小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

第46回動物臨床医学会年次大会 開催される

 2025年10月18日(土)、19日(日)にグランキューブ大阪にて、第46回動物臨床医学会年次大会が開催された。
 プログラムとして、ベーシック・ステップアップ・アドバンスの各セミナー、パネルディスカッション、動物病院スタッフセミナー、各研究会のシンポジウムとセミナー、産業動物分科会のプログラム、企業主催のランチョンセミナー、一般口演、症例検討、ポスターセッション、スタッフ口頭発表、市民セミナー、そして本学会が2025年から新たに設立した認定愛玩動物看護師制度の認定講習対象セミナーなど、多くの講演が実施された。各会場には獣医師だけでなく愛玩動物看護師や学生、動物病院スタッフなどが聴講へ集まり大変盛況であった。また今大会では展示会場でも講演スペースが設けられ、参加者が各企業の展示ブースへ足を運びやすい工夫がされていることも印象的であった。
 初日には昨年の一般口演から選考された学会長賞および各文科会アワードの授与が行われ、学会長賞として「犬のポリニューロパチーの臨床的特徴と予後因子」の演題で発表を行った長谷川裕基先生(KyotoAR 動物高度医療センター)が表彰された。夜には展示会場にて参加費無料のウェルカムパーティーが開催され、こちらにも多くの参加者が集まり、乾杯の前に、ご逝去された前理事長の山根義久先生への黙祷が捧げられた。
 全体としては学生や愛玩動物看護師の参加者が増えており、熱心に聴講する姿や情報を集めようとする姿勢が非常に印象的であった。本学会の今後の展開が期待される。
 次回動物臨床医学会第47回年次大会は、2026年10月24日(土)、25日(日)に同じくグランキューブ大阪にて開催予定。

2日目の3階展示会場横でのセミナーの様子

大阪公立大学森之宮キャンパス開設記念シンポジウム 「Zoobiquity Symposium-ワンヘルスが導く医療と獣医療の新時代-」 開催

 2025年10月18日(土)、同年9月24日に新しく開設された大阪公立大学森之宮キャンパス(大阪府大阪市)にて開設記念シンポジウムとして、「Zoobiquity Symposium-ワンヘルスが導く医療と獣医療の新時代-」が開催された。
 プログラムはすべて同時通訳つきで実施され、午前中は「さまざまな動物の心臓病態生理学-生息環境による心臓形態の変化―」(鯉江 洋先生、日本大学)、「猫尿臭はヒトにおける高コルステロール血症を防ぐ新たな手がかりを提供する」(宮崎雅雄先生、岩手大学)、「獣医学における汎動物学の実践―解剖学教育と腎臓研究の現場から-」(市居 修先生、北海道大学)の講演が実施された。
 ランチョンセミナー「Zoobiquityと幹細胞:再生医療の未来を探る」(塚本雅也先生、大阪公立大学)の後、午後最初のプログラムでは基調講演としてカルフォルニア大学のDr. Barbara Natterson-Horowitzによる「The Future of Medicine: Human and Animal Health in the 21sr Centyry」が実施された。当初実施予定であった2020年からコロナ禍を経て、ようやくかなったDr. Horowitzの講演であった。
 続くパネルディスカッションは2部構成で展開された。第一部は「One Healthの将来を担う若手の育成について」をテーマに、「アジアの取り組み」(Dr. Juhyung Hur、アジア獣医師連合会長)、「コロラド州立大学の取り組み」(Dr. Tracey Goldstein、コロラド州立大学One Healthセンター所長)、「北海道大学の取り組み」(寳金清博先生、北海道大学総長)、「帯広畜産大学の取り組み」(古林与志安先生、帯広畜産大学副学長)、「大阪公立大学獣医学部のOne Healthへの取り組み」(山岸則夫先生、大阪公立大学獣医学研究科研究科長)が講演された。
 第二部は「学生が考えるOne Healthの将来」をテーマに、「シバヤギを活用した除草活動」(奥薗翔太さん・小田切 茜さん・片岡沙矢さん・栗本みのりさん・黒田いちごさん・前田一樹さん、大阪府農芸高等学校 資源動物科 ふれあい動物専攻)、「獣医学生が描く、教育とAIからはじまるOne Healthの未来」(坂口実優さん、大阪府立大学 生命環境科学域 獣医学類)、「医学部と獣医学部における「One Health」と「Zoobiquity」に関する意識調査」(鵜澤 悠さん・政田佳祐さん・市原明子さん・弁野 遼さん、大阪公立大学獣医学部)、「One Healthの実現に向けて:小学生への“いのちの授業”と獣医再生医療研究」(杉崎晧子さん、大阪公立大学 大学院獣医学研究科)の発表がされた。
 Zoobiquityをとりまく日本、アジアやアメリカでの現状を学び、教育の重要性に対する認識を高める1日となった。
 なお本シンポジウムは(一財)J-HANBS北海道大学との共催であり、とくにJ-HANBS 理事長の加藤 元先生は、2018年から本シンポジウムの開催に向けて尽力してこられた。コロナ禍を経てようやく開催された本シンポジウムが、「人、動物、自然環境」の3つの要素を一体としてとらえる「Zoobiquity」概念を普及する牽引役として、J-HANBSをはじめ各教育機関、研究機関の活躍がますます期待される。


