小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

日本獣医再生医療学会第12回年次大会 開催される

 日本獣医再生医療学会第12回年次大会(学会長・岸上義弘先生)が、2017年2月11日(土)、12日(日)の2日間にわたり名古屋プライムセントラルタワーにおいて開催された。年次大会長・石田卓夫先生(赤坂動物病院)、実行委員長・太田亟慈先生(犬山動物総合医療センター)のもと、初日はがん免疫療法と再生医療および幹細胞療法を2軸にそれぞれベーシックセミナー、アドバンスセミナー、上級セミナーの3コマが設定され、聴講者は免疫療法および再生医療に関する理解を深めた。
 2日目は、「免疫介在性疾患の現在と幹細胞療法で切り開く未来」「がん免疫療法の今を知る」「激論!!椎間板ヘルニアへの細胞移入療法をみんなで考える」の3つのセッションを中心にパネルディスカッション、そしてランチョンシンポジウム「動物再生医療にまつわる倫理的課題を通してみえるもの」などが行われた。なかでも注目はシンポジウム「獣医再生医療におけるガイドラインを今後どのように考えていくのか」〈ファシリテーター:稲葉俊夫先生(大阪府立大学)、シンポジスト:中島奈緒氏(農林水産省 動物医薬品検査所)、枝村一弥先生(日本大学)、横山篤司先生(さくら動物病院、動物再生医療センター病院)〉で、中島氏は動物病院における細胞の製造の法的な位置付け、自家製造したものと承認製剤のちがいについて解説。続いて枝村先生からはガイドライン策定の現状、そして横山先生からは届出制度の流れや意義について説明があった。薬機法や届出制度など、獣医療における再生医療および細胞療法に関する具体的な方向性が示され、ガイドラインが社会の信頼および信用のためのものであること、また動物病院をしばるものではなく、安全や信頼を確保するものであることが説明された。
 獣医再生医療研究会から現在の日本獣医再生医療学会に移行して4年が経ち、参加者数も208名、参加企業も30社近く集まり、獣医療における再生医療への期待がふつふつと高まっていると感じられた。次回は横浜ワールドポーターズで2018年2月3日(土)4日(日)開催予定。

会場の様子

ヒルズのプリスクリプション・ダイエット〈犬用〉ダーム ディフェンスTM 発売記念セミナー「犬アトピー性皮膚炎の臨床症状・治療・栄養管理」開催

 2017年2月5日(日)、東京コンファレンスセンター品川において、日本ヒルズ・コルゲート(株)およびDSファーマアニマルヘルス(株)主催による〈犬用〉ダーム ディフェンスTM発売記念セミナー「犬アトピー性皮膚炎の臨床症状・治療・栄養管理」が開催された。
 米国獣医皮膚科専門医でウィスコンシン大学マディソン校教授のDouglas J. DeBoer先生による「犬アトピー性皮膚炎の臨床像と診断」では、まず犬アトピー性皮膚炎の典型的な臨床症状を認識し確実な診断を可能にするための具体的な項目と検査が提示された。治療については、アトピー性皮膚炎は1つだけの方法や薬剤で改善できるものではなく、外用薬やシャンプーを用いる方法、サイトカイン介在性瘙痒を防ぐ薬剤を用いる方法、栄養管理なども含め、複合的に行うことが提唱された。
 そして米国獣医内科専門医でHill’s PetNutrition, Inc. メディカルディレクターのJennifer M. MacLeay先生による「犬アトピー性皮膚炎の管理に欠けていた栄養という重要な要素」では、犬のアトピー性皮膚炎治療における栄養管理の重要性、また〈犬用〉ダーム ディフェンスTMが臨床試験で効果を示し、飼い主の評価が高かったことが解説された。
 〈犬用〉ダーム ディフェンスTM症例紹介として、柴田久美子先生(DVMsどうぶつ医療センター横浜、YOKOHAMA Dermatologyfor Animals)、大嶋有里先生(アジア獣医皮膚科専門医、犬と猫の皮膚科、TRVA動物2次診療センター)、江角真梨子先生(日本獣医皮膚科学会認定医、VetDerm Tokyo)からも、日本の症例で効果が得られたことが報告された。
 本セミナーは2月2日(木)に大阪でも開催されており、この日の東京開催とあわせると参加者は510名を超えた。皮膚科臨床に対する関心の高さ、新しい薬剤や栄養管理方法への期待がうかがわれるセミナーであった。また2月7日(火)には新製品記者発表会が行われ、こちらも多くのメディアが集まり、期待度の高さが示された。

