小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

ロイヤルカナン ベテリナリーシンポジウム2015 開催

 2015年3月15日(日)、東京・ホテルニューオータニにてロイヤルカナン ベテリナリーシンポジウム2015が開催された。「高齢期の一歩手前の獣医学~サインが出る前のサインの受け取り方」と題し、運動器・疼痛管理、経営および腎臓の観点から講演が行われた。今年は3月1日から18日の間に全国8会場で行われ、東京会場は6回目の講演にあたる。

 運動器・疼痛管理の面からは、「関節からくる痛みの管理と食事の関係」と題し、佐野忠士先生(酪農学園大学)が講演された。その中で佐野先生は、まずは高齢期に生じる動物の身体の変化を理解し、気付いたときに食事やサプリメントでの管理、NSAIDsの使用を挙げ、早めに動物の異変に気付くことで重症化を防ぐことが重要であると解説した。

 経営面からは、氏家貴秀氏(ロイヤルカナン ジャポン)による「高齢化社会に適応できる動物病院を創る-見えない変化をチャンスに変える早めの一手-」が講演された。その中で氏家氏は、動物の高齢化への対応について、緊急性は低いが重要度の高い仕事として早期に取り組むことが大切であると解説した。

 腎臓の面からは、「今までに話したことのない慢性腎臓病のはなし-知らないうちに始まっているミネラル代謝異常-」と題し、星 史雄先生(北里大学)が講演された。その中で星先生は、慢性腎不全では、Klothoという遺伝子の蛋白発現の低下がFGF23やPTHの分泌を促すこと、リン代謝のコントロールが大切であり療法食などの食事管理が重要であると解説した。

 高齢期をテーマに多角的な観点からそれぞれの専門家が解説され、日曜の19:30からの時間帯にもかかわらず、多くの参加者が聴講された。
 

演者の先生方と会場の様子

第23回日本小動物歯科研究会症例検討会・総会 開催される

 2015年3月1日(日)、品川フロントビル(東京都・品川区)にて第23回日本小動物歯科研究会症例検討会・総会が行われた。

 朝9時から開始した当会では、午前10症例、午後10症例の掲載20症例が報告され、無麻酔でのスケーリングの危険性についてや多剤耐性菌に関するもの、歯周病や腫瘍、抜歯や矯正、画像評価の報告などが行われた。どの発表でも質疑応答が活発に行われ、約1時間弱終了時間が延長したが、参加者は満足された印象であった。

 総会では、2014年の事業および会計報告、2015年の事業および予算案の提示にあわせ、現会長である横山 滋先生の逝去に触れられ、藤田桂一先生(フジタ動物病院)を会長とする役員の改選が報告された。新体制の役員は以下の通り。会長:藤田桂一先生、副会長:網本昭輝先生、監査:幅田 功先生、理事:大場茂夫先生、本田 洋先生

 2015年4月より日本大学で獣医歯科学研究室が誕生することや、近日盛り上がりをみせている予防医療の観点からも、獣医歯科学は新たなステージに入りつつあると思われた。

会場の様子


懇親会の様子

Team HOPEイベント2015開催される

 2015年2月24日(火)、第一ホテル東京にて、Team HOPEイベント2015「Team HOPEが推進するペットの予防医療」が開催された。今回のイベントでは、はじめにTeam HOPE代表の太田亟慈先生(犬山動物総合医療センター)を含むTeam HOPE運営委員の方々のご挨拶が行われた。そのなかで太田代表は、現在400件近くの賛同会員がいるが、まずは全国で1,000件の賛同病院を目指し、ムーブメントをおこしたいと述べられた。

 第1部として、Team HOPE 関東地区委員長である川瀬英嗣先生(王禅寺ペットクリニック)からTeam HOPEについての説明が行われた。そこではウェルネスチェックのほか、今年6月公表予定の健康診断に関して紹介された。

