2025年10月18日(土)、同年9月24日に新しく開設された大阪公立大学森之宮キャンパス(大阪府大阪市)にて開設記念シンポジウムとして、「Zoobiquity Symposium-ワンヘルスが導く医療と獣医療の新時代-」が開催された。
 プログラムはすべて同時通訳つきで実施され、午前中は「さまざまな動物の心臓病態生理学-生息環境による心臓形態の変化―」(鯉江 洋先生、日本大学)、「猫尿臭はヒトにおける高コルステロール血症を防ぐ新たな手がかりを提供する」(宮崎雅雄先生、岩手大学)、「獣医学における汎動物学の実践―解剖学教育と腎臓研究の現場から-」(市居 修先生、北海道大学)の講演が実施された。
ランチョンセミナー「Zoobiquityと幹細胞:再生医療の未来を探る」(塚本雅也先生、大阪公立大学)の後、午後最初のプログラムでは基調講演としてカルフォルニア大学のDr. Barbara Natterson-Horowitzによる「The Future of Medicine: Human and Animal Health in the 21sr Centyry」が実施された。当初実施予定であった2020年からコロナ禍を経て、ようやくかなったDr. Horowitzの講演であった。
 続くパネルディスカッションは2部構成で展開された。第一部は「One Healthの将来を担う若手の育成について」をテーマに、「アジアの取り組み」(Dr. Juhyung Hur、アジア獣医師連合会長)、「コロラド州立大学の取り組み」(Dr. Tracey Goldstein、コロラド州立大学One Healthセンター所長)、「北海道大学の取り組み」(寳金清博先生、北海道大学総長)、「帯広畜産大学の取り組み」(古林与志安先生、帯広畜産大学副学長)、「大阪公立大学獣医学部のOne Healthへの取り組み」(山岸則夫先生、大阪公立大学獣医学研究科研究科長)が講演された。
 第二部は「学生が考えるOne Healthの将来」をテーマに、「シバヤギを活用した除草活動」(奥薗翔太さん・小田切 茜さん・片岡沙矢さん・栗本みのりさん・黒田いちごさん・前田一樹さん、大阪府農芸高等学校 資源動物科 ふれあい動物専攻)、「獣医学生が描く、教育とAIからはじまるOne Healthの未来」(坂口実優さん、大阪府立大学 生命環境科学域 獣医学類)、「医学部と獣医学部における「One Health」と「Zoobiquity」に関する意識調査」(鵜澤 悠さん・政田佳祐さん・市原明子さん・弁野 遼さん、大阪公立大学獣医学部)、「One Healthの実現に向けて:小学生への“いのちの授業”と獣医再生医療研究」(杉崎晧子さん、大阪公立大学 大学院獣医学研究科)の発表がされた。
 Zoobiquityをとりまく日本、アジアやアメリカでの現状を学び、教育の重要性に対する認識を高める1日となった。
 なお本シンポジウムは(一財)J-HANBS北海道大学との共催であり、とくにJ-HANBS 理事長の加藤 元先生は、2018年から本シンポジウムの開催に向けて尽力してこられた。コロナ禍を経てようやく開催された本シンポジウムが、「人、動物、自然環境」の3つの要素を一体としてとらえる「Zoobiquity」概念を普及する牽引役として、J-HANBSをはじめ各教育機関、研究機関の活躍がますます期待される。


コロナ禍を経てようやくシンポジウムの開催を実現。その喜びを分かち合うDr. Horowitzと加藤 元先生。加藤先生は2018年に渡米し、Dr. Horowitzに日本での講演を依頼していた。シンポジウムは当初2020年10月の開催が決まっていたが、同年3月からのコロナ禍により延期を余儀なくされ、先行きがみえない状況下、一旦中止にみまわれた。しかし昨年2024年から再度企画を立て直してのプロジェクトがスタートし、今回のシンポジウム開催に至った


Dr. Horowitz先生の講演の様子


会場の様子。写真は本シンポジウム共催の北海道大学総長 賽金清博先生の講演


大阪公立大学獣医学部附属獣医臨床センターは米国動物病院協会(AAHA)による国際認定を取得。本学獣医学研究科科長 山岸則夫先生(右)と、米国動物病院協会(AAHA)日本支部代表 松沼謙一氏(左)


参加者全員で(一財)J-HANBS理事長加藤 元先生を囲んで