小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

第15回 日本獣医腎泌尿器学会 学術集会・総会 開催される

 2023年8月26日(土)、27日(日)に、第15回 日本獣医腎泌尿器学会泌尿器学会が「プロフェッショナル腎臓病診断学~腎生検の課題と未来」をテーマに開催された(大会長:小林沙織先生/岩手大学)
 COVID−19の感染が拡大した後はオンライン開催やオンラインと現地開催のハイブリッドで行われていた学術集会・総会は、今回、1日目の日本腎臓学会合同企画シンポジウム「獣医療/ヒト医療から発信する腎臓病基礎研究とその敷衍」がリアルタイムでオンライン配信され、午後の「認定講習会を兼ねた教育講演」および2日目の基調講演、一般症例・研究発表が現地開催された。協賛企業は13社(うち会場展示11社)、会場には延べ約500名が参加した。
 合同企画では、「糖尿病性腎臓病モデルマウスの確立~マウスで腎臓病研究を行う意義~」、「イヌはマウスーヒト間のミッシングリンクを埋められるか? ~腎生検によって膜性腎症と診断したフレンチ・ブルドッグの一例を通して~」、「腎臓再生の現状と課題~iPS細胞と異種移植とキメラ技術について~」、「猫の慢性腎臓病を取り巻く実情と展望~慢性腎臓病に対する5-アミノレブリン酸の効果」を研究分野の最先端で活躍される医師と獣医師の先生方4名がご講演された。さらに、医師による基調講演「人医における腎生検の実際と腎病理診断学」および、獣医師によるシンポジウム「腎生検および病理検査の現況と問題点、展望」、「腎生検の実際~腎臓の解剖、腎組織の採取と取り扱い」、「腎生検を実施した臨床例における治療と臨床経過」、ランチョンセミナーをはさんで18演題になる一般演題が発表され、2日にわたる充実したプログラムが展開された。
 また、1日目の講演終了後には、アットホームな雰囲気で情報交換会が行われた。そのなかで、第14回学術集会の症例報告部門で優秀賞を受賞された前田憲孝先生(岡山理科大学)および第1期の日本獣医腎泌尿器学会認定医を取得された林 雄平先生(日本動物高度医療センター<大阪病院>)が受賞と認定医取得の喜び、学会への期待、今後ますます研鑽を積まれることなどをご挨拶された。
 医学と獣医学が交差する基礎研究、卒後教育の一環でもある教育講演、臨床に活かせる基調講演とシンポジウム、一般演題という充実したプログラムに加え、500名近くになる現在の認定医制度参加会員に、認定医取得後の上級認定医には15名が申請しており、今後の学会の発展を予感させるとともに、参加者が学会活動へ抱いている期待感に満ちた大会となった。

第20回日本動物リハビリテーション学会学術大会 開催

 2023年8月27日(日)、第20回日本動物リハビリテーション学会学術大会が、(学)ヤマザキ学園渋谷キャンパス2号館(東京)で、開催された。昨年までCOVID-19感染症を鑑みオンライン上での開催にとどめていた本大会の、3年ぶりの対面開催となった。
今大会では事前に参加者から症例を募集し「症例相談会」という形式をとり参加者たちがディスカッションにより解決策等を一緒に考える展開となった。
 事前に寄せられた多数の演題の中から、次の11の演題が取り上げられた。演題1 「『椎間板ヘルニア』:長期経過に対する内容」、演題2~4 「『胸腰部椎間板ヘルニア』『腰部脊髄疾患疑い』:目標・ゴール設定に関して、車椅子に関して」、演題5 「『壊死性白質脳炎、脳脊髄疾患、整形外科疾患』:後肢過剰伸展の抑制、車椅子上での立位保持など」、演題6、7 「『大腿骨頭切除』:患肢への負重訓練、活動性の低い動物に対して」、演題8 「『股関節形成不全(保存療法)』:症例に対するリハ」、演題9 「『膝蓋骨脱臼・前十字靭帯断裂』:負重時の膝関節伸展及び屈曲困難に対する対応」、演題10 「『レーザー療法』:レーザー療法に関して」、演題11 「『前肢断脚』:義足関係」。
 発表者は、運動療法を中心としたリハビリテーションのゴールの具体的な定め方、術後の管理として追加すべき施術や禁忌の施術、水中トレッドミルの使用、筋力や平衡感覚トレーニング後の車椅子歩行、壊死性白質脳炎に対する運動療法の効果と注意点、義足の使用や義肢装具士との連携など、多岐にわたる課題について、日頃の疑問や不安の解決策を講師や他の参加者とともに探っていった。動物の心理を含めた包括的ケアに関する疑問や不安に対し、座長や当該分野に精通した先生方、そして会場からも積極的な意見や提案が出され、熱気あふれる1日となった。

