2024年6月2日(日)、日本獣医再生医療学会第19回年次大会が、横浜ワールドポーターズで開催された。130名もの参加があり、今回の「消化器疾患への再生医療アップデート」をテーマに講演が行われた。
 午前中のシンポジウムでは、鳩谷晋吾先生、大森啓太郎先生、福田 威先生、手嶋隆洋先生による慢性腸症の概要と治療法、MSCを使用した可能性や作用、細菌の働きについての解説、パネルディスカッションとして参加している先生からの質疑応答が座長の横山篤司先生、鳩谷晋吾先生のもと行われた。お昼にはランチョンセミナーとして動物再生医療技術研究組合(PARM)より、独自に開発した犬血小板由来成長因子療法についての臨床研究の詳細とこれからの期待を実際の症例に基づき解説があった。その後、人医療におけるiPS細胞を用いた眼の治療の第一人者である髙橋政代先生によるiPS細胞の解説とiPS細胞を使用した網膜再生医療の現状についての講演が行われた。
 午後の最初は一般演題がそれぞれ6名の先生により行われた。学術発表3題では、各先生の比較と解析によって間葉系幹細胞の可能性や治療効果を示唆するもので、これから展開にとても期待ができる内容であり、症例検討3例については、慢性腎臓病や椎間板ヘルニア、産業動物である牛の子宮疾患など多角的な症例で、今後治療可能性があるものや修復を高める結果につながるなど、どの症例もとても興味深い内容であった。そしてMin Koo先生による韓国の獣医療業界についての講演では、韓国は5,000施設あるなかでも26施設しか再生医療を行っている病院がないとのことで、技術面は高いものの環境や文化などにより、現在の治療の方法、安全性などが日本とまったく異なることが伝わる内容であった。
 終盤には4名の先生による教育講演が行われた。
 川上 亮先生は橈骨尺骨骨折におけるLR-PRPの使用による治療補助の可能性を検討した臨床研究の報告。福田 威先生のMSCを用いた症例の数々のデータと結果から、MSC療法のこれからの可能性についての報告。水野拓也先生はCAR-T細胞などの免疫細胞療法を用いたがん治療のこれからについて理論に基づき解説を行った。最後は石田卓夫先生が、CKDの概要からメカニズム、現在の治療から最新のベラプロストを使用した治療など、幹細胞投与による進行抑制の可能性、そしてこれからの課題についての報告があった。
 最後に主催側のプログラムとして、認定団体設立条件を含めた全体の説明と来年度設立予定である獣医再生医療の認定医制度がつくられるにあたり、申請方法を含めた概要が副理事長枝村一弥先生より話された。そして授賞式があり、一般演題から菊地薫子先生と小比類巻正幸先生が学会賞を受賞、ポスターセッションから塚本雅也先生の「イヌiPS細胞の再生医療への応用へ向けた取り組み」で奨励賞を受賞された。最後に、実行委員長である伊藤裕行先生による閉会の言葉で今大会が締めくくられた。
 大規模な開催ではないものの、参加している先生はほとんど退席もなく皆熱心に聴講する様子がとても印象的であった。次回は記念大会の第20回目となるため、素晴らしい企画を予定しているとのことで期待が寄せられる。
 

日本獣医再生医療学会理事長の横⼭篤司先生による開会挨拶

会場の様子

副理事長枝村一弥先生の新設予定である認定制度の解説

学会賞受賞の菊地薫子先生(麻布大学)

学会賞受賞の小比類巻正幸先生((有)小比類巻家畜診療サービス)

ポスターセッション奨励賞受賞の塚本雅也先生(大阪公立大学)