会場の様子


新商品記者発表会(2月7日@東京)の様子

一般社団法人 日本動物麻酔科医協会「第1回比較臨床麻酔カンファレンス2017」を開催

 2017年2月4日(土)、一般社団法人 日本動物麻酔科医協会(代表理事:長濱正太郎先生)が、第1回比較臨床麻酔カンファレンス2017を東京大学弥生講堂一条ホール(東京・文京区)にて開催した。
 本協会は獣医師、とくに麻酔科専門獣医師の学識および技術の向上により、獣医療を発展させ社会全体の利益増進に寄与することを目的に、2016年7月に設立された協会。そのために必要な勉強会や研修等の事業展開を行っている。
 活動の幅を広げるべく展開された今回の学術集会では、基礎講義として「換気モニター:機器に表示されるEtCO2の数値だけでは不十分! カプノグラムを読み解かなければ真の換気状態は把握できない」(勢籏幸子先生、佐野洋樹先生、長濱正太郎先生)、「犬のNSAIDs:“とりあえず”や“なんとなく”での使用を見直して適正に使おう!」(土居瑛希子先生、佐野洋樹先生、佐野忠士先生、長濱正太郎先生)、パネルディスカッションでは「麻酔中の循環管理:輸液と心血管作動薬の最近の使い方」(佐野洋樹先生・石塚友人先生・伊丹貴晴先生・手島健次先生・長濱正太郎先生)「術後疼痛管理:成功させるためのポイントを押さえて圧倒的に優れた術後鎮痛を手に入れよう!」(佐野洋樹先生、石塚友人先生、伊丹貴晴先生・佐野忠士先生・長濱正太郎先生)を展開。
 11:00〜19:00まで、100名を超える参加者たちは活発な意見交換を交え、充実した時間を過ごした。第2回も開催が予定されている。
 詳細は一般社団法人 日本動物麻酔科医協会( http://www.j-vas.com/ )まで。

パネルディスカッションの様子

第16回日本獣医がん学会 開催 

 2017年1月28日(土)・29日(日)に、第16回日本獣医がん学会がホテルニューオータニ(大阪)で開催された。
 16回目を数える今学会のメインテーマは「形質細胞腫」で、メインシンポジウムでは小笠原聖悟先生(アイデックスラボラトリーズ(株))が「形質細胞腫瘍の臨床病理」と題し臨床病理について、田邊美加先生(動物病理診断センター)が「君の名は?-“形質細胞”の名前がつく腫瘍を理解する-」と題し病理について、小林哲也先生(日本小動物医療センター付属 日本小動物がんセンター)が「形質細胞由来の腫瘍:診断と治療」と題し診断・治療を解説され、その後の総合討論では石田卓夫先生(赤坂動物病院)が座長を務められての総合討論が展開された。検査時の条件の統一の重要性や、細胞をアニメキャラクターにおきかえたわかりやすい解説、治療薬の用い方など、各先生方による丁寧なお話に、会場は熱心に耳を傾け、質問も飛び交い熱気あふれるシンポジウムとなった。また続く同テーマのケーススタディでは9題が発表され「形質細胞腫」に関する理解を深めた。
 この他、本会獣医腫瘍科認定医II種対応およびI種対応の講習会やシンポジウムや、企業協力によるランチョンセミナー、また一般口演など、盛りだくさんの内容に、約600人の参加者たちは、充実した2日間を過ごした。「より『がん』の専門性を高めた学会を目指していきたい」と日本獣医がん学会会長の石田卓夫先生は語る。次回は本年夏、東京で開催。


