2025年1月11日(土)、12日(日)2日間にわたり、(一社)日本獣医インターベンショナルラジオロジー学会 第1回学術集会が、日本大学生物資源科学部湘南キャンパス(神奈川県)で実施された。
インターベンショナルラジオロジー(Interventional Radiology:IVR〈欧米ではIRと略〉)は、X線透視やCTなどの画像診断機器を用いて、カテーテルや針を用いて行う治療法で、診断・治療の低侵襲化を目指し画像診断のガイド下で開胸・開腹をせずに診断や治療を行う非侵襲的手法である。IVRは人医療だけでなく、小動物医療においても普及しつつあり、技術向上のみならず、安全な実施や適応判断を含めて検討すべき課題は多く、本学会はその教育機関としての役割も目指している。
第1回学術集会のテーマは「軟部組織外科学およびそのIVRの適応を考える」。初日は10時からのドライラボからスタート。これからIVRはじめる人のために基礎から学べる内容を展開。主催者の予想以上に参加者が集い、前半の講義と後半の実践という構成で、コイル塞栓術に必要な血管へのアクセス法であるセルジンガー法などを実習した。
午後からのシンポジウムでは本学会会長の浅野和之先生による「獣医学におけるインターベンショナルラジオロジー」の講演が行われ、小動物医療でのIVRの適応疾患や治療成績、現在の小動物医療分野での実践例を交え、導入を考える先生方へ、メリットや留意点を説明。続いて国立がん研究センター中央病院の放射線診断科医長であり、IVRセンター長も務める曽根美雪先生による「医学におけるインターベンショナルラジオロジー」の講演があり、ヒトのがんに対するIVRで行われる“抗腫瘍治療”“緩和・支持療法”について紹介した。「動物とヒトには解剖学的・生理学的なちがいはあるものの“画像を用いて精確かつ低侵襲に病変へアクセスし治療する”というIVRの基本概念は獣医学に通じる部分も多い」という曽根先生からアドバイスもあり、医学および獣医学の観点からのクロストークに会場は熱心に耳を傾けた。
2日目は「門脈体循環シャント(PSS)完全攻略~解剖から治療まで理解できる~肝外シャント/肝内シャント」を本学会会長の浅野先生が講演、Chick Weisse先生(Animal Medical Center)との共同研究の成果や動画も交え、PSSにおける解剖の重要性、解剖学に基づいたシャント血管へのアプローチ、オープンでの外科手術法のみならず、コイル塞栓術のようなIVRの実施方法や内視鏡外科手術についても解説があり、豊富な症例を元に具体的に紹介した。またランチョンセミナー(朝日インテック(株))も開催され、医学領域で用いられている技術を小動物領域へ応用できる可能性と将来展望について解説があった。
浅野先生は「今回、予想以上に参加者が集い、自分たちが思っている以上に興味をもっていただいていると改めて実感した。今回の第1回学術集会は講義形式がメインとなったが、次回第2回は色々な形式で展開したいと考えている」とのこと。また今年2025年8月、Veterinary Endoscopy Society(VES)/Veterinary Interventional Radiology& Interventional Endoscopy Society(VIRIES)の国際大会が、日本・京都で実施される。
小動物のIVRにおける本学会の牽引力がますます期待される。
詳細は以下より。
【(一社)日本獣医インターベンショナルラジオロジー学会】
https://www.jsvir.net/index.html
【VES/VIRIES in Kyoto 2025】
VES
VIRIES
ドライラボ「~基本的なIVRの手技を習得」の講義と実習の様子
本学会会長の浅野和之先生
国立がん研究センター中央病院、放射線診断科医長、IVRセンター長の曽根美雪先生
今大会参加者全員にて
展示ブースの様子およびランチョンセミナーの様子