2019年9月6日(金)、7日(土)、明治大学駿河台キャンパス・アカデミーコモン(東京・千代田区)で、3回日本ヘルスケア学会年次大会・一般社団法人日本ヘルスケア協会(略称:JAHI)活動発表会が開催された。

 本協会はヘルスケア産業が自ら提案・実践する「民間の、民間による、民間のための」環境づくりのために平成27年に設立された。ヘルスケア領域を担う日本ヘルスケア産業協議会傘下の20部会と活動にエビデンスを提供するJAHIの10研究会が集う。年次大会ではそれらの各研究会・部会の活動成果を発表する。「ペットとの共生によるヘルスケア普及推進部会」は産業協議会の部会として、ペットとの共生の人への寄与を適切に伝え、ヘルスケア産業を活性化させる一翼を担う。

 第3回目の年次大会のメインテーマは「健康寿命延伸社会の実現とヘルスケアの役割」。本推進部会の教育講演「育ちゆく子どもたちに伴侶動物を」では、柴内裕子先生(赤坂動物病院)が、犬に本を読みきかせるREADプログラムや長期入院の子どもたちを訪問するセラピー犬の効果検証について講演された。人の貧富や学歴等の区別なく接するペットに小児期から触れることで、子供に情緒・忍耐をもたらすことについてや、また発語との関連性にも話は及んだ。兄弟姉妹か少なく三世代家族が減少する日本の現状をふまえ、また自身が30年以上牽引してきたCAPP活動(Companion Animal Partnership Program/活動数22万回以上)での体験を交え、適切な知識と技術のもとでのペットとの良質な時間の共有による効果について話された。

 続くパネルディスカッションでは「ペットとの暮らしによる健康効果」について課題と解決法について、柴内裕子先生(前述)、下枝貞彦先生(東京薬科大学)、児玉博充氏(ユニ・チャーム株式会社)が、進行の越村義雄氏(ペットとの共生によるヘルスケア普及推進部会)のもと意見が交わされた。ペットとともにいることによるオキシトシンの評価、Human Animal Bondの歴史や、高齢者の生活の意欲への向上による日常的な健康問題の低下、ロボット(AI)介在の介護の長・短所、地域包括ケアなど「人とペットのQOLを高める」ために何かできるかを模索するパネラーの話に、参加者たちは情報を共有し、理解を深めた。
「『人とペットの理想郷』をめざしマスメディアや政府機関へも共感いただき活動を広げられるように尽力していきたい」と本部会長の越村義雄氏は話す。熱意あふれる本部会、そして一般財団法人日本ヘルスケア協会の活動が、今後も期待される。


教育講演の様子

柴内裕子先生。33年にもおよぶCAPP活動での実例を交え、お話しされた

日本ヘルスケア協会理事でペットとの共生によるヘルスケア普及推進部会長の越村義雄氏。教育講演の座長、続くパネルディスカッションの進行を務めた

パネルディスカッションの様子