵巣遺残症候群の猫の1例」(生澤碧之佑先生、岡山理科大学)および「喉頭に発生した扁平上皮癌に対し定位放射線治療を実施した猫の1例」(中澤優太先生、日本獣医生命科学大学)、 動物看護アワードを「猫における網状赤血球のHeilmeyer分類」(鈴木友美氏、すわ動物病院)および「院内の愛玩動物看護師教育に関する取り組みの一例」(藤咲 舞氏、ALL動物病院グループ)、臨床研究アワードを「イヌ胃腸管型リンパ腫および慢性炎症性腸疾患における赤血球分布幅の回顧的研究」(堀田康介先生、東京大学)および「節性リンパ腫に罹患した猫の臨床的および臨床病理学的特徴に関する回顧的研究」(浅野敦也、東京大学)、研究アワードを「イヌリンパ系腫瘍細胞に対するオルメトプリムの増殖抑制効果の検討」(伊藤 智先生、東京大学)および「正常胆嚢および胆嚢粘液嚢腫罹患胆嚢由来オルガノイドを用いた陰イオンチャネルの機能評価」(長尾乙磨先生、東京大学)が受賞した。

 3日間で1,500名以上が登録し、会場には約1,000名が参加、次回第22回学術大会は2026年2月20日にパシフィコ横浜ノースにて開催予定。


JCVIMアワード受賞式の様子


ランチョンセミナーの様子

(一社)往診獣医師協会 懇親会開催

 2025年2月9日(日)、(一社)往診獣医師協会(Japan Home Veterinary Care Association :JHVCA)主催により、往診獣医師の意見交換を目的とした懇親会が、小田急ホテルセンチュリーサザンタワー(東京都新宿区)で開催された。
 2022年に設立された当協会は、診獣医師の資質向上、教育・研究の促進に努めながら獣医師による訪問診療を普及・発展させることを目的として、ペットの訪問診療等に関するコンサルタントや訪問診療希望者への支援の充実・促進活動を務める。現在100名近くの往診に特化した獣医師が所属している。
 当日は、往診でカバーできるエリアの地域差や診療の費用、定期的な検査、薬剤処方、往診先の飼い主への対応スキルなどについて、昨年中に本協会が実施したアンケート結果をもとに、活発な意見交換が行われた。
 「往診獣医師はより飼い主の生活に密接した獣医療サービスが求められている。今後は少子高齢化といった社会が抱える問題にも応えていけるよう、他業種との連携を深め、社会貢献にも力を入れていきたい」と代表の丸田香緒里先生はいう。本協会のますますの活躍が期待される。
 本協会の詳細は下記を参照のこと。
https://jhvca.main.jp/


代表の丸田香緒里先生