 そして、特別講演として一般社団法人日本臨床獣医学フォーラム会長であり、この度Team HOPE学術アドバイザーに就任された石田卓夫先生による「一次診療病院の大切な仕事 ゆりかご前からお別れの後まで~伴侶動物の一生を幸せなものに~」の講演が行われた。そのなかで石田先生は、動物たちの美しく長い一生を目指し、動物を飼う前からのマッチング、ペットロスケアの重要性をあげ、動物病院に慣れない動物たちは寿命が短くなり、不幸な動物が増えることは獣医師として立ち向かうべき問題だと説いた。そして、獣医界全体がTeamとして連携し、社会を変える意識が必要であると解説された。

 当日は、全国から獣医師の先生が集まり、19:00からのスタートではあったが、約100名の参加者は熱心に耳を傾けていた。

Team HOPE学術アドバイザーの石田卓夫先生(右)と
Team HOPE代表の太田亟慈先生(左)

第11回日本獣医学内科アカデミー学術大会 開催される

 2015年2月20日(金)~22日(日)にパシフィコ横浜で第11回日本獣医学内科アカデミー学術大会が開催された。金曜日午後から開始された約120以上のセミナーは、各研究会の講演のほか、シンポジウム、地固めシリーズ、レベルアップ、症状から診る、企業主催プログラム、症例検討・研究発表など多数の講演が行われ、3日間ともに多くの参加者が熱心に講演会場を訪れた。

 今回の特徴としては、土曜日が10:45~15:45まで企業主催プログラムや症例検討・研究発表が行われ、また翌日の最終日も15:45で展示会場を終了とすることで、めりはりをつけたプログラム構成となっており、参加者が会場に足を運びやすい設定であると感じられた。また、ランチョンセミナーを設けず、今年から行われたお弁当の引き取りも展示会場内で行われたので、そこで展示企業と先生方との接点が生まれやすかったのではないだろうか。そして、土曜日の懇親会が参加費無料ということで、より若い獣医師の先生や学生に足を運んでもらおうとする主催者の意向がうかがえた。

 昨年とはうって変わり、天気にも恵まれ、およそ2600名の参加者が集まった。次回は2016年2月19日(金)~2月21日(日)を予定している。


会場の様子

平成26年度文部科学省委託「獣医療体制分野における中核的専門人材養成プログラム開発事業」 成果報告会 開催される

2015年2月18日にAP西新宿で平成26年度文部科学省委託「獣医療体制分野における中核的専門人材養成プログラム開発事業(コンソーシアム)」の成果報告会が開催された。本事業は、関係機関・団体が中心となって進めてきた「動物看護師養成高位平準化コアカリキュラム」を利活用し、獣医療に対応できる動物看護師の養成に役立つモデルコアカリキュラムを開発し検証することを目的とするものである。本年度は動物病院等での利用促進、社会人や女性の学び直し、地域性についても考察された。

報告会では、まず来賓である白鳥綱重氏(文部科学省)および菅野康祐氏(環境省)が事業の意義と期待を述べ、その後、本事業の実行委員長である下薗恵子氏(学校法人シモゾノ学園)が事業の概要、事業成果の概略および今後の取り組みを紹介した。

そして、ワーキンググループごと(①コンソーシアム学習ユニット:コマシラバス作成、コマシラバス評価検証、②職域プロジェクト[ペット産業]:関連職域調査研究、マネージャー養成科目開発検証、③職域プロジェクト[動物看護]:臨床系科目開発実証、コミュニケーション系科目開発実証)に、各委員6名が成果発表を行った。最後に外部評価者を代表して政岡俊夫先生(麻布大学)が評価結果を発表し、均一の知識をもつ動物看護師育成を目指し、さらなる発展を期待すると述べた。

報告会には、専門学校、大学、動物病院、企業の関係者が出席し、動物看護師の公的資格化および動物看護教育のレベルアップのために相互協力していくことを再確認した。

会場の様子

第1回 猫の診療集中講座 開催される

 2015年2月15日(日)、フクラシア品川クリスタルスクエア(東京都・品川区)にて猫の診療集中講座が行われた。これは、ゾエティス・ジャパン(株)主催で行われた猫に特化した勉強会である。

