2024年11月17日(日)、東京・日本獣医生命科学大学で日本獣医輸血研究会 第11回学術講習会・第3回JSVTM認定輸血コーディネーター試験が開催された。
午前には認定試験と並行して認定講習「輸血の適応疾患と限界」(瀬川和仁先生)「血液製剤の投与法」(加藤真理子氏)が行われ、午後からは教育講演「なぜ輸血が必要となったかその原因を知ろう」(下田哲也先生)、トピック講演「オープンAIからみた獣医輸血の最新情報」(久末正晴先生)、瀬川和仁先生を座長にシンポジウム「血液型の謎」が行われた。シンポジウムでは近江俊徳先生より「人と動物の血液型について」の講演があり、「ネコAB式⾎液型判定⽤キットの⽐較試験について〜カード凝集法とイムノクロマト法〜」の研究が中村知尋氏より発表され、その後には総合討論が行われた。
臨床現場でますます重要になっている輸血療法の最新知見や情報を学ぶことができる機会を、参加者が熱心に活用している姿がうかがえた。
動物病院における輸血の中心的な役割となる人材を育成するための本研究会の認定制度「JSVTM認定輸血コーディネーター」が、これからの臨床現場で増えてゆき、活躍することに期待する次第である。
なお本講習会のすべてのプログラムは、VETSCOPEにて購入視聴が可能である〈視聴期間:2024年12月2日(月)~2025年1月1日(水)〉。
学会・セミナーレポート
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ひふゼミ 2024 開催される
2024/11/11
2024年11月3日(日)、福岡・TKPガーデンシティ博多にてひふゼミ2024が開催された。
今大会のテーマは「皮膚のできもの・しこり」で、皮膚科の専門家と腫瘍の専門家が講演した。はじめに「皮膚科がみる皮膚の腫瘍」と題し、永田雅彦先生(ASC)が①皮膚腫瘍とは、②診断で大切なこと、③しこりの診かた、④代表的な皮膚腫瘍についてわかりやすく解説した。
その後、小林哲也先生(日本小動物がんセンター)が皮膚科の臨床獣医師向けに「腫瘍科がみる皮膚の腫瘍」と題して2部構成で講演した。Part1「肥満細胞腫アップデート」では①プレドニゾロンは術前に使用しても肥満細胞腫の本質は変わらないこと、②領域リンパ節は原則切除すること、③外科マージンは腫瘍の大きさに応じて調整できること、④c-kit遺伝子検査は常に実施すること、⑤分子標的薬はイマチニブで十分であることを説明した。Part2「猫の皮膚扁平上皮癌の新しい治療法」では電気化学療法(ECT)について症例をまじえて適応となる病態、効果について紹介した。
そして賀川由美子先生(ノースラボ)が「診療に活かす病理検査」と題して講演を行い、病理医が求める写真の撮り方、腫瘍を避け、境界部ではなく病変の中心をとること、クオリティーの高い細胞診標本の作製などについて説明した。
最後に全員参加型ディスカッション「実はみんなも悩んでる 〜皮膚の腫瘍〜」が行われた。質問はすべてウェブを通して集められ、40の質問に担当する先生方が回答をした。とくに猫の皮膚扁平上皮癌へのECTの使用についての質疑応答が行われ、関心の高さが伺われた。
ランチョンセミナーでは横井愼一先生(VCA Japan泉南動物病院)の「皮膚科の診断エラー学 しくじり先生 俺みたいになるな!」が日本全薬工業(株)協賛のもと行われた。
来場者は51名、企業展示は6社であった。後日のウェブ配信での視聴希望者は211名であった。
なお、来年2025年のひふゼミは新潟での開催を予定している。
会場の様子
2024年10月25日(金)、Global Business Hub Tokyo(東京都・千代田区)にて、特定NPO法人 日本医療政策機構(HGPI)およびAMRアライアンス・ジャパン主催による、国際対話「地域に根付いた市民主体のAMR対策の展開に向けて~Antibiotic Smart Swedenの取り組みに学ぶ~」が開催された。
