2025年7月26日(土)、27日(日)の2日間にわたり第44回比較眼科学会年次大会がパシフィコ横浜アネックスホールにて開催された。前回がオンライン開催であったため、今回は2023年以来の対面形式での開催となり、会場には総勢250名を超える参加者が集まった。
 今大会のメインテーマは「輪 ~基礎と臨床、そして世界と繋がろう~」。大会長を小林由佳子先生(ありす動物眼科クリニック)が務め、「輪」「世界と繋がろう」というテーマのもと、人医療の臨床や大学の先生、アメリカから宮寺恵子先生(ミシガン州立大学)、韓国から劉 鍚鍾先生(Yoolim Animal Eye Clinic)の講演が催された。
展示エリアでは企業ブースとポスター発表、講演会場では一般口演と教育講演、基礎と臨床双方の部会セッションのほか、特別講演とランチョンセミナーの講演が行われた。
 特別講演では2日間とも宮寺恵子先生が登壇し、1日目は「犬の遺伝性疾患を研究して ~遺伝子探索から遺伝子治療まで~」、2日目には「これは遺伝?アイチェックと遺伝子検査」をテーマとした講演が行われた。人医療や獣医療の臨床医と研究者の連携についても解説し、今回の大会テーマに通じる素晴らしい講演であった。
ランチョンセミナーでは、1日目には(株)メニワン主催で、講師である劉 鍚鍾先生の翻訳本の紹介のあと、「小動物獣医眼科領域でのOCTの活用」をテーマとして、OCTの基礎部分の概説と各症例の経過をOCTを使用した際でのみえ方の比較を交えて解説された。近年注目されているOCTがテーマということで聴講者も多くみられた。2日目には千寿製薬(株)主催、人の眼科専門医である前田亜希子先生(神戸アイセンター病院)による「ヒトと動物に共通するRPE65関連網膜症の治療開発と展望」をテーマに、人における医療の経験と知見が獣医療への応用につながる可能性について解説された。
 教育講演では福島潮先生(湘南鎌倉動物病院 動物眼科センター)座長のもと、下山由美子先生(アイデックスラボラトリーズ(株))が「猫のび漫性虹彩メラノーマの病理」のテーマでご講演を行い。2日目最初のプログラムである部会セッションでは、臨床「角膜内皮ジストロフィーの理解と未来への治療戦略」、基礎「動物モデルによる眼疾患研究の最前線」のテーマで講義が行われ、受付開始直後から多くの参加者が講演会場に足を運ぶ様子がうかがえた。
 両日ともプログラムの最後には、締めの講演であるショートセミナーおよび(株)オフテクス主催のイブニングセミナーが用意されていた。今回の学会で得られるものを多くもち帰ろうと、最後まで熱心に聴講する参加者が数多くみられた。
初日の講演後には情報交換会が開催され、理事の先生方や参加者および参加企業の方々も多数みられた。また、夏らしくチェロの演奏やズンバダンスなどの特別企画もあり、にぎやかに盛り上がった。
 今大会の一般口演18題とポスター発表8題のアワード受賞者が2日目に発表された。受賞タイトルと演者は以下の通り。
「犬の前房内チューブシャント設置術後における被膜切除の実施率と視覚予後の検討」齋藤智彦先生(トライアングル動物眼科診療室)、「0.002%オミデネパグイソプロピル点眼液が正常犬の眼圧および瞳孔径に及ぼす影響」辻村ひかる先生(麻布大学付属動物病院 眼科)、「Diagnostic evaluation of unilateral papilledema in a dog with a suprasellar mass and suspected intracranial hypertension using funduscopy, optical coherence tomography and magnetic resonance imaging」Sungbeum Shin先生(Chonnam Naional University)、ポスター賞「カニクイザルの限局性網膜萎縮における全視野及び他局所網膜電図の比較検討」川崎秀吉先生(アステラス製薬(株))
次回第45回比較眼科学会年次大会は、荒木智陽先生((株)新日本科学)が大会長のもと、2026年8月29日、30日に鹿児島で開催予定である。


大会長小林由佳子先生(ありす動物眼科クリニック)による開会の挨拶

会場の様子

アワードを受賞した4名の先生
左から、川崎秀吉先生、Sungbeum Shin先生、辻村ひかる先生、齋藤智彦先生