小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

認定特定非営利活動法人 動物愛護社会化推進協会 第21回 公開シンポジウム 開催

 2018年5月27日(日)、東京大学農学部弥生講堂一条ホール(東京都・文京区)にて、認定特定非営利活動法人 動物愛護社会化推進協会 第21回 公開シンポジウムが開催された。

 第21回目を迎える今回は「ペットのストレスサインを見逃すな!」をテーマに展開。武内ゆかり先生(東京大学)からはストレスとは何なのか、そして主に犬に関するストレスのお話しがあり、続く藤井仁美先生(代官山動物病院、自由が丘動物医療センター)は、猫についてのストレス要因を示す表情や行動、ストレスへの対処、飼い主への対応も含め講演された。金巻とも子先生(かねまき・こくぼ空間工房)の「住まい方から考える」では、一級建築士の視点からストレスと住環境、内装素材と音の反射、飼い主と犬猫との空間の取り方の工夫などについて解説され、会場は熱心に耳を傾けた。

 人と家庭動物が楽しく暮らすための模索、飼い主の高齢化と高齢動物等、飼い主と家庭動物との現状、そのなかでペットのストレスサインを見逃さないこと、家庭動物たちには野生の時代をあったことを認識し、人間にどのように接してくべきかを考えることは大切、と本協会理事の奥野卓司先生(関西学院大学)。またコーディネーターを務められた西村亮平先生(東京大学)が、未来という概念とストレスとの関係を自身の経験を交え解説され、ストレスはある程度は必要なものである可能性があるのではと、会場に疑問を投げかけられたのが印象的であった。
 2007年より内閣府から設立認証を受け、本協会の益々の活躍が期待される。


本協会理事、奥野卓司先生

コーディネーターの西村亮平先生

パネルディスカッションの様子

日本小動物歯科研究会創立25周年記念講演・記念式典・懇親会第26回症例検討会開催される

 2018年3月24日(土)・25日(日)の2日間にわたり、東京・品川プリンスホテルにて、日本小動物歯科研究会創立25周年記念講演・記念式典・懇親会および第26回症例検討会が開催された。1993年11月の発足から四半世紀が経ち、現在の会員数が700名に迫る規模の当会の記念講演として、初日の土曜日にはIra Luskin先生(ANIMAL DENTAL CENTER IN BALTIMORE、アメリカおよびヨーロッパ獣医歯科専門医)による「下顎骨骨折および猫の歯肉口内炎の診断と治療」が行われた。講演途中に何度か設けられた質疑応答ではどの時間も多くの質問が飛び交い、全体の講演時間が延長するほど熱気を帯びたものであった。
 2日目には症例検討会が行われ、午前、午後と合わせて19症例が紹介された。ランチョンセミナーでは小方頼昌先生(日本大学松戸歯学部歯周治療学講座)による「ヒトでのEMPなどの再生療法の進歩と現状」の講演が行われた。EMP(エナメルマトリックス蛋白)とは歯周病によって吸収された歯槽骨の歯周組織再生用材料のことで、人では多く使用されており、日本の臨床現場でも一部の動物病院で行われている。小方先生からは上記のものを含めた歯周組織再生療法の最新知見が解説された。
 会場の外では桜が満開の時期で、今後の獣医歯科学の発展も明るいものに感じられた。

初日の会場の様子

共同運営夜間救急動物病院連絡会(NANEHA)開催される

2018年2月18日(日)、共同運営夜間救急動物病院連絡会(NANEHA; Nationwide Jointly Operated Nighttime Emergency Animal Hospital Association)の会合がパシフィコ横浜会議センター(日本獣医内科学アカデミー開催期間中/神奈川県)で開催された。本会は、夜間救急動物病院の運営、経営などを中心とした情報交換を行うことを目的に、全国の共同運営による夜間救急動物病院の関係者が集まった団体。今連絡会では、主に今年2018年1月に開催されたRECOVER CPR Training & Certificationの実習およびWebコースの今後の推進および、そのための日本での組織づくりについて話し合われた。 
 このほか、小動物の輸血をテーマに、将来的な日本小動物血液療法研究会との関係の検討等、テーマに広がりがみられた。
 日本における夜間救急病院の質の向上、結束とともに、活動範囲の広がりを感じさせる今連絡会であった。