人と動物、食品、環境にまたがる課題となる薬剤耐性(AMR)は、国際的な場でも年々注目を集めている。2019年には495万人が世界で亡くなっており、さらに、このまま手を打たずにいると2050年までに3,900万人が亡くなると想定される。いわゆるサイレント・パンデミックへの対策として、抗菌薬・抗生物質の適正使用の重要性が謳われる。関連省庁や研究機関や大学からの情報発信だけでなくそれを地域におとしこみ、ボトムアップの情報共有も重要だ。AMR対策を有効に機能させる方法として、スウェーデンでの「Antibiotic Smart Sweden」という複数の自治体や地域が参画するAMR対策での分野横断的な連携の推進等のワンヘルスアプローチに基づくEU全体のAMR対策を紹介した「EUにおける横断的なAMR対策の推進に向けて」をPatriq Fagerstedt先生(スウェーデン研究会議、薬剤耐性に関するプログラム連携イニシアチブ(JPIAMR))が、「Antibiotic Smart Swedenー 省庁間と自治体の連携」をCamilla Björn先生(スウェーデン国立研究所)、Gunilla Skoog Ståhlgren先生(スウェーデン公衆衛生庁)が講演した。続くディスカッション「地域に根付いた市民主体のAMR対策の展開に向けて」では、Lillan Fahlstedt先生(スウェーデンのタヌム市 公衆衛生戦略官)、さらに大崎正悟氏(姫路市 健康福祉局)、平山裕章氏(福岡県 保健医療介護部 ワンヘルス総合推進課)が加わり、AMR対策を牽引してきたスウェーデンと日本両国のそれぞれの取り組みが紹介された。
医療機関、高齢者施設、教育機関、上下水道施設、農畜水産業施設等の分野横断的案連携を推し進めること、いっぽうでこうした機関は、市民の日々の生活と不可分であることから、地域に根付いたAMR対策の展開が急務であることが示された。今後も日本医療政策機構およびAMRアライアンス・ジャパンの牽引が期待される。
詳細は下記URLからも閲覧可能。
【日本医療政策機構】
https://hgpi.org/
【AMRアライアンス・ジャパン】
https://www.amralliancejapan.org/
ディスカッションの様子
第24回人と動物の共通感染症研究会 学術集会 開催
2024/10/24
2024年10月19日(土)、東京大学農学部1号館(東京・文京区)にて、第24回人と動物の共通感染症研究会 学術大会が対面およびオンライン配信によるハイブリットで開催された。
動物由来感染症に関する学術研究の推進ならびにその成果の普及を図り、動物由来感染症の発生の予防およびその蔓延の防止に寄与することを目的に2001年に発足した本研究会。これまで獣医学、医学のそれぞれの分野で研究が推進されていたが、本研究会の発足により複数の専門分野の研究者や臨床医が一堂に会し、情報を交換する場がつくられた。
今回、24回目を迎えた学術集会では、7題の口頭発表、3題の教育講演が実施された。口頭発表では「敗血症を伴う急性劇症型の転帰をたどったG群溶血連鎖球菌感染症の犬の1例」村田佳輝先生(むらた動物病院)、「免疫効率の高い犬用経口狂犬病生ワクチンの開発に向けた、犬扁桃扁平上皮細胞馴化ワクチン株の樹立」巽 洋希先生(岐阜大学)をはじめ、エキゾチックアニマルの感染症、犬の結核などに話題が及んだ。また教育講演では食中毒をテーマに、エルシニア感染症、寄生虫(クドア)による食中毒、食品中に混入するかび毒まで、動物由来感染症にかかわる様々な分野の先生方が発表、会場やオンライン参加者からも質問が寄せられ、会場は熱気にあふれた。
多分野にまたがる専門家が集う本研究会が、動物由来感染症の予防や蔓延防止に果たす役割が今後ますます期待される。
次回第25回本研究会学術集会は2025年10月に開催予定。
本研究会詳細は、下記より。
http://hdkkk.umin.jp/
口頭発表の様子
日本獣医臨床病理学会2024年 年次大会開催される
2024/10/23
2024年10月13日(日)に東京・日本獣医生命科学大学にて、日本獣医臨床病理学会2024年 年次大会が開催された。
