2024年8月4日(日)、日本獣医生命科学大学(東京・武蔵野市)で、第21回日本動物リハビリテーション学会学術大会が開催され、獣医師、愛玩動物看護師、理学療法士等が集った。また本大会で同時開催された総会にて、会長の交代や新たな理事の加入など新体制となり、新会長に柄本浩一先生(えのもと動物病院)が着任された。
教育講演では、「愛玩動物看護師法から考えるリハビリチーム獣医療」の演題で宮田拓馬先生(日本獣医生命科学大学 獣医保健看護学臨床部門)が登壇し、国家資格化され、今後は毎年3,000人ちかく誕生するといわれる愛玩動物看護師の職域・役割について事例を取り上げ紹介された。続く「獣医師が医療行為として行うチーム医療の動物のリハビリテーション」では、小林孝之先生(前会長、アニマルクリニックこばやし 院長)とともに、獣医師・愛玩動物看護師・理学療法士の立場から、獣医師の大山隆司先生(同左)、愛玩動物看護師の久保田莉奈氏(同左)、理学療法士の堀切朱加氏(同左)が、それぞれの役割や課題について、入院および外来でのリハビリテーションについて症例を交え具体的に紹介。情報の共有、リハビリの評価や、リハビリの終了目標設定について紹介した。

 午後は昨年に続き今大会でも「症例相談会」が実施され、「両側膝蓋骨内方脱臼」森 由季子氏(アニマルクリニックこばやし、理学療法士)、「足関節過伸展症候群疑い」川村和美氏(帝京科学大学 愛玩動物看護師)、「脊髄障害 疑い」神沢優希氏(久米川みどり動物病院、愛玩動物看護師)、そして「重症の頚部脊髄症の犬の3例」植村隆司先生(KyotoAR動物高度医療センター 獣医師)が、日々の診療で発生した疑問への解決を求め、それに対し本学会の理事の他、会場の参加者からも様々なアドバイスやディスカッションが行われた。新会長の柄本先生がスライドを用いた詳細な解説も行い、必要なのは機能改善を目的としたリハビリテーションか、介護を目的としたリハビリテーションかの見極めも大切と説明された場面もあった。相談者も、会場の参加者も理解を深めることができたのではないだろうか。

 また、北海道大学大学院保健学科学研究院リハビリテーション科学分野 教授である遠山晴一先生を迎え特別講演が開催された。同大学のスポーツトレーニングセンターのセンター長の経験をまじえ、“人におけるリハビリテーション医療の考え方と実際”、“変形性膝関節症に対するリハビリテーション”、“膝前十字靱帯損傷に対するリハビリテーション医療と私たちが行った動物を用いた研究知見”をテーマに、ヒトでのリハビリテーション医療の流れ、目標設定や医師・リハビリテーションスタッフ・看護師・患者本人・家族とのリハビリテーションカンファレンスの内容を紹介し、総合的な実施計画書の作成や、“変形性膝関節症”のリハビリテーション医療、膝前十字靱帯損傷に対して行われる「前十字靱帯再建術」の自家腱移植に関する研究知見を実際の世界的に活躍するスポーツ選手での実例も交え紹介。会場は熱心に耳を傾けた。

 「リハビリテーションが関わる疾患は、専門性を持った獣医師が局所療法として治療を適切に行なわなければならないが、リハビリテーションは、局所だけでなく全身と飼主や環境を同時に診ていかなければならない」「少しずつ学会としてエビデンスをつくっていったり、色々な学術的なことが説明できるようにしていくよう、前会長で現顧問となられた小林先生のお力添えもいただきながら、務めていきたい」と柄本新会長。
 獣医療におけるリハビリテーションを牽引する学会として、ますます期待が寄せられる。

 なお今学術大会は8月30日~9月30日の間、学会会員限定で申込者対象にオンライン配信される。
詳細は下記ホームページを参照。
https://www.jaapr.jp/


本学会の新会長となった柄本浩一先生


遠山晴一先生による特別講演「人におけるリハビリテーション医療と予防
スポーツ障害・運動器疾患を中心に」の会場の様子。座長は柄本会長が務めた


特別講演中の遠山晴一先生


教育講演では、“リハビリチーム獣医療”、“チーム医療”というそれぞれの
専門性を生かした実例が紹介された


昨年に続き「症例相談会」が実施され、会場は熱気に溢れた