小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

ドイツ動物保護のための獣医師会 トーマス・ブラハ教授 視察報告会 開催

 2019年9月19日(木)、東京八重洲ホール(東京・中央区)で、「ドイツ動物保護のための獣医師会 トーマス・ブラハ教授 視察報告会」がNPO法人アナイスの主催により開催された。

 日本では、イギリスやドイツ、オランダ等、海外から得た情報を、動物保護活動へ反映することが多いなか、日本から海外をみるだけではなく、動物保護先進国の大きな一翼を担うドイツから日本の保護活動や人と動物との関係性をみてもらい、文化や風習、宗教や動物観のちがいを共有したうえで、感想や助言を得ることを目的とし、「ドイツ動物保護のための獣医師会」の前会長であり、ティアハイム設置運営基準「Der Tierheim Leitfaden」の執筆者であるトーマス・ブラハ教授(ハノーファー獣医科大学)を日本に招き、10日間にわたり各地を視察いただいた企画の最終イベントである。

 ブラハ教授の訪問先は関連省庁や動物愛護センターのみならず、ペット霊園、獣医大学、猫カフェ等多岐にわたった。なかでも災害時の対策についてはドイツが学ぶ点が多々あるという。また、ペット霊園についても印象的で、日本では死を迎えても飼い主とペットがつながり続けているという考え方は、ドイツではまだまだ少ない。宗教による死生観のちがいが学べたという。
 報告会ではこの他、ドイツと日本の動物愛護に関する法律や教育のちがいにも話が及んだ。

 日本とドイツで動物愛護に関する環境・背景にちがいはあるものの、動物のQOLを考えるという共通点をあらためて実感した。
「ヨーロッパ等海外の動物愛護活動をそのまま踏襲するのではなく、情報交換を継続し『ぶれない軸』をみつけ、日本に合う形を模索していくことが大切だと思う」と平井潤子先生(NPO法人アナイス/(公社)東京都獣医師会)は語る。


会場の様子

ハノーファー獣医科大学教授で「ドイツ動物保護のための獣医師会」前会長のトーマス・ブラハ教授

この視察企画のコアメンバーの一人で、通訳を担当した戸上由香梨氏(右)(ハノーファー獣医科大学所属)

トーマス・ブラハ教授来日企画主催者のNPO法人アナイス代表の平井潤子先生

Team HOPE「シニアペットの健康を考える」プレスセミナー 開催

 2019年9月11日(水)、恵比寿・ザ・ガーデンルーム(東京・渋谷区)で、(一社)Team HOPE主催により「シニアペットの健康を考える」プレスセミナーが開催された。
 全国の獣医師・動物病院がチームとなりペットの予防医療と健康管理の普及・啓発活動を推進し、ペットにやさしい社会の実現を目指し発足した獣医師団体は、現在、賛同する動物病院が約1,600にものぼる。昨今のペットの高齢化に鑑み、本プレスセミナーでは、シニアペットをテーマに展開された。 
 尾形庭子先生(パデュー大学獣医行動診療科)講演の「シニアペットの健康を考える~わかってあげようペットの心の健康~」では、シニアペットの生理学的変化やアメリカでの健康管理に対する取り組み、認知機能不全症候群や、定期健診の意義について解説された。また、後半には、長坂佳世先生(D&C Physical Therapy院長)と上條圭司先生(Team HOPE副代表、ゼファー動物病院院長)により、ペットが高齢になっても元気で暮らせるように、動物のリハビリテーションの考え方に基づき考案された「Team HOPEふれあいエクササイズ」についての解説とデモンストレーションが会場の飼い主とペットを交えて行われた。
 全国のTeam HOPE賛同病院では2019年10月からの1ヵ月間、健康診断キャンペーンを実施する。「ペットの限られた一生のなかで『健康な時間』を少しでも延ばせるようペットの健康管理と予防医療を通してペットにやさしい社会づくりに貢献したい」とTeam HOPE代表の太田亟慈先生(犬山動物総合医療センター)は熱く語る。今後の活動へも一層の期待が寄せられる。

Team HOPE代表の太田亟慈先生


尾形庭子先生


「Team HOPEふれあいエクササイズ」のデモンストレーションの様子

第3回日本ヘルスケア学会年次大会・一般財団法人日本ヘルスケア協会活動発表会 開催

 2019年9月6日(金)、7日(土)、明治大学駿河台キャンパス・アカデミーコモン(東京・千代田区)で、3回日本ヘルスケア学会年次大会・一般社団法人日本ヘルスケア協会(略称:JAHI)活動発表会が開催された。

 本協会はヘルスケア産業が自ら提案・実践する「民間の、民間による、民間のための」環境づくりのために平成27年に設立された。ヘルスケア領域を担う日本ヘルスケア産業協議会傘下の20部会と活動にエビデンスを提供するJAHIの10研究会が集う。年次大会ではそれらの各研究会・部会の活動成果を発表する。「ペットとの共生によるヘルスケア普及推進部会」は産業協議会の部会として、ペットとの共生の人への寄与を適切に伝え、ヘルスケア産業を活性化させる一翼を担う。

 第3回目の年次大会のメインテーマは「健康寿命延伸社会の実現とヘルスケアの役割」。本推進部会の教育講演「育ちゆく子どもたちに伴侶動物を」では、柴内裕子先生(赤坂動物病院)が、犬に本を読みきかせるREADプログラムや長期入院の子どもたちを訪問するセラピー犬の効果検証について講演された。人の貧富や学歴等の区別なく接するペットに小児期から触れることで、子供に情緒・忍耐をもたらすことについてや、また発語との関連性にも話は及んだ。兄弟姉妹か少なく三世代家族が減少する日本の現状をふまえ、また自身が30年以上牽引してきたCAPP活動(Companion Animal Partnership Program/活動数22万回以上)での体験を交え、適切な知識と技術のもとでのペットとの良質な時間の共有による効果について話された。

 続くパネルディスカッションでは「ペットとの暮らしによる健康効果」について課題と解決法について、柴内裕子先生(前述)、下枝貞彦先生(東京薬科大学)、児玉博充氏(ユニ・チャーム株式会社)が、進行の越村義雄氏(ペットとの共生によるヘルスケア普及推進部会)のもと意見が交わされた。ペットとともにいることによるオキシトシンの評価、Human Animal Bondの歴史や、高齢者の生活の意欲への向上による日常的な健康問題の低下、ロボット(AI)介在の介護の長・短所、地域包括ケアなど「人とペットのQOLを高める」ために何かできるかを模索するパネラーの話に、参加者たちは情報を共有し、理解を深めた。
「『人とペットの理想郷』をめざしマスメディアや政府機関へも共感いただき活動を広げられるように尽力していきたい」と本部会長の越村義雄氏は話す。熱意あふれる本部会、そして一般財団法人日本ヘルスケア協会の活動が、今後も期待される。


教育講演の様子

柴内裕子先生。33年にもおよぶCAPP活動での実例を交え、お話しされた

日本ヘルスケア協会理事でペットとの共生によるヘルスケア普及推進部会長の越村義雄氏。教育講演の座長、続くパネルディスカッションの進行を務めた

パネルディスカッションの様子