小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

2016年春季合同学会(第92回日本獣医麻酔外科学会、第104回日本獣医循環器学会、第59回日本獣医画像診断学会)開催される

 2016年春季合同学会(第92回日本獣医麻酔外科学会、第104回日本獣医循環器学会、第59回日本獣医画像診断学会)が、2016年6月17日(金)~19日(日)の3日間にわたり大宮ソニックシティ(埼玉県)において開催された。
 今回の学会では、日本獣医麻酔外科学会による特別シンポジウム「前十字靱帯断裂の治療を再考する」「甲状腺腫瘍・徹底攻略」「ここまできた小動物の脳外科手術」、各委員会によるパネルディスカッション「脊髄腫瘍」「消化管の外科」「麻酔関連偶発症」、日本獣医循環器学会によるシンポジウム「聴診器生誕200年」、日本獣医画像診断学会によるシンポジウム「中枢神経疾患におけるMRIの最新撮像技術」の他、3学会それぞれのセミナーや一般講演など、9会場にわたって数多くの講演が催された。各会場、熱意溢れる多くの聴講者で活況を呈していた。
 18日の情報交換会にも多くの参加者がつどい、日本獣医麻酔外科学会からは第91回の一般講演6題に対するアワードが発表・表彰された。また、熊本県より学会参加された先生方により、九州での震災に対する義援金がよびかけられ、会場内の募金箱には温かい支援が寄せられていた。
 3日間の参加者数は昨年を上回る1,200名におよぶ参加があり、内容の充実とともに、次回の盛況も期待される学会となった。

会場の様子

日本獣医臨床病理学会 2016年大会 開催

 2016年5月28日(土)、29日(日)、日本獣医生命科学大学B棟(東京都・武蔵野市)にて、日本獣医臨床病理学会2016年大会が開催された。
 初日は、「検査値、細胞診と組織所見から考える肝胆膵疾患への診断アプローチ」をテーマに展開。教育講演では「肝胆膵疾患への臨床病理学的アプローチ」と題して小笠原聖悟先生(アイデックス ラボラトリーズ・小笠原犬猫病院)が肝酵素について、根尾櫻子先生(麻布大学)が肝機能を中心に解説された。続くドライラボでは、4症例がとりあげられ、それぞれにディスカッションポイントを設定し、アドバイザーの先生方のもと、意見交換が行われた。
 2日目午前中はJSVCPシンポジウム(1)にて「犬のがん免疫アップデート」をテーマに「抗腫瘍免疫反応を増強した樹状細胞療法の開発の試み」を杉浦喜久弥先生(大阪府立大学)、「犬の骨髄由来抑制細胞と悪性腫瘍との関連」を田村恭一先生(日本獣医生命科学大学)、「犬の腫瘍組織への制御性T細胞浸潤機構の解明」を前田真吾先生(東京大学)が、午後のシンポジウム(2)では「犬の関節リウマチと多発性関節炎の新しい知見」をテーマに「関節リウマチと多発性関節炎の病態解明の現状」を奥村正裕先生(北海道大学)、「それって本当に免疫介在性多発性関節炎?」を黒木圭一先生(ミズーリ大学)、「犬の特発性多発性関節炎に関する新しい知見」を村上康平先生(信州大学)がそれぞれ講演された。この日の教育講演では、「関節リウマチにおけるショートタリンの役割と展望」について津坂憲政先生(日本リウマチ学会専門医・指導医・東京健康クリニック事長)が講演され、RA(関節リウマチ)の早期診断に血中ショートタリンが有用であることなどについて説明がなされた。
また、今年は一般演題が8題発表され、「イヌの特発性多発性関節炎におけるCXCL8とCCL2の好中球走化作用」の村上康平先生、「担がん犬における末梢血中骨髄由来免疫抑制細胞の量的解析」の宮本拓弥先生(日本獣医生命科学大学)の2名がアワードを受賞。弊社から副賞として書籍を贈呈した。
充実の2日間に、会場は140名以上の参加者で溢れ、みな熱心に耳を傾けていた。来年2017年は5月下旬に開催予定。