コロナ禍を経てようやくシンポジウムの開催を実現。その喜びを分かち合うDr. Horowitzと加藤 元先生。加藤先生は2018年に渡米し、Dr. Horowitzに日本での講演を依頼していた。シンポジウムは当初2020年10月の開催が決まっていたが、同年3月からのコロナ禍により延期を余儀なくされ、先行きがみえない状況下、一旦中止にみまわれた。しかし昨年2024年から再度企画を立て直してのプロジェクトがスタートし、今回のシンポジウム開催に至った


Dr. Horowitz先生の講演の様子


会場の様子。写真は本シンポジウム共催の北海道大学総長 賽金清博先生の講演


大阪公立大学獣医学部附属獣医臨床センターは米国動物病院協会(AAHA)による国際認定を取得。本学獣医学研究科科長 山岸則夫先生(右)と、米国動物病院協会(AAHA)日本支部代表 松沼謙一氏(左)


参加者全員で(一財)J-HANBS理事長加藤 元先生を囲んで

 

NPO法人 人と動物の共生センター主催「生活困窮者のペット飼育問題の解決に向けて」セミナー開催

 2025年10月14日(火)、衆議院第二議員会館(東京都千代田区)でNPO法人 人と動物の共生センターによる「生活困窮者のペット飼育問題の解決に向けて」セミナーが実施された。
 本セミナーは、「国内で多発する〈多頭飼育崩壊〉等の問題の背景には、飼育者の精神障害・経済的因窮等の問題が隠れている」「〈動物の問題〉ととらえられやすいが、〈人の困窮・人の福祉の問題〉が、動物の問題という形で表出したもの」「解決には、動物福祉と社会福祉、民間と行政の横断的な協力が必要だが、まだまだ認知されていない。日本全体の問題として取り上げ、関係者と情報共有し、解決への糸口を探りたい」という3つの趣旨をもとに実施された。
本センターの理事長を務める奥田順之先生により生活困窮者ペット飼育の課題や、岐阜市内19ヵ所の地域包括支援センター所属の職員の協力によるアンケート結果、国の政策と現実などが紹介された。続いて支援現場の声として、「人と動物の福祉の繋~高齢社会の中、顕在化してくるペットと高齢者の問題とは~」(森 茂樹氏、かわさき高齢者とペットの問題研究会)の報告が行われた。生活困窮世帯の猫の飼育をメイン事業とする「人もねこも一緒プロジェクト」小池英梨子氏からは2017年から現在までの対応案件の詳細についての報告が行われた。「生活困窮ペット飼育者支援に関する院内勉強会」(亀山嘉代氏、NPO法人ねりまねこ)の発表では東京都練馬区での活動状況が報告され、また医療の立場から「在宅療養患者におけるペット問題」(白神真乃先生、医療法人かがやき総合在宅医療クリニック、「とこのこ」代表)が報告された。
 問題の解決には、飼い主への高齢者が健常な時期に早めに相談できる窓口、教育などの早期介入や、個人情報との兼ね合い、行政との連携やドネーションの重要性が紹介された。
 本セミナーには100名近い参加者が集った。動物の愛護及び管理に関する法律の策定にかかわった議員も臨席し、問題解決に向けた情報共有や提案を呼びかけた。
  “行政”、“ボランティア”、“飼い主と犬や猫”の問題解決のハブ(中継地点)を行政あるいは公的機関におくことで解決できる事案は少なくないのではと、本センター理事長の奥田順之先生はいう。
 福祉問題のからんだペットの飼育問題の解決に向けて、本センターの牽引がますます期待される。
 本センターの詳細は下記より。
https://human-animal.jp/


