2025年10月31日(金)から11月2日(日)の3日間にわたり、韓国・大邱(テグ)にて第13回アジア小動物獣医師会大会(FASAVA〈Federation of Asian Small Animal Veterinary Associations〉2025)が開催された。前回2024年7月のクアラルンプール大会から1年、今回は10月末の開催となり、日本をはじめアジア各国、欧米、オセアニア、アフリカなど全世界33ヵ国から4,500名以上の参加者が集まった。
大邱は、韓国第3の都市といわれ、韓国唯一の都市型モノレールがあり、交通量も比較的多い印象である。会場のEXCO(大邱展示コンベンションセンター)は、大邱市街の北側に位置し、2001年に開館した複合展示施設である。ちなみに日本との時差はない。
講義は最大10セミナーが並行して開かれ、メインプログラムとして、救急、整形外科、行動、猫、軟部外科、内科、循環器、眼、皮膚、神経、臨床病理、腫瘍など70以上のプログラムが用意された。日本からは浅野和之先生(日本大学)、新居康行先生(JASMINEどうぶつ総合医療センター)、金園晨一先生、佐藤雅彦先生(ともにどうぶつの総合病院)、細谷謙次先生(北海道大学)、是枝哲彰先生(JARVISどうぶつ医療センター Tokyo)の6名の講演が行われた。また、現在サーカス動物病院に所属するYun-Hsia Hsiao先生も登壇した。
加えて、2日目と最終日には、「Vet Nurse(Korean)」として計12コマが設けられ、日本からは最終日に大熊摩耶氏(愛玩動物看護師、日本獣医生命科学大学)」の講演が行われた。
●初日:肌寒くも気持ちのよい朝を迎え、オープニングセレモニーがスタート。韓国の伝統と革新をイメージしたダンスのあと、FASAVA会長である石田卓夫先生(JBVP名誉会長)他多くの来賓の挨拶が行われた。その後、現WSAVA会長のJim Berry先生の基調講演「The Intersection of Welfare and pain management in Veterinary Medicine(獣医学における福祉と疼痛管理の交差点)」が行われ、アニマルウェルフェア向上のための動物の痛みを見逃さないヒントを、エビデンスやガイドラインを元に解説された。午後のレクチャーのあと、ウェルカムレセプションでは、華やかなショーや来賓挨拶、スポンサーへの表彰などが行われた。会場には、明日からの英気を養うために多くの参加者が集まり、懇親を図った。
●2日目:大邱から約60km海側にある韓国・慶州でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が最終日を迎えるなか、FASAVAでは2日目のプログラムがスタートした。日本からの講演としては、午前に浅野先生の「Surgery for adrenal tumors(副腎腫瘍の外科手技)」「Surgery for liver tumors(肝臓腫瘍の外科手技)」、Yun-Hsia Hsiao先生の「New Horizons in Therapy:Managing CAD through pharmacological approaches」(治療における新しい地平線:薬理学的アプローチによるCADの管理)」、新居先生の「Canine Mitral Valve Repair(MVR):From Indications to Innovations(犬の僧帽弁修復〈MVR〉:兆しから革新へ)」が行われた。どの講演にも多くの聴講者が参加していたが、とくに浅野先生の講演には立ち見がでるほどの盛況ぶりであった。
午後には、金園先生の「Approach to Vestibular Dysfunction(前庭機能障害へのアプローチ)」「Canine Acute Intervertebral Disc Disease:True or False(犬の急性椎間板疾患)」「How to anticipate elevation of the intracranial pressure prior to MRI(MRI前に頭蓋内圧の上昇を予測する方法)」、佐藤先生の「〜Recent advances in feline medicine〜 Updates on DM,FIP and CKD(〜最近のネコ医学の進歩〜DM、FIP、CKDに関する最新情報)」が行われ、こちらも多くの聴講者であふれかえった。
この日の夜にはコングレスディナーが行われ、石田会長らがプレゼンターを務めた表彰式やダンスや歌などのショー、そしてコース料理などを参加者は楽しんだ。
●最終日:日本の先生の講演としては午前に細谷先生の「From 10-year experience of IG/IMRT:Have we really advanced to the next stage? How far have we come?(画像誘導/強度変調放射線治療の10年の経験から:私たちは本当に次の段階にすすんだのか、どこまで来たのか」、午後に是枝先生の「Total Hip Replacement in dogs and cats(犬猫の股関節全置換術)」「Surgery in Motion:Lectures and Videos of FHO and THR(動画による手術講義:FHOとTHRについて)」、大熊氏の「Veterinary Nurses for Companion Animal,Now a Nationally Certified License(愛玩動物看護師の国家資格化の現状)」「Hospitalization Nursing Care and Nursing Documentation Process(Animal Nursing Records)(入院看護ケアと動物看護記録)」が行われた。
クロージングセレモニーでは、ポスターセッションのアワード表彰ほか、次回FASAVA2026が台湾・台北にて2026年10月31日(土)〜11月2日(月)に開催されることが発表された。
展示会場には、ヒルズ社をはじめ、120に及ぶ企業および関連団体が集まった。日本企業関連のブースも見受けられ、日本と韓国をはじめとするアジア各国との距離がますます近づいている印象を受けた。また、一部の会場では、AIによるリアルタイム翻訳が導入され、参加者は手持ちのスマートフォン等でQRコードを読み取れば英語、韓国語、日本語が飛び交うディスカッションや質疑応答なども瞬時に理解でき、これからの学会の一つのインフラとして非常に効果的であると感じられた。
アジアの小動物医療の世界で、日本は日本ならではの強みを維持および発揮していけるのか。日本はアジアからの期待に応えられるのか。その際に重要なのは「情報」であり、その取捨選択の判断材料を多くの方が入手できる環境の構築が鍵になると思われる。本大会のすべての参加者は、貴重な「情報」を多く得たにちがいない。
Pick Up:ポスターセッション
今大会では、ポスターが約200題集まり、日本からも多くの先生方が発表された。そのうち、6題は東京都獣医師会会員による報告であり、池田人司先生(オールハート動物リファーラルセンター)と渡辺靖子先生(自由が丘動物医療センター)がアワードを受賞した。この2名を含む発表者会員6名には東京都獣医師会から渡航費や滞在費などの補助金が支払われた。来年以降も継続して支援するとのことで、アジアの獣医療関係者とのコンタクト、また日本の学会とは異なる熱気を感じられる絶好の機会として、次回の台北大会にてポスター発表を検討されてはいかがだろうか(詳しくは東京都獣医師会まで)。





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第13回アジア小動物獣医師会大会(FASAVA2025)
大邱(テグ)大会 開催される
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