2024年8月31日(土)、9月1日(日)の2日間にわたって第43回比較眼科学会年次大会がオンラインにて開催された。本大会は、開催前から強い勢力の台風10号によって各地の交通機関が影響を受けたこともあり、開催会場であった千里ライフサイエンスセンターをサテライト会場とし、急遽オンライン開催することを28日午前中に決定された。急な開催形式変更にもかかわらず、サテライト会場とライブ配信視聴者を合わせて2日間で約230名が参加した。
 開会式および閉会式では、大会長の河内眞美先生(住友ファーマ㈱)から、学会実行委員会をはじめ開催形式変更に伴う体制をととのえ実行した関係者、講演者、参加者への協力に改めて感謝が繰り返し述べられた。
 特別講演は、「基礎と臨床を繋ぐ」をテーマに以下2講演が行われた。原 英彰先生(岐阜薬科大学)は「基礎から臨床へ-眼科基礎研究の面白さ/創薬プロセスにおけるトランスレーショナルリサーチ―の現状-」を動物種による眼組織の違いを解説されながら非ヒト霊長類を用いて、滲出型加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞症および緑内障モデルの確立、さらに自然発症の病態モデルを確立にいたる解説をされた。続いて、原 浩昭先生(新潟県立がんセンター)が「抗がん剤の眼毒性」として、近年の分子標的薬、遺伝子組み換え薬、免疫チェックポイント阻害薬といった抗がん治療が確立された状況で眼に重篤な副反応に、以前の検査では診断が困難であった病変を検出可能となっている現状を講演された。
 臨床部会セッションは「眼底検査」をテーマに以下3講演が行われた。「眼底検査の基礎」として、小山博美先生(ネオベッツVRセンター)が、検眼鏡での眼底の見え方および具体的な観察例を解説した。続いて「OCT検査」について小松紘之先生(アニマル・アイケア東京動物眼科醫院)が検眼鏡では把握しきれない眼組織を観察・評価でき、近年急速に進化しているOCTの特性や獣医学領域での可能性を講演した。「ERG検査」では、前原誠也先生(ひかり町動物眼科)が網膜機能の検査に関して大切なことをメインに詳細な解説をされた。
 基礎部会セッションは「眼科治療薬開発の最前線」をテーマに以下3講演が行われた。「多様な光受容の進化に基づく眼疾患治療開発」栗原俊英先生(慶応義塾大学医学部)は、光受容機構の発見から、多様性と眼の発生・形態・機能を対比させながら新たな治療技術開発への取り組みをご紹介された。「再生医療等製品の眼科治療とその非臨床評価について」三ヶ島史人先生(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)は、眼科における再生医療製品等の特性、非臨床評価・非臨床安全性評価で求められるポイントを解説された。「他家iPS細胞を用いた網膜再生医療の研究開発」亀井達也先生(住友ファーマ㈱)は、確率済みの網膜色素上皮細胞(RPE 細胞: H LCR011) および網膜シート(視細胞の層を含有する立体網膜: DSP-3077)をiPS 細胞から製造し、品質評価技術に加え、非臨床評価についても紹介された。
 いずれの講演でもサテライト会場、オンラインのチャットやQ&Aを通して多くの質問が寄せられ、活発な意見・情報交換が行われた。
 一般口演は、2日間を通してアワード審査対象演題を含めた24題、基礎研究から症例報告まで多岐にわたる演題が発表された。アワード受賞タイトルと演者は以下の通り。
「網膜病変を伴う視神経炎の4 症例」相澤あずさ先生
「犬の眼底画像識別ツールにおけるDifferential Image Diagnostic Analysisの有用性の検討および品種特異性の探索」小松紘之先生
「アーメド緑内障バルブを用いたチューブシャント手術後の早期房水産生抑制の有効性について」日下部浩之先生
「Optical Coherence Tomography を用いた暗環境下におけるラット瞳孔径測定の試み」山口晃輝先生

 さらに、比較眼科学会の活動の一環である従来の専門医制度に並行し、新たにレジデントプログラム開始することもアナウンスされていた。
 次回は2025年7月26日(土)、27日(日)にパシフィコ横浜にて開催される予定である。
(学会ホームページ https://www.jscvo.jp/#top)

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サテライト会場の様子(提供:比較眼科学会)