奥田順之先生の講演の様子


パネルディスカッションの様子・左から森 茂樹氏、白神真乃先生、小池英梨子氏、亀山嘉代氏、ファシリテータを務める奥田順之先生

第28回日本獣医療倫理研究会(JAMLAS) 開催される

 2025年10月5日(日)、京王プラザホテル(東京都・新宿区)にて第28回日本獣医療倫理研究会(JAMLAS)が開催された。
 今回のテーマは、「リクルートトラブルを研究する」。本研究会会長の白永伸行先生(シラナガ動物病院)の挨拶からはじまり、本研究会顧問弁護士の春日秀文先生(春日法律事務所)からは「今年の動物医療事件裁判例」と題し、ある動物病院で実際にあった判例をもとに、どの部分が争点となったのかを示し、これからの日々の臨床現場に活用できる内容を解説した。
 「失敗から学ぶ採用戦略-人材紹介を利用して」では、平林弘行先生(さくら動物病院)が、「事例紹介」では、弓削田直子先生(VCAJペットクリニックアニホス)が、「東京都獣医師会でのリクルートトラブル防止の取り組み」では、宮下めぐみ先生(エルザどうぶつ福祉病院/東京都獣医師会)が、それぞれの立場から現在臨床現場でよく話に挙がる人材紹介企業や就職説明会など、実際に活用した経験などをもとに、リクルートに関するトラブル、課題およびその対策などについて解説された。
 また、本研究会顧問弁護士である姫井葉子先生(春日法律事務所)からは、従業員を採用する際の法的観点からの留意点について解説され、とくに「合意をするなら採用時に」という言葉が印象的であった。そのあと、「獣医学生の就職動向と課題」では、枝村一弥先生(日本大学)が、大学の観点から獣医学生の就職希望地域に偏重がみられること、獣医学生の就職活動が多様化しており職場環境を重視している学生が多いこと、女性の学生が増えているので今後女性獣医師が活躍できる環境の整備が必要であること、小動物臨床における就職活動中のトラブルが増加していることを解説した。その後の「リクルートトラブルを防ぎ定着させるには」をテーマとしたディスカッションでは、質問が枝村先生に集中し、獣医学生がどのような教育を経て臨床現場にやってくるのか、臨床現場との情報の不足、ズレが顕著に感じられる内容であった。
 テーマの影響からか、今回はこれまで以上に参加者が集まり、現在の日本の臨床現場における求人および人材確保への意識の高さが感じられた。
 

