小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

ヒルズ動物看護師向けイベント VN Festa 2025 開催

 2025年8月31日(日)、ヒルズ動物看護師向けイベント VN Festa 2025がガーデンシティプレミアム京橋ホール(東京都・中央区)にて開催された。テーマは「このままでいいの?に答える日 獣医療の現場を支える動物看護師としての未来キャリアデザインセミナー」と題し、前・後半に分けて展開された。
 前半は「一人の動物看護師して『自立』するとは?」(中村篤史先生、A’alda X(株))、「動物看護師のキャリアの可能性を広げよう!」(田中恵美先生、(株)NYAN for Animals)の講演が行われた。続いて「動物看護師のキャリアを考える」と題しディスカッションが実施され、事参加者からその場で投稿された質問を元に中村先生(前出)、田中先生(前出)そして会場を交え、明日からの業務に役立つ話が展開された。出産育児や介護などのライフステージでの仕事への向き合い方をはじめ、チーム獣医療の解釈、愛玩動物看護師として一社会人として、いかに各業務を主体的にとらえるか、心のもちよう、専門性をはじめとするスキルの向上、キャリアアップの実践例などが話題に上がり、愛玩動物看護師として勤めあげるためのヒントがつまったディスカッションとなった。

 後半は稲野辺悠先生(芝アニマルクリニック)による「獣医師No.1インフルエンサーが考える愛玩動物看護師の重要性」の講演が行われた。講演はSNSをはじめたきっかけ、毎日配信するために専属スタッフとして愛玩動物看護師の協力を得た例、配信継続の難しさなど、実体験を中心に展開。小田稔郎先生(Art Director / Designer)による「誰でもできる! 今日から変わるSNSバナーのデザイン入門」では、動物病院から飼い主家族へ送る案内ツールについて、効果的なレイアウト、文字の大きさや推奨される書体や色など、明日からすぐに実践できるスキルが紹介された。最後の講演、鈴木礼佳先生((株)マイイーエフ)の「相手を思いやり、歩み寄る心”マナーマインドの極意”」では、信頼関係をつくるために「相手の心に寄り添う」ことを実践するためにBASE ON NIACサイクルを交え、まず“関心”を持つことが大切であること、愛玩動物看護師という職業は“感情労働”であるとを理解することの重要性を述べた。
 午後2時~5時過ぎまで、参加者たちは愛玩動物看護師として明日から役立つ情報の詰まった各先生方の講義に熱心に耳を傾けた。
 なお、本セミナーは9月21日(日)に名古屋会場でも開催される。
詳細は下記より。
https://asia.hillsvna.com/ja_JP/regional/jp/vn-festa-2


同社プロフェッショナル獣医学術部の 
高橋智司氏による開会の挨拶(東京会場)


東京会場の様子


パネルディスカッションでは、参加者からその場で投稿された質問を元に
中村先生、田中先生と会場とで議論が交わされた
        

      

第22回 日本動物リハビリテーション学会学術大会 開催される

 2025年8月30日(土)、東京・日本獣医生命科学大学にて第22回日本動物リハビリテーション学会学術大会が開催された。
 午前には遠山晴一先生(北海道大学大学院保健科学研究院)より、「リハビリテーション医の役割~コメディカルスタッフとの連携を中心に~」の特別講演が行われ、人医療で実施されているリハビリテーション医療の概要と連携について解説された。総会を挟み、午後からは学会長の柄本浩一先生(えのもと動物病院)から「動物リハビリテーションの定義、知ってますか?」の教育講演が行われ、総会に続き当学会の取り組みや今後の展望の説明、リハビリテーションの定義などが解説された。続いて歩行困難のフンボルトペンギンやトイ・プードルの肩関節脱臼症の症例など、日ごろ臨床現場で取り組まれているリハビリテーションの症例発表が各発表者から行われ、参加者が質疑応答なども含め、熱心に聴講する姿が印象的であった。
展示企業も8社が参加し、会場には獣医師・愛玩動物看護師だけでなく義肢装具士や大動物医療の関係者など約80名が参加した。本学会のますますの発展が期待される(学会会員限定の見直し配信あり)。

