2025年5月26日(土)、日本獣医生命科学大学(東京都)にて第51回動物用抗菌剤研究会シンポジウムが開催された。
動物用抗菌剤(抗菌性物質)の基礎面と応用面および薬剤耐性菌に関する研究調査、知識・技術の普及、動物の衛生や公衆衛生上の問題点を検討して薬剤使用の適正化を図ることで、畜・水産振興に寄与することを目的に設立された本研究会は、第51回目のシンポジウム開催を迎えた。今回のシンポジウムのテーマには「伴侶動物における薬剤耐性菌の現状と課題」が選ばれ、シンポジウムに先駆けて実施された午前中の特別講演では「β-Lactamase研究の歴史と未来展望:進化する薬剤耐性の中で」と題し、石井良和先生(広島大学・IDEC国際連携機構)によりβ-ラクタム剤と耐性機序に関して、1940年にはじめてβ-lactamaseが発見され薬剤耐性機構の研究がはじまったことや、現在、国際宇宙ステーション(ISS)で実施されているESBLに関する研究まで、抗菌薬に関する歴史や現在、未来への期待が紹介された。
続くシンポジウムⅠでは、松田真理先生(動物医薬品検査所 動物分野AMRセンター)による「JVARMによる伴侶動物を対象とした薬剤耐性菌モニタリング」、原田和記先生(鳥取大学 農学部附属動物医療センター)による「伴侶動物医療における抗菌薬の慎重使用~AMR時代を迎えた我々にできること~」、佐藤豊孝先生(北海道大学One Healthリサーチセンター)による「伴侶動物由来薬剤耐性菌の公衆衛生上のリスク」、村田佳輝先生(むらた動物病院、獣医臨床感染症研究会会長)による「伴侶動物臨床分野における薬剤耐性菌対策の実際」が講演された。なおシンポジウムⅡでは「新規に開発、効能追加された動物用抗菌性物質製剤」と題しゾエティス・ジャパン(株)佐々木家治氏により「ツラスロマイシン(効能追加)」や明治アニマルヘルス(株)の森 俊介氏・池澤里奈氏による「フォーシル/フォーシルS」について紹介され、牛・豚への抗菌薬について、今回新たに参加した小動物臨床獣医師も含め情報共有を行った。
当研究会の活動が「様々な立場から参加され活発な議論の場となればよい」と本研究会理事長の浅井鉄夫先生(岐阜大学 附属家畜衛生地域連携教育研究センター)は述べる。小動物臨床にかかわる獣医師・動物病院への教育等、本研究会の益々の活躍が期待される。
本研究会理事長の浅井鉄夫先生
原田和記先生
村田佳輝先生
会場の様子