会場の様子

(一社)日本獣医皮膚科学会 ひふゼミ2025 開催

 2025年10月5日(日)、朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター(新潟県新潟市)で、(一社)日本獣医皮膚科学会主催による、ひふゼミ2025が開催された。
 テーマは「もっと知りたい、内分泌疾患」。前半は世界獣医皮膚科学会から日本の獣医師としてはじめてHugo Schindelka賞を受賞された岩崎利郎先生(ペットの皮膚科、元日本獣医皮膚科学会会長)による講演「犬と猫の内分泌疾患における皮膚症状の特徴 」Part1・2が行われた。続いて(株)キリカン洋行の協賛によるランチョンセミナー「耳スッキリ! 外耳炎を制す洗浄戦略とバイオフィルム」を山岸建太郎先生(本郷どうぶつ病院)が講演された。後半は、どうぶつの総合病院専門医療&救急センター内科主任を務める福島建次郎先生が「内科専門医による内分泌疾患~診断と治療のポイント~甲状腺疾患」「内科専門医による内分泌疾患~診断と治療のポイント~副腎疾患」を講演された。最後は皮膚科医と内科医の総合討論「実はみんなも悩んでいる~内分泌疾患~全員参加型ディスカッション」が実施され、参加者たちは、臨床診療現場で抱えている日頃の疑問や不安について岩崎先生、福島先生に質問していた。
 内分泌疾患による皮膚症状、そして内科的な診断・治療について理解が深まるゼミとなった。
 なお、次回2026年のひふゼミでは、国際会議「AiANZ with ひふゼミ」が10月9日(金)~11日(日)に奈良県コンベンションセンターで開催される。本会議にはアジア各国から多くの獣医師が集まる。獣医皮膚科学における本学会のさらなる牽引が期待される。
 なお、今回のゼミの内容はオンラインにて配信予定。詳細は下記本学会サイトより確認が可能。
https://www.jsvd.jp


岩崎先生の講演の様子


ランチョンセミナーの様子


全員参加型ディスカッションの様子。大嶋有里先生(犬と猫の皮膚科)のファシリテートのもと、当日会場から寄せられた質問に福島先生と岩崎先生が丁寧に回答されていた


新潟大会オーガナイザーを務めた小嶋大亮先生(小島動物病院アニマルウェルネスセンター)。新潟でひふゼミを開催する際はぜひ“内分泌疾患”をテーマに開催したかったと今大会への思いを伝えた

第27回 日本臨床獣医学フォーラム年次大会2025 開催される

 2025年9月27日(土)、28日(日)に東京・ホテルニューオータニにて第27回日本臨床獣医学フォーラム(JBVP) 年次大会2025が開催された。大会テーマは「共に紡ぐ:もっと考えよう 伴侶動物との暮らし―どうぶつにやさしい医療―」であり、実習や獣医師向けプログラム、愛玩動物看護師向けプログラム、市民プログラム、ポスターセッションなどの各会場へ参加者が足を運び、どの会場も大変盛況であった。
 開会式では会長の竹村直行先生(日本獣医生命科学大学)と名誉会長の石田卓夫先生(赤坂動物病院)から開会の挨拶があり、専務理事の桑原孝幸先生(桑原動物病院 前橋アニマルメディカルセンター)からは9月1日(月)より開講されたJBVP認定愛玩動物看護師 臨床研修プログラム(JBVP VNCA+)の説明がされた。竹村先生からは、注目される重症熱性血小板減少症(SFTS)に関するお知らせもあり、YouTubeなどで2025年10月以降に正しい知識を周知するため、JBVPと企業が共同で制作を行った動画が公開されるとのことであった。
 また、161社もの企業・団体が出展しており、展示会場には獣医師や愛玩動物看護師、学生だけでなくトリマーや市民からの参加者も集まり、活発に情報交換が行われる様子が印象的であった。
 幅広い分野の講演を用意するだけでなく、レクチャーシリーズ、新たな愛玩動物看護師臨床研修プラグラムなど、多くの学びの機会を提供し続ける本学会の今後の発展がますます期待される。
 参加者数は4,087名であり、次回の第28回 日本臨床獣医学フォーラム年次大会2026は、2026年9月26日(土)、27日(日)に同会場にて開催予定。

開会式の竹村先生の挨拶の様子

市民プログラム「人と動物の絆シンポジウム」では、松藤 凡先生(前聖路加国際病院小児科、現三井物産(株))、柴内晶子先生・千葉陽子先生(赤坂動物病院)、谷口 優先生(国立研究開発法人国立環境研究所)による講演が実施され、CAPP活動に参加するボランティアおよびボランティア犬も参加し、動物と暮らすことの素晴らしさを会場は共有した 

ランチョンセミナー「犬と猫のスキンケア-エビデンスと経験を交えたトークセッションー」の様子。岩崎利郎先生(元 日本獣医皮膚科学会会長)、江角真梨子先生(日本獣医皮膚科学会認定医)が登壇。セミナー後半では○×クイズも実施され、会場は大いに盛り上がった