 今大会は9月中旬から1ヵ月程度、オンデマンドでも配信予定。
 詳細は下記より。
【日本動物リハビリテーション学会(事務局)】
https://www.jaapr.jp/jimukyoku.html


本学会会長の小林孝之先生(アニマルクリニックこばやし)。開会の挨拶にて


会場の様子。演者、専門の先生方、参加者たちが積極的に意見を交わし、会場は熱気に溢れた


本学会副会長の柄本浩一先生(えのもと動物病院)。閉会の挨拶にて

第42回比較眼科学会年次大会 開催される

 2023年8月26日(土)、27日(日)の2日間にわたり、東京・日本獣医生命科学大学において、第42回比較眼科学会年次大会が開催された。今回は2019年第39回以来の対面式開催で、参加者は総数280人となった。
 大会メインテーマは「眼疾患の病態・治療」。年次大会長企画特別講演として山口剛史先生(東京歯科大学市川総合病院眼科)「角膜混濁の病態と治療」、基礎部会セッション・教育講演「網膜疾患の次世代治療」では藤波芳先生(東京医療センター・臨床研究センター)と松尾俊彦先生(岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域)が、臨床部会セッション・教育講演では「レッド・アイ」について岩下紘子先生(トライアングル動物眼科診療室)と前原誠也先生(ひかり町動物眼科)が、臨床獣医師向け眼科セミナーでは「どうする角膜潰瘍 ベーシック&アドバンスセミナー」と題し松浦尚哉先生(ペテモどうぶつ医療センター名古屋)、望月一飛先生(アニマル・アイケア東京 安部動物病院)、福島潮先生(湘南鎌倉動物病院動物眼科センター)が、それぞれ講演された。2日目には太田充治先生(動物眼科センター)と梅田裕祥先生(横浜どうぶつ眼科)による「パルスレーザー 私はこう使います」と題しランチョンセミナーが行われた(協賛:株式会社メニワン)。
 また学会会長企画教育講演では、獣医療界にもかかわる社会問題を取り上げ、「ハラスメントの法律問題-カスタマーハラスメントやアカデミックハラスメントについて考える-」と題して原昌登先生(成蹊大学法学部)が講演された。
 一般講演では、オンライン開催のノウハウを生かし、発表の事前配信と、当日に質疑応答を併用する形式がとられていた。
 1日目の講演後には「名刺交換会」が催され、4年ぶりに対面での交流が行われた。

IDEXX Japan 30周年記念 動物看護師様向けセミナー 開催される

 2023年8月23日(水)、東京・明治記念館にて、IDEXX Japan 30周年記念 動物看護師様向けセミナーが開催された。日本法人として設立30周年を迎えたIDEXX Japanは愛玩動物看護師が国家資格化されたことを受けて、節目の年に動物看護職者を対象とした特別セミナーを企画した。
 はじめに日本全薬工業(株)代表取締役社長の福井寿一氏の挨拶があり、その後IDEXXアメリカ本社社長のジェイ・マゼルスキー氏と福井氏の対談が行われ、日本とアメリカにおける獣医療の現状について意見が交わされた。その後、IDEXXメディカル部門統括責任者のジェイソン・ジョンソン氏から日本を含む20ヵ国で展開するIDEXXラーニングセンターに関する説明が行われた。
 そしてメイン講演がスタートし、はじめに石田卓夫先生(赤坂動物病院、JBVP名誉会長)の基調講演として「愛玩動物看護師の将来 目指せトップガン!」が行われ、主に臨床現場における愛玩動物看護師の心構えについて解説された。つぎにアメリカで動物看護師として活躍し、JaVECCS理事として本誌にも登場しているKenichiro Yagi先生(VETERINARY EMERGENCY GROUP)の講演が行われ、アメリカの動物看護師について、ベーシックスキルとして静脈採血・留置の手技について、さらに救急対応としてトリアージについて解説された。最後に太田亟慈先生(犬山動物総合医療センター)から、動物看護職者がおさえる周術期サポートについて、動物看護職とはどういう仕事なのかなどを交えて解説された。
 全国から300名以上の動物看護職者および関係者が会場に集まり、多くの関係者が動物看護を注視していること、動物看護に対する意識がより高まっていることを実感する1日であった。

