2023年1月22日(日)、都市センターホテル(東京都)にて、(公社)東京都獣医師会主催によるワンヘルス講演会「福岡県におけるワンヘルスの取組みと期待」が草場治雄先生(〈公社〉福岡県獣医師会 会長)を迎え開催された。

 日本で「ワンヘルス〈One Health〉」という概念を大きく牽引してきた福岡県獣医師会。本講演では「アジアの玄関口」としての歴史、福岡出身の免疫学者で狂犬病ワクチンの開発に大きく貢献された獣医師の梅野信吉先生の話題にもふれる他、2016年の「第2回 世界獣医師会・世界医師会 ワンヘルスに関する国際会議」(福岡県)での「福岡宣言」の発布や昨年(2022年)7月に「FAVA One Health Fukuoka Office」が設立されたこと、同年11月の「第21回アジア獣医師会連合(FAVA)福岡大会」では大会最終日に「アジアワンヘルス福岡宣言2022」が採択されたことなど、活動内容を紹介された。
さらに「〈アジアワンヘルス福岡宣言2022〉では、1.人と動物の共通感染症の予防とまん延防止、2.薬剤耐性菌への対策のさらなる推進、3.生物多様性の維持や地球規模の保護、4.獣医学教育の更なる整備と国際連携、5.医療機関や行政、市民団体、大学、国際機構等との連携によるワンヘルスの推進、6.ワンヘルス研究や教育のためFAVA活動の拠点と整備の強化が謳われた」と宣言の内容も紹介され、会場は「ワンヘルス」という概念への理解を深めた。

 福岡県ではワンヘルス条例の施行により、「保険環境研究所」と「動物保健衛生所(仮称)」が相互に連携した「ワンヘルスセンター」がみやま市に整備され、愛玩動物、野生動物、産業動物などを一元的に対応している。

 講演後の質疑応答では、「今後〈ワンヘルス〉を学問として確立していくうえで、大学教育へ如何に取り込んでいけばよいか」などネクストアクションにむけての具体的な質問が寄せられ、草場先生が一つひとつ丁寧に誠実に答えられていく姿が、印象的であった。


草場治雄先生(〈公社〉福岡県獣医師会 会長)。
ワンヘルスの概念を広めるため、今後は教育活動が重要という


上野弘道先生(〈公社〉東京都獣医師会 会長)。
馬医からはじまり産業動物・小動物の獣医師というように
時代のニーズとともに獣医師の役割も変化してきました。
「ワンヘルス」という概念も念頭に務めることも、
新しい獣医師のあり方と考えられるという