(一社)日本癌学会・(一社)日本獣医がん学会 合同シンポジウム開催

 2025年9月25日(木)~27日(土)にかけて(一社)日本癌学会の第84回学術集会が石川県金沢市で3会場に分かれ開催された。その初日、(一社)日本癌学会と(一社)日本獣医がん学会の合同シンポジウムがホテル日航金沢にて行われた。
 本シンポジウムは、座長に本大会学術会長の大島正伸先生(金沢大学がん進展制御研究所腫瘍遺伝学研究分野)、中川貴之先生(東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医外科学研究室)、Dr. Amy K, LeBlanc(Comparative Oncology Program, Center for Cancer Research, National Cancer Institute, National Institute of Health)を迎え、「がん評価動物モデル―マウスから比較腫瘍学まで」をテーマに展開された。
 なお、このシンポジウムは、日本獣医がん学会の活動「若手獣医がん研究者育成支援」の寄付金により、若手獣医師19名が参加した。
 日本獣医がん学会は「今後も人医療学会との合同シンポジウムを企画していきたい」という。日本、アジアの獣医腫瘍学分野の牽引役として、ますますの活躍が期待される。


シンポジウムの様子


本シンポジウム座長の大島先生(前出)、LeBlanc先生(前出)、そして中川先生(前出)を筆頭に日本獣医がん学会の杉山大樹副会長および全参加者にて。日本獣医がん学会の活動「若手獣医がん研究者育成支援」の寄付金により若手獣医師19名が参加

(一社)日本動物看護学会第34回大会 開催される

 2025年9月13日(土)、14日(日)の2日間にわたり、酪農学園大学(北海道江別市)で、(一社)日本動物看護学会第34回大会が開催された。
 最初の演題は、大会長である山下和人先生(酪農学園大学)が「臨床現場で愛玩動物看護師に期待される役割と可能性」として講演を行い、現状と今後の課題を明らかにした。
 教育講演①では、佐野忠士先生(帯広畜産大学)が「動物を『眠らせる』ための薬の理解-全身麻酔と安楽死の基本的理解をめぐって-」を、教育講演②では、安部里梅氏(PET CARE HOME Lyuca)が「高齢犬の看護に役立つスキル」を講演し、愛玩動物看護師が臨床において直面する問題、その対処の方法をわかりやすく解説した。
 パネルディスカッション「さまざまな分野で活躍する動物看護師」では、座長に植田啓一先生((一財)沖縄美ら島財団総合研究所附属動物病院)、パネリストに中村美里氏((一財)沖縄美ら島財団総合研究所附属動物病院)、鎌田祐奈氏(円山動物園)、秋吉珠早氏(北海道農業共済組合 獣医療研修センター)、湯村紗永氏(社台コーポレーション 社台ホースクリニック)、増田麻子氏((公財)北海道盲導犬協会)、矢部真彩氏(ふらっと動物病院)を迎え、愛玩動物看護師として活かせる業務および直面する課題について議論された。
 特別セッションでは、前鼻彰人先生(吉田学園動物看護専門学校)が「動物災害をテーマにした教育」を、小沼 守先生(千葉科学大学)が「教育現場から考えるペット防災 ―愛玩動物看護師の使命と実践-」を講演し、教育現場での災害時に向けた動物看護教育について検討を行った。
 2日目には酪農学園大学がもつ、生体を使わず、シミュレーターで臨床手技を習得する施設「スキルスラボ棟」の見学ツアーが組まれた。ラボは二次診療施設と同じつくりになっており、馬、牛、犬、鶏などの精巧なシミュレーターが置かれている。学生は生体に触れる前に、シミュレーターで何度も練習を行うことで、確かな自信をもつことができる。見学ツアーの最後に、参加者はシミュレーターを使用した採血を体験でき、シミュレーターを触った感覚が生体に近いことに驚いていた。
 一般演題は、口頭発表21演題が行われ、優秀賞を「北海道農業共済組合における細菌検査の実施状況について」を発表した秋吉珠早氏(北海道農業共済組合 獣医療研修センター)が、奨励賞を「犬用四輪カートを用いた四肢負重に関する予備調査:動物看護実践へ向けて」を発表した河合彩弥氏(日本獣医生命科学大学)が受賞した。
 ポスター発表は13演題が掲示され、優秀賞を「日本の人終末期看護と海外の犬猫終末期看護文献についてのテキストマイニング解析-日本の犬猫終末期看護と比較して-」を発表した齋藤めぐみ先生(ヤマザキ動物看護専門職短期大学)が、奨励賞を「獣医師・愛玩動物看護師のペア体制導入による待ち時間短縮の取り組み」を発表した田村悠紗氏(ワラビー動物病院グループ どうぶつ園通りの動物病院)が受賞した。
 またランチョンセミナーは「愛玩動物看護師の愛玩動物看護師による愛玩動物看護師のための教育」(主催:ユニ・チャーム(株))、「動物看護師として働くこと:成長と挑戦のストーリー」(主催:VCA Japan(合))が実施された。
 今大会の参加者は202名。次回第35回大会は2026年9月ごろに帝京科学大学(東京)で開催予定。
 