今年は呰上大吾大会長(東京農工大学)のもと「腫瘍と臨床病理」をテーマにシンポジウムや教育講演が行われた。またハンズオン・トレーニングとして、テーブルごとに少人数で行う実習もあり、聞くだけでなく熱心に実際の作業を行う様子を垣間みることができた。
今年は参加人数が約130名、出展企業が10社あったことに加えて、企業ブース内での講演が実施されていたため、どのエリアにも人が多くいる印象であった。
学会終了後の懇親会では、理事の先生方と学生、さらに企業の方々が入り混じり和気あいあいと歓談する様子が見受けられた。また、そのなかで学会長である米澤智洋先生(東京大学)より来年以降には法人化を視野に入れるとの発表があり、本学会のさらなる発展を予感させるものがあった。
展示ブース会場での講演の様子
ハンズオン・トレーニングの様子
第45回動物臨床医学会年次大会 開催される
2024/10/8
2024年10月5日(土)、6日(日)の2日間にわたり、グランキューブ大阪(大阪国際会議場)にて、第45回動物臨床医学会年次大会が開催された。
西村亮平先生(東京大学名誉教授)学会長のもと、各分科会や研究会による豊富なセミナーやパネルディスカッション、公募での一般口演、症例検討、動物病院スタッフ口頭発表、ポスターセッション、企業展示など多くの企画が実施され、海外から招かれた陳 武先生(北京農学院)およびダンカン・ラッセル先生(ノースカロライナ州立大学)の講演およびパネルディスカッションが行われた。日本の先生を交えて最新知見の共有もなされ、多くの聴講者が各会場に足を運んだ。
初日の夜には隣接するリーガロイヤルホテルにて歓迎交流会が開催された。会場には海外からの先生を含む多くの参加者が集まり、食事を楽しみながら会話に花を咲かせた。理事長の下田哲也先生(山陽動物医療センター)はその挨拶のなかで「本会は臨床獣医師の臨床獣医師による臨床獣医師のための会である」とし、45回の開催を振り返った。日本の獣医療における伝統と変革が混在する現在、次回以降の本会の動向にこれからも注目が集まると思われる。
次回第46回動物臨床医学会年次大会は、同会場にて2025年10月18日(土)、19日(日)に開催予定。
第26回 日本臨床獣医学フォーラム年次大会2024 開催される
2024/9/30
2024年9月21日(土)、22日(日)に東京・ホテルニューオータニにて第26回日本臨床獣医学フォーラム年次大会2024が開催された。
今年は大会テーマ「よりそう もっと考えよう 伴侶動物との暮らし―どうぶつにやさしい医療―」が掲げられ、循環器学、腫瘍学、麻酔疼痛、救急医療、眼科学、呼吸器学、画像診断学、腎泌尿器病学、軟部外科学、整形外科学、皮膚病学、看護学、臨床病理学、内分泌学、歯科学、栄養学、繁殖学、理学療法学、経営学といったあらゆる分野から講演やセミナー、実習が行われた。参加者や来場者の熱心に学びの機会を得ようとする熱意に応えるプログラムが用意されており、どの会場にも多くの聴講者が足を運んでいた。
愛玩動物看護師向けの講演や実習なども豊富に用意されており、こちらにも多くの来場者が参加した。学生や愛玩動物看護師および動物看護職者、一般市民といった獣医師以外の登録も多く、様々な参加者が集う本学会はまさしく大会テーマの「よりそう」を体現したものであった。
2025年の年次大会も同じく東京・ホテルニューオータニにて開催予定である。
(一社)日本動物看護学会 第33回大会 開催
2024/9/9
2024年8月31日(土)および9月1日(日)、ヤマザキ動物看護大学 南大沢キャンパス(東京都八王子市)で、(一社)日本動物看護学会 第33回大会が開催された。
今大会のテーマは「過去から繋ぐ動物看護学の未来探究」。
初日はアメリカから招聘されたSandy Gregory先生(アメリカ動物看護師リハビリテーション協会会長)による基調講演「アメリカの動物看護に見る日本の動物看護学の未来探究」からスタート。豊富な臨床経験を通して、アメリカでの動物看護師の認定資格の取得や各州のちがい。救急・歯科・内科・循環器・麻酔/鎮痛・病理・眼科・行動診療・栄養学など専門性の高いスキルの保持などが紹介され、日本における愛玩動物看護師の今後の方向性が提案された。
