小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

日本獣医眼科カンファランス 2024年 年次大会 開催される

 2024年6月9日(日)御茶ノ水ソラシティカンファランスセンターにて(一社)日本獣医眼科カンファランスJVOC(以下、JVOC)の主催による2024年年次大会が開催された。
 今年は「緑内障の視覚を守る 〜外科治療の最前線〜」のテーマのもと、約100名の参加者と出展企業は弊社含め9社のブース展示があった。
 まず、一般演題からは緑内障や眼球腫瘤などそれぞれの先生独自のテーマで4題の症例発表が行われた。その後、JVOC役員の先生たちによる獣医療界の緑内障に関しての現状と最前線の治療方法であるレーザーによる治療の講演、新役員である三輪先生幸裕先生のバイオレットライトを使用した眼科医目線からの認知機能不全症候群治療の発表など様々な発表があった。人の眼科医である風間成泰先生よりあらためて緑内障の概要と治療についての発表も行われ、人医療の観点からの講演ということで参加している先生は皆熱心に聞く様子がうかがえた。また、代表の小野 啓先生よりJVOCの実績と今後の活動についての報告があり、引き続き講習会・研究会にも力を入れて若い獣医師から、すでに実践している獣医師ともに向上を目指していくとのことだった。
 若い先生だけでなく慣れてきた先生たちも、さらに知見とスキルを高められるという業界全体を盛り上げてより普及させていこうというJVOCの力の入れ方に今後も期待が高まる。


大会長前原誠也先生による挨拶

会場の様子

日本獣医再生医療学会第19回年次大会 開催

 2024年6月2日(日)、日本獣医再生医療学会第19回年次大会が、横浜ワールドポーターズで開催された。130名もの参加があり、今回の「消化器疾患への再生医療アップデート」をテーマに講演が行われた。
 午前中のシンポジウムでは、鳩谷晋吾先生、大森啓太郎先生、福田 威先生、手嶋隆洋先生による慢性腸症の概要と治療法、MSCを使用した可能性や作用、細菌の働きについての解説、パネルディスカッションとして参加している先生からの質疑応答が座長の横山篤司先生、鳩谷晋吾先生のもと行われた。お昼にはランチョンセミナーとして動物再生医療技術研究組合(PARM)より、独自に開発した犬血小板由来成長因子療法についての臨床研究の詳細とこれからの期待を実際の症例に基づき解説があった。その後、人医療におけるiPS細胞を用いた眼の治療の第一人者である髙橋政代先生によるiPS細胞の解説とiPS細胞を使用した網膜再生医療の現状についての講演が行われた。
 午後の最初は一般演題がそれぞれ6名の先生により行われた。学術発表3題では、各先生の比較と解析によって間葉系幹細胞の可能性や治療効果を示唆するもので、これから展開にとても期待ができる内容であり、症例検討3例については、慢性腎臓病や椎間板ヘルニア、産業動物である牛の子宮疾患など多角的な症例で、今後治療可能性があるものや修復を高める結果につながるなど、どの症例もとても興味深い内容であった。そしてMin Koo先生による韓国の獣医療業界についての講演では、韓国は5,000施設あるなかでも26施設しか再生医療を行っている病院がないとのことで、技術面は高いものの環境や文化などにより、現在の治療の方法、安全性などが日本とまったく異なることが伝わる内容であった。
 終盤には4名の先生による教育講演が行われた。
 川上 亮先生は橈骨尺骨骨折におけるLR-PRPの使用による治療補助の可能性を検討した臨床研究の報告。福田 威先生のMSCを用いた症例の数々のデータと結果から、MSC療法のこれからの可能性についての報告。水野拓也先生はCAR-T細胞などの免疫細胞療法を用いたがん治療のこれからについて理論に基づき解説を行った。最後は石田卓夫先生が、CKDの概要からメカニズム、現在の治療から最新のベラプロストを使用した治療など、幹細胞投与による進行抑制の可能性、そしてこれからの課題についての報告があった。
 最後に主催側のプログラムとして、認定団体設立条件を含めた全体の説明と来年度設立予定である獣医再生医療の認定医制度がつくられるにあたり、申請方法を含めた概要が副理事長枝村一弥先生より話された。そして授賞式があり、一般演題から菊地薫子先生と小比類巻正幸先生が学会賞を受賞、ポスターセッションから塚本雅也先生の「イヌiPS細胞の再生医療への応用へ向けた取り組み」で奨励賞を受賞された。最後に、実行委員長である伊藤裕行先生による閉会の言葉で今大会が締めくくられた。
 大規模な開催ではないものの、参加している先生はほとんど退席もなく皆熱心に聴講する様子がとても印象的であった。次回は記念大会の第20回目となるため、素晴らしい企画を予定しているとのことで期待が寄せられる。
 

日本獣医再生医療学会理事長の横⼭篤司先生による開会挨拶

会場の様子

副理事長枝村一弥先生の新設予定である認定制度の解説

学会賞受賞の菊地薫子先生(麻布大学)

学会賞受賞の小比類巻正幸先生((有)小比類巻家畜診療サービス)

ポスターセッション奨励賞受賞の塚本雅也先生(大阪公立大学)

 

第49回獣医神経病学会学術集会 開催される

 2024年6月8日(土)、9日(日)の2日間にわたり、第49回獣医神経病学会学術集会が沖縄県市町村自治会館にて開催された。今回は初の沖縄開催となり、全国から約130名の獣医師および関係者らが集まった。
 内容は2日間に分かれ教育講演、一般演題、ランチョンセミナーが企画され、教育講演では、椎間板疾患(相川 武先生)、遺伝性神経病(神志那弘明先生、大和 修先生)、てんかん(長谷川大輔先生、齋藤弥代子先生)、脳腫瘍(北川勝人先生)に関する講演が行われた。一般演題は計10題が発表され、質疑応答も活発に行われた。日曜のランチョンセミナーでは、犬猫てんかん管理アプリの詳しい解説が行われた。
 参加のルールとしてスーツおよびネクタイがNGであったため、多くの参加者がかりゆしウェアなどのカジュアルな姿で講演に耳を傾けた。初日の昼には会場内で最高級古酒を含む様々な泡盛が振る舞われ、展示に参加した企業もラフなスタイルで先生方との交流を楽しんだ。
 

会場の様子①

会場の様子②