講演の様子
 

スキルスラボ見学ツアーで参加者に採血について説明する宮庄 拓先生

令和7年度関東・東京合同地区獣医師大会@山梨 開催される

 2025年9月7日(日)、アピオ甲府(山梨県・甲府市)にて令和7年度関東・東京合同地区獣医師大会が開催された。
 本大会は、日本小動物獣医学会のほか、日本産業動物獣医学会、日本獣医公衆衛生学会の三学会の関東・東京地区が集まる合同大会で、今回も関東の各県および東京都・横浜市・川崎市の獣医師会が集結、各会場で午前・午後にわたり講演が実施された。
 市民公開講座では、「あなたのペットは大丈夫!?ダニから感染するペットと人の共通感染症」と題し、前田 健先生(国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所)より、近年話題にのぼっているダニ媒介性疾患、とくにSFTS(重症熱性血小板減少症候群)を中心に講演が行われた。
 また、災害動物支援セクションとして、前回の群馬大会に続いて、地域災害に関する講演「被災したペットの現状と課題、獣医師に求められる支援とは!」が行われ、平井潤子先生(NPO法人アナイス代表)、藤本順介先生(日本獣医師会災害対策委員長)、そして歌手でりく・なつ同室避難推進プロジェクトアンバサダーの伍代夏子氏による講演およびパネルディスカッション等が行われた。
 小動物のセクションでは、2会場で計40以上の演題発表が行われ、幅広いテーマに関する講演および質疑応答が行われた。
 受付会場には、山梨の特産物の製品ブースなどもあり、展示会場には多くの企業が集まるなか、併設の参加者休憩会場にはシャインマスカットが振舞われ、残暑のなか、多くの獣医師および獣医療関係者が集まった。なお、次回は横浜市獣医師会が担当地区となる。
 

会場の様子
 

展示会場のシャインマスカット

MSD アニマルヘルス(株)による新たな取り組み
「Veterinary Technology Service」設立される

 Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの一部門であるMSD Animal Healthは、MSD アニマルヘルス(株)(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:土田 拓史)が、新たな取り組みである「Veterinary Technology Service(以下、VTS)」を2025年3月に設立した。
 MSD アニマルヘルス(株)は、日本国内の獣医療業界、畜水産業界、小動物業界に対するさらなる貢献を目指している。VTSは、治療・予防・検査、経営管理、テクノロジー、研究開発、広報・運営の5つの主要機能を展開する。これらの機能は、ITテクノロジー、研究開発、マーケティング、学術などの専門性を有する獣医師を中心としたエキスパートから構成され、MSD アニマルヘルス(株)の各部門から集結している。この新たなアプローチにより、部門を越えた横断的な活動が可能となり、専門性や畜種を越えた知識と経験の融合が実現する。
 VTSは、MSD Animal Healthの企業理念である、「サイエンスを動物たちのより良い健康のために」をさらに具現化するため、新しいサービスを通じて、当社の革新的な技術や現場での新しい知見を発信し、動物の健康と幸せな未来の形成にこれまで以上に貢献することを目指す。


お問い合わせ先
Veterinary Technology Service 広報・運営
電話番号:03-6272-1099
メール:msdah_vts@merck.com

次のページ »