続く教育講演①では「在宅訪問における愛玩動物看護師の役割-過去30年から繋がる大切にしたいもの そしてアップデート-」と題し吉田尚子氏(家庭動物診療施設 獣徳会 獣医師)、村上明美氏(同上 愛玩動物看護師)が、獣医師と愛玩動物看護師のそれぞれの立場から、チーム獣医療のなかで、在宅看護における愛玩動物看護師の活躍が今後ますます期待されると講演。
2日目のシンポジウムでは「被災動物の支援における動物看護師の役割」と題し基調講演として会田保彦氏(ヤマザキ動物看護大学 名誉教授)による「東日本大震災の検証と次に備える」が行われた。そして「能登半島地震における被災動物の救援について」のテーマで、大聖寺谷 敏氏((学)国際ビジネス学院 理事長)をパネリストに迎え実施された。
シンポジウムでは東日本大震災の被災状況が写真を使って会田氏より解説され、この震災の際に、動物救護の中心メンバーとなった故馬場国敏氏(馬場総合動物病院 獣医師)の献身的な数々の活動が紹介された。会田氏は被災地での動物救援の重要性を訴える上で、「現状では有事に被災地で愛玩動物看護師が組織的に活躍する体制が整っていない。学会を中心としてでも将来的には組織作りが必要である」と提言した。
大聖寺谷氏は、今年元旦に起きた令和6年能登半島地震を挙げ、発災時からの8ヵ月経過したこれまでの取り組みを紹介。地震発災後に石川県、石川県獣医師会がそれぞれ“人”と“動物”の救助活動を分担したこと、自身の学校で被災動物の一次受け入れから譲渡会までを実施していることを紹介。また、石川県がペット同室避難用のトレーラーを用意したものの、周知が足りず、利用者は1件であったことを例に、 “周知の大切さ”も実感したという。また、発災から8ヵ月が経ったものの、復興への道はまだ遠く、さらなるボランティアの必要性があると会場へ訴えた。
教育講演➁ではフリッツ 吉川 綾氏(ヤマザキ動物看護大学 准教授)による「臨床行動学-臨床現場で働く愛玩動物看護師への期待-」が行われた。臨床現場で働くすべての愛玩動物看護師に期待することとして「情報提供を通じた問題行動の予防」「問題行動の早期発見と適切な対応の第一歩」「動物の心理的ストレスに配慮した看護」の3つの項目を挙げ解説していった。愛玩動物看護師には、犬猫の心理的健康の維持・向上のために、ますます中心的な役割を担ってもらいたいとの期待を述べた。
今大会は一般演題は口頭発表23題、ポスター発表が21題が発表され、口頭発表では優秀賞を「動物福祉を考えたヘマトクリット管実習における擬似血液の応用」(喜多虹帆氏(日本獣医生命科学大学)ほか)、奨励賞を「産業動物分野における動物看護師の職務と可能性-自身の現場経験を通して-」(秋吉珠早氏(北海道農業共済組合研究所)ほか)、ポスター発表では優秀賞を「猫用トイレ砂の量の違いにおける排泄行動の比較」(小野寺 温氏(帝京科学大学)ほか)、奨励賞を「小動物用呼吸数測定デバイスの開発と測定精度の検討」(大久保明梨氏(岡山理科大学)ほか)が受賞した。
また「ネコAB式血液型を分類するカード凝集法とイムノクロマト法の比較試験と不一致例の新規同定」(中村知尋氏(〈公社〉日本小動物医療センター)ほか)と「真菌性鼻炎を呈した犬に対する生理用ナプキンを用いた動物看護介入の一例」(安藤真葵氏(岡山理科大学)ほか)が惜しくも受賞は逃したものの注目すべき発表であったことが選評に加えられた。
またランチョンセミナーは「愛玩動物看護師の愛玩動物看護師による愛玩動物看護師のための教育」(主催:VCA Japan 合同会社)、「服薬コンプライアンスの改善~薬局の服薬指導の視点から~」(主催:株式会社12(わんにゃん)薬局)が実施された。
今大会の参加者はオンライン参加含め611人。台風の影響下、大会中は雨もやみ天候に恵まれ、2日間の大会は学びの意欲にあふれる参加者たちの熱気に包まれた。
次回第34回大会は2025年8月中に酪農学園大学(北海道)で開催予定。
本学会の詳細は下記より。
https://www.jsvn.gr.jp/