第8回日本獣医救急集中治療学会(JaVECCS)2023SUMMER 開催

 2023年8月18日(金)19日(土)、両国KFC Hall&Rooms(東京)で、第8回日本獣医救急集中治療学会2023AUMMERが開催された。今大会のテーマは「体感」。シンポジウムや講演、実習コースが展開された。
 特別講演として「人医療 外傷救急最前線」(小島光暁先生、東京女子医科大学足立医療センター救急医療学科)、「消化器穿孔に対する外科戦略」(岩田泰介先生・日本小動物医療センター、手塚 光先生・名古屋夜間動物救急センター)開催され、また今大会でも症例検討甲子園の決勝を開催。「トラウマ」をテーマに口頭発表が行われるなど、獣医救急医療への理解を深めた。この他、夜間救急の運営に関するミーティングも行われ、運営・経営側も円滑な運営を模索した。
 また今大会では、初の試みとして「CPRバトル」を実施した。「リンゴの樹ER」「所沢ピズモンズ」「TEAM VSEC」「エンジェル」「VECCS横浜」の5つのチームが対戦。予選を勝ち抜いたチーム「所沢ピグモンズ」とチーム「エンジェル」8月19日の決勝に臨んだ。
 「RECOVER」のCPRガイドラインにそって、心肺蘇生(CPR)を実施。心肺蘇生のアルゴリズムに則り、チームで心拍再開に務める。より早く心拍動を再開させたチームが優勝という今大会、初の優勝はチーム「エンジェル」であった。チーム「エンジェル」はメンバー4名が全て愛玩動物看護師であり、かつ、埼玉県、香川県、北海道、東京のそれぞれの動物病院に勤める。この日のためにタッグを組んだ。
 会場は熱気にあふれ、本学会ならではの、獣医救急医療のかかわる仲間が集い、お互いを高め合う2日間となった。
 来年2024年3月9日(土)、10日(日)には、いよいよJaVECCS国際大会(会場:有明セントラルタワー)での開催が決定。
詳細は下記より。
https://www.event.javeccs.com/coming-soon-02
 日本獣医救急集中治療学会(JaVECCS)のこれからの活躍が益々期待される。


第1回CPRバトルを見事勝ち抜き優勝した、
チーム「エンジェル」。今回のために愛玩動物看護師4名でタッグを組んだ


第1回CPRバトル決勝戦後、参加者、審査員、会場全員の様子。
獣医救急医療に携わる参加者同士、互いをたたえ合った


ランチョンセミナーの様子。動物用ワイヤレス超音波画像診断装置の使用感を確認


救急エコー実習の様子

猫のWell-Beingを考える啓発イベント 開催される

 2023年8月8日(火)、東京・赤坂ガーデンシティ内ベクトルスタジオにて、猫のWell-Beingを考える啓発イベントが開催された。

 本イベントは飼い主と獣医療関係者を対象に、8月8日の「世界猫の日」に合わせて開催された。はじめに主催者である日本全薬工業(株)からの企業挨拶が行われ、そのあと東山 哲先生(JSFM副会長/CFC理事/ひがしやま動物病院 院長)と佐藤愛美先生(JSFM実行委員/三鷹獣医科グループ 猫内科部長)のトークセッションが行われた。日本における猫の来院率の低さの原因、キャットフレンドリークリニックで実施されている取り組みの紹介、猫の慢性腎臓病に対する注意点とその対応、定期的な健康診断の重要性など、各先生方が普段臨床現場でどのように猫のWell-Beingを考え、実践しているかを紹介された。

 最後に「猫のWell-Beingをすすめていくうえで大切なことは?」という質問に対し、佐藤先生は猫の健康寿命の延伸、そこにつながる屋内飼育の快適さを挙げ、それが猫に大切にする飼い主の幸せにもつながると述べた。東山先生は、猫のことをさらに知りたい飼い主に対して、丁寧に専門家から説明をし、動物病院と飼い主のよい関係を築くことが大切、とのことであった。

 本イベントで発信された情報が多くの飼い主に届き、飼い主が動物病院を最大限に活用することにより猫のWell-Beingが向上することが広まることを願うばかりである。

(公社)日本動物病院協会(JAHA)年次大会2023 開催

 人と動物の共生社会の実現に向けて「人と動物の絆(HAB:ヒューマン・アニマル・ボンド)」の理念の下、動物病院を核として地域への社会活動を推進するJAHAにより、2023年7月22日(土)~23日(日)、AP東京八重洲(東京都)にて「JAHA年次大会2023」が開催された。
 今年度から新会長を務める宗像俊太郎先生(あさか台どうぶつ医療センター)は「今大会も無事に対面で開催することができました。この大会は様々なかたちでJAHAの活動に携わる人たちが、一堂に集える場を提供しております。日頃の人と動物の絆に基づくJAHAの様々な社会貢献活動、スタッフが生き生きと活動できる環境づくりや取り組みを体感していただきたい」と述べた。