 昼12時からの開会の辞から、行動科:猫を診察室に迎える時に知っておきたい3つのポイント(入交眞巳先生、日本獣医生命科学大学)、皮膚科:細菌・真菌が関与する猫の皮膚感染症(西藤公司先生、東京農工大学)、循環器:猫のフィラリア症(星克一郎先生、見附動物病院)、猫の内科学:臨床家が押さえるべきポイント(三好雅史先生、獣医療サポート)、キャットフレンドリークリニック:猫の飼主との良好なコミュニケーション(服部 幸先生、東京猫医療センター)と、 休憩を挟みながら進行された。約1時間ずつのセミナーはどれも充実した内容であった。

 第1回目となる今回、約100名の先生が参加。また、リアルタイムでの動画視聴が可能であり、約700名を超えるアクセスがあったとのことで、約800名以上の方が参加されたことになる。動画については、実際にセミナー会場の外でアクセスしたが、多少タイムラグはあるもののストレスを感じることなく視聴可能であった。スマートフォンやタブレットで視聴できるのは、どうしても会場にいくことのできない先生にとって、 選択肢が増えるという意味で有益であると思われた。そして、猫に関する情報のニーズはいろいろな形で増えていくであろうと思われた。

会場の様子

第12回日本獣医がん学会開催される

 2015年1月24日(土)、25日(日)、ホテルニューオータニ大阪において、第12回日本獣医がん学会が開催された。初日は、シンポジウム「日本から世界へ! 腫瘍に関する臨床研究の紹介」、「外科部会:肛門嚢腺癌に対してどのように治療すべきか?」とともに、教育講演「腫瘍疾患における胸部CT検査の適応と読影」戸島篤史先生(日本小動物医療センター)、「病理解剖」三井一鬼先生(ノーバウンダリーズ動物病理)、一般口演および獣医腫瘍科認定医Ⅱ種講習会対応の総合教育講演8科目が行われた。

 2日目には、今回のメインテーマである「副腎腫瘍」のシンポジウムが、入江充洋先生(四国動物医療センター)を座長に、西飯直仁先生(岐阜大学)による「臨床病理(ホルモン検査など)」、戸島篤史先生による「副腎腫瘍の画像診断」、滝口満喜先生(北海道大学)による「副腎腫瘍の内科治療」、鈴木 学先生(サップス)による「副腎腫瘍の病理」、浅野和之先生(日本大学)による「外科治療」の講演が行われ、診断・治療が討論された。続いて副腎腫瘍のケーススタディとして9題が発表され、参加者は熱心に耳を傾けていた。また、同日には眼・眼瞼腫瘍のシンポジウム、教育講演「縫合材料の選択方法」(手島健次先生)、「腫瘍科診療における細胞診を中心とした症例検討」(呰上大吾先生)、一般口演が行われた。

 学会総会では、一般社団法人への実施スケジュール、参加費の値上げ等が審議され、了承された。また、2014年10月に実施された獣医腫瘍科認定医Ⅰ種二次試験の合格者である林 綸志先生の表彰式も行われた。同氏は初の外国人のⅠ種認定医となる。