セントヨハネホールにて行われた開会式の様子。台風が接近するなか、
両日とも天候に恵まれた
第33回大会長 山﨑 薫 氏((学)ヤマザキ学園理事長、
ヤマザキ動物看護大学学長)による開会式の挨拶
本学会理事長の石岡克己氏(日本獣医生命科学大学 教授)、
開会式の挨拶にて
Sandy Gregory先生(アメリカ動物看護師リハビリテーション協会会長)による基調講演の様子
吉田尚子氏(前出)、村上明美氏(前出)による教育講演①「在宅訪問における愛玩動物看護師の役割-過去30年から繋がる大切にしたいもの
そしてアップデート-」台風の影響で当日はオンラインでの開催となった
シンポジウムで講演をされる会田氏(前出)。気仙沼市大震災遺構・伝承館(宮城県立水産高校の跡地)、石巻市立大川小学校の慰霊碑、仙台市若葉区の荒浜海岸の巨大防災堤のスライドを公開され会場は息をのんだ。
また「津波てんでんこ」という言葉を通して、ときには皆が助かるうえで
一人ひとりの自助が大切になることを伝えた
シンポジウムでパネリストをつとめた大聖寺谷氏(前出)。
台風の影響で急遽、オンラインでの登壇となった。
能登半島地震から8ヵ月が経った被災地の復興に向けての現状を会場に伝えた
教育講演➁でのフリッツ 吉川 先生(前出)。
犬猫の心理的健康の維持・向上のために、臨床行動学においても、愛玩動物看護師に中心的な役割を担ってもらいたいという
閉会式。林 英明氏(酪農学園大学 教授)。来年の第34回大会は、
酪農学園大学にて実施される
第43回 比較眼科学会年次大会 開催される
2024/9/4
2024年8月31日(土)、9月1日(日)の2日間にわたって第43回比較眼科学会年次大会がオンラインにて開催された。本大会は、開催前から強い勢力の台風10号によって各地の交通機関が影響を受けたこともあり、開催会場であった千里ライフサイエンスセンターをサテライト会場とし、急遽オンライン開催することを28日午前中に決定された。急な開催形式変更にもかかわらず、サテライト会場とライブ配信視聴者を合わせて2日間で約230名が参加した。
開会式および閉会式では、大会長の河内眞美先生(住友ファーマ㈱)から、学会実行委員会をはじめ開催形式変更に伴う体制をととのえ実行した関係者、講演者、参加者への協力に改めて感謝が繰り返し述べられた。
特別講演は、「基礎と臨床を繋ぐ」をテーマに以下2講演が行われた。原 英彰先生(岐阜薬科大学)は「基礎から臨床へ-眼科基礎研究の面白さ/創薬プロセスにおけるトランスレーショナルリサーチ―の現状-」を動物種による眼組織の違いを解説されながら非ヒト霊長類を用いて、滲出型加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞症および緑内障モデルの確立、さらに自然発症の病態モデルを確立にいたる解説をされた。続いて、原 浩昭先生(新潟県立がんセンター)が「抗がん剤の眼毒性」として、近年の分子標的薬、遺伝子組み換え薬、免疫チェックポイント阻害薬といった抗がん治療が確立された状況で眼に重篤な副反応に、以前の検査では診断が困難であった病変を検出可能となっている現状を講演された。
臨床部会セッションは「眼底検査」をテーマに以下3講演が行われた。「眼底検査の基礎」として、小山博美先生(ネオベッツVRセンター)が、検眼鏡での眼底の見え方および具体的な観察例を解説した。続いて「OCT検査」について小松紘之先生(アニマル・アイケア東京動物眼科醫院)が検眼鏡では把握しきれない眼組織を観察・評価でき、近年急速に進化しているOCTの特性や獣医学領域での可能性を講演した。「ERG検査」では、前原誠也先生(ひかり町動物眼科)が網膜機能の検査に関して大切なことをメインに詳細な解説をされた。