シンポジウム会場の様子

獣医オゾン療法臨床報告会 開催される

 2017年1月29日(日)、(株)堀場製作所東京セールスオフィス2階プレミアムホール(東京・神田)にて「獣医オゾン療法臨床報告会」が開催された。
 はじめに、「オゾン療法概要」として鷲巣 誠先生(日本医療・環境オゾン学会獣医部会会長、アニマルウエルネスセンター代表取締役)が講演され、オゾンに関する生物学的な効果および臨床応用などを解説された。次に三浦敏明先生(北海道大学名誉教授)による「オゾン療法の作用メカニズムについて」の講演が行われ、抗炎症作用や血流改善などの効果に関して作用機序をふまえながら解説された。
 そして、臨床報告として「慢性疾患の犬猫に対してオゾン療法を実施した症例報告」國分 亮先生(みなとよこはま動物病院)、中山一也先生(中山犬猫病院)、山田武喜先生(亀戸動物総合病院)、浜野貴行先生(目白動物病院)、永岡勝好先生(みなとよこはま動物病院)、「オゾン療法の取り組み」阿部知弘先生(アネモネ動物病院)、「オゾン療法情報のあれこれ」田口 徹氏((有)オーテックラボ)が行われた。当日は15時から18時までの予定だったが、大幅に時間を延長し、質疑応答でも活発な意見交換が行われた。

会場の様子

日本獣医学専門医奨学基金(JFVSS)クラウドファンディング開始

 一般社団法人日本獣医学専門医奨学基金(JFVSS、代表:小林哲也先生、http://www.jfvss.jp/)では、2016年12月21日よりクラウドファンディングサイト READYFOR において、米国獣医学専門医の養成をサポートするプロジェクトを開始した。
 JFVSSはコロラド大学(CSU)と提携し、CSUの専門医教育プログラムへ奨学生を派遣する活動を行っている。1年おきに1名を選出、奨学生が安心してレジデントプログラムを続けられるよう、多角的、継続的に支援する。
 様々な科目の獣医学専門医を国内に増やすことで、犬や猫たちがより高度な医療を受けやすくなることを目指す本活動。クラウドファウンディングという新しい方法により、賛同者の広がりを期待している。詳細は下記サイトより。
https://readyfor.jp/projects/jfvss

第58回 比較統合医療学会大会 開催

 2016年12月10日(土)、11日(日)、日本獣医生命科学大学(東京)において、第58回比較統合医療学会大会が開催された。
 10日午後に開会後、岸上義弘先生(岸上獣医科病院)によるシンポジウム「獣医領域の再生医療の実際」、続いて荒島康友先生(日本大学)による教育講演「登校拒否、うつ病様、CFS等を呈すZoonosis~Q熱、パスツレラ症~」が行われた。
 11日午前には、太田伸生先生(東京医科歯科大学)による講演「寄生虫感染症と統合医療:治療薬開発の経緯を辿る」が行われた。この講演では、マラリア治療薬であり住血吸虫病治療薬でもある青蒿素などを例として取り上げ、民間で伝承されてきた生薬から治療薬が開発されてきた経緯を紹介、それらの薬効機序解析から、今後期待される薬剤開発の展望や課題などが解説された。比較統合医療の1つの方向性として、伝統的医療に対する科学的アプローチが示される興味深い内容であった。
 午後には一般講演7題が発表され、症例発表や感染症認知度調査など、それぞれ幅広い分野での取り組みが示された。
 本大会のテーマは「比較統合医療の展望」であり、今後の展開にさまざまな方向性があることを感じさせる大会であった。

