小動物臨床総合誌 MVM(エムブイエム)、小動物腫瘍臨床 Joncol(ジョンコル)、獣医眼科プラクティス、動物看護コアテキスト 発行-ファームプレス

学会・セミナーレポート

先制動物医療研究会 第5回シンポジウム開催される

 2019年6月9日(土)、日本医科大学橘桜会館2階ホール(東京都文京区)にて、2019年度先制動物医療研究会 第5回シンポジウム「猫の肥満症」が開催された。
 犬や猫でも寿命が長くなるにつれ、ヒト同様に肥満が増加している。特に猫は、その独特な糖脂質代謝機構により、犬に比べ肥満になる傾向が高い。本シンポジウムでは研究会会長である新井敏郎先生(日本獣医生命科学大学)が、猫の肥満の発症のメカニズム、炎症との関連を講演し、血中のアディポネクチン濃度、血清アミロイドA蛋白(SAA)濃度が肥満症の早期診断マーカーとしての重要性が今後さらに高まると結論づけた。また、川角浩先生(日本獣医生命科学大学)は肥満発症のメカニズムにより、肥満に有効なサプリメントは、抗酸化作用と抗炎症作用を有するものが適しており、これら2つの作用を有するアスタキサンチンとケルセチンを肥満動物に与えた実験結果および臨床治験について紹介した。
 Life Diagnosticsの副社長であるLaura C. Chadwick氏がSAA濃度を測定できるSPARCL アッセイキットについてその使い方、さまざまな動物を使った実験結果について発表した。SAA濃度を検出するにはELISAも使用されるが、本キットの方が簡便・迅速に測定することができる。Chadwick氏はさらなる研究開発を進め、病気の早期発見に貢献したいと語った。
 先制動物医療研究会は「人と動物がともに健康に長生きできる社会の実現」に向け、会員を募集している。詳しくはhttps://www.pvm-s.com/を参照のこと。

日本獣医輸血研究会 第1回学術講習会 開催

 2019年5月29日(水)、堀場製作所 東京セールスオフィス(東京・御茶ノ水)にて日本獣医輸血研究会 第1回学術講習会が開催された。2012年に日本小動物血液療法研究会が発足し、輸血療法や献血プログラムに関する啓発活動を行ってきた研究会が、2018年より名称をあらためて行った初の学術講習会である。

 14時~18時までの4時間にわたり実施された本講習会は、前半を基礎編、後半を応用編に分けて展開。
 「①輸血用血液製剤作製のための設備」「②設備の導入方法」を鈴木裕子先生(Pet Clinic アニホス)、「③輸血用採血パックの使用方法」「④輸血採血方法~失敗しないテクニック~」を長島友美先生(ACプラザ苅谷動物病院 市川橋病院)、「クロスマッチ用セグメンントチューブ作製方法」を中村知尋先生(日本小動物医療センター)が基礎編として、応用編は輸血副反応をテーマに「①輸血副反応の種類について②輸血副反応の対処法について」を久末正晴先生(麻布大学)、献血対象動物をテーマに「①献血対象動物の指針について」を小林 輔先生(JVCC二次動物医療センター 目黒病院)、「②献血システム構築の歴史」を内田恵子先生(日本獣医輸血研究会会長)のプログラムが実施され、続く総合討論では日々の診療での疑問点に対し演者の先生方が丁寧に回答され、参加者は輸血への理解を深めた。

 本学術講習会は第1回~第6回まで実施され、すべて受講すると修了証が発行される。また、ホームページ上では輸血のスムーズな実施をめざして、近い将来に動画もアップ予定。
 「この学術集会を通して、まずは参加者がそれぞれに自分の動物病院の輸血状況をしっかりと把握していってもらいたい」。ここからがスタートだと内田会長。輸血療法のさらなる充実と普及を図っていきたいと語る。

内田恵子会長

進行を務めた、周藤行則先生

総合討論の様子