連絡会の様子

第14回日本獣医内科学アカデミー学術大会開催

2018年2月16日(金)~18日(日)、第14回日本獣医内科学アカデミー学術大会がパシフィコ横浜(神奈川県)で開催された。16日午後は5会場、17、18日は15会場において、教育講演、シンポジウム、研究発表、ドライラボ、ワークショップ、症例検討・症例発表など200を超える多彩で魅力的なプログラムが展開された。

今大会JCVIM主催セミナーではSFTS(重症熱性血小板減少症候群)をクローズアップし、日本での発見に深く関わる前田 健先生(山口大学)を中心に企画。本セミナーは多くの関心が寄せられた。また毎年評判の対話型講義は、今年から大きな会場に移しての実施であったが、消化器と救急分野を絡めたスピード感溢れる講義は、今回も人気を博した。
なお、本年のJCVIMアワード〈症例検討アワード〉(協賛:ファームプレス)は、すえつぐ動物病院の浜井 託先生「ポリテトラフルオロエチレン中毒の犬の1例」、東京大学附属動物医療センターの小島麻里先生「銅関連性肝障害が疑われた若齢猫の1例」が受賞された。

3日間で3,169名もの参加者が集った本学術大会、来年2019年は2月15日~17日(パシフィコ横浜)で開催予定。

懇親会の様子

日本獣医皮膚科学会第21回学術大会・総会 開催される

 2018年3月11日(日)、大宮ソニックシティ(埼玉県)で、日本獣医皮膚科学会 第21回学術大会・総会が開催された。
「ニキビダニ症を再考する」をメインテーマに実施された今大会では、招聘講演としてLluis Ferrer先生(Universitat Autonoma de Barcelona)による「ニキビダニ症」が行われ、犬ニキビダニ症と猫ニキビダニ症について、それぞれに寄生するニキビダニの種類、発症機序や診断・治療の他、いまだ応えられていない疑問までとりあげお話しされ、会場は熱心に耳を傾けた。
また、科学講演では菅谷 誠先生(国際医療福祉大学医学部)による「ヒトの皮膚リンパ腫の概要とトピックス」、千村直輝先生(千村どうぶつ病院)による「皮膚リンパ腫『獣医学領域』」が展開された。
このほか、朝比奈良太先生(岐阜大学)による「CAD治療のガイドライン」や、「みんなで症例検討会」、「円卓会議『身近な問題をテーマとした円卓会議』」、一般演題やポスターセッションも多いに賑わい、昨年を越える約400人の参加者たちは、思い思いの会場に足を運び、充実した一日を過ごした。
 出展企業も増え、ますます盛り上がる日本獣医皮膚科学会。次回は2019年3月10日(日)に、会場もあらたに国際ファッションセンター(東京都・墨田区)で開催予定。

