小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

愛犬美容看護専門学校 ペットの心肺蘇生(BLS)授業開催

 2022年夏、愛犬美容看護専門学校(北海道)で、心肺蘇生に関する授業が行われた。授業ではBLS(Basic Life Support:一次救命処置)を実施。心臓マッサージと人工呼吸を学び、心肺停止(CPA)状態の犬や猫へBLSを施し、心肺蘇生(CPR)へと導く。
海外の「RECOVER:Reassessment Campaign on Veterinary Resuscitation」ガイドラインが日本へも浸透している。世界では動物看護の専門スタッフもそのライセンスを有する。
 来年(2023年)3月にはいよいよ愛玩動物看護師(国家資格取得者)が誕生することに伴い「チーム獣医療」への関心も並行して高まりつつある。これまで以上に獣医療の専門、動物看護の専門家が同じ現場で活躍することとなる。大切な分野の一つに、動物のERが挙げられる。「本校を卒業した愛玩動物看護師が国家資格を有した後、そうしたER現場も活躍の場と考えている」と、当校動物看護科の片桐先生はいう。
 また、当校の動物看護科では、愛玩動物看護師の国家資格とともに、トリミングも学び、JKCのトリマーライセンスの取得も目指すようにしているとのこと。
 「看護とトリミングの両方を学ぶことで、トリミングだけでなく『保定』技術も上達します。さらに疾患になる前段階の健康な時期から、看護のプロの視点で、犬や猫の状況をみることができるため、ちょっとした変化にも気づき、院内での共有を可能とし、結果的に疾患の早期発見・早期治療への移行が見込まれます。この他、ケガや持病、疾患や高齢を理由にトリミングを断られた症例の受け皿にもなり得ます。トリミング中の急変にも即時対応でき、またトリミングができれば『かわいく』してあげられるので飼い主のつらい気持ちを少しでも明るくしてさしあげることができると考えます」とのこと。
 また、「飼い主とその家族である犬と猫のQOLを上げるため、動物病院に勤務する看護のプロとして役割を果たせる人材を、社会へ送り出していけるように尽力していきたい。そのためには、救急など必要と思われる授業をこれからも積極的にとりいれていきたい」とのことである。


BLS授業の様子


心拍測定中の様子


当校動物看護科では、愛玩動物看護師の国家資格取得とともに、
トリミングも学びJKCのライセンスも目指す

日本ワンヘルスサイエンス学会 第6回学術集会 開催される

 グローバル化がすすむなかで、人、動物、環境という3者の健康や健全性を維持することが、人の健康へとつながるという概念「One Health」。2016年に設立された日本ワンヘルスサイエンス学会は、One Healthの立場から、医学・薬学・保健衛生学・獣医学・農学・理学・工学などの領域の研究者があつまり、人、動物、環境の健康に貢献することを目的として活動している。
 その第6回目となる年次学術集会(大会長:岡﨑登志夫先生、ヤマザキ動物看護大学)が9月2、3日の2日間開催され、市民公開シンポジウムは、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大の状況を鑑み、3日(土)、対面(ヤマザキ動物看護大学、東京都八王子市)およびオンラインにて開催された。
 今シンポジウムのテーマは「愛玩動物看護師の国家資格化と愛玩動物を取り巻く社会」。愛玩動物看護師の国家試験が来年2023年に迫るなか、愛玩動物看護師法の成立にご尽力された学校法人ヤマザキ学園理事長およびヤマザキ動物看護大学学長の山崎 薫先生がご挨拶され、シンポジウムは幕を開けた。
 つづいて、(一財)動物看護師統一認定機構の機構長であり、日本大学学長の酒井健夫先生が、「ワンヘルスの推進と愛玩動物看護師の役割」をテーマに、改めて、愛玩動物看護師の使命をさらなる獣医療の発展に寄与していくこととし、その職務について説明された。
 特別講演に登壇されたのは、北里英郎先生(北里大学、テーマ:環境と微生物について)、宮台俊明先生(福井県立大学、テーマ:魚の病気について)、内田明彦先生(ヤマザキ動物看護大学、テーマ:イヌ、ネコから感染する寄生虫について)といった3名の先生方である。それぞれ、人、魚類、犬と猫というご専門の立場から、新型コロナウイルスをはじめとしたウイルスや細菌感染症および、人獣共通感染症についてご講演された。宮台先生のご講演では、魚病のほとんどが感染症であること、また、飼育する環境を工夫することで感染症を防ぐことができたご経験など、興味深いお話を聞くことができた。
 日本の獣医療界において大きな意味合いをもつ愛玩動物看護師の誕生を控え、その存在を市民の方々にも周知する機会となった同学術集会。いっぽうで、拡大する気候変動の影響によって世界の国々を大きな災害が襲う現在、同学術集会は、科学者、研究者だけでなく、すべての人が「One Health」の意味を考える機会ともなったのではないだろうか。

日本ワンヘルスサイエンス学会 http://jsohsci.kenkyuukai.jp/about/

 

酒井先生

「ワンヘルスの推進と愛玩動物看護師の役割」について講演された酒井健夫先生

 

 

山崎先生1

ヤマザキ動物看護大学で行われた公開市民講座の様子

(一社) 全国動物専門学校協会 2022年度教職員研修会 開催

 一般社団法人 全国動物専門学校協会(中島 利郎会長:中央カレッジグループ代表)の2022年度教職員研修会が8月3日に中央動物専門学校(東京都)を会場として開催され、会員校20校51名が参加した。昨年度は新型コロナウイルス感染症の対策としてオンラインのみで研修会を開催したが、今年度は対面とオンラインのハイブリッド型で実施し、51名参加のうち対面が20名、オンラインでの参加が31名となった。
 全国動物専門学校協会は、全国の動物分野のある専門学校23校(2022年8月時点)が会員となっており、各検定試験の実施や全国選抜トリマー選手権大会を開催している。
 研修会では、まず中島会長が挨拶し、「研修事業のより一層の充実を図り、教育指導における力をさらに高めていくと同時に、協会主催の検定・競技会も、各学校の協力を仰ぎながら実施していきたい」と述べた。その後、各種検定試験の概要や今後の変更事項の説明があり、分科会としてトリマー教員研修会と各種検定委員会が行われ、協会主催のトリマー系検定の検定基準の紹介・ポイント・指導ポイントの確認など、よりスムーズに検定指導や検定実施できるような研修が実施された。
 また、同協会主催トリマー系実技検定の検定員を認定する「トリミング検定員資格認定会」も同会場で実施され、技術レベルの確認やトリマー系教員間の情報交換も行った。今年度の認定会は研修会同会場の東京会場6名と、8月8日YIC京都ペット総合専門学校(京都府)の京都会場8名の計14名が認定会に参加した。研修会や認定会の参加者からは、具体的なポイント等が分かり、大変参考となったとの声が上がっていた。
 また、本年5月1日に施行された「愛玩動物看護師法」は、動物系専門学校にとっては重要な年となり、さらに教育内容の充実と高い質保証が求められると考える本協会。これまで協会の愛玩動物看護委員会(下薗惠子委員長:シモゾノ学園理事長)が会員校に対し進捗状況説明や研修会を実施してきており、今後も教員研修を実施し愛玩動物看護教育の質とレベルの向上に取り組むこととなっている。

 

全体会で挨拶する中島利郎会長

 

検定委員長の坂元祥彦先生

 

全体会の後、各検定委員会、教員研修会が実施された。

写真は、トリマー検定委員会

 

トリミング検定員認定会【東京会場】

 

トリミング検定員認定会【京都会場】