 本大会は「獣医師プログラム」「愛玩動物看護師プログラム」「CAPP/市民プログラム」「動物病院スタッフ向けプログラム」「ホスピタルプログラム」の5つのプログラムにわけて実施。
「獣医師プログラム」では、アドバイザーの石田卓夫先生(赤坂動物病院)、賀川由美子先生(ノースラボ)、秋吉秀保先生(大阪公立大学)を前に、登壇者が症例発表を行い、症例に対する質疑応答のみならず発表の構成の評価等まで行われた。続いて、前出の石田先生による「症例発表スキルアップセミナー」では、プレゼン資料の作成、作成までの有効な時間の使い方、また発表時の視線の位置など内容は詳細に及び、参加者たちはこれからの論文投稿や症例発表への具体的な取り組みを学んだ。また「愛玩動物看護師プログラム」では、今春、国家資格を取得した愛玩動物看護師が誕生するなか、さらなる活躍を視野に入れた講義が展開された。
 「CAPP/市民プログラム」は、本活動を勤めあげた犬たちをしのぶスライドショー、貢献されてきたボランティアの方々への表彰式も実施された。また今年も、コロナ禍で活動を各施設への訪問を自粛せざるをえなかったなかで誕生した「ドッグダンス~花が咲く~」が柴内裕子先生(赤阪動物病院)を講師に披露された。ようやく対面での活動がはじまるなか、CAPP活動には、喫緊の課題があるという。「新型コロナウイルスの影響でこれまで活動を自粛していたため、ボランティアに参加できる犬や猫が減ってしまった。まずは、協力いただける犬や猫の仲間を増やすこと」と宗像会長は述べ、さらに自身も実際にドイツの動物保護施設・ティアハイムに足を運んだことをふまえ、そうした活動や施設の普及も大切と参加者に訴えた。
対面での活動が復活していくなか、宗像新会長による新体制のもと、本協会のますますの発展が期待される。
 本協会の活動詳細は下記より。
https://www.jaha.or.jp/


新会長の宗像先生の挨拶


CAPP/市民プログラム「ドッグダンス~花が咲く~」の終了後に、
CAPPボランティア、ボランティア犬たちとともに


吉田尚子先生(家庭動物診療施設 獣徳会)による「人と動物の関係に関する国際組織(IAHAIO)とJAHAの関わり」の講演の様子


獣医師プログラム。演者は発表後にアドバイザー3名から発表スキルアップにむけ、丁寧な助言を受けた


愛玩動物看護師プログラムの様子

WJVF第14回大会 開催される

 2023年7月8日(土)、9日(日)、ホテルニューオータニ大阪にて、WJVF第14回大会が開催された。新型コロナウイルス蔓延防止の規制の影響で3年ぶりの対面の開催となった。今回のテーマは「Re WJVF 今こそ Back to BASIC」で、臨床現場で必ず押さえておきたい基礎からの学び直しに重きが置かれた。本大会は参加者に会場に来て生で講演を聴いてほしいという主催者の思いがあり、開催後のオンライン配信の実施はなかった。また、抄録・要旨集は今の時代を反映して、ウェブでの閲覧に変わった。
 WJVF会長の竹村直行先生は、開会の挨拶のなかで、新型コロナウイルス蔓延の前後でも変わらず、我々獣医師がやるべきことは動物、飼い主のために最善を尽くすことであり、本大会でたくさんのことを学んでほしいと述べた。
 講演は主要テーマの「初心に帰るシリーズ」のほか、「倒れる高齢犬を診る」、「ステロイドなど免疫抑制剤を使う疾患シリーズ」、「身体診察を見直す」、「軟部外科シリーズ」、「猫の呼吸器疾患シリーズ」なども多岐にわたった。また、少人数で行う顕微鏡実習、外科実習、心肺蘇生実習なども実施された。
 土曜日の夕方に行われた懇親会は無料で、多くの参加者が楽しめたようだ。日曜日にはスタンプラリーのWチャンス抽選会も行われた。
 参加登録者数は1,400名を超え、獣医師のほかにアニマルケアスタッフ、愛玩動物看護師の取得を目指す学生の参加も多かった。
 WJVF第15回大会は、2024年7月26日(金)~28日(日)、ホテルニューオータニ大阪にて開催予定。

