2025年8月27日(水)18時~、HGPI(日本医療政策機構)主催によるウェブセミナー「食・健康・環境を感染症から守るー獣医疫学の挑戦と展望」が開催された。スピーカーには、酪農学園大学 国際獣疫事務局(World Organaisasion for Animal Health:WOAH)食の安全コラボレーティングセンター長・獣医疫学教授の蒔田浩平先生を迎え実施された。
 講演では、昨今話題に上がるマダニ媒介による感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」をはじめ、狂犬病、ブルセラ症などの人獣共通感染症を中心にOne Healthの他、経済への影響にも触れ、「動物の感染症が人と環境にもたらすもの」「獣医疫学の役割」「獣医疫学が抱えている課題」「問題解決のために」と話はすすめられた。薬剤耐性菌を含む小動物だけでなく家畜や野生動物に関する感染症にも話題は及び、日本のみならず、東南アジア、南アジア、サハラ以南アフリカの豊富な情報をもとに、人獣共通感染症の現状、獣医学および獣医疫学の課題や今後の展望について解説された。
 人獣共通感染症の研究ではとくに獣医疫学という学問が重要になる。獣医疫学者人口を増やすことが重要であると蒔田先生は力説。現在獣医疫学者を雇用している獣医科大学は少ないと指摘した。また、地方自治体や民間には獣医疫学者のポストがほとんどないことも懸念点だという。
 新興感染症・再興感染症の多くは動物由来で発生する。動物の疫学という学問、領域は我々の生活に関わるという点を認識すること、そしてOne Health、教育部門、民間部門・行政部門の連携の大切さを学べたセミナーであった。セミナーの最後に、国際獣医疫学経済学会(International Society for Veterinary Epidemiology and Economics:ISVEE)を2033年に日本で初めて開催するなど、日本の公衆衛生、家畜衛生関係者などに獣医疫学について広く理解を促す取り組みの必要性について紹介された。
ISVEEの詳細は下記より。
https://isvee17.com.au/