会場の様子

Team HOPEエリアセミナー【第1回・南関東地区】 開催

2016年6月5日(日)、Team HOPEエリアセミナー【第1回・南関東地区】が、TKP東京駅八重洲カンファレンスセンター(東京・中央区)にて開催された。
セミナーの冒頭では、Team HOPE関東地区委員長の上條圭司先生(ゼファー動物病院院長)より、あらためてTeam HOPEの「ペットの健康を保つ、ペットを病気から守る」という理念、発足の経緯、またTeam HOPEの2つの施策である「Team HOPEウェルネスチェック」と「Team HOPE健康診断」の概要が説明された。上條圭司先生は、動物病院がチームとなって予防医療の重要性を発信することが普及の第一歩だとし、また飼い主の満足度を高めた予防施策を充実・普及させていこう、と参加者に熱心に呼びかけた。現在、Team HOPEは、賛同病院会員・賛同獣医師会員約650会員を擁し、関東だけでなく、全国規模で注目されているという。
続く基調講演では「獣医師はなぜ、健康診断を勧めるのか? 病気のサインを見逃さない定期検診の必要性」と題し、小笠原聖悟先生(小笠原犬猫病院)から、定期検診により健康時の基礎データを蓄積することの大切さをアメリカでの例も取り入れ紹介。また、高齢動物はできる限り広く浅くフルスクリーニングでみていくことの重要性、若齢動物での検査値の解釈、腎臓病の早期診断のためのSDMAの活用にも触れ、定期健康診断を実施することの有用性を症例を交えながら解説され、参加者は理解を深めた。
100名近い収容会場は満席であふれ、Team HOPEの理念に賛同される先生方の広がりと熱意を感じた。
Team HOPEは今後も定期的に予防医療に関するセミナーを開催。8月3日(水)には東京にて、Team HOPE学術アドバイザーの石田卓夫先生によるセミナーを開催する予定。

会場の様子

日本全薬工業(株)第1回アニマルスキンケアセミナー 開催

 2016年5月25日(水)、日本全薬工業(株)は池袋サンシャイン文化会館(東京都・豊島区)にて、初のアニマルスキンケアセミナーを開催した。

 「皮膚科専門医に聞く! アニマルスキンケアの極意」をテーマに行われた本セミナーでは、国内に6名しかいないアジア獣医皮膚科専門医から、伊從慶太先生(Vet Derm Tokyo)と大嶋有里先生(犬と猫の皮膚科)を招き、具体的なスキンケアのノウハウを解説された。「見て、触って、嗅いで〜感覚を使ったスキンケア〜」では大嶋有里先生が、「No more ベタベタ〜オイリースキンの新しいスキンケア」では伊從先生が、皮膚の構造、保湿の重要性から皮膚疾患にいたるまで、わかりやすくお話しされた。
 続く座談会形式によるQ&Aでは、事前に寄せらた100以上の質問をいくつかピックアップし、伊從先生と大嶋先生が自身の経験もふまえながら回答していった。
 会場は、日々の診療での疑問を解消したい、よりよいアニマルスキンケアを提供したいという意欲あふれる110名の参加者が集まり、昼の12時半から4時間以上におよぶセミナーは、熱気に溢れていた。

 講演の最後では同社学術部の地土井安芸子氏から、同社製品説明とともに、同社で配布しているリーフレット「やってみよう シャンプーでできるワンちゃん『スキンケア』」が紹介。リーフレットに記載のコードにスマートフォンをかざすことで手軽にシャンプー手技の動画を閲覧できる、その手順が実演された。
 同社では、今後もアニマルスキンケアセミナーを展開していく予定とのこと。

会場の様子

ゾエティス・ジャパン主催 アポキル®錠 発売開始記念企画講演 実施される

2016年5月22日(日)、HOTEL椿山荘東京において、ゾエティス・ジャパン主催、アポキル®錠 発売開始記念企画講演が実施された。

本薬剤の製品概要説明のあと、メイン講演として、「犬の痒み治療 -最新の話題-」と題し、永田雅彦先生(どうぶつの総合病院、アジア獣医皮膚科専門医/ASC代表、日本獣医皮膚科学会会長)による特別講演が行われた。痒みの基本的な考え方から、人の皮膚科学会のガイドラインの紹介があり、まず薬物療法で痒みを取り除くことが治療戦略の第一であると解説された。そのうえで現在使用されているプレドニゾロン、シクロスポリンと比較して、アポキル®錠のもつ効能と「立ち位置」の説明が行われた。とくに臨床現場で飼い主に説明するときや実際に治療を行う際の具体的な説明に、メモをとる聴講者の姿が印象的であった。

