2025年9月13日(土)、14日(日)の2日間にわたり、酪農学園大学(北海道江別市)で、(一社)日本動物看護学会第34回大会が開催された。
 最初の演題は、大会長である山下和人先生(酪農学園大学)が「臨床現場で愛玩動物看護師に期待される役割と可能性」として講演を行い、現状と今後の課題を明らかにした。
 教育講演①では、佐野忠士先生(帯広畜産大学)が「動物を『眠らせる』ための薬の理解-全身麻酔と安楽死の基本的理解をめぐって-」を、教育講演②では、安部里梅氏(PET CARE HOME Lyuca)が「高齢犬の看護に役立つスキル」を講演し、愛玩動物看護師が臨床において直面する問題、その対処の方法をわかりやすく解説した。
 パネルディスカッション「さまざまな分野で活躍する動物看護師」では、座長に植田啓一先生((一財)沖縄美ら島財団総合研究所附属動物病院)、パネリストに中村美里氏((一財)沖縄美ら島財団総合研究所附属動物病院)、鎌田祐奈氏(円山動物園)、秋吉珠早氏(北海道農業共済組合 獣医療研修センター)、湯村紗永氏(社台コーポレーション 社台ホースクリニック)、増田麻子氏((公財)北海道盲導犬協会)、矢部真彩氏(ふらっと動物病院)を迎え、愛玩動物看護師として活かせる業務および直面する課題について議論された。
 特別セッションでは、前鼻彰人先生(吉田学園動物看護専門学校)が「動物災害をテーマにした教育」を、小沼 守先生(千葉科学大学)が「教育現場から考えるペット防災 ―愛玩動物看護師の使命と実践-」を講演し、教育現場での災害時に向けた動物看護教育について検討を行った。
 2日目には酪農学園大学がもつ、生体を使わず、シミュレーターで臨床手技を習得する施設「スキルスラボ棟」の見学ツアーが組まれた。ラボは二次診療施設と同じつくりになっており、馬、牛、犬、鶏などの精巧なシミュレーターが置かれている。学生は生体に触れる前に、シミュレーターで何度も練習を行うことで、確かな自信をもつことができる。見学ツアーの最後に、参加者はシミュレーターを使用した採血を体験でき、シミュレーターを触った感覚が生体に近いことに驚いていた。
 一般演題は、口頭発表21演題が行われ、優秀賞を「北海道農業共済組合における細菌検査の実施状況について」を発表した秋吉珠早氏(北海道農業共済組合 獣医療研修センター)が、奨励賞を「犬用四輪カートを用いた四肢負重に関する予備調査:動物看護実践へ向けて」を発表した河合彩弥氏(日本獣医生命科学大学)が受賞した。
 ポスター発表は13演題が掲示され、優秀賞を「日本の人終末期看護と海外の犬猫終末期看護文献についてのテキストマイニング解析-日本の犬猫終末期看護と比較して-」を発表した齋藤めぐみ先生(ヤマザキ動物看護専門職短期大学)が、奨励賞を「獣医師・愛玩動物看護師のペア体制導入による待ち時間短縮の取り組み」を発表した田村悠紗氏(ワラビー動物病院グループ どうぶつ園通りの動物病院)が受賞した。
 またランチョンセミナーは「愛玩動物看護師の愛玩動物看護師による愛玩動物看護師のための教育」(主催:ユニ・チャーム(株))、「動物看護師として働くこと:成長と挑戦のストーリー」(主催:VCA Japan(合))が実施された。
 今大会の参加者は202名。次回第35回大会は2026年9月ごろに帝京科学大学(東京)で開催予定。
 

講演の様子
 

スキルスラボ見学ツアーで参加者に採血について説明する宮庄 拓先生