アワード発表の様子、永田雅彦会長とともに

第二回 比較臨床麻酔カンファレンス 開催

 去る3月2日(金)、一般社団法人 日本動物麻酔科医協会(JAVA)の主催「第二回比較臨床麻酔カンファレンス」が、研究社英語センター会議室において開催された。
 同カンファレンスは、「日本の獣医麻酔の発展」をテーマとしており、「麻酔というものは妥当な方法が1つとは限らない。だからこそ、本気の専門家同志で議論したい」という思いから、2017年にスタートした。今回のメイン講演は3題、症例検討2題であり、JAVA代表である長濱正太郎先生が各講演で座長を務め、各テーマについて熱い議論が展開された。
 佐々木一益先生(東北大学、袋原どうぶつクリニック・仙台動物医科学研究所)による「従来の常識にとらわれない硬膜外麻酔の可能性を探る~従来の常識?編~」では、硬膜外麻酔の基本的な手技を動画で紹介し、スタンダードな薬剤の使用法に加え、今後は併用薬の検討および獣医学領域でのガイドラインの必要性などを提案された。
 佐野洋樹先生(マッセイ大学)による「麻酔中によく遭遇する不整脈を見極めよう!」では、麻酔薬は不整脈を惹起することがあるが、その治療をすべきか、治療しない選択をするときの判断基準などを心電図からの情報を中心に紹介された。
 石塚友人先生(北海道大学)による「人工呼吸管理~今までの人工呼吸管理って本当に正しいの? 私の秘訣を伝授します!~」では、自発呼吸と人工呼吸の選択、二酸化炭素の許容範囲などを解説し、VCVとPCVの選択や使い分ける基準が提示され、さらに具体的な設定値についてもディスカッションによって深められた。
 すべての講演直後に、講演者およびコメンテーターの伊丹貴晴先生(北海道大学)、神田鉄平先生(倉敷芸術科学大学)、神野信夫先生(日本獣医生命科学大学)、手島健次先生(日本大学)、柳川将志先生(帯広畜産大学)らによるディスカッションが行われ、講演内容について、それぞれの考え方、ある局面における判断基準など忌憚のない意見交換が繰り広げられた。
さらに、症例検討1「術中輸血の判断基準」(下田有希先生)、症例検討2「周麻酔期の心停止」(鈴木さやか先生)と具体的な症例発表が続き、講演者およびコメンテーターによるディスカッションテーマとなる問題提起が行われた。この検討事項を議論する内容を聞き入る参加者からも、明日の診療に活かそうとする熱意が感じられるカンファレンスだった。
 今後の予定などは、http://www.ccca.jp/において随時更新予定。

会場の様子

シモゾノ学園 2017年年次大会 開催される

 2018年2月23日(金)、シモゾノ学園国際動物専門学校(東京都世田谷区)および大宮国際動物専門学校(埼玉県さいたま市)は、動物業界で活躍する人材教育の一環として、学生のさらなるキャリアアップを支援する年次大会を、大田区民ホール アプリコ大ホールにて開催した。
 まずはシモゾノ学園で講師を務める佐藤理子氏が「動物の命を守りたい」と題して講演した。佐藤氏は幼い時の経験を元に命の大切さを説き、動物との付き合い方は目的によって「種」で付き合うこと、「個」で付き合うことがあり、「種」のランク付けは「個」のランク付けとは一致しないことを示した。そのうえで動物と人の関係においては上下の関係はなく、横の関係を作るべきであること、また動物との関係を数値化した共有指数(絆指数)の考え方(自分と共有した時間×共有できる感情係数)を紹介した。
 続いて立教女学院小学校教頭の吉田太郎氏が「共感する心を育む動物介在教育」と題して講演した。吉田氏は不登校の児童をきっかけに2003年より1頭のエアデール・テリアを児童教育に介在させるプログラム「動物介在教育」を開始した。教育の現場に犬を持ち込むには学校・児童の保護者の理解が必要であり、獣医師、ドッグ・トレーナー、トリマーの協力が必要であるが、児童たちは犬を通じて命について学ぶことが多くあることを説明した。現在は、先代の犬の子を新たに迎え、動物介在教育を行っている。
 講演終了後は、シモゾノ学園内の社会的基礎力プロジェクトの発表と表彰、夏に行われたどうぶつ祭の各部門の優秀者の表彰、国内研修クラスパフォーマンスの上位クラスの発表、「それが大事~ペットのいのちバージョン」の合唱、目前に迫った動物看護師統一認定資格試験の合格に向けての決起会があった。
 今年卒業する学生にとっては最後の集大成、進級する学生にとっては来年の手本となる年次大会となった。

講演の様子

日本動物高度医療センター(JARMeC)東京 内覧会開催される

 日本動物高度医療センターは3番目の2次診療施設として東京病院を開設、2018年1月14日に内覧会を開催した。
 新病院は東京都足立区内の環状七号線沿いの立地で3階建て、院内には8つの診察室、3つの手術室、入院室(犬用26、猫用12)、ICU室(犬用14、猫用3)、化学療法室、CT・MRI他 各種検査室がある。院長は山下傑夫先生、循環器科・呼吸器科・泌尿生殖器科・消化器科・脳神経科・整形科・腫瘍科を設け、1月20日より開院している。
 詳細は日本動物高度医療センター東京まで。
 TEL 03-5851-0300、https://tokyo.jarmec.jp