 次回の学会は2015年7月4日(土)、5日(日)に東京コンベンションホールにて開催予定。

会場の様子

平成26年度シェルター・メディシン・セミナー「より良い譲渡に向けて」―シェルターにおける獣医学的管理と行動学― 第2回講演開催される

 2014年12月20日(土)、21日(日)の2日間、日本獣医生命科学大学において、公益社団法人日本動物福祉協会・公益社団法人日本動物病院協会主催のシェルター・メディシン・セミナー「より良い譲渡に向けて」第2回講演「感染症の予防と管理および動物行動学」が開催された。本セミナーは2014年6月から2年間で全4回が予定されており、シェルターの現場において必要とされる、伴侶動物の群としての健康管理および動物行動学などについて、体系的講義を行うものである。
 今回は田中亜紀先生(カリフォルニア大学デービス校)と入交眞巳先生(日本獣医生命科学大学)が、2日間にわたり講師を務められた。田中先生は、消毒をはじめとするシェルターの衛生管理、動物へのワクチン接種、感染症が発生した際の管理といった、総合的かつ具体的な感染症対策について講演された。また入交先生は、「問題行動に関する電話相談への対応により、シェルターに連れてこられる動物を減らすために」という切り口から、犬と猫の行動学について講演を行われた。
 第1回に引き続き、170名を超える参加者となった。講演後には講師への質疑応答だけでなく、参加者同士のディスカッションの時間が設けられ、活発な意見交換も行われた。
 次回は2015年6月に予定されている。詳細は、公益社団法人日本動物福祉協会ホームページ(http://jaws.or.jp/)を確認のこと。

会場の様子

専門医教育プロジェクトを支援する「日本獣医学専門医奨学基金(JFVSS)」

 日本獣医学専門医奨学基金(以下JFVSS)は、アメリカのコロラド州立大学獣医学部(以下CSU)における、日本人獣医師に対する専門医教育プロジェクトを支援する基金です。コロラド州知事の声がけによる「コロラド州とアジア2カ国(日本および中国)との交流を図り、相互に有益な事業を展開しよう」というプロジェクトの一環として、2011年に活動を開始しました。
 具体的には、CSUがレジデント・プログラムに日本人枠を毎期1名確約し、JFVSSがその人材選考と経済的支援の管理を担うというもの。JFVSSは奨学生を選出し、5年(大学院2年・レジテント課程3年)にわたる留学期間中の学費と生活費を含む約2000万円を支援します。この留学費は現時点で27の企業・団体・個人の寄付によってまかなわれ、原則として返還義務はありません。奨学生はプログラム終了後、修士およびアメリカ獣医学専門医試験の受験資格を得ることができます。奨学生が専門医試験に合格し、日本に帰国することが、プロジェクトの最終目標となっています。
 第1期奨学生(獣医内科学レジデント候補生)は2013年2月に公募され、1名が同年9月からのCSU留学を実現しました。2014年の選考は残念ながら該当者なしでしたが、現在2015年9月の留学を目指す第2期奨学生を選考中です。募集するレジデントの専門科目は毎期ごとにJFVSSで協議、決定されるとのこと。
 すでに選考中の第2期募集内容(獣医外科学専門医)を参考として紹介します。まず日本の獣医師免許を有し、最低3年間の小動物臨床経験(または同等と選考委員が認定する臨床経験)があること。また、大学院の授業についていける最低レベルの英語力(TOEFL iBT 61点以上)が求められます。それらの選考基準と並んで、「プログラム終了後は日本に帰国する強い意志を持ち、日本の獣医学発展のために貢献する志の強い者」と明記されていることは特徴的と言えるでしょう。このプロジェクトによって誕生した専門獣医師は、日本国内の獣医療にさまざまな形で貢献することが期待されているのです。
 現在(2015年1月)、第3期奨学生の公募内容は未定となっています。JFVSSウェブサイトでは、プロジェクト概要、募集要項、選考スケジュールなどが随時更新されますので、応募を検討される場合にはぜひご確認ください。また、プロジェクトを支援する賛助会員・スポンサー・サポーターは常時受け付けており、個人でも1口1万円からサポーターとしてプロジェクトに参加することが可能です。プロジェクト支援をご希望される場合、サイトから申込書をダウンロードし、下記へご連絡のこと。
 始動から4年目に入ったこのプロジェクト。これまで実力と意欲を備えながら機会を得られなかった獣医師に専門医への道が拓かれ、日本の獣医療がさらなる発展に導かれるよう、いっそうの注目と支援が望まれています。

【問い合わせ先】
一般社団法人 日本獣医学専門医奨学基金(JFVSS)
公益財団法人 日本小動物医療センター附属 日本小動物がんセンター内
〒359-0003 埼玉県所沢市中富南2-27-4
E mail:info@jfvss.jp Fax:04-2943-8698 URL:http://www.jfvss.jp
(お問い合わせはE mailかFaxにて。)

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