会場の様子

ブルーバッファロー新製品「ブルー ナチュラル ベテリナリー ダイエット(NVD)発売記念セレモニー in Tokyo 開催

 大切な家族のために選ぶ自然派フードをコンセプトに、アメリカのペットフード市場で急成長を遂げる大手フードメーカー「ブルーバッファロー」は、2016年12月1日から新発売の「ブルー ナチュラル ベテリナリー ダイエット(NVD)」の発売記念セレモニーを2016年12月11日(日)泉ガーデンギャラリー イベントホール(東京都・港区)で開催。ブルーバッファロー社副社長のTom Pletcherno氏による「ブルー製品について」、同社の研究開発担当上級副社長のGregory Reinhart先生による基調講演「抗酸化成分のパワーと予防医学における食事管理について」に続き、「最新のペットフード情勢と今後求められる先制医療とペットフードとの関係」と題し、氏政雄輝氏((株)VM3)コーディネートの元、新井敏郎先生(日本獣医生命科学大学)、西平衣里氏((公社)アニマル・ドネーション)およびブルーバッファローのGregory Reinhart先生をパネラーとして招き、先制医療、健康寿命の大切さとその将来について、それぞれの立場から解説された。
 飼い主を「ペットペアレンツ」とよぶ同社は、ブルーバッファロー財団も起業と同時期に立ち上げており、がんの研究を進めるアメリカの複数の大学に資金提供も行ってるとのこと。家族の一員であるペットのため、そして社会のために努めていきたいという情熱にあふれるセレモニーであった。

ブルーバッファロー社副社長Tom Pletcherno氏

第37回 動物臨床医学会年次大会開催される

 2016年11月18日(金)~20日(日)の3日間にわたり、大阪国際会議場(グランキューブ大阪)にて第37回動物臨床医学会年次大会が開催された。
 約20会場にて170コマにおよぶパネルディスカッション、セミナー、症例検討、一般口演などが行われ、2,300名を超える参加者が、それぞれ目的の講演を回っていた。講演内容は小動物臨床のみならず、産業動物医療、動物看護師・スタッフ対象、また経営関連の内容から市民公開講座まで多岐にわたり、充実したものであった。
 また動物臨床医学会では2015年より「獣医総合臨床認定医制度」を設立、本大会の指定セミナー受講も認定医受験資格取得の必要項目となっており、そのポイント記録用の手帳が入口に並ぶ会場を多く見かけた。
 次回大会は、2017年11月17日(金)~19日(日)、同じく大阪国際会議場にて開催の予定となっている。

第5回 ペットとの共生推進協議会シンポジウム 開催

2016年11月13日(日)、ペットとの共生推進協議会による「第5回 ペットとの共生推進協議会シンポジウム『ペットとの“真の共生”を目指して』人と動物の福祉を推進する~」が、東京大学弥生講堂・一条ホール(東京・文京区)にて開催された。
 「ペットとの暮らしが健康寿命を延ばす」をテーマに展開された本シンポジウムでは、基調講演として星 旦二先生(首都大学東京)による「ペットとの暮らしが健康寿命を延ばす」のご講演で健康長寿の背景、要因がつぶさな調査に基づき紹介され、続くパネルディスカッションでは、越村義雄氏(本シンポジウム実行委員長)の司会のもと、パネリストとして柴内裕子先生(赤坂動物病院)、武内ゆかり先生(東京大学)、則久雅司氏(環境省)により、前述の基調講演の内容を振り返りながらのディスカッションが展開された。今年20周年を迎える公益社団法人日本動物病院協会(Japanese Animal Hospital Association:JAHA)のCAPP活動での経験からペットとの共生の有用性が解説され、また自身の体験をもとに獣医行動学の視点からペットを通した飼い主の状況把握の可能性、環境省の動物愛護管理行政や今後取り組むべき方向性などが話題にのぼった。ペットとの共生に関し、それぞれの分野で活躍される先生方のディスカッションに300人収容の会場は立ち見がでるほどであった。本協議会の熱い思いが伝わるシンポジウムであった。

会場の様子

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