第18回日本獣医がん学会 開催される

 2018年1月27日(土)、28日(日)、ホテルニューオータニ大阪にて、第18回日本獣医がん学会が開催された。参加者は620名であった。
 初日午前中は、教育講演として「はじめての下顎切除~下顎骨部分切除・全切除をマスターしよう!~」高木哲先生(北海道大学)、「乳腺腫瘍の病理と臨床」鈴木 学 先生((株)サップス)、午後には「最新の免疫療法」として、「変わりゆくがん治療を知るための腫瘍免疫の基礎知識を学ぼう」「獣医療における抗体医薬の現状を知ろう」伊賀瀬雅也先生(山口大学)と、「免疫チェックポイント阻害剤がもたらしたがん治療のパラダイムシフト」北野滋久先生(国立がん研究センター中央病院)の講演が行われた。初日は総合教育講演8題および一般口演も教育講演と並行して行われた。
 2日目には、メインシンポジウムである「脾臓の血管肉腫」の講演が行われた。初めに近藤広孝先生(日本大学)が「病理診断」、福田祥子先生(どうぶつの総合病院)が「画像診断」、中川貴之先生(東京大学)が「外科」、伊丹貴晴先生(北海道大学)が「周術期管理」、小林哲也先生(日本小動物がんセンター)が「化学療法」について、診断・治療のポイント等をわかりやすく解説した。続いて症例発表として、髙平篤志先生(たかひら動物病院)が「体表腫瘍(皮膚血管腫)の術前検査によって発見された脾臓血管肉腫の犬の1例」、松村健太先生(杉田動物病院)が「血腫と診断された後に再発を繰り返した脾臓血管肉腫の犬の1例」、楢本昌邦先生(稲荷山どうぶつ病院)が「犬血管肉腫15例の回顧的調査検討」、小島健太郎先生(小島獣医院)が「多施設における犬の脾臓腫瘤134例の手術成績-脾臓血管肉腫と他疾患との比較-」を講演した。最後に総合討論が行われ、フロアからの質問に対し、講演者が丁寧に答えていた。
 次回第19回は、2018年7月7日(土)、8日(日)に東京コンベンションホールにて実施予定。メインシンポジウムのテーマは「犬の鼻腔腫瘍」である。

会場の様子

ファームプレス主催RECOVER CPR実習 Training & Certification開催される

 2018年1月24日(水)、大阪府箕面市・北摂ベッツセンターにおいて、RECOVER CPR実習 Training & Certificationの初日が開催された。

 Veterinary Emergency and Critical Care Society(獣医救命救急医療学会)とAmerican College of Veterinary Emergency and Critical Care(アメリカ獣医救命救急医療専門学会)の共同プロジェクトであるRECOVER(獣医蘇生再評価運動)は、心肺停止にいたった犬や猫の救命率を改善させることを目的にCPRガイドラインを作成し、これまで世界中で普及活動を行ってきた。そして、今回CPRガイドライン発案者の1人であるDaniel Fletcher先生(コーネル大学)の来日にあわせ、東京と大阪の2会場でセミナーを実施することとなり、直接指導を受けられる貴重な機会を得られることとなった。

 1次救命処置からはじまり、音楽を使用しての胸部圧迫のコツや、続いて2次救命処置、モニタリング、そしてチームを組み、シュミレーターを使用してのCPR 実践演習などが行われた。多くの参加者が熱心にリズムに乗りながら胸部を圧迫する姿が印象的であった。

 計6モジュールとなるWeb講習との二段階受講によりCPR の方法を勉強し、実技修了後、合格者はAmerican College of Veterinary Emergency and Critical Care 認定の修了証を得る。

 なお、今回は世界に先駆けて日本ではじめてトレーナーの養成も同時に行われ、多くの日本人トレーナーが誕生することとなった。大阪会場3日間(1月24~26日)、東京会場3日間(1月29~31日)の計6日間実施。今後も獣医救急医療の分野から目が離せない。

大阪会場の様子1

大阪会場の様子2

東京会場の様子1

東京会場の様子2

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