教育講演の様子

第137回HGPIセミナー「食・健康・環境を感染症から守るー獣医疫学の挑戦と展望」

 2025年8月27日(水)18時~、HGPI(日本医療政策機構)主催によるウェブセミナー「食・健康・環境を感染症から守るー獣医疫学の挑戦と展望」が開催された。スピーカーには、酪農学園大学 国際獣疫事務局(World Organaisasion for Animal Health:WOAH)食の安全コラボレーティングセンター長・獣医疫学教授の蒔田浩平先生を迎え実施された。
 講演では、昨今話題に上がるマダニ媒介による感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」をはじめ、狂犬病、ブルセラ症などの人獣共通感染症を中心にOne Healthの他、経済への影響にも触れ、「動物の感染症が人と環境にもたらすもの」「獣医疫学の役割」「獣医疫学が抱えている課題」「問題解決のために」と話はすすめられた。薬剤耐性菌を含む小動物だけでなく家畜や野生動物に関する感染症にも話題は及び、日本のみならず、東南アジア、南アジア、サハラ以南アフリカの豊富な情報をもとに、人獣共通感染症の現状、獣医学および獣医疫学の課題や今後の展望について解説された。
 人獣共通感染症の研究ではとくに獣医疫学という学問が重要になる。獣医疫学者人口を増やすことが重要であると蒔田先生は力説。現在獣医疫学者を雇用している獣医科大学は少ないと指摘した。また、地方自治体や民間には獣医疫学者のポストがほとんどないことも懸念点だという。
 新興感染症・再興感染症の多くは動物由来で発生する。動物の疫学という学問、領域は我々の生活に関わるという点を認識すること、そしてOne Health、教育部門、民間部門・行政部門の連携の大切さを学べたセミナーであった。セミナーの最後に、国際獣医疫学経済学会(International Society for Veterinary Epidemiology and Economics:ISVEE)を2033年に日本で初めて開催するなど、日本の公衆衛生、家畜衛生関係者などに獣医疫学について広く理解を促す取り組みの必要性について紹介された。
ISVEEの詳細は下記より。
https://isvee17.com.au/

日本獣医眼科カンファランス 2025年 年次大会 開催される

 2025年8月24日(日)、東京・JA共済ビルカンファレンスホールにて(一社)日本獣医眼科カンファランス(Japan Veterinary Ophthalmic Conference、以下JVOC)2025年年次大会が開催された。
 今年はこれまでの会場とは異なる会場で開催され、100名を超える参加者と10社の協賛協力企業が集まった。
 今大会は滝山直昭先生(獣医眼科クリニック名古屋)が大会長を務め、「神経眼科 ~眼の症状に関連する神経疾患について~」というテーマのもと、滝山直昭先生より「眼科で遭遇する神経疾患」の講演、さらに伊藤大介先生(Texas A&M大学)より神経眼科学についての「視覚障害を生じる脳疾患」「眼振を生じる脳疾患」「眼症状を呈する神経疾患」の招待講演が三本立てで行われた。
 今回のテーマである眼の神経疾患に関する講演だけでなく、新役員講演として北村康也先生(八雲動物病院)が研究している「イヌのマイボーム腺の臨床的評価について」の講演もあり、参加者も皆熱心に聴講と質問する様子がみられた。
 JVOC役員である前原誠也先生(ひかり町動物眼科)からは、診療実績および事業報告の発表があり、これまでの活動および今後の活動予定についての報告。また、眼科手術を実践している獣医師やこれから眼科手術をはじめる獣医師を対象に、あらためて基礎講習会や眼科手術研究会の説明が行われた。
次回は、2026年7月26日(日)、御茶ノ水ソラシティカンファランスセンターにて梅田裕祥先生(横浜どうぶつ眼科)を大会長として開催予定である。
 

今回の大会長である滝山直昭先生(獣医眼科クリニック名古屋)
 

招待講演を行った伊藤大介先生(Texas A&M大学)
 