当日はインターネット上から質問に対して投票ができるシステムを採用し、聴講者および配信視聴者からダイレクトにそれぞれの考え方を講演に反映できるものであった。

メイン講演終了後、壇上でゾエティス社取締役代表の加藤克利氏より質問があり、ディスカッション形式で本薬剤の特長が示された。その後、犬の痒みに対する飼い主および獣医師意識調査の講演が行われ、皮膚のトラブルについて、そしてステロイド剤についてのアンケート結果が示された。獣医師調査ではステロイド剤の使用については37%の獣医師が“飼い主から同意が得られにくい”ことを問題視しているという結果であった。

当日は日曜17時からのスタートではあったが、300名の定員はほぼ満席であり、インターネット視聴者数も約600名にのぼるなど、本薬剤に対する臨床獣医師の先生方の意識の高さが伺われた。懇親会を経て、盛況のまま閉会した。本製品は2016年6月から販売開始予定。

会場の様子

第36回比較眼科学会年次大会 開催

2016年5月21日(土)、22日(日)、一橋大学一橋講堂(東京都・千代田区)にて、第36回比較眼科学会年次大会が開催された。

今年は臨床系の内容をメインに展開。初日はジョージア州立大学名誉教授でオーバン大学の客員教授であるDr. Charles L. Martin を招いて「Dagnostic Problem Solving」と題しての教育講演が、続く2日目は特別講演として「最新の緑内障治療薬について」をテーマに榊 秀之先生(千寿製薬(株))が講演され、会場は熱心に耳を傾けた。この他、一般口演や臨床部会教育講演、基礎部会セッション、また談話会シリーズでは、これだけは絶対におさえておきたい眼科疾患として、角膜潰瘍や白内障、緑内障にフォーカスした講演が展開された。

両日とも天候に恵まれ、200名以上の先生方が会場に足を運んだ本年次大会。獣医の眼科診療への熱い思いを感じられる2日間であった。

来年2017年は7月22日(土)、23日(日)東京・両国にて開催予定とのこと。眼科診療のますますの発展が期待される。

会場の様子

Save熊本プロジェクトチャリティーレクチャー東京会場を取材して

2016年5月1日(日)、東京大学農学部弥生講堂一条ホールにおいて、東日本大震災復興を応援する獣医師の会(代表:鷲塚 章先生)主催、Save熊本プロジェクトチャリティーレクチャーが開催された。本レクチャーは、2016年4月14日から熊本を中心に群発している震災の復興支援を目的として企画され、聴講者の参加費が義援金として寄付される。東京会場でのレクチャーは、Veterinary Medical Network(VMN)サイト(https://www.vmn.ne.jp/)からのストリーミング配信も行われ、この受講料も義援金となる。
主催である東日本大震災復興を応援する獣医師の会は、2011年の東日本大震災発生を受けて結成され、被災した動物と家族、そして獣医師の支援を目的として活動を継続している。16名の有志獣医師がメンバーとなり、チャリティーセミナー等が全国各地で実施され、2011年からこれまでの5年間で集まった義援金は1千万円以上にのぼる。これは日本獣医師会・福島県獣医師会へ送金されている。
今回のSave熊本プロジェクトチャリティーレクチャーは、「日本という国はいつ何が起こるか分からない。だから、今我々にできることを、できる限りがんばる。レクチャーに参加して、熊本地震復興を応援する。」をキャッチコピーとして、東京および名古屋の2会場で開催された。今回編集部では東京会場を取材したので報告する。

東京会場では、小林哲也先生より開会にあたって挨拶と本会開催の趣旨説明があり、続いて以下3題のレクチャーが行われた。

「猫のリンパ腫アップデート 2016」
小林哲也先生(公益財団法人 日本小動物医療センター付属日本小動物がんセンター)
「FIPの診断と治療―最新情報」
石田卓夫先生(一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム会長、ねこ医学会会長)
「僧帽弁閉鎖不全症の治療~全ての獣医師が知っておくべき・実践すべき基本事項とは?~」
竹村直行先生(日本獣医生命科学大学教授、一般社団法人 日本臨床獣医学フォーラム学術顧問)

