小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

第27回 日本臨床獣医学フォーラム年次大会2025 開催される

 2025年9月27日(土)、28日(日)に東京・ホテルニューオータニにて第27回日本臨床獣医学フォーラム(JBVP) 年次大会2025が開催された。大会テーマは「共に紡ぐ:もっと考えよう 伴侶動物との暮らし―どうぶつにやさしい医療―」であり、実習や獣医師向けプログラム、愛玩動物看護師向けプログラム、市民プログラム、ポスターセッションなどの各会場へ参加者が足を運び、どの会場も大変盛況であった。
 開会式では会長の竹村直行先生(日本獣医生命科学大学)と名誉会長の石田卓夫先生(赤坂動物病院)から開会の挨拶があり、専務理事の桑原孝幸先生(桑原動物病院 前橋アニマルメディカルセンター)からは9月1日(月)より開講されたJBVP認定愛玩動物看護師 臨床研修プログラム(JBVP VNCA+)の説明がされた。竹村先生からは、注目される重症熱性血小板減少症(SFTS)に関するお知らせもあり、YouTubeなどで2025年10月以降に正しい知識を周知するため、JBVPと企業が共同で制作を行った動画が公開されるとのことであった。
 また、161社もの企業・団体が出展しており、展示会場には獣医師や愛玩動物看護師、学生だけでなくトリマーや市民からの参加者も集まり、活発に情報交換が行われる様子が印象的であった。
 幅広い分野の講演を用意するだけでなく、レクチャーシリーズ、新たな愛玩動物看護師臨床研修プラグラムなど、多くの学びの機会を提供し続ける本学会の今後の発展がますます期待される。
 参加者数は4,087名であり、次回の第28回 日本臨床獣医学フォーラム年次大会2026は、2026年9月26日(土)、27日(日)に同会場にて開催予定。

開会式の竹村先生の挨拶の様子

市民プログラム「人と動物の絆シンポジウム」では、松藤 凡先生(前聖路加国際病院小児科、現三井物産(株))、柴内晶子先生・千葉陽子先生(赤坂動物病院)、谷口 優先生(国立研究開発法人国立環境研究所)による講演が実施され、CAPP活動に参加するボランティアおよびボランティア犬も参加し、動物と暮らすことの素晴らしさを会場は共有した 

ランチョンセミナー「犬と猫のスキンケア-エビデンスと経験を交えたトークセッションー」の様子。岩崎利郎先生(元 日本獣医皮膚科学会会長)、江角真梨子先生(日本獣医皮膚科学会認定医)が登壇。セミナー後半では○×クイズも実施され、会場は大いに盛り上がった

(一社)日本癌学会・(一社)日本獣医がん学会 合同シンポジウム開催

 2025年9月25日(木)~27日(土)にかけて(一社)日本癌学会の第84回学術集会が石川県金沢市で3会場に分かれ開催された。その初日、(一社)日本癌学会と(一社)日本獣医がん学会の合同シンポジウムがホテル日航金沢にて行われた。
 本シンポジウムは、座長に本大会学術会長の大島正伸先生(金沢大学がん進展制御研究所腫瘍遺伝学研究分野)、中川貴之先生(東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医外科学研究室)、Dr. Amy K, LeBlanc(Comparative Oncology Program, Center for Cancer Research, National Cancer Institute, National Institute of Health)を迎え、「がん評価動物モデル―マウスから比較腫瘍学まで」をテーマに展開された。
 なお、このシンポジウムは、日本獣医がん学会の活動「若手獣医がん研究者育成支援」の寄付金により、若手獣医師19名が参加した。
 日本獣医がん学会は「今後も人医療学会との合同シンポジウムを企画していきたい」という。日本、アジアの獣医腫瘍学分野の牽引役として、ますますの活躍が期待される。


シンポジウムの様子


本シンポジウム座長の大島先生(前出)、LeBlanc先生(前出)、そして中川先生(前出)を筆頭に日本獣医がん学会の杉山大樹副会長および全参加者にて。日本獣医がん学会の活動「若手獣医がん研究者育成支援」の寄付金により若手獣医師19名が参加

