2023年12月9日(土)10日(日)、東京・日本獣医生命科学大学で(一社)ペットエンバーミングラボ主催による認定試験が実施された。
 本ラボは、ペットのエンバーミング(遺体保全)事業の実施とエンバーミングを行う組織で形成される。
 愛犬・愛猫に対しても、人同様に丁寧な葬儀を行う飼い主が増加傾向にあるなか、安全な環境で安心してお別れできるよう、本ラボでは、獣医療の視点も併せもち、適切な対応ができるようにするための「獣医解剖学」「法医学」「獣医疫学」の視点からの教育も重視する。40年以上獣医大学で教育研究活動、解剖学の教鞭をとってきた尼﨑 肇先生(日本獣医生命科学大学名誉教授、本協会代表理事)の指導のもと、本組織はスタートした。

 試験に先立って実施された2日間の講義は「遺体の死後変化」「遺体の腐敗」「遺体保全の施術における細菌、真菌、ウイルス、寄生虫」や「筋肉や骨格、消化器系・呼吸器系、泌尿器系、循環器・神経系の特徴」も網羅し実施。実習では実際のエンバーマーによる施術を見学しながら体の構造、留意すべき感染症、使用する薬剤の安全性、消毒・殺菌・滅菌や、情緒的な精神状態に陥っている飼い主からの的確な情報聴取の方法なども学んでいった。

 ペットエンバーミングの長所について尼﨑先生は「ご遺体の安全な保全を可能にすること。たとえば突然の交通事故でご遺体に損傷があった場合も限りなく生前に近づけることで、飼い主遺族の悲しみを幾ばくかでも和らげることができる」「感染症の予防にも大変有効である。エンバーミングの施術により遺体の腐敗に伴って発生する感染症や人獣共通感染症を防ぐ効果も期待される」という。さらに「胸腔・腹腔内へ注入する保全液によっては、10日を超える保存にも安全に対応でき、これまでは時間的にやむを得ない事情で直接お別れができなかった飼い主遺族がしっかりとお別れの時間をもつことが可能となった」と葬儀までの安全・安心な時間を技術的に提供できるようになったという。

 エンゼルケアの延長線上にあるともいえる本技術は、コフィン(お棺)に納めるまでの飼い主への配慮まで考えると、動物病院で看護に携わるスタッフの役割をこれまで以上に広げると考えられる。本協会、そして本協会の認定を受けるペットエンバーマーは、今後ますますの活躍が期待される。


代表理事の尼﨑 肇先生。日本獣医生命科学大学名誉教授であり、動物の生態学、解剖学、感染症学に精通し、警察機関の依頼により多くの動物の検死にも携わる


本ラボの発起人の一人である丸木純子氏((株)Le-Ciel)。人でのエンゼルケアやエンバーミングとかかわるなか、ペットにも同様のお別れの必要を実感。すぐに火葬してしまうだけでは気持ちがついていけない飼い主遺族のため本協会で尽力する


認定試験に合格した4名。今後はペットエンバーマーとして
安全・安心なお別れまでの時間を飼い主ご遺族へ提供していく