開会式の竹村会長

キヤノンユーザーのための画像診断セミナー VET’S SUMMER CAMP 2023 東京 開催される

 2023年7月16日(日)13時から、東京・品川フロントビル会議室にて「キヤノンユーザーのための画像診断セミナー VET’S SUMMER CAMP 2023 東京」が開催された。本セミナーは関東および関東近県のキヤノン装置ユーザーの先生方を対象とした限定セミナーであり、今回は超音波診断をテーマに「newプロトコル!腹部・心臓・救急・運動器のエコー検査」と題し、開催された。
「腹部」では、小野 晋先生((株)スカイベッツ)、「心臓」では竹村直行先生(日本獣医生命科学大学)、「救急」では塗木貴臣先生(TRVA夜間救急動物医療センター)、「運動器」では枝村一弥先生(日本大学)と、日本でも著名な専門家が一堂に会し、各分野における超音波診断の基礎を中心に解説が展開した。
 まず、「腹部」では、小野 晋先生による「肝臓エコーの基本断面と診断のポイント:プロトコルアシスタントの活用」が行われ、とくに肝臓に焦点を当て、超音波検査における基本断面、血管解剖および異常所見について、キヤノン機器に搭載されているプロトコルアシスタントに触れながら解説された。
 つぎに「心臓」では、竹村直行先生による「最低でも知っておきたい心エコー図像と考え方」が行われ、とくに心臓の左房サイズに特化した内容を解説された。左房拡大についてはLA/Aoではなく左房内径のほうを重視すべきであるとし、心エコー図像での左房内径の測定法および評価方法、それに加えて犬におけるX線画像を活用した評価方法について解説された。
休憩をはさみ、「救急」では、塗木貴臣先生による「緊急患者を見逃さない!救急エコーのきほんのき」が行われ、「命を救う」ことを第一とした救急時のエコー検査について、とくに肺エコーの意義と評価方法、そしてFASTの目的と方法についてわかりやすく解説された。
 最後に「運動器」では、枝村一弥先生による「運動器超音波検査の基礎」が行われ、整形外科疾患に対するエコー検査のメリット、各部位における正常所見および異常所見をプロトコルアシスタントの画像を紹介しながらそれぞれ解説された。
 気温が40℃にせまる猛暑のなか、多くの先生方が集まり、各分野における専門家による超音波の解説に熱心に耳を傾けていた。各講演後には質疑応答も行われ、オフラインならではの活発な意見交換が行われた。会場後方には、プロトコルアシスタントを搭載した機器などが並び、その機器についても熱心に質問をする参加者の姿が印象的であった。

会場の様子

第10回 猫の集会 開催される

 JSFM(Japanese Society of Feline Medicine、ねこ医学会)主催「猫の集会」が、2023年7月15日(土)、16日(日)、東京コンベンションホール(東京都中央区)にて開催された。第10回の節目を迎え、今回はじめての2日間開催となる。両日で獣医師向けプログラム・市民向けプログラムが行われ、16日にはCATvocate認定プログラムも行われた。
 獣医師向けプログラムでは、「診断が難しかった症例」「専門医の模擬診察室」「専門医から学ぶ」といった3つのテーマ別に9つの学術講演が、また、呼吸器・腎泌尿器・画像診断・内視鏡5分野の実習が組まれた。参加者限定で大会WEBサイトより企業プログラムの講習も視聴することができる。
 市民向けプログラムでは、石田卓夫先生、浅見優樹先生、入交眞巳先生、瀬戸口明日香先生、服部 幸先生、江角真梨子先生、小林哲也先生、井上 舞先生、藤井亜希奈先生、藤原亜紀先生、桑原 岳先生らが、それぞれ専門分野について、一般参加者にわかりやすく家庭で役立つよう講演された。また猫グッズを扱う人気ショップが会場内に出店し、行列ができるほどのにぎわいとなっていた。
 CATvocate認定プログラムは、猫の診療に必要な基礎知識を学び、猫の扱いに熟達したスタッフを育成することを目的としており、プログラム後の試験に合格すると、CATvocate:猫の専任従事者として、JSFMに認定される。会場とオンラインで受講ができ、会場では多くの愛玩動物看護師が参加。午後に設けられたティーパーティーの時間には、参加者同士の交流や意見交換が行われていた。
 また会場内ではポスターセッション〈キャットフレンドリー部門〉〈学術部門〉の展示もあり、16日にディスカッションタイムが設けられた。
 2日間(会場・オンライン)の登録者数は、獣医療関係者・一般参加者合わせて合計1,490名。動物病院での診療と、家庭での管理の両面から、猫の健康を考える大会となった。

学術講演の様子

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