基礎部会セッションは「眼科治療薬開発の最前線」をテーマに以下3講演が行われた。「多様な光受容の進化に基づく眼疾患治療開発」栗原俊英先生(慶応義塾大学医学部)は、光受容機構の発見から、多様性と眼の発生・形態・機能を対比させながら新たな治療技術開発への取り組みをご紹介された。「再生医療等製品の眼科治療とその非臨床評価について」三ヶ島史人先生(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)は、眼科における再生医療製品等の特性、非臨床評価・非臨床安全性評価で求められるポイントを解説された。「他家iPS細胞を用いた網膜再生医療の研究開発」亀井達也先生(住友ファーマ㈱)は、確率済みの網膜色素上皮細胞(RPE 細胞: H LCR011) および網膜シート(視細胞の層を含有する立体網膜: DSP-3077)をiPS 細胞から製造し、品質評価技術に加え、非臨床評価についても紹介された。
いずれの講演でもサテライト会場、オンラインのチャットやQ&Aを通して多くの質問が寄せられ、活発な意見・情報交換が行われた。
一般口演は、2日間を通してアワード審査対象演題を含めた24題、基礎研究から症例報告まで多岐にわたる演題が発表された。アワード受賞タイトルと演者は以下の通り。
「網膜病変を伴う視神経炎の4 症例」相澤あずさ先生
「犬の眼底画像識別ツールにおけるDifferential Image Diagnostic Analysisの有用性の検討および品種特異性の探索」小松紘之先生
「アーメド緑内障バルブを用いたチューブシャント手術後の早期房水産生抑制の有効性について」日下部浩之先生
「Optical Coherence Tomography を用いた暗環境下におけるラット瞳孔径測定の試み」山口晃輝先生
さらに、比較眼科学会の活動の一環である従来の専門医制度に並行し、新たにレジデントプログラム開始することもアナウンスされていた。
次回は2025年7月26日(土)、27日(日)にパシフィコ横浜にて開催される予定である。
(学会ホームページ https://www.jscvo.jp/#top)
2024年8月28日(水)、29日(木)、東京都立産業貿易センター浜松町館にて(株)グラッド・ユー主催の「第3回Turn on the Radiation」と(有)スピリッツ主催の「HJS年次大会2024」が同時開催された。両講演は会場およびウェブサイトのハイブリッドで開催された。
第3回Turn on the Radiationでは、新坊弦也先生(北海道大学)の「X線が読めるようになるための読影の流儀」、HJS代表の中島尚志先生の「うんこは嘘をつかない~画像診断からはじめる猫の便秘診療~」、吉田宗則先生(クウ動物病院)の「臨床医がシングルユースの内視鏡を渡されたので使い方を考えてみた」、林 慶先生(コーネル大学)の「臨床家のための関節レントゲン画像診断学:基礎編その2」の講演が行われた。今日の臨床で画像診断の重要性はますます高まっており、その適切な運用は日々の臨床の質を大きく変える可能性を秘めている。日常的に行う画像検査だからこそ、自身の意思決定プロセスを再考して進歩につなげることが大切であり、よりよい診断(Diagnostic Excellence)の根底である「必要最小限のリソースで正確かつ適時に判断を行うこと」の重要性を、そして臨床での様々な実践法を紹介する講演となった。
第13回HJS年次大会2024では、中島尚志先生の「医療の手術の系統性と合理性を基に動物の標準手術を創出する」、佐々木一益先生(袋原どうぶつクリニック/秋田県立循環器・脳脊髄センター)の「他流試合から垣間見る伴侶動物臨床の現在地 ~ハイブリッド獣医師の視点~」、伊東 完先生(東京医科大学)の「医療のスチュワードシップ ― 持続可能な医療現場をつくるために」、石沢武彰先生(大阪公立大学)の「最新のヒトの手術:がんを治すために!」の講演が行われた。獣医療の向かうべきところやその道はすでに医療で示されており、医療から学べること、学ぶべきことはたくさんある。本年の講演は医療の世界の先生方が導いてくれる「進化」という新たな世界が、獣医療の向かうべき方向を再考する「道標」になるように企画された。
HJS年次大会ではシークレットセミナーと題し、参加者にしかきけない獣医療の問題点に深く切り込む内容もあり、台風の影響もあったなか、多くの参加者が熱心に耳を傾けた。