2023年3月1日、東京農工大学140周年記念会館において、第4回 ヒトと伴侶動物の比較医学研究会(会長:東京医科大学教授/落谷孝広先生)が開催された。同研究会は2017年に発足したが、途中、COVID-19の感染拡大の影響もあって2019年6月に国立がん研究センターにおける第3回以来の開催となった。
 同研究会は基本理念として追求する「ヒト医療と獣医療との連携」から、「ヒト・伴侶動物の疾患に共通するエレメントから、新たな診断・治療法を創造し、生命科学の発展に寄与することを目標」としている。今回のテーマは癌撲滅にフォーカスした「血中マイクロRNAによるがん撲滅への新たな歩み」であり、異なる分野の最前線で活躍する獣医師、医師らによって講演された。
 伴侶動物である犬の骨肉腫はヒトと疫学や病態など発症形態が類似しており、発現しているマイクロRNAの塩基配列までもが同様であることからヒト骨肉腫の自然発がんによる治療モデルとして有用とされている。このような共通事項からも分野を越えた協力体制による生命科学の発展を目指し、会場には、獣医師、医師、薬剤師、血中マイクロRNAを研究中の学生、関連企業などから約100名が参加した。各講演後にはそれぞれの立場や見方・考え方から活発なディスカッションが交わされていたことからも、今後の展望に寄せる期待の大きさがうかがわれた。
 また新会長に水野拓也先生(山口大学共同獣医学部獣医臨床病理学分野教授)、副会長には岐阜大の森 崇先生(岐阜大学応用生物科学部共同獣医学科臨床獣医学講座/獣医分子病態学研究室教授)が就任された。
問い合わせ:株式会社メディカル・アーク info@medical-ark.com

<当日のプログラムは以下の通り>
【基調講演】
「ヒトと伴侶動物における医療の絆」伊藤 博先生(東京農工大学名誉教授)、
「Exosomes in Companion Animals: An Innovative Approach to Treat Pre-Disease」落谷孝広先生(東京医科大学医学総合研究所分子細胞治療研究部門教授)
【ランチョンセミナー】
「エクソソーム オーケストラ ビジョン」西平 隆氏(Exo Earth株式会社)
【特別講演】
「犬自然発がんモデルにおけるmicroRNA網羅解析の臨床応用とトランスレーショナル研究」池田凡子先生(株式会社メディカル・アーク)、
「dPCRを用いたイヌの血中マイクロRNAによるがんの検出」Dr. PRIYANTHI MANGALII(株式会社アニマルステムセル)(株式会社メディカル・アーク出向)
「犬のがん診療におけるmicroRNA研究―岐阜大学における戦略と現状」森 崇先生、
「ヒト泌尿器癌、特に前立腺癌におけるエクソソーム・マイクロRNA研究と社会実装~泌尿器科医から見る課題と展望~」田村貴明先生(千葉大学大学院医学研究院泌尿器科学/東京医科大学医学総合研究所分子細胞治療研究部門助教)、
「動脈硬化性疾患と血中細胞外小胞miRNAの研究」栗山直也先生(旭川医科大学外科学講座血管・呼吸・腫瘍病態外科学分野/東京医科大学医学総合研究所分子細胞治療研究部門)、
「MCED(多がん早期検出)検査による新時代の幕開け」松﨑潤太郎先生(慶應義塾大学薬学部薬物治療学講座准教授)、
「アカデミアと企業との“知”の連携」吉田 大氏(野村貿易株式会社)

会場の様子