小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

法獣医学研究会 発足シンポジウム開催される

 去る2020年2月23日に法獣医学研究会発足シンポジウムが「動物虐待における獣医師の役割」をテーマに日本獣医生命科学大学において開催された。同シンポジウムには、獣医科大学教員、行政関係者、法律研究者らコアメンバー約20名が参加した。

 2019年に改正された動物愛護管理法において「みだりに殺された、傷つけられた、虐待されたと思われる動物を発見した際に、遅滞なく都道府県等に通報すること」、すなわち、動物に対する虐待を獣医学的証拠によって科学的に評価して通報することが獣医師の義務であると規定された。動物虐待は動物と人がかかわるところすべてで発生する可能性があり、対象動物(牛、馬、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる、そのほか人が占有している動物でほ乳類、鳥類、は虫類に属するもの)にかかわる獣医師と行政・警察との連携も必要となることから、テーマに沿った以下の内容が講演された。

 「動物虐待と動物愛護管理法」長田啓先生/環境省自然環境局総務課動物愛護管理室、「動物虐待と(地方)獣医師会」佐伯潤先生/(公社)日本獣医師会動物福祉愛護職域担当理事、(公社)大阪府獣医師会会長、帝京大学、「動物虐待と中毒」石塚真由美先生/北海道大学獣医学研究院毒性学教室、「動物園動物の福祉」川上茂久先生/群馬サファリパーク、「動物虐待に対する獣医師の役割」田中亜紀先生/日本獣医生命科学大学。

 講演に続いて行われた総合討論では、法律に関する思考実験なども取り入れ、多角的な意見交換が行われた。

 動物虐待や動物の不審死体および中毒死等は、地域内での反社会行為を示唆し、動物にかかわる犯罪行為の実証には獣医学的知見が必要不可欠であり、近年多様化している獣医学への社会的要求に応えるために発足した法獣医学研究会からの今後の情報発信が期待される。

 

第16回日本獣医内科学アカデミー学術大会(JCVIM2020) 開催

 2020年2月21日(金)~23日(日)、第16回日本獣医内科学アカデミー学術大会(JCVIM2020)が、パシフィコ横浜(神奈川県)で開催された。
 実行委員のメンバーに新たに西飯直仁先生(岐阜大学)と小林沙織先生(岩手大学)も加わり全国規模での準備がすすみ、今年もより充実した展示・企画が展開され、多くの共催団体による講演も実施された。日本獣医がん学会、日本獣医腎泌尿器学会、日本獣医皮膚科学会、獣医臨床感染症研究会、小動物ウイルス病研究会、獣医臨床寄生虫学研究会、JSFMねこ医学会、獣医臨床感染症研究会、共同運営夜間救急動物病院連絡会、日本獣医輸血研究会、日本獣医動物行動研究会等、30を超える学会や研究会が参加し、専門性の高いプログラムを展開した。伴侶動物獣医療における幅広い分野のセミナーが、獣医師や動物看護師向けに実施され、参加者たちは3日間、思い思いの会場へ足を運んだ。
 また、今大会では新型コロナウイルス感染症の影響により、参加者の安全を優先し、懇親会、アワード受賞式や一部セミナーが中止された。いっぽうで「新型コロナウイルス感染症に対して、我々獣医師がまずは正しい知識をもっておくことがきわめて重要」という主催者側の認識に基づき、多くの獣医師が集まる本学会で緊急企画として、前田 健先生(国立感染症研究所、獣医科学部部長)座長により、高野友美先生(北里大学)、奥村 敦先生(米国アレルギー感染症研究所/コロンビア大学)のご講演による「人と動物のコロナウイルス感染症に関する臨時特別セミナー」が開催される一幕もあった。
 なお本年のJCVIMアワード(症例検討アワード、協賛:ファームプレス)は、山口大学の溝口広樹先生による「High-grade B細胞リンパ腫の長期治療中にT細胞リンパ腫を続発した犬の1例」、四国動物医療センターの入江充洋先生による「細胞診でリンパ腫が疑われた重症熱性血小板減少症(SFTS)の猫の1例」が受賞した。
 「専門医制度に関してアジア獣医内科学専門医協会(Asian College of Veterinary International Medicine, AiCVIM)は次回のAMAMSにおいて、レジテントプログラムを公表し、アジアでの専門医制度を本格的に始動させる。JCVIMはAiCVIMとの緊密な協力関係のもとで『参加者にとって魅力あるプログラムの提供』を第一の目標とする」という本大会長。
 3日間で2,751名の参加者が集った本学術大会。来年の第17回は、2月19日(金)~ 21日(日)にパシフィコ横浜の新施設、ノースにて開催予定。益々の活躍が期待される。

各会場には、感染予防の協力を呼びかけるスライドが掲示されていた

緊急企画「人と動物のコロナウイルス感染症に関する臨時特別セミナー」の会場の様子