スペシャリストである先生方によりそれぞれ90分間、臨床に役立つ情報が解説され、先生方の気持ちの強さが伝わる非常に充実した内容であった。
呼びかけから実施まで短期間であったにもかかわらず、東京会場だけで150名以上の受講者が全国から集まり、学生も多く、一丸となって熊本や大分を支えるという想いの感じられるレクチャーであった。

なお5月8日(日)の名古屋会場には100名以上の受講者が参加しており、活動は今後も継続の予定である。問い合わせ、活動報告等はhttp://charity-vets.org/に随時掲載される。

会場の様子

群馬VMAT登録認定発足式・講習会 開催される

2016年3月27日(日)、群馬県獣医師会会議室にて、群馬VMAT登録認定発足式・講習会が開催された。

福岡に続き公益社団法人群馬県獣医師会(会長 木村芳之)でもVAMTを設立。21名の隊員が誕生した。

発足式に先立ち、すでに活動を進めている福岡県獣医師会の船津敏弘先生から、福岡VMATの活動状況についてシミュレーションも交えながらの講演が行われた。続いて本獣医師会の小此木正樹先生と群馬県伊勢崎市民病院外科診療部長でDMATの隊員である片山和久先生により、災害時の人への対応を交えての講演がなされ、会場は熱心に耳を傾け、VMATのおかれる現状についてあらためて理解を深めた。

発足式では群馬VMATの組織体制の説明や、シミュレーションも行われ、最後に登録認定証とともに隊員用のベストが配布された。

VMATの隊員は県内だけでなく県外へも赴くことになる。また将来的には獣医師だけでなく動物看護師へもその認定を広めていく考えが示されている。

第24回日本小動物歯科研究会 症例検討会・総会 開催される

2016年3月21日(月・祝)、東京・品川フロントビルにおいて、第24回日本小動物歯科研究会 症例検討会・総会が開催された。本年度は午前中10題、午後9題の計19講演が行われた。どの講演も緊張感があり、充実した時間であると感じられた。

 ランチョンセミナーでは「難抜歯に対するそれぞれの見解」と題し、当研究会会長の藤田桂一先生(フジタ動物病院)をはじめ、網本昭輝先生(アミカペットクリニック)、大場茂夫先生(日本大学動物病院)、本田 洋先生(本田動物病院)など当研究会理事の先生方が順番に発表された。ランチョンセミナーという短い時間で各先生方の難抜歯に対する個人的な見解が多方面にわたりくり広げられた。その後、当研究会より「無麻酔下での歯科治療等に関するアンケート集計結果について」の報告があり、その数字と具体的な返答から現状や問題点を知るうえで非常に貴重なデータであると思われた。

 歯科研究会は現在、会員数が700名を超えるとのこと。多くの先生方の歯科への意識が日々高まっていること、あわせて歯科治療に関する情報発信の重要性が感じられた。 当日はちょうど東京で桜の開花宣言が出され、本会の開催に花を添えた。


会場の様子

第12回日本獣医内科学アカデミー学術大会 開催

 2016年2月19日(金)~21日(日)にパシフィコ横浜で第12回日本獣医内科学アカデミー学術大会が開催された。今年も金曜日の午後から開催された本大会。JCVIM主催セミナー、動物看護師向けセミナー、レスポンスシステムを用いたセミナー、症例検討・研究発表、また共催団体主催によるプログラムなど、今年も多数の講演が行われ、3日間、多くの参加者達が各会場へ熱心に足を運んだ。
 今回の企業展示では、2次診療施設(どうぶつの総合病院・川口市)も展示ブースを出し、そのブース内でセミナーを開くという新しい試みもあり、参加者たちの関心を引いた。また、本年のJCVIM アワード〈症例検討アワード〉(協賛:ファームプレス社)では、「肺に腫瘤性病変を形成したMycobacterium avium subsp. hominissuis感染症の猫の一例」のご発表で岐阜大学付属動物病院の高橋舞子先生が、「ヘリコバクター・ピロリのイヌ・ヒト間での家庭内感染をみとめた1例」のご発表で東京大学の相澤早苗先生が、それぞれ受賞された。
 今回の参加者数は約2,900名を超え、史上最も多い参加人数となり、本年より新しい実行委員も加わったJCVIM、次回もより充実した新しい学術大会になると期待される。

辻本 元大会長の挨拶

2次診療施設ブースでのセミナーの様子

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