会場の様子

第17回 日本獣医腎泌尿器学会学術集会・総会 開催される

 2025年8月23日(土)、24日(日)に東京・ベルサール飯田橋ファーストにて第17回 日本獣医腎泌尿器学会学術集会・総会が、山﨑寛文先生(日本動物高度医療センター)を大会長として開催された。
 大会テーマは「急性腎障害の最新update」であり、会場には2日間で500名を超える参加者が集まり、各プログラムを熱心に聴講していた。
 1日目には人医療の先生を招き、日本腎臓学会サテライトシンポジウム「CKDの治療薬としてのSGLT2阻害薬~そのメカニズムを紐解く~」が開催され、SGLT2阻害薬における治療やその意義についての4本の講演と総合討論が行われた。また一般社団法人化にあたり、認定試験を含む今後の認定医制度の説明や認定審査委員会主催のアドバンストセミナーおよび認定講習会となる教育講演も同日に行われた。
 2日目には「急性腎障害の最新update~IRISガイドライン2024を紐解く」をテーマに3本の講演と総合討論、また一般演題発表と一般社団法人体制となってから初の第1回定時総会が行われた。
 展示会場ではポスター発表が行われ、コアタイムには展示会場に多くの参加者が押し寄せ、講演会場ともに大変盛況であった。今後の本学会のますますの発展が期待される。

講演会場の様子

アドバンストセミナーの様子

Veterinary Endoscopy Society(VES)/Veterinary Interventional Radiology& Interventional Endoscopy Society(VIRIES) 2025年次大会 開催

 2025年8月4日(月)~8日(金)、国立京都国際会館(京都府)で、世界獣医内視鏡学会(Veterinary Endoscopy Society:VES、Dr. Nicole J. Buote会長)/世界獣医インターベンショナルラジオロジー学会(Veterinary Interventional Radiology & Interventional Endoscopy Society:VIRIES、Dr. Alice Defarges会長)の2025年合同学術集会が開催された。これらの学会の学術集会はコロナ禍以降個別に年一回開催されていたが、今回から合同で開催されることになり、しかもアジアで初めての開催ということで日本が選ばれた。本学会には国内外から多数の参加者が集まり、過去最多の参加人数を記録した。

 VESは獣医内視鏡学、特に内視鏡外科を中心に、VIRIESは非手術下/手術下にてデバイスを用いた低侵襲治療を中心にそれぞれ研究や臨床に取り組んでいる。
 両学会とも低侵襲治療の知識と技術の向上を目指して設立されており、共通の話題も多く取り上げられる。国内外から連日100名近い参加者が集い、臨床研究、ケースレポートやパネルデスカッション等が展開された。また、日本の医師によるキーノート講演も行われ、日本の医療における知識や技術を共有することができた。さらに、日本から参加した獣医師も発表し、会場との積極的な意見交換がなされた。講演会場には熱心な参加者が集い、展示会場も賑わいをみせた。
 前半の8月4日~6日午前はVES、後半の6日午後~8日はVIRIESの大会が実施され、参加者達は早朝より発表に耳を傾けた。VESは2003年に設立、 VIRIESは2016年に設立されたが、世界の獣医師がより積極的に情報共有できるように今後さらに活動を活発化する予定である。日本においても、日本獣医内視鏡外科学会(Japan Society for Veterinary Endoscopic Surgery: JSVES)と日本獣医インターベンショナルラジオロジー学会(Japanese Society of Veterinary Interventional Radiology: JSVIR)が設立されており、それぞれの学会とさらに緊密な連携を取っていくことも再確認された。
 次回は2026年5月11~15日、合同学術集会としてボストンで開催される予定である。動物のQOLの向上のためにも低侵襲治療の正しい情報・技術の普及が重要となってくる。低侵襲治療における両学会の牽引力に、ますます期待が寄せられる。また、国内にいてこのような情報を得るためには、JSVESおよびJSVIRに参加することで容易になると思われる。

 詳細は下記URLより。
【VES】
https://veterinaryendoscopysociety.org/

【VIRIES】
https://viries.org/


講演の様子。登壇者は竹内 僚先生(日本大学)


パネルディスカッションの様子


展示会場の様子


ガラディナーの様子