(一社)日本動物看護学会第34回大会 開催される

 2025年9月13日(土)、14日(日)の2日間にわたり、酪農学園大学(北海道江別市)で、(一社)日本動物看護学会第34回大会が開催された。
 最初の演題は、大会長である山下和人先生(酪農学園大学)が「臨床現場で愛玩動物看護師に期待される役割と可能性」として講演を行い、現状と今後の課題を明らかにした。
 教育講演①では、佐野忠士先生(帯広畜産大学)が「動物を『眠らせる』ための薬の理解-全身麻酔と安楽死の基本的理解をめぐって-」を、教育講演②では、安部里梅氏(PET CARE HOME Lyuca)が「高齢犬の看護に役立つスキル」を講演し、愛玩動物看護師が臨床において直面する問題、その対処の方法をわかりやすく解説した。
 パネルディスカッション「さまざまな分野で活躍する動物看護師」では、座長に植田啓一先生((一財)沖縄美ら島財団総合研究所附属動物病院)、パネリストに中村美里氏((一財)沖縄美ら島財団総合研究所附属動物病院)、鎌田祐奈氏(円山動物園)、秋吉珠早氏(北海道農業共済組合 獣医療研修センター)、湯村紗永氏(社台コーポレーション 社台ホースクリニック)、増田麻子氏((公財)北海道盲導犬協会)、矢部真彩氏(ふらっと動物病院)を迎え、愛玩動物看護師として活かせる業務および直面する課題について議論された。
 特別セッションでは、前鼻彰人先生(吉田学園動物看護専門学校)が「動物災害をテーマにした教育」を、小沼 守先生(千葉科学大学)が「教育現場から考えるペット防災 ―愛玩動物看護師の使命と実践-」を講演し、教育現場での災害時に向けた動物看護教育について検討を行った。
 2日目には酪農学園大学がもつ、生体を使わず、シミュレーターで臨床手技を習得する施設「スキルスラボ棟」の見学ツアーが組まれた。ラボは二次診療施設と同じつくりになっており、馬、牛、犬、鶏などの精巧なシミュレーターが置かれている。学生は生体に触れる前に、シミュレーターで何度も練習を行うことで、確かな自信をもつことができる。見学ツアーの最後に、参加者はシミュレーターを使用した採血を体験でき、シミュレーターを触った感覚が生体に近いことに驚いていた。
 一般演題は、口頭発表21演題が行われ、優秀賞を「北海道農業共済組合における細菌検査の実施状況について」を発表した秋吉珠早氏(北海道農業共済組合 獣医療研修センター)が、奨励賞を「犬用四輪カートを用いた四肢負重に関する予備調査:動物看護実践へ向けて」を発表した河合彩弥氏(日本獣医生命科学大学)が受賞した。
 ポスター発表は13演題が掲示され、優秀賞を「日本の人終末期看護と海外の犬猫終末期看護文献についてのテキストマイニング解析-日本の犬猫終末期看護と比較して-」を発表した齋藤めぐみ先生(ヤマザキ動物看護専門職短期大学)が、奨励賞を「獣医師・愛玩動物看護師のペア体制導入による待ち時間短縮の取り組み」を発表した田村悠紗氏(ワラビー動物病院グループ どうぶつ園通りの動物病院)が受賞した。
 またランチョンセミナーは「愛玩動物看護師の愛玩動物看護師による愛玩動物看護師のための教育」(主催:ユニ・チャーム(株))、「動物看護師として働くこと:成長と挑戦のストーリー」(主催:VCA Japan(合))が実施された。
 今大会の参加者は202名。次回第35回大会は2026年9月ごろに帝京科学大学(東京)で開催予定。
 

講演の様子
 

スキルスラボ見学ツアーで参加者に採血について説明する宮庄 拓先生

令和7年度関東・東京合同地区獣医師大会@山梨 開催される

 2025年9月7日(日)、アピオ甲府(山梨県・甲府市)にて令和7年度関東・東京合同地区獣医師大会が開催された。
 本大会は、日本小動物獣医学会のほか、日本産業動物獣医学会、日本獣医公衆衛生学会の三学会の関東・東京地区が集まる合同大会で、今回も関東の各県および東京都・横浜市・川崎市の獣医師会が集結、各会場で午前・午後にわたり講演が実施された。
 市民公開講座では、「あなたのペットは大丈夫!?ダニから感染するペットと人の共通感染症」と題し、前田 健先生(国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所)より、近年話題にのぼっているダニ媒介性疾患、とくにSFTS(重症熱性血小板減少症候群)を中心に講演が行われた。
 また、災害動物支援セクションとして、前回の群馬大会に続いて、地域災害に関する講演「被災したペットの現状と課題、獣医師に求められる支援とは!」が行われ、平井潤子先生(NPO法人アナイス代表)、藤本順介先生(日本獣医師会災害対策委員長)、そして歌手でりく・なつ同室避難推進プロジェクトアンバサダーの伍代夏子氏による講演およびパネルディスカッション等が行われた。
 小動物のセクションでは、2会場で計40以上の演題発表が行われ、幅広いテーマに関する講演および質疑応答が行われた。
 受付会場には、山梨の特産物の製品ブースなどもあり、展示会場には多くの企業が集まるなか、併設の参加者休憩会場にはシャインマスカットが振舞われ、残暑のなか、多くの獣医師および獣医療関係者が集まった。なお、次回は横浜市獣医師会が担当地区となる。
 

会場の様子
 

展示会場のシャインマスカット

MSD アニマルヘルス(株)による新たな取り組み
「Veterinary Technology Service」設立される

 Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの一部門であるMSD Animal Healthは、MSD アニマルヘルス(株)(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:土田 拓史)が、新たな取り組みである「Veterinary Technology Service(以下、VTS)」を2025年3月に設立した。
 MSD アニマルヘルス(株)は、日本国内の獣医療業界、畜水産業界、小動物業界に対するさらなる貢献を目指している。VTSは、治療・予防・検査、経営管理、テクノロジー、研究開発、広報・運営の5つの主要機能を展開する。これらの機能は、ITテクノロジー、研究開発、マーケティング、学術などの専門性を有する獣医師を中心としたエキスパートから構成され、MSD アニマルヘルス(株)の各部門から集結している。この新たなアプローチにより、部門を越えた横断的な活動が可能となり、専門性や畜種を越えた知識と経験の融合が実現する。
 VTSは、MSD Animal Healthの企業理念である、「サイエンスを動物たちのより良い健康のために」をさらに具現化するため、新しいサービスを通じて、当社の革新的な技術や現場での新しい知見を発信し、動物の健康と幸せな未来の形成にこれまで以上に貢献することを目指す。


お問い合わせ先
Veterinary Technology Service 広報・運営
電話番号:03-6